Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education
緩和ケア概論患者の視点を取り入れた全人的なケアを目指して
メッセージ 緩和ケゕは 病気の時期 や 治療の場所 を問わず提供され 苦痛 ( つらさ ) に焦点があてられる つらさ とともに 病気に伴う患者さんの生活の変化や気がかりに対応する さまざまな場面で 切れ目なく 緩和ケゕを受けられることが大切である
ある臨床場面 (1) 抗がん剤治療中の患者さん 最近痛みでつらくなった まだ抗がん剤治療中だから痛いのは仕方ないかしら まだ がんの治療中だから 緩和ケゕは早いな
緩和ケアとは? ターミナルケゕ? 看取り? 終末期医療?
従来のがん医療のモデル がん病変の治療 緩和ケゕ 診断時 死亡 世界保健機関 ; 武田文和 訳. がんの痛みからの解放とパリアティブ ケア - がん患者の生命のよき支援のために -(1993)
ホスピスのはじまり ホスピス 中世ヨーロッパで 旅の巡礼者を宿泊させた小さな教会に附属した施設 十字軍の遠征で傷ついた兵士 治療手段は限られており 自然治癒が基本 そこで看病や看取りをしたことから 看護収容施設全般をホスピスと呼ぶようになった 対象は傷ついた巡礼者 旅人 兵士
近代のホスピス 1879 年ゕイルランド : メゕリー エイケンヘッドによる Our Lady s Hospice 設立 ( ホスピスの原型 ) 英国の植民地下で重税に苦しむ 飢饉や結核の蔓延 亡くなっていく貧しい路上生活者に安らぎの時を与えるために修道女が設立 対象は飢えと結核にさらされた人々
現代のホスピス 1967 年シシリー ソンダースが現在のホスピスの礎となるセント クリストフゔーホスピスを設立 それまでがん疼痛など症状の緩和方法は確立されていなかった 症状緩和や緩和ケゕに関する研究と実践 教育が始まった 対象はがんなど不治の病を持つ人々へ
わが国のホスピス緩和ケアの歴史 1981 年わが国初の施設 聖隷ホスピス設立 1987 年 WHO がんの痛みからの解放 出版 1990 年診療報酬制度に緩和ケゕ病棟入院料新設 2002 年緩和ケゕチームの診療報酬 緩和ケゕ診療加算 2006 年 がん対策基本法 成立 2007 年がん対策推進基本計画公表
緩和ケアに関する用語 ターミナルケア Terminal Care 1950 年代に米国や英国で提唱 人が死に向かってゆく過程を理解して 医療のみでなく人間的な対応をすることを主張 ホスピスケア Hospice Care 1970 年代から英国で始まったホスピスでの実践を踏まえて提唱 死にゆく人への全人的ゕプローチの必要性を主張 緩和ケア Palliative Care 1980 年代のカナダで提唱 ホスピスケゕの考え方を受け継ぎ 国や文化の違いを越え 苦痛に焦点をあてた積極的なケゕの提供を主張 1986 年 2002 年に WHO がその概念を定式化
再び緩和ケアとは? 病気により生命の危機にある Suffering( 苦難 ) を持って生きる人を支える 生を支え 生きがいを支える 時代と場所に応じてその形態が変化 その時に困難を持って生活し 支援が行き届かない死に瀕した人に提供されてきた がん医療においては腫瘍学と緩和ケゕの統合が重要とされている
緩和ケアの定義 (WHO;2002) 緩和ケゕとは 生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者と家族の痛み その他の身体的 心理社会的 スピリチュゕルな問題を早期に同定し適切に評価し対応することを通して 苦痛を予防し緩和することにより 患者と家族のQuality of Lifeを改善する取り組みである http://www.who.int/cancer/palliative/definition/en/
包括的がん医療 がん治療の目標 治癒 予後の延長とQOLの向上 緩和ケゕの目標 QOL の向上 Stephen R. J Pain Symptom Manage 2007 Temel JS. N Engl J Med 2010 互いに補い合う包括的がん医療モデル
包括的がん医療モデル がん病変の治療 緩和ケゕ 診断時 死亡 世界保健機関 ; 武田文和 訳. がんの痛みからの解放とパリアティブ ケア - がん患者の生命のよき支援のために -(1993)
がん対策基本法 がん対策基本法の基本理念 がんに対する研究の推進 がん医療の均てん化の促進 がん患者の意向を十分尊重したがん医療提供体制の整備
がん対策推進基本計画重点的に取り組むべき課題 放射線療法 化学療法 手術療法の更なる充実とこれらを専門的に行う医療従事者の育成 がんと診断された時からの緩和ケアの推進 がん登録の推進 働く世代や小児へのがん対策の充実 ( 平成 24 年 6 月閣議決定 )
緩和ケアにおける課題 苦痛 ( つらさ ) を和らげること 患者さんの気がかりに気づくこと 様々な場面で提供できる体制があること
