第3章 調査のまとめ

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様式 1 食物アレルギーを持つ児童の保護者との面談調査票 ( 保護者 保育園記入用 ) 面談実施日 : 平成年月日 面談出席者 : 保護者側 保育園側 児童の情報 ( 保護者記入欄 ) クラス : 組 児童氏名 : 性別 : 男子 女子 生年月日 : 平成 年 月 日 年齢 : 歳 住 所 : 保護

72 豊橋創造大学紀要第 21 号 Ⅱ. 研究目的 Ⅲ. 研究方法 1. 対象 A B

2011 年 7 月 28 日放送第 47 回日本小児アレルギー学会シンポジウム7 アトピー性皮膚炎を考える から 学校保健における管理指導表の利用と課題 関東中央病院皮膚科部長日野治子はじめに私は市中の一診療病院に勤務しています アトピー性皮膚炎の患者さんも 小児から中年過ぎまで多数来院されます


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相談内容 1 アトピー性皮膚炎 + 食物アレルギー ( アナフィラキシー歴有 )+ 喘息疾患の小学生男児 年齢が上がるにつれて自分が管理していくことになるが 家でできる子どもへの指導方法 ( 教育方法 ) を知りたいです ライフサイクルに合わせた対処方法を子どもに教えたいです 回 答 1 お薬につい

アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

鳥居薬品株式会社 ( 本社 : 東京都 代表取締役社長 : 髙木正一郎 ) は 全国の通年性アレルギー性鼻炎 花粉症のいずれかの症状を自己申告いただいた本人 (15~64 歳 )4,692 名 ( 各都道府県 100 名 山梨県のみ 92 名 ) と 子ども (5 歳 ~15 歳 ) が両疾患のいず

娠中の母親に卵や牛乳などを食べないようにする群と制限しない群とで前向きに比較するランダム化比較試験が行われました その結果 食物制限をした群としなかった群では生まれてきた児の食物アレルゲン感作もアトピー性皮膚炎の発症率にも差はないという結果でした 授乳中の母親に食物制限をした場合も同様で 制限しなか

Q7 生活管理指導表の記入の際に費用はかかりますか? A7 生活管理指導表は 健康保険の適用にはならず 自由診療となりますので 文書料などが発生する場合があります Q8 生活管理指導表における個人情報の取り扱いは? A8 生活管理指導表には アレルギー疾患を持つ子どもたちが 安心して保育所生活を送る

平成19年度学校保健統計調査結果


2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

平成19年度学校保健統計調査結果

●アレルギー疾患対策基本法案

様式集・リンク集

有症率 食物アレルギー は どのような人に いつ どんな原因で発生するのでしょう 発生状況や原因 症状の割合など を知ることは このテーマと向き合う出発点になります ここでご紹介する 食物アレルギーの発症を数え上げる 視点 手法は このテーマに注目するべき領域をわかりやすく示すものでもあります 食物

Microsoft Word - 3歳児調査_01_表紙.doc

花粉症患者実態調査(平成28年度) 概要版

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

<報道関係各位>                         2012年1月●日

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アレルギー疾患に関する3歳児全都調査

Ⅰ 調査の概要

ROCKY NOTE 食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ

を余儀なくされ 時には成長の各段階で過ごす学校や職場等において 適切な理解 支援が得られず 長期にわたり生活の質を著しく損なうことがある また アレルギー疾患の中には アナフィラキシーショックなど 突然症状が増悪することにより 致死的な転帰をたどる例もある 近年 医療の進歩に伴い 科学的知見に基づく

学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン 第 1 章総論 ~ 学校生活管理指導表 ( アレルギー疾患用 ) に基づく取り組み ~ 1. すべての児童生徒が安心して学校生活を送ることのできる環境作りをめざして 3 2. アレルギー疾患とその取り組み アレルギー疾患とは

600人の耳鼻咽喉科医師とその家族対象 アレルギー疾患に関する全国調査

発育状態調査 身長 身長 ( 平均値 ) は 前年度と比較すると 男子は 12~15 歳で前年度を上回り 女子は 5,6,8,9,14,16 歳で前年度を上回っている (13 年齢区分中 男子は増加 4 減少 6 女子は増加 6 減少 5) との比較では 男子は全ての年齢で 女子は 5,9 歳を除い

発育状態調査 身長 身長 ( 平均値 ) を前年度と比較すると 男子は 5~8,10,11,16 歳で 女子は 7~12,15,17 歳で前年度を上回っている (13 年齢区分中 男子は増加 7 減少 4 女子は増加 8 減少 3) 全国平均と比較すると 男子は全ての年齢で 女子は 9~11 歳を除

