第 5 学年理科学習指導案 千葉市立稲丘小学校授業者古内大輔 1 研究主題自ら学び 心豊かに生きる力を身につけた児童生徒の育成個を生かした学習指導の進め方 小中合同主題 教科の本質にもとづき 児童の力で自然を調べる楽しさが体得される場の工夫と指導法の追究 小学校主題 2 単元生命のつながり (1) 植物の発芽 3 単元について地球上には 20 万種とも 30 万種ともいわれるように多種多様な植物が生息している そして それらの植物に囲まれて 私たち人間は生命活動を維持し 文明 文化を築いてきた 光合成によって作られた酸素を呼吸により体内に取り入れ 穀物や果実を食料として生産している 大樹の幹から木材を切り出し建築材とし 植物の繊維から布や紙を発明し 衣類や情報を伝達する手段を得た このように 様々な形で植物からの恩恵を受けたり 人間が植物に働きかけ利用したりして人間と植物は関わっている それら植物の生命の出発点は種子ではないだろうか そして 発芽という現象は 環境条件が整うまで じっと自分の遺伝情報を小さな一粒の中に大切に保存していた休眠状態の種子が生命活動を開始する感動的瞬間であるといっても過言ではない 本単元では インゲンマメの種子を使い 発芽の条件や種子のつくりを調べる 興味 関心をもって追究する活動を通して 条件を制御して調べる能力を養うとともに 発芽の条件や種子のつくりについての理解を図る さらに 植物の成長 や 植物の花のつくりと実や種子 へ発展させて 生命を尊重する態度を育てることをねらいとする 本単元に関わる既習内容として,3 年生では 植物をそだてよう ~ たねまき ~ から 植物を育てよう ~ 花がおわったあと ~ で植物の成長のきまりや体のつくりについて学習している また,4 年生では 季節と生き物 ~ 春 ~ から 季節と植物 ~ 春のおとずれ ~ で植物の成長と環境との関わりを学習している これらの学習経験や今までの生活経験をもとにして, 発芽や成長の条件を考えることが重要になる 目の前に一粒の種子があっても それ自体からわくわくしたり 早く何かしたいという要求をもてたりする児童はそれほど多いと思えない 発芽の条件や種子のつくりに関しての名称としての知識は多くの児童がもっているが 興味 関心は表に表れていなかった これまでにも 児童たちはアサガオやミニトマト ツルレイシなどを学校で育てた経験がある 花が咲いたり 実ができたりという視覚的にはっきりとわかる変化には大きな興味 関心があり 素直に喜びを表現しているが 茎が少しずつ伸びていく様子 葉が大きくなっていく様子といった微細な変化に興味 関心が向くことはなかなか難しいように感じる そこで 本単元では植物体の持つ生命体の不思議さに目を向けさせるため 生命の連続性を 実感を伴って理解できるような場の工夫を考える 指導にあたっては次のことに留意していきたい 条件制御 何を変える 何を変えない のかを明確にしていくようにする 固定する条件を何にし どのように固定していくのかを明確に考えるようにする 単元を通してこまめに確認していく 生命の連続性を 実感を伴い理解できる場 ( 教具 ) の工夫 B 生命 地球領域の植物分野の単元に関しては サンプル数が限られてしまうことが要因となり 始めと終わりの 2 点の実験 観察結果に児童たちの意識が向きやすい 植物の生命の連続性を より納得して理解できるよう 中間点での実験 観察ができるようにサンプルの絶対数を増やしていく 児童の思考の流れを大切にしながら 児童自身が実験方法として提案できるように指導していきたい 1
