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簡便な手法による屋内 3 次元地図作成 更新のためのマニュアル ( 案 ) 平成 30 年 3 月 国土交通省国土地理院

目次 1. はじめに... 1 1.1. マニュアルの概要... 1 1.2. マニュアルの構成... 1 1.3. 用語説明... 2 2. 3 次元地図の作成... 3 2.1. 計測... 3 2.2. 正規化... 4 2.3. 3 次元モデル化... 4 3. 3 次元地図の更新... 5 3.1. 基準点の選定... 5 3.2. 計測機器の選定... 6 3.2.1. 移動型レーザスキャナ... 6 3.2.2. 距離センサ... 6 3.2.3. スマートフォン搭載型距離センサ... 6 3.2.4. デジタルカメラ... 6 3.3. 計測... 11 3.3.1. 移動型レーザスキャナを使った計測時の注意点... 11 3.3.2. 距離センサを使った計測時の注意点... 12 3.3.3. 実測による精度確認... 15 3.3.4. 計測結果 (SLAM SfM 処理後の3 次元データ ) の検査... 16 3.3.5. 合成処理及び検査... 17 3.4. 位置標定... 18 3.5. 既存 3 次元モデルの編集... 19 3.6. 3 次元モデル化... 19 3.7. 統合... 20 4. 3 次元屋内地理空間情報データ仕様への変換... 21

1. はじめに 1.1. マニュアルの概要本マニュアルは 屋内の小規模な改変を対象に簡便な手法で得られた 3 次元モデルを既存の3 次元モデルに反映 更新する手順や留意点等について示したものである 本マニュアルで言う簡便な手法とは 地上型レーザスキャナを用いた従来の手法より比較的安価であることや計測に要する手順や人的コストが少ないことを指す また 小規模な改変とは 駅や商業施設の屋内にあるエレベータやベンチ等の小さな地物の設置 ( あるいは除去 ) のことを指し 駅や商業施設におけるこれらの改変時において 3 次元モデルを更新することを想定している なお 今後類似技術を使ったセンサが開発される可能性もあるため 本マニュアルでは一部メーカー側でサポートが終了した機器についても取り上げている 1.2. マニュアルの構成 簡便な手法による屋内 3 次元地図作成 更新の作業の流れを図 1-1 に示す 作業は大きく 2 種類ある 本マニュアルでは初めに屋内 3 次元地図の新規作成について第 2 章で 小規模 な改変に伴う既存の屋内 3 次元地図の更新について第 3 章に記述する 屋内 3 次元地図の新規作成 既存の屋内 3 次元地図を更新 計測 (2.1) 基準点の選定 (3.1) 正規化 (2.2) 計測機器の選定 (3.2) 3 次元モデル化 (2.3) 計測 (3.3) 位置標定 (3.4) 既存 3 次元モデルの編集 (3.5) 3 次元モデル化 (3.6) () 内は本マニュアルで該当する節番号 異なる 3 次元モデルの統合 (3.7) 図 1-1 3 次元地図作成 更新フロー 1

1.3. 用語説明 本マニュアル内で使用する用語について説明する 使用する用語本マニュアルでの用語の定義 3 次元地図国土地理院で規定した3 次元屋内地理空間情報データ仕様書 ( 案 ) に準拠したデータを指す 3 次元モデル 3 次元 CAD サーフェスモデルデータを指す 3 次元点群データ計測により取得された3 次元点群データを指す ( 図 1-2) 3 次元メッシュデータ計測機器に内蔵されたソフトウェアまたは 計測機器とは別のソフトウェアで作成された3 次元メッシュデータを指す ( 図 1-3) 基準点既存の3 次元モデルに新たに計測した3 次元点群データを位置標定するための基準となる点をいう SLAM SLAM(Simultaneous Localization and Mapping) とは 周囲の3 次元構造と自分の位置を推定する技術を指す レーザ等のセンサを利用したものと 画像を利用したものがあるが 本マニュアルでは レーザ等のセンサを利用したものを指す SfM SfM(Structure from Motion) とは 移動するカメラから得られる画像から対象地物の形状を復元する方法である 計測距離を測る行為だけでなく カメラ等による計測のための撮影行為についても 計測 と記述する 図 1-2 3 次元点群データ 図 1-3 3 次元メッシュデータ 2

