個人版事業承継税制の創設について 現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討

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(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

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平成19年12月○日

102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

第 5 章 N

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

平成16年版 真島のわかる社労士

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

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事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

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平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

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相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

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贈与税の納税猶予に関する適格者証明書

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個人事業者向けの事業承継税制が創設

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(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

⑷ 納税猶予の打ち切り P. 49 Q. 納税猶予の対象の農地を売却する場合 納税猶予が打ち切られてしまうのですか ⑸ 市町村合併と納税猶予 P. 54 Q.B 町が平成 3 年 1 月 1 日現在特定市であるA 市に合併される場合 旧 B 町の農地等は生産緑地の指定を受けていないと納税猶予の特例は

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

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目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

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12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年

ラリーマン 相続税の申告は? 45 相続税の申告はどのようにすればよいのでしょうか 相続が開始したことを知った日 ( 通常は被相続人が死亡した日 ) の翌日から 10 か月以内に 被相続人の住所 地の所轄税務署に申告し 相続税を納付する必要があります 申告書を提出する人が 2 名以上いる場合は 共同

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( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

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税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

平成 31 年度 税制改正の概要 平成 30 年 12 月 復興庁

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相続税に関するチェックリスト

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

小規模宅地等の評価減の特例 1. 概要 居住用や事業用宅地を相続した場合 小規模とされる一定面積までを 50%~80% 評価減できる特例があります ( 措置法 69 条の 4) 区分宅地の区分事業や居住の見込減額割合対象面積 1 号特例特定事業用等宅地等 1 親族が相続して事業を継続 80% 400

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注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

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N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

配偶者がいる人の一次相続と二次相続のデータ 被相続人に配偶者がいる一次相続と 配偶者がいない二次相続の相続税シミュレーションを行います 配偶者の税額軽減は その節税効果が大きいために一次相続で相続税を大幅に減額することができますが 次の二次相続では想定外の相続税が発生することがあります 配偶者がいる

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

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15 相続税納税マニュアル

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2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

(2) 青色申告書を提出する中小企業者等 ( 平成 3 年 4 月 日以後開始する事業年度については 適用除外事業者 ( 注 4) を除く ) が 平成 30 年 4 月 日から平成 33 年 3 月 3 日までの間に開始する各事業年度において 国内雇用者に対して給与等を支給する場合に継続雇用者給与

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自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人のデータ 自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人の 法定相続人の数と相続財産および債務のデータから相続税を試算します 賃貸マンションについては全室が賃貸用かどうか 駐車場については舗装がしてあるかどうかで評価額が違ってくることがあります また

日税研メールマガジン vol.143 ( 平成 31 年 2 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 平成 31 年度税制改正大綱の解説 ( 2) 税理士金井恵美子 * 本稿では 前号 ( vol.142) に引き続き 平成 31 年度税制改正の大綱 に示された改正事

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問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

改 正 後 改 正 前 課税の特例 )) 関係 70の6の5 1 認定都市農地貸付け又は農園用地貸付けを行っている者の範囲 70の6の5 2 措置法第 70 条の6の5 第 1 項に規定する認定都市農地貸付け又は農園用地貸付けを 行っていた農地 70の6の5 3 相続又は遺贈により取得 の意義 70

一戸建ての自宅を所有している人のデータ 東京都内やその近郊など路線価の高い宅地に一戸建ての自宅を所有し その他に預貯金や有価証券を保有している人の相続税シミュレーションになります 路線価が高いと自宅の敷地の面積が広くなくても その宅地の評価額は高額になりますので この宅地に対して小規模宅地等の特例が

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

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き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

Q&A 〇税制度 Q1 生産緑地地区の指定を受けると 固定資産税は農地評価と聞いていますが 都市計画税はどうでしょうか A1 固定資産税 都市計画税が農地評価 農地課税となります Q2 主たる従事者の死亡や故障等により 生産緑地地区の指定から 30 年経過せずに指定が解除された場合 固定資産税を遡っ

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相続税 贈与税の基本がよくわかる! 誰が相続人になるの? 税額はどのようにして求めるの? 土地 建物の評価はどうするの? 住宅取得資金の贈与は最大 3,000 万円が非課税に? 教育資金や結婚 子育て資金の贈与は非課税に? 新しくできる配偶者居住権ってどんなもの? etc.