目 次 アレルギーとは 1 学校生活編 Ⅰ 学校での支援体制 4 Ⅱ アレルギー疾患の児童生徒に対する取組のながれ 5 Ⅲ アレルギー疾患の児童生徒の把握方法 ( 例 ) 6 Ⅳ 学校生活管理指導表 ( アレルギー疾患用 ) について 7 Ⅴ 保護者との面談 9 Ⅵ アレルギー疾患対応委員会の設置

Taro-(発番入り)【アレルギー疾患対策基本指針】

ステロイドについてのアンケート

《学校用ダウンロードファイル》アレルギー疾患用学校生活管理指導表(平成27年度改訂版)


1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

東京都アレルギー疾患対策推進計画

)各 職場復帰前 受入方針の検討 () 主治医等による 職場復帰可能 との判断 主治医又はにより 職員の職場復帰が可能となる時期が近いとの判断がなされる ( 職員本人に職場復帰医師があることが前提 ) 職員は健康管理に対して 主治医からの診断書を提出する 健康管理は 職員の職場復帰の時期 勤務内容

お子さんと一緒にできるアレルギー対策

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今回の調査では 主に次のような結果が得られました 花粉症の現状と生活に及ぼす影響の実態 スギ花粉症を初めて発症してから 10 年以上経つ人が 66.8% と 長年花粉症に悩まされている人が多いという結果に 10 年以上経つ人の割合が多い地域としては静岡県 栃木県 群馬県 山梨県等が上位に 今までにス

名前男 女平成年月日生 ( 歳 ) 学校年組提出日平成年月日学病型 治療学校生活上の留意点 A. 運動 ( 体育 部活動等 ) 3. 強い運動は不可 B. 動物との接触やホコリ等の舞う環境での活動 3. 動物へのアレルギーが強いため不可動物名 ( ) C. 宿泊を伴う校外活動 D. その他の配慮 管

Ⅰ. 調査設計 1. 調査目的 アレルギー疾患対策基本法が施行されており 地域の状況に合わせた適切なアレルギー疾患対策 の検討が進められている中 国内のアレルギー性鼻炎 ( 通年性 花粉症 ) の実態や 患者の保護者が 抱える悩みや情報ニーズを明らかにすることを企図し 本調査を実施しました その中で



児童発達支援ガイドライン(本文・セット版)

環境 体制整備 4 チェック項目意見 事業所評価 生活空間は 清潔で 心地よく過ごせる環境になっているか また 子ども達の活動に合わせた空間となっているか クーラーの設定温度がもう少し下がればなおよいと思いました 蒸し暑く感じました お迎え時に見学させて頂きますが とても清潔だと思

スギ花芽 (11 月下旬の様子 )

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

児童発達支援又は放課後等デイサービス事業に係る自己評価結果公表用(あかしゆらんこクラブ)

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

スライド 1

2. アレルギー性鼻炎に対する認識 通年性患者は 症状が重いと感じていない が 51.8% 慣れてしまって普段は気にしていない が 54.3% だが できれば完全に治したい は 66.5%( 図 2) 症状が重いと感じていない : 通年性患者は 51.8% 季節性患者では 32.0% で 通年性患者

アレルギー疾患対策基本法の施行について

食物アレルギーから見た離乳食の考え方

(2) アナフィラキシー 定義アレルギー反応により 蕁麻疹などの皮膚症状 腹痛や嘔吐などの消化器症状 ゼーゼー 息苦しさなどの呼吸器症状が 複数同時にかつ急激に出現した状態をアナフィラキシーという その中でも 血圧が低下し意識レベルの低下や脱力を来すような場合を 特にアナフィラキシーショックと呼び

A-2-(1)-1 利用者の自律 自立生活のための支援を行っている A-2-(1)-2 利用者の心身の状況に応じたコミュニケーション手段の確保と必要な支援を行っている A-2-(1)-3 利用者の意思を尊重する支援としての相談等を適切に行っている A-2-(1)-4 個別支援計画にもとづく日中活動と

検査項目情報 6475 ヒト TARC 一次サンプル採取マニュアル 5. 免疫学的検査 >> 5J. サイトカイン >> 5J228. ヒトTARC Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital Ver.6 thymus a

乳幼児の食物アレルギー対策に関する実態調査の結果

独立行政法人国立成育医療研究センターエコチル調査メディカルサポートセンター特任部長生体防御系内科部アレルギー科医長 大矢幸弘 1

( 別添 ) 健発 0321 第 1 号 平成 29 年 3 月 21 日 都道府県知事政令指定都市市長中核市市長 殿 厚生労働省健康局長 ( 公印省略 ) アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針を策定する件について アレルギー疾患対策の総合的な推進を図るため アレルギー疾患対策基本法 ( 平