2. 3 次元地図の作成 3 次元地図を新規作成するための手順を記述する なお 設計図等の活用により作成する場合は 屋内空間の三次元 GIS データ作成マニュアル ( 案 )( 平成 27 年 3 月国土地理院地殻研究センター地理情報解析研究室 ) を参照のこと 2.1. 計測 地上型レーザスキャナ等の精密な計測が可能な機器で 対象地物を計測する ( 図 2-1) 位置標定のために画像も取得することが望ましい 図 2-1 地上型レーザスキャナ準備及び計測風景 計測成果は ソフトウェアにより 3 次元点群データ化する ( 図 2-2) 図 2-2 計測結果 (3 次元点群データ ) 例 3

2.2. 正規化計測した成果を 特定の座標系に合わせるために移動 回転により正規化する なお 地理座標系ではなく 相対的な空間座標系で良い場合は 正規化の必要はない 建物の向きに対して 長辺を数学座標の X 軸 短辺を Y 軸 高さを Z 軸とし 左下を (X,Y,Z)=(0,0,0) ( 主単位はメートル ) に移動 回転とすると その後の処理がしやすい 2.3. 3 次元モデル化 正規化後の 3 次元点群データを基に ソフトウェアを用いて 3 次元モデルを作成する 図 2-3 3 次元モデルの例 4

3. 3 次元地図の更新 3 次元地図の一部更新のための簡便な手法について記述する 3.1. 基準点の選定既存の 3 次元モデルに位置標定するための基準となる点を選定する 既存の 3 次元モデルと計測対象を見比べ 同一地点を取得できそうな特徴のある箇所を基準点とする ( 図 3-1) 計測対象にできるだけ近い点かつ 3 点でつくられる三角形が正三角形に近い形状となる点を選定することが重要である 位置標定は 3 点でできるが 計測対象や基準点を含む周辺の状況により 対象物の形状をうまくモデル化できない可能性があるため 3 点以上選定するのが望ましい 既存の 3 次元モデルに屋内の内装が表現されている場合は 壁の目地等も基準点に活用できる 計測対象 図 3-1 基準点の例 < 基準点の例 > 壁や床に設置されている小物体の中心や角 床 壁 柱等で構成される隅や角 ( 凸または凹 ) 床面や壁面に埋め込まれている物体との境界の角 5

3.2. 計測機器の選定屋内の 3 次元点群データや 3 次元モデルを作成可能な廉価な計測手法は複数ある 本マニュアルでは1 移動型レーザスキャナ 2 距離センサ 3デジタルカメラを取り上げ それぞれの特徴等について以下に説明する 3.2.1. 移動型レーザスキャナ計測機を手で持ち 歩きながら計測可能なレーザスキャナである 地上型レーザスキャナと比較すれば位置精度や計測範囲という点で劣るが 軽量 小型で移動や計測が手軽かつ地上型レーザスキャナに比べ低額であるという利点がある 計測後 SLAM を使った自動処理プログラムにより 3 次元モデルが数分で作成できるものもあり その場合は現場で計測結果が確認できる また タブレット上でリアルタイムに点群取得状況を確認できるものもあり 計測漏れをリアルタイムに確認できるメリットがある ただし SLAM 処理が精度良く行われるために 計測方法 ( 歩き方 ) には機種によりコツがあり 多少の熟練を要する 移動型レーザスキャナは機種によって異なるが レーザ到達距離は 30-100m 程度で 撮影範囲が比較的広い また SLAM を使用するため 計測範囲内に動く物 ( 人 ) が存在しないことが望ましい 3.2.2. 距離センサ廉価な距離センサとして例えば Microsoft 社 Kinect v2 がある Kinect v2 には 投光した赤外線が反射して戻ってくる時間をもとに距離情報が得られる ToF(Time of Flight) センサが搭載されている 3 次元モデルを作成する方法として 本センサで計測された距離情報を SLAM により自動処理し メッシュ形式の 3 次元モデルを作成する方法が考えられる 機器自体は安価で非常に軽量かつ小型であるが データを処理する PC や電源が必要なため 一人で持って移動しながら計測するのは難しく 計測時には台車等が必要となる また 一度に計測できる奥行きは最大 8m 程度である 3.2.3. スマートフォン搭載型距離センサ Google 社が開発した AR( 拡張現実 ) プラットフォームの Tango(2018 年 3 月 1 日にサポート終了 ) があげられる これはスマートフォンに搭載した赤外センサにより計測 3 次元モデルを作成するシステムで 距離センサ ( 深度センサ ) を使って計測した情報をリアルタイム SLAM 処理することによりモデルを作成するものである スマートフォン搭載型距離センサは比較的安価で軽量 小型であることや短時間でモデルが作成できる点において優れている ただし 深度センサの性能にもよるが 対象地物との距離はおよそ半径 4m 以内に収める必要がある 3.2.4. デジタルカメラ デジタルカメラで写真間をオーバラップさせながら撮影したものを SfM により 3 次元 6