4 単元の目標植物の発芽について興味 関心をもって追究する活動を通して 植物の発芽について条件を制御して調べる能力を育てるとともに それらについての理解を図り 生命を尊重する態度を育て 植物の条件についての見方や考え方をもつことができるようにすること 子葉の中のでんぷんが種子の発芽やその後の成長に使われていること 植物の発芽には 水 空気及び温度が関係していること 5 評価規準 自然事象への関心 意欲 態度 科学的な思考 表現 観察 実験の技能 自然事象についての知識 理解 植物の発芽に興味 関心をもち 種子の発芽の条件について自ら調べようとしている 植物の種子の発芽のしくみに 興味 関心をもち 種子のつくりとふくまれる養分について調べようとしている 植物の発芽の条件について予想や仮説をもち 条件に着目して実験を計画し 表現している 発芽の実験結果と整えた条件を関係付けて考察し 自分の考えを表現している 子葉の様子の変化と 子葉の中のでんぷんの様子を関連させて 種子の中には発芽に必要な養分が含まれていると予想をもち 表現している 植物の発芽について 条件を整えて実験を行い その課程や結果を記録している でんぷんがあることをヨウ素液を適切に使って 観察している 植物の発芽には 水 空気 及び発芽に適した温度が必要であることを理解している 子葉の中のでんぷんが種子の発芽やその後の成長に使われていることを理解している 6 単元の指導計画 (8 時間 ) 第 1 次 発芽の外的要因 ( 発芽するた めの条件 ) 時学習活動と内容教師の支援評価の観点 1 2 3 発芽に必要な条件について話し合う 条件の整理の仕方を考え 実験計画を立てる 発芽について条件制御の話し合いをし 一度に変えていいのは一つだけの条件 という考え方を定着させる 植物の発芽に興味 関心をもち 種子の発芽の条件について自ら調べようとしている ( 関 意 態 ) 植物の発芽の条件について予想や仮説をもち 条件に着目して実験を計画し 表現している ( 思 表 ) 水は発芽に必要だよ 人間も水を飲まないと生きていられないから 春になって 桜の花や学校花壇の花が咲いてきたよ 反対に冬は 落ち葉ばかりで花はほとんど見られないよ 温度に関係があると思う 種子も人と同じように呼吸をしていると思うから 空気も必要なんじゃないかな 種子は普通 土の中に植えるから日光 ( 光 ) は必要ないと思うよ そろえる条件 そろえない条件をしっかり考えて 整理しよう インゲンマメの種子が何粒あると 全ての条件を調べられるかな 発芽に水 空気 温度 日光が関係しているかどうか 計画通りに調べる 場合によってはデジタルカメラなどの機材での記録があることを教え 活用する 植物の発芽について 条件を整えて実験を行い その過程や結果を記録している ( 思 表 ) 脱脂綿や水には肥料のようなものはふくまれていないよね 同じ場所に置いたり ( 日当たり 温度 ) 毎日水やりを忘れないようにしたりして なるべく同じよう 2
に世話をしてあげよう 第 2 次 発芽の内的要因 ( 種子のつく り 種子の中の養分 ) 4 5 6 インゲンマメの種子の発芽に必要な条件についてまとめる 発芽の条件を考察する際は 予想や仮説と照らし合わせながら実験の条件や結果を整理する 発芽の実験結果と整えた条件を関係付けて考察し 自分の考えを表現している ( 思 表 ) 植物の発芽には 水 空気 及び発芽に適した温度が必要であることを理解している ( 知 理 ) 日光 ( 光 ) がなくてもインゲンマメは発芽するのは予想とちがったな 水 空気 温度の条件が整うと 種子が発芽することがわかったよ 条件が整っているはずなのに発芽しなかったもの 条件が整っていないはずなのに発芽したものの原因は何だったのだろう 同じ条件で育ててきたインゲンマメ同士を観察し 成長段階順に並べてみたり 気付いたことや疑問をノートに記録したりする 子葉の様子の変化から 子葉の役割や種子のつくりを考え 話し合う 葉や茎などの成長している部分の変化への気づきを認めながら 唯一しおれていっている子葉の部分に着目させる ノートの記録と実際のサンプルを交互にふり返らせ 様々な成長段階のサンプルに着目するようにする 植物の成長の様子に興味 関心をもち 種子のつくりについて調べようとしている ( 関 意 態 ) 子葉の様子の変化と 植物の成長の様子を関連させて 種子のつくりや子葉の役割について予想をもち 表現している ( 思 表 ) どのインゲンマメも発芽して 身丈がだいぶ伸びたね 私たちも 1 人 1 人身長 体重が違うように インゲンマメも身丈や葉や茎の様子はちがっているね 本葉の数や大きさもちがうね 葉が大きいインゲンマメの方が ( 葉の数が多い方が 身丈が高い方が ) よく成長していると言えそうだよ 