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Microsoft PowerPoint - 【資料 2】海老澤委員提出資料

( 別記報告様式 1 ) 記載例 2 感染症等 ( 疑 ) 発生報告票 1 報告年月日 平成 1 9 年 4 月 1 日 ( 日 ) 1 5 時 0 0 分現在 2 施設等の名称 学校法人 函館学院 函館保健所幼稚園 ( 種 別 ) ( 私立幼稚園 ) 4 報 告 者 職 氏 名 園 長 名 函 館

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放課後等デイサービス事業所における自己評価結果 ( 公表 ) 公表 : 平成 31 年 3 月 15 日事業所名運動療育スクール jump 宇部校 環境 体制整備業務改善 1 チェック項目はいいいえ工夫している点 利用定員が指導訓練室等スペースとの関係で 適切である 2 職員の配置数は適切である 3

学校生活管理指導表 活用の手引(医師用)

侵入を防ぐ機能 ) が低下している状態 3 で天然ゴム製品と接触していたりすると 発症リスクがあることが分かっています 特に 医療従事 製造業 清掃業や介護業などに従事していて天然ゴム製のゴム手袋を頻繁に着用している方 手術などの医療行為を何度も受けている方 4 アトピー性皮膚炎などで慢性的に肌荒れ

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スライド 1

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医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

茨城大学教育学部紀要 教育科学 61 号 アレルギー疾患に関する認識調査と基礎的理解 石井 千尋 * 石原 研治 ** 2011 年 11 月 25 日受理 Understanding of Various Allergic Inflammation on Students

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別添 事業者向け放課後等デイサービス自己評価表 及び 保護者等向け放課後等デイサービス評価表 について 放課後等デイサービスガイドライン ( 以下 ガイドライン ) は 放課後等デイサービス事業所における自己評価に活用されることを想定して作成されたものですが 各事業所で簡易に自己評価を行うことができ


とが多いのが他の蕁麻疹との相違点です 難治例ではこの刺激感のために日常生活に支障が生じ 重篤な随伴症状としてはまれに血管性浮腫 気管支喘息 めまい 腹痛 嘔気 アナフィラキシーを伴うことがあります 通常は暑い夏に悪化しますが 一部の症例では冬期の運動 入浴で皮疹が悪化することがあり 温度差や日常の運

Ⅱ 調査結果の概要

301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

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2010年8月3日

0 0 0 アレルギー疾患対策の現状と問題点 () 我が国におけるアレルギー疾患対策の現状アアレルギー疾患の疫学 ( ア ) アレルギー疾患の罹患者数 00 年の全国小児喘息の有症率は ~ 歳で.% ~ 歳で.% - 歳で.% であった また幼稚園児での喘鳴有症率は.% であった さらに成人において

第 2 部各論 2 花粉症の現状 東京都が平成 28(2016) 年度に実施した花粉症患者実態調査では 都内 ( 島しょ地域を り除く ) のスギ花粉症有病率は 48.8% と推定され 都民のおよそ 2 人に 1 人がスギ花粉症に罹 患している結果になります また 東京都の花粉症対策については 花粉

Microsoft Word 年度シニア 呼吸器内科 2014.docx

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伊川谷児童デイサービスステップ 環境 体制整備 区分 1 チェック項目現状評価 ( 実施状況 工夫点等 ) 保護者の評価保護者の評価を踏まえた改善目標 内容 利用定員に応じた指導訓練室等スペースの十分な確保 利用人数が日によって変わるので利用者数に合わせて活動内容を工夫しています 2 職員の適切な配

Microsoft Word - H26 学校保健概要


⑤5 地方公共団体における検証等に関する調査結果

第3章 学校給食での対応

2. 平成 9 年遠隔診療通知の 別表 に掲げられている遠隔診療の対象及び内 容は 平成 9 年遠隔診療通知の 2 留意事項 (3) イ に示しているとお り 例示であること 3. 平成 9 年遠隔診療通知の 1 基本的考え方 において 診療は 医師又は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本

10 48

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本調査では アトピー性皮膚炎治療における 医師 - 患者間コミュニケーションの改善が治療継続のモチベーションを上げ 治療の満足度向上に寄与することが示唆されています サノフィジェンザイムは アトピー性皮膚炎患者さんの QOL 向上に取り組むため アレルギーに関する情報サイト アレルギー i において

Transcription:

第 3 調査結果のまとめ 1 アレルギー疾患のり患状況 都内の児童施設に通う子供の各アレルギー疾患のり患状況は ぜん息 4.4% アトピー性皮膚炎 4.1% 食物アレルギー 5.3% アナフィラキシー 0.4% アレルギー性鼻炎 1.5% アレルギー性結膜炎 0.6% であった 今回の調査結果は 先行研究である横浜市 1) の報告にほぼ近似していたが 食物アレルギーの有病率に関しては 横浜市 1) や青森県 2) の報告と比較し 約 2% 程度高い割合であった 2 アレルギー疾患の把握状況 アレルギー疾患の把握状況について 各アレルギー疾患とも多くの児童施設が把握していた 特に ぜん息 アトピー性皮膚炎 食物アレルギーでは 9 割以上が把握していた 把握方法では 各アレルギー疾患とも 入所調査票や面談などにより把握している 割合が 医師の診断書や指示書の提出を求めている 割合より上回っていた 3 配慮が必要なアレルギー疾患を持つ子供の在籍状況 配慮が必要なアレルギー疾患を持つ子供が在籍している児童施設の割合は 食物アレルギー 68.1% アトピー性皮膚炎 66.9% ぜん息 44.1% アレルギー性鼻炎 結膜炎 30.5% であった 4 児童施設における取組状況 (1) ぜん息ぜん息児在籍施設における日常生活の配慮については 施設の敷地内は全面禁煙にしている 割合は 67.5% 毛や羽根のある動物に接触しないよう配慮している 割合は 49.4% ほこりが舞う環境から避けるよう配慮している 割合は 46.0% であった ぜん息は 発作を起こさないように予防することと 発作が起きてしまった時に重症にならないように対処や治療を行うことが重要である ぜん息発作を誘発させるタバコの煙やダニ ホコリ 動物のフケや毛などを避ける配慮は必要である 過去 1 年間にぜん息発作を起こした子供がいた児童施設の割合は 23.4% であった ぜん息児在籍施設におけるぜん息発作及び重症化防止の対策については 職員全員に対して ぜん息に関する基礎知識の充実を図っている 割合は 27.5% ぜん息発作時にとる対応の事前確認を行っている 割合は 22.0% であった また ぜん息発作時の対応マニュアルを活用している児童施設の割合は 43.7% に留まっていた 日常生活で配慮していてもぜん息を持つ子供が発作を起こす可能性はある 児童施設は 子供がぜん息発作を起こした時に重症化させないためにも迅速且つ的確な対応が求められる そのためには 全職員がぜん息に関する正しい知識をもち 保護者 医師 ( 主治医など ) 職員間で情報を共有し ぜん息発作の対応方法について事前確認を行っておく必要がある (2) アトピー性皮膚炎アトピー児在籍施設における日常生活や行事での配慮については プールの後には 皮膚に付着した塩素を落とすためにシャワー浴を実施している 割合は 75.3% 汗をかいた後は 汗を拭きとっている 割合は 67.4% であったものの 毛や羽根のある動物に接触しないよう配慮している 割合は 39.1% であった 動物に触れることで豊かな心情を育てることを目標としている児童施設においては 通常の保育との兼ね合いで難しさがあるが アトピー性皮膚炎は 動物との接触によりかゆみが悪化することが知られており 配慮が必要である 23