点群データを作成する手法である 画像のみから点群データを作成するため 画像の解像度や色の解像度 オーバラップ状況 対象物の特徴点の有無等に 成果の精度は依存する デジタルカメラを用いて SfM 解析する場合 画像上特徴点が得にくいような屋内の壁等では 3 次元点群データは抜けてしまうので注意が必要である ( 図 3-2) 図 3-2 異なる機器で取得された 3 次元データの比較 7

( 参考 ) 計測精度図 3-3 に移動型レーザスキャナで取得された 3 次元点群データの例を示す 1cm 程度の隙間や数ミリの平らな盛り上がり等は 前述した廉価なセンサでは判別できない可能性がある 隙間無し 段差見えない 上図 : 計測箇所 ( 写真 ) 下図 : 計測結果 (3 次元点群データ ) 図 3-3 計測精度の例 ( 隙間 段差 ) 8

前述した 4 種類の計測機器の特徴を表 3-1 に示す 表 3-1 計測機器 ( システム ) の比較表 名称 移動型レーザスキャナ 距離センサ 距離センサ ( スマートフォン搭載型 ) SfM 計測 ( 手持ちテ シ タルカメラ ) 計測方法 一人で機器を持って ゆっくり歩いて計測 始終点は同一地点 歩き方にはコツがある 対象物の高さのほぼ中心位置で かなりゆっくり 慎重に水平移動しながら計測 台車等を使用するとよい 対象物の形状の特徴箇所 ( 凸凹 ) を意識しながら 計測範囲に複数の特徴箇所を入れていくように計測するとよい 対象物の形状の特徴箇所 ( 凸凹 ) を意識しながら 計測範囲に複数の特徴箇所を入れていくように計測するとよい 対象物をゆっくり撮影し 急な動きはしないこと 明るい場所で 高解像度のカメラで 撮影範囲を重複 (60% 以上ラップ ) させながら 撮影位置を変えて移動しながらで計測 カメラの焦点距離は固定し ボケ ブレ等の無い綺麗な写真を撮影すること 1 回の計測範囲 (m) ~30 0.5~8.1 ~4.0 - 長所 広い範囲を手軽に高精度で計測できる スマートフォン型の計測機より広範囲を計測できる 計測の開始地点と終了地点は一致しなくてよい 簡単に誰でも計測できる 計測の開始地点と終了地点は一致しなくてよい 撮影時間は間断してもよい 計測の開始地点と終了地点は一致しなくてよい 短所 周囲から動くものを排除する必要有り 計測の開始地点と終了地点は一致させる必要がある PC や電源を要する 計測にコツを要する 近距離の地物のみ ( ただし ソフトウェアに依存 ) カメラの性能に依存 明るい場所のみ 対象物に色の変化が無い場所は透けてしまう 環境制約 透過 反射する材質のものは計測できない 状況に応じてマスキング ( 紙 テープ スプレー等 ) を施す 適所適時 大規模改変 形状が複雑なもの ( または形状を正確にモデル化する必要がある場合 ) 台車を使用する場合は 台車が滑らかに動かせる路面である場所 電源が近くにあり 人の往来が無いことが望ましい 対象地物と基準点が数 m 以内に配置されている場所 画像に特徴があること 9

機器の特徴や計測環境などと併せて 下記ようなチェック事項を検討し 適した計測機器 を選択する チェック事項の例 1 回で計測したい奥行きは何 m あるか? 計測に十分な時間を確保できるか? 求めている計測精度はどれぐらいか? 計測範囲内に透過 反射する材質はないか?( 図 3-4) 計測範囲に黒い地物はないか?( 図 3-5) 計測時 人が行き交うことがあるか? 壁や廊下等に特徴的な地物はあるか? ( 参考 ) 計測時に注意が必要な対象物の例 図 3-4 計測できない素材例 ( 磨りガラス ) 図 3-5 計測しづらい素材例 ( 黒い地物 ) 10