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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の範囲は 築 20 年以内の非耐火建築物及び築 25 年以内の耐火建築物 ((2) については築 25 年以内の既存住宅 ) のほか 建築基準法施行令 ( 昭和二十五年政令第三百三十八号 ) 第三章及び第五章の四の規定又は地震に対する安全上耐震関係規定に準ずるものとして定める基準に適合する一定の既存

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

スライド 1

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3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

国外転出時課税制度(出国税)の導入

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3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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税務 財務 会計相談 Q&A 個人版事業承継税制の創設について現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討 高橋宏和 ( たかはしひろかず ) 高橋宏和会計事務所公認会計士 税理士 4 月号 : 大事業承継時代到来における資産 事業承継に向けた準備の必要性 6 月号 : 次世代経営者への承継を支援する税制措置の創設 拡充の概要について 8 月号 : 事業承継計画の必要性と親族内承継における課題の検討 10 月号 : 所有と経営の一致と親族外事業承継における課題の検討 12 月号 : 事業承継税制を適材適所で活用する方策と課題の検討 これまで主に法人経営における事業承継の課題と事業承継税制の活用にあたっての留意点に ついて理解を深めてきました 今回は 平成 30 年 12 月 14 日に公表された平成 31 年度税制改正大綱 の中で 個人事業における事業承継税制創設の概要が示されたことに伴い 個人事業における事 業承継の内容と現行税制における事業承継を支援する特例措置について 農地に係る納税猶予特 例や医業 商工業にも活用可能な特例制度について理解を深めたいと思います 質問 1 個人事業を次世代に承継しようとする場合にどのような手続きが必要となり 税務上どのような取扱いがなされるものなのか教えて下さい 回答 個人事業主とは 法人としてではなく事業を営 んでいる者の総称です 税務署長に開業届を提出し 毎年の事業に関する所得を確定申告している人は全て個人事業主であると言うことができます 銀行業等のように法人でなければ開業できないことが法律により定められていない限りは誰でも個人事業を始めることができます このため伝統的な産業で言えば農業や町工場 町内の商店 飲食 福島の進路 2019.2 47

続きした届出書 ( 継続届出書 ) の提出担保提供税務 財務 会計相談 Q&A 店等様々な事業が個人事業主によって経営されています また 昨今では働き方改革の一環としてサラリーマンの副業が推奨されており IT 技術の発展もあって プログラマーやデザイナーやユーチューバー等といったソフト産業でも個人事業主が増えており 総務省の統計によれば200 万人以上の個人事業主が存在していると言われています 個人事業を次世代に引き継ぐ場合 一般的には子が親と同種の事業の開業届を税務署に提出し 親が廃業届を提出することで完了します この場合 親と子は別々に開業するわけですから 事業の遂行に必要な行政関連の許可等については子において新たに行う必要があり 事業に必要な資産及び負債は 親から子へ売買や贈与若しくは相続により移転します 資産の移転については 売買の場合には所得税の申告納税により 贈与の場合には贈与税の申告納税により 相続に伴う資産の移転の場合には相続税の申告納税手続きを経て事業承継されることになります このため 事業遂 を目的として 贈与税の納税猶予制度が設けられ ています これにより 一定の要件を満たす農 地 採草放牧地及び準農地 ( 以下農地等という ) の贈与について 贈与を受ける者 ( 受贈者 ) が納 めるべき贈与税額の納税が 贈与する者 ( 贈与 者 ) の死亡の日まで猶予されることとなります この納税猶予制度の要件を要約すると表 1 の通り です 表 1 農地等に対する贈与税の納税猶予制度の適用要件 項目要件贈与者贈者こと贈与対象農地等 贈与の日まで引き続き3 年以上農業を営んでいた者であること 過去に推定相続人に対して相続時精算課税の適用を受けた農地の贈与を行っていない 贈与者の推定相続人の一人であること 年齢が18 歳以上であること こと受贈与を受けた日まで引き続き3 年以上農業に従事していた者であること 贈与により農地等を取得した日後速やかに農業経営を行うと認められること 以上の点を農業委員会が証明した者である 行上必要な資産として土地や建物等の不動産がある場合や 医療機器や機械装置等の高価な動産がある場合には いかに適正な税負担で事業用資産を承継するかが重要な課題となります 農業の用に供している農地 ( 一定の市街化区域内の農地等を除く ) の全部 採草放牧地 ( 一定の市街化区域内の農地等を除く ) の面積の3 分の2 以上及び準農地の面積の 質問 2 個人事業が農業であった場合の事業承継において活用できる現行税制上の贈与税の特例措置について教えて下さい 3 分の2 贈与税の申告期限内に納税猶予の特例を受ける旨記載した申告書の提出 申告書に農業を継続している旨の農業委員以上を一括して贈与すること手会の証明書の添付 贈与税の申告期限から3 年目ごとに 引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する事項を記載 回答 農業の事業承継を支援する税制としては 昭和 39 年に 農業基本法の趣旨である農業経営の近代 納税猶予額に見合う担保を提供すること 化に資するため 均分相続による農地の細分化防 止と農業後継者の育成を税制面から助成すること 以上の要件を満たした農地の贈与について納税 猶予の特例を受けている場合 贈与者又は受贈者 48 福島の進路 2019. 2