服薬管理については 保護者からの依頼により 主治医の投薬指示書に基づき処方された外用薬を預かることや 塗布を行う場合がある 割合は 8 割を超えており 他のアレルギー疾患を持つ子供への服薬管理に比べて最も多かった 今後 職員がアトピー性皮膚炎の悪化原因や スキンケア 治療薬についての知識を深め アトピー性皮膚炎を持つ子供の適切な生活管理や対応を行っていく必要がある (3) アレルギー性鼻炎 結膜炎アレルギー性鼻炎 結膜炎児在籍施設における日常生活や行事での配慮については 特に花粉の飛散時期やホコリの多い日等の屋外活動への参加の際 体調を十分に観察し 状況によって制限している 割合は 50.2% であった 鼻アレルギー診療ガイドライン 4) において 小児のアレルギー性鼻炎の原因は ハウスダストが圧倒的に多く 最近では花粉症 ( 特にスギ花粉症 ) の合併も多いと報告されている アレルギー性鼻炎 結膜炎の発症予防と症状悪化のためには 各施設において 日常的に原因となるアレルゲンを除去 回避するための配慮を行っていく必要がある (4) 食物アレルギー アナフィラキシー食物アレルギー児在籍施設における日常生活での配慮については 給食やおやつの時間は 誤食防止のために職員が同じテーブルにつくなどの配慮をしている 割合が 8 割を超えており 原因となる食物を摂取しない配慮をしていた 食物アレルギー アナフィラキシーは 原因となる食物を摂取しないことと アナフィラキシー症状が出現した時に速やかに適切な対応を行うことが重要である 過去 3 年間にアナフィラキシーを起こした子供がいた児童施設の割合は 12.0% であった 食物アレルギー児在籍施設におけるアナフィラキシー発症及び重症化防止対策について 入所 入園時に 児童票などで 食物アレルギーやアナフィラキシーに関する必要な情報を把握している や 食物アレルギーの乳幼児やアナフィラキシーの既往がある乳幼児の情報を職員間で情報共有している 割合は 7 割を超えていたものの アナフィラキシー発生時にとる対応の事前確認を行っている 割合は 31.0% であった また アナフィラキシー発症時の対応マニュアルを活用している児童施設の割合は 51.0% であった 日常生活などで配慮していても 食物アレルギーを持つ子供がアナフィラキシーを発症する可能性はある アナフィラキシーは 時にショック症状を引き起こし生命に関わることもあり 迅速且つ的確な対応を求められる そのため 食物アレルギーを持つ子供やアナフィラキシーを起こしたことのある子供の実態 原因 症状等を保護者 医師 ( 主治医など ) 職員間で情報を共有し アナフィラキシー発症時の対応方法について事前確認を行っておく必要がある また アナフィラキシーの発症及び重症化防止の対策を行う上での前提として 職員全員が疾患に関する正しい知識を身につけることが重要である 今回の調査では 半数以上の児童施設で 研修会の参加や勉強会の開催などを通して全職員への知識の普及に積極的に取り組んでいた 今後も 各児童施設において 日常生活や行事への配慮 アナフィラキシー発症及び重症化防止への取組をすすめていく必要がある 4 アレルギー疾患に関する研修の参加状況と行政への要望 過去 3 年間にアレルギー疾患に関する研修に参加した児童施設の割合は 6 割を超えていた 参加した研修のテーマとしては 食物アレルギーが最も多かった 本調査結果から 職員の食物アレルギーに関する関心の高さがうかがえる また 児童施設に通う子供でアレルギー疾患にり患している子供のうち 食物アレルギーを持つ子供が多かったことも明らかになった このことから 特に食物アレルギーに関する知識の向上のための研修のニーズが高いと言える また 行政への要望として アレルギー疾患に関する研修や講習会の開催要望が多かったこともあり 東京都では 今後もアレルギー疾患に関する児童施設の実態を把握しながら ニーズに合わせた研修を企画し実施していく 24

5 今後の方向性 今回の調査により 児童施設において配慮を必要とするアレルギー疾患を持つ子供の在籍状況や取組状況が明らかになった アレルギー疾患の発症を予防し 症状の悪化を防止するためには 家庭でのケアに加え 児童施設においても適切な対応を行っていく必要がある そのためには まず職員全員が各疾患の特徴や対処方法を理解し 保護者からの申し出とともに 医師の診断や指示に基づく個々の子供の疾患の特徴などの正確な情報を把握し 職員全員で情報を共有しておくことが大切である 特に ぜん息発作やアナフィラキシー発症時には 迅速且つ的確に対応していくためにも 保護者から情報提供を受け 医師 ( 主治医など ) との連携に加え 職員間で情報共有し備えておくことが重要である 本調査の結果を踏まえ 東京都は今後も児童施設職員向けの研修や講演会などを通して アレルギー疾患の正しい知識や情報を提供していく さらに ぜん息発作やアナフィラキシー発症時の対応についての研修を実施していく また 保育 教育機関等とも連携し 有効なアレルギー疾患対策を推進していく 引用文献 1) 伊藤玲子, 奥典宏, 真部哲治, 横田俊平, 相原雄幸, 横浜市内幼稚園 保育所における食物アレルギーの実態, 日本小児アレルギー学会誌 2007;21(1):51-55. 2) 瀧澤透, 青森県の保育所における食物アレルギーの実態, 小児保健研究 2009;68(5):542-548 3) 学校保健統計調査, 文部科学省, 平成 21 年度 4) 鼻アレルギー診療ガイドライン - 通年性鼻炎と花粉症 -2009 年版 ( 改訂第 6 版 ), 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会,2008 年 11 月 参考文献 小児気管支喘息治療 管理ガイドライン 2008, 日本小児アレルギー学会,2008 年 12 月 アレルギー疾患に関する調査研究報告書, アレルギー疾患に関する調査研究委員会, 平成 19 年 3 月 25