茎の途中についているかたまりも大きさがちがっているよ これはもとの種子のどの部分だったのだろう もともとの子葉の様子を観察してみれば 何かわかるかもしれないな 種子を観察し 発芽前の種子の子葉に含まれているでんぷんの様子を調べる 種子のつくりを想起させ ヨウ素でんぷん反応やでんぷんの量の予想につなげさせる 表皮 子葉 臍といった部位の用語を確認し 使用するようにしていく 種子の中に 葉や根になりそうな部分があるよ 白い部分が 成長したインゲンマメの茎についていたかたまりだと思う 種子の部分ごとに子葉や胚というきちんとした名前があるんだね でんぷんが子葉には多くふくまれていることがわかったよ 子葉にでんぷんがあることをヨウ素液や顕微鏡を適切に使って 観察している ( 技 ) 3
7 ( 本時 ) さまざまな成長段階の子葉の様子や内部のでんぷんの様子を観察する 子葉の様子の変化とインゲンマメの成長にどのような関係があるのか結果をもとに話し合う 成長段階が違うサンプルが整うように 教師も児童と並行しインゲンマメのサンプルを育てておく 各成長段階の様子を比較しやすいように 顕微鏡の台数や配置の仕方の工夫 視聴覚教具の活用をする でんぷんがあることをヨウ素液や顕微鏡を適切に使って 観察している ( 技 ) 子葉の様子の変化と 子葉の中のでんぷんの様子を関連させて 種子の中には発芽に必要な養分が含まれていると予想をもち 表現している ( 思 表 ) 8 子葉はどんどん小さくなっているね しわしわになってきている ひからびてきているみたいだな 顕微鏡で子葉を見ると 青紫色に染まっているでんぷんの量の違いがはっきりわかるよ 子葉が小さくなっていくのと でんぷんの量が少なくなっていくのは関係があると言えそうだ でんぷんは発芽や成長の養分として使われたから だんだんなくなっていったのだと思います 学習のまとめをする 結果や考察の吟味だけでなく 実験計画の立て方や条件の整え方などをふり返れるように話し合いを整理していく 植物の発芽には 水 空気 及び発芽に適した温度が必要であることを理解している ( 知 理 ) 植物は 種子の中の養分をもとにして発芽することを理解している ( 知 理 ) インゲンマメの種子には いろいろな仕組みがあったな 植物の力ってすごいな 調べたい条件は変える条件にする それ以外は変えない条件にすると 調べたい条件が発芽に関係しているか調べられた これからの理科の学習でも生かせそうだ 早くインゲンマメが実らないかな これからもしっかり世話をしよう 7 本時について (7/8) (1) 本時における提案内容第 1 次の学習活動で 児童たちはインゲンマメの発芽の外的要因に着目し 発芽には水 空気 温度の条件が整うことが必要であることを学習した それと同時に インゲンマメの発芽には日光や肥料は必要ではないことも学習した 第 2 次では発芽の内的要因にせまっていく学習活動となる 種子のつくりの観察や 種子に含まれるでんぷんの存在をヨウ素でんぷん反応で確認したり 種子に含まれるでんぷんを顕微鏡で観察したりする活動を通して 発芽のメカニズムへの気づきを促し 生命の連続性を理解するとともに 生命を尊重する態度を育てることへとつなげたい 発芽の内的要因の一つである種子の養分を理解する際に 発芽前の種子の子葉と ある程度成長ししぼんで小さくなった子葉のでんぷんの量を比較し 考察する指導計画とする この指導計画の際 留意したい点として次の 2 点を挙げたい 1 点目は 第 1 次と第 2 次のつながりの中で児童たち自らの疑問がでるようなものにするという点である これまでは第 1 次の学習から なぜ 肥料をあげなかったのに種子は発芽することができたのだろう という課題を解決する指導計画がとられていた しかし 今回は教材を一本化して 第 1 次で育てたインゲンマメを見比べ 葉の大きさや数 茎の太さ 身丈など様々な違いを発見する中で 唯一凋萎していく子葉に着目できるように第 2 次への導入を工夫したい 2 点目は ( 発芽前 ) と ( 発芽後のある 1 点 ) との 2 点のみでの観察結果とする場合 その途中経過に意識が向きにくいという点である 刻一刻と子葉のでんぷんの量は変化しているはずであり 子葉の姿形もしぼんで小さくなっている そこで本時では 子葉の様子の観察とともに 何点かの成長段階でのでんぷんの量もヨウ素でんぷん反応で確認したり 顕微鏡で観察したりする そのための手立てとして インゲンマメのサンプルの絶対数を増やすという方法を取りたい 第 1 次で児童 1 人が 1 つインゲンマメを育て それらを第 2 次でも使用し学習を続ける 4