3.3. 計測 最初に選定した基準点を含めて 更新対象を計測する 3.3.1. 移動型レーザスキャナを使った計測時の注意点計測にあたっては SLAM が成立しやすくなるように 以下の点に留意して計測作業を実施する 計測の始終点が同一の 3 次元空間のデータを取得できるように計測コースは一筆書きとなる様に選定する ( 図 3-6) なお 複数のフロアをまとめて計測する際 フロア毎の特徴的な形状を取得できないと似通った形状のフロア同士が誤って結合してしまう場合がある そのため なるべく丁寧に回りフロアの角や凹みなど細部の形状を取得するよう心がける 1 つのコースの計測時間は概ね 30 分を超えないように計測範囲を区切る また 複数のコースを後で統合する場合には 明確にわかる特徴点が計測の長腹部に 3 点以上必要となる なるべく建物内の壁の角など明確に判読できる特徴的な地物を含むよう計測を行う なお 明確な地物に乏しい場合には 地上型レーザスキャナ計測などで使用される球体標識などを重複部に 3 点以上設置することでより正確な接合が可能となる 計測の始終点は多くの特徴点や複数の向きの壁面がレーザ有効距離の範囲内に存在するような場所を選定する 1 秒毎に取得できる点群データ上にどれ程の特徴点を取得しているかで SLAM の結果に大きな影響が出るため 計測の歩行速度は速くなり過ぎないように注意する 廊下などの特に延長が長く狭い空間では他の歩行者等のノイズが SLAM の結果に大きな影響を与えるため計測者以外の不必要な人の追従は避けて作業を行う 曲がり角や階段の出入り口など空間に変化が有る箇所では曲がり角を大回りするなどセンサの視野に急激な変化が出ないように心掛けて作業を実施する 屋内の階段やエレベーターホールなど死角が出来やすい箇所については死角に対して一旦振り向くなどデータ取得漏れが無いように計測を実施する 図 3-6 計測時の歩行軌跡例 11

データ上似通った形状の上下のフロアの廊下同士がお互いに区別ができずに点群が途中から結合してしまう場合がある この場合には 一度に計測する階数を減らすことで計測が可能になる また データ上に通った形状の上下フロアの廊下等同士が互いに区別できずに点群が途中から結合してしまう場合がある ( 図 3-7) この場合には 一度に計測する階数を減らしたり 2 フロアのうち 1 フロアの廊下に看板等の特徴的な地物を設置してフロア同士の形状を区別できるよう工夫したりすることで改善できる ( 図 3-8) 図 3-7 建物の廊下が正しく再現されなかった事例 図 3-8 廊下の形状を区別するために設置した看板の設置例 3.3.2. 距離センサを使った計測時の注意点距離センサを使ってモデリング処理を行う場合 次の手法 1から手法 3の 3 つの計測手法があげられる 手法 1から順に実施し うまく計測できない場合 ( 図 3-10) は 手法 2 手法 3で実施するとよい 12

手法 1: 計測対象と周囲 ( 基準点を含む ) を 移動しながら一度に計測 (SLAM 使用 ) 手法 2: (a) 計測対象のみ移動しながら計測 (SLAM 使用 ) + (b) 周囲 ( 基準点を含む ) を複数地点から計測 上記 (a)(b) で計測したデータを後 処理で接合 手法 3: 計測対象と周囲 ( 基準点を含む ) を複数地点から計測 複数地点から計測したデータを後 処理で接合 本方法では SLAM は使用していない 図 3-9 距離センサを用いた計測手法例 手法 1は 計測対象と基準点を同時に 移動しながら計測する手法である 手法 2は 計測対象を移動しながら計測するのに加え 基準点と計測対象を同時に 移動を伴わずに計測する手法である 基準点が計測対象から離れている場合などに有効である 手法 3は 移動を伴う計測は行わず 計測対象と基準点の同時計測も含め複数回の計測をする手法である 13

ズレて繋がっている 図 3-10 うまく計測できなかった例 ( 同一地物が複数生成 ) 計測時には PC 及び電源が必要であり 緩やかな安定した移動が必要であるため 台 車等に計測機器一式を格納して計測するのがよい ( 図 3-11) 図 3-11 距離センサ (Microsoft Kinect v2) の台車使用例及び計測風景 また 計測高は 計測対象の高さのおよそ中心位置が望ましい ( 図 3-12) 図 3-12 距離センサの計測高 14