緩和ケアにおける課題 苦痛 ( つらさ ) を和らげること 患者さんの気がかりに気づくこと 様々な場面で提供できる体制があること
苦痛の緩和はいまだ不十分 がん診療連携拠点病院における多施設遺族調査 からだの苦痛が少なく過ごせましたか? 非常にそう思う そう思う 21.8% ややそう思う 22.6% どちらともいえない 15.8% あまりそう思わない 13.7% そう思わない 13.1% 全くそう思わない 7.4% 5.5 % 49.9% およそ半数にすぎない がん患者の QOL を向上させることを目的とした支持治療のあり方に関する研究班資料
患者は様々な症状に悩まされる がん患者の70% は痛みを感じる 痛みだけでなく 複数の苦痛症状を経験している 呼吸困難 (10-70%) 悪心 (6-68%) 食欲不振 (30-92%) 倦怠感 (32-90%) 抑うつ (3-77%) 不安 (13-79%) Grond S. J Pain Symptom Manage 1994 Solano JP. J Pain Symptom Manage 2006
十分に痛みが取れていない
緩和ケアにおける課題 苦痛 ( つらさ ) を和らげること 患者さんの気がかりに気づくこと 様々な場面で提供できる体制があること
想像してみましょう あなたは検診を受けたところ がんと診断されました 今後 手術と化学療法をする必要があると 説明を受けました 生活や仕事の上で どのような気がかり がありますか?
患者さんの気がかり治療の見通しに関すること 自分の病状がどのような経過をたどるのか知りたかった 小さい子どもがいたので 安心して治療ができるか不安だった どれくらい休業すればいいのか見当がつかず 先が不安だった がんの社会学に関する合同研究班がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書 http://cancerqa.scchr.jp/sassi1.html
患者さんの気がかり生活に関すること 退院したが 少し動いては横になっての生活で家事ができなかった 胃切除後食が細くなり 食に対しての楽しみがないのに 食事を作らなければいけないのがしんどかった 仕事上飲酒の機会が多かったので 習慣を変えるのが大変だった がんの社会学に関する合同研究班がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書 http://cancerqa.scchr.jp/sassi1.html
患者さんの気がかり生き方に関すること 乳房切除により女性でなくなったような気持になった がんをどのように受け止めるかという葛藤が長く続いた これで一生が終わりなのかと 家のこと 生活のことを考えるだけ情けなく思えた がんの社会学に関する合同研究班がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書 http://cancerqa.scchr.jp/sassi1.html
緩和ケアとして伝えたいこと 苦痛 ( つらさ ) を和らげること 患者さんの気がかりに気づくこと 様々な場面で提供できる体制があること
がん治療は入院から外来へ ( 千人 ) 180 160 140 120 100 80 60 40 20 入院患者数 外来患者数 がん有病者数 2,482,600 人 がん患者平均在院日数 19.5 日 0 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005 2008 2011 厚生労働省平成 23 年度患者調査
様々な場面で緩和ケアが必要 難治がんの診断など悪い知らせ がん治療中に生じるつらい症状 経済的負担 家族の問題など がんの進行 終末期のケア
切れ目のない緩和ケアのために 基本的な緩和ケゕは がんを診療するすべての医療従事者が提供する 苦痛が取りきれず 症状緩和が困難な患者は専門的緩和ケゕと協働する 緩和ケゕチーム 緩和ケゕ病棟の医師をはじめとするスタッフ 在宅で専門的な緩和ケゕを提供する診療所 がん看護 緩和ケゕに関連する専門 認定看護師など
まとめ 緩和ケゕは 病気の時期 や 治療の場所 を問わず提供され 苦痛 ( つらさ ) に焦点があてられる つらさ とともに 病気に伴う患者さんの生活の変化や気がかりに対応する さまざまな場面で 切れ目なく 緩和ケゕを受けられることが大切である
補助スライド
診断時からの緩和ケアの効果 診断時から 治療と並行して外来で 緩和ケゕ診療を実施すると 抑うつ 不安を持つ患者が有意に減少 QOLが良好に保たれる 予後が2.7ヶ月延長 Temel JS. N Engl J Med 2010
緩和ケアの提供体制 専門的緩和ケア専門家が提供 ホスピス緩和ケゕ病棟緩和ケゕチーム在宅緩和ケゕなど 基本的緩和ケアすべての医療従事者が提供