条件制御を行い育てていくが 個体差として表出する成長段階の違いをそのまま利用し 様々な成長段階のサンプルを用意することとしたい 子葉の外的な様子 子葉内部のでんぷんの量という二つの側面から観察を重ね インゲンマメの種子の養分が確かに発芽に使われていることを生命の連続性をより納得した形で理解させたいと考える (2) 本時の目標 様々な成長段階の子葉の様子を観察し 種子に含まれているでんぷんを基にしてインゲンマメは発芽し 成長していることを理解できる (3) 展開 過程問題把握 学習活動と内容教師の指導 支援 ( は評価 ) 資料 1 これまでの学習を振り返る 種子には子葉という部分がある 発芽前のインゲンマメの種子の子葉にはでんぷんが多く含まれていた でんぷんはヨウ素でんぷん反応で確認できた 2 本時の学習問題を確認する 前時までの学習内容や結果を資料 ( 写真やノート掲示 ) などで振り返ることができるようにしておく ヨウ素でんぷん反応の様子 顕微鏡で見たでんぷんは写真で拡大して掲示し 本時の間いつでも確認できるようにしておく 前時までの実験結果の写真やノートのコピー インゲンマメの子葉の様子の変化と発芽や成長にはどのような関係があるのだろうか 予 想 3 予想を立て 全体で話し合う 子葉の部分は単に枯れただけではないだろうか 子葉が小さくなっているので 子葉の中のでんぷんの量は少なくなっているのではないかな 子葉の中のでんぷんが発芽や成長に使われたから 子葉は小さくなったのだと思う 種子のつくりの観察から 子葉は何になる部分なのか どのような役割があると考えられそうなのか筋道立てて予想できるよう助言する 第 1 次の発芽の外的要因の学習内容も参考にするように助言する 実験 観察 4 計画した方法で実験 観察をする 成長段階の違う 3 つのサンプルを比較する A: 発芽前の種子 ( 前時に観察 ) B: 双葉が出始めたころのサンプル ( 約 5cm) C: 茎も伸び葉も大きくなったもの ( 約 10cm) ( 子葉の観察 ) B の子葉は大きくて パンパンにはっているよ C は B と比べるとだいぶしぼんだように見えるよ 本時までに A~C のサンプル数がそろうように計画的にインゲンマメの栽培をする 机間指導の際 顕微鏡の調整に時間がかかってしまっている児童や班に支援をし 観察の時間を確保する 顕微鏡 スライドガラス ヨウ素液 5
考察まとめ ( ヨウ素でんぷん反応や顕微鏡でのでんぷんの観察 ) B の子葉にはでんぷんがたくさん見られたよ ヨウ素液の反応もはっきりわかったよ C の子葉にもまだでんぷんが見られたよ でも B に比べると少なくなっているように見えるな 5 実験結果を発表し わかったことを発表する A から C へ子葉が小さくなっていくのは 中のでんぷんがなくなっていったからだと思う A から C の子葉へと だんだんでんぷんの量は少なくなっていったけど インゲンマメは成長している だから でんぷんはインゲンマメの成長と関係がある でんぷんは発芽や成長の養分として使われたから だんだんなくなっていったのだと思います 落ちてしまった子葉にはでんぷんはないのかな 落ちてしまった子葉のでんぷんの量も調べたいな でんぷんがあることをヨウ素液や顕微鏡を適切に使って 観察している ( 技 ) 実験結果からわかったこと 疑問に思ったこともあわせて発言するように促す 子葉の様子の変化と 子葉の中のでんぷんの様子を関連させて 種子の中には発芽に必要な養分が含まれていると予想をもち 表現している ( 思 表 ) 6 本時のまとめをする インゲンマメの子葉が小さくなっていくほど 子葉の中のでんぷんの量は少なくなっている このことから 子葉の中のでんぷんが種子の発芽やその後の成長に使われていると考えられる 6