3.3.3. 実測による精度確認 SLAM や SfM は いずれも特徴点を基にソフトウェアで自動接続を行うため 特徴点が不足している場合 誤った処理結果となることがある 面的な歪みがあれば目視で誤りを検出しやすいが 廊下が数 10cm 短いだけ等 面的な歪みが無い場合は誤りを検出することは難しい そこで 巻き尺やレーザ距離計等で部分的に実測し ( 図 3-13) 3 次元計測結果を確認できるようにする 要求精度によっては 長さの基準となるもの ( 長さを測ったタイル等 ) を写真等で撮影することで代用してもよい ( 図 3-14) 現地で実測する箇所は 対象地物自体の大きさや基準点からの距離等である 図 3-13 巻き尺で計測する例 図 3-14 タイルで代用する例 15

3.3.4. 計測結果 (SLAM SfM 処理後の3 次元データ ) の検査計測データを使った SLAM や SfM が正常に処理されているか 作成された3 次元データを 3D CAD ソフトウェア等で読み込み 検査する 計測対象の形状が読み取れないような 明らかにゆがんでいる処理結果は不合格とする また 一見形状に誤りが無いと思われる場合も 実測により得られた距離と比較することにより検査する その結果 要求精度を満たしている成果のみを合格とする 不合格のイメージ例を図 3-15 に示す 計測対象 処 理 処理結果 1.7m 実測結果 2.0m 縦線一本分 短くなって いるので 処理失敗! 図 3-15 不合格の例 16

3.3.5. 合成処理及び検査計測対象地物を複数回に分けて計測し計測結果が複数ファイルに分かれている場合は 合成処理を行う ( 図 3-16) また 合成処理後は 前項と同様の検査を行い 処理結果が不良であれば再合成を行うか その成果は不合格とする 図 3-16 SLAM で計測したデータ同士の合成例 17

3.4. 位置標定最初に選定した基準点を使って 計測対象の 3 次元点群データを既存 3 次元モデルに対して位置を標定する ( 図 3-17) 位置標定は 移動 回転のみにより実施する 原則として 縮尺の変更や歪ませる手法は用いない 基準点を使用し位置標定した結果 接する壁や床等に 3 次元点群データがめり込んだり 離れてしまったりした場合や 明らかに傾きが誤っていると思われる場合は 微調整によりより正しいと思われる位置に動かすこととする ( 図 3-18 図 3-19) なお 前項の成果が 3 次元メッシュデータのような 3 次元点群データ以外の場合も 点群データに変換した上で位置標定を実施することを基本とする 図 3-17 位置標定結果 調整前 ( 床に埋まっている ) 調整後 ( 床に接している ) 図 3-18 微調整 ( 高さ ) の例 調整前 ( 傾いている ) 調整後 ( ほぼ垂直になっている ) 図 3-19 微調整 ( 傾き ) の例 18

3.5. 既存 3 次元モデルの編集既存の 3 次元モデルに 更新対象に関係する変化等があれば編集する 例えば 更新対象物が既存の地物と置き換わった場合は 古い地物は削除する ( 図 3-20) 更新対象物が新たに設置されたのみの場合は 本工程は不要である ( 編集前 ) ( 編集後 ) 図 3-20 不要地物の削除例 3.6. 3 次元モデル化位置標定した 3 次元点群データを基に 3 次元 CAD ソフトウェアを使用して更新対象物の 3 次元モデルを作成する 簡易に計測した 3 次元点群データは ノイズを多く含んでいるため 形状の基本的な位置を取得し CAD ソフトウェアの機能によりモデルを作成する ( 図 3-21) なお 既存の 3 次元モデルと接している面については 一致させるよう注意すること 図 3-21 更新地物の 3 次元モデル例 19

3.7. 統合既存の 3 次元モデルと更新対象の 3 次元モデルを同一ファイルに出力することにより統合し 一つのモデルとする ( 図 3-22) 既存モデルの面と更新対象の面とを統合して一つの面とする等の処理は 行わないことを基本とする 統合 図 3-22 統合 ( 更新 ) 後の 3 次元モデル例 20

4. 3 次元屋内地理空間情報データ仕様への変換 本マニュアルは 3 次元モデルの計測と位置を主体とした 3 次元地図の作成 更新マニュアルである 3 次元モデルの構造については IFC2x Edition 3 に準拠した 3 次元屋内地理空間情報データ仕様書 ( 案 ) ( 国土地理院 ) に従うものとし 3 次元地図を更新する際は 3 次元屋内地理空間情報データ仕様に従った構造に基づいて位置標定を行った 3 次元モデルの位置を利用するものとする 21