項目要件被税務 財務 会計相談 Q&A の死亡の日前に受贈者が贈与を受けた農地等の譲渡や転用を行った場合や 農業経営を廃止した場合等の様に一定の事由に該当することとなった場合は 猶予を受けていた贈与税額について利子税とともに納付が必要となるので注意が必要です また 農地等の贈与者が死亡した場合には 納税猶予を受けていた税額は全額免除されますが 当該農地等については贈与者の死亡の日時点での評価額によって贈与者の相続財産の価額に算入され 相続税の課税対象となります ただし この場合の相続税の課税についても現行税制上納税猶予の特例措置が設けられています 価 ( 宅地化期待益 ) されるようになり 多額の相続税が課税されることにより 農地を処分して納税せざるを得ない状況も考えられることから 農地を相続し農業経営を継続する相続人については 農地の価額のうち宅地化期待益部分に対応する納税を猶予する制度として創設されました この特例により 農業を営んでいた被相続人から相続又は遺贈によって一定の農地等を取得した相続人が 農地等を引き続き農業の用に供していく場合には 農地等の価額のうち 農業投資価額を超える部分に対応する相続税について一定の要件の下 納税が猶予されます この納税猶予制度 の要件を要約すると表 2 の通りです 質問 3 個人事業主が農業者であった場合の事業承継において活用できる現行税制上の相続税の特例措置について教えて下さい 回答 表 2 農地等に対する相続税の納税猶予制度の適用要件 相続人贈与をした者農業相続人 死亡の日まで特例の適用を受けようとする 農地で農業を営んでいた者若しくは農地等に対する贈与税の納税猶予の特例を受ける 農業の事業承継を支援する税制特例として 昭和 50 年に相続税の納税猶予制度が設けられています この特例は 市街地周辺の農地について 宅地化の進展により将来宅地として売却すれば高く売れるとの潜在的期待益部分が含まれた価額で評 相続又は遺贈により取得した農地等で相続税の申告期限までに農業経営を開始し その後も引き続き農業経営を行うと認められる者又は農地等の生前一括贈与を受けた者で一定の要件を満たす者でありこれらを農業委員会が証明した者 福島の進路 2019.2 49

続対象続きした届出書 ( 継続届出書 ) の提出担保提供税務 財務 会計相談 Q&A 項目要件相農地等 被相続人から相続又は遺贈により取得した農地等又は贈与税の納税猶予の特例に係る農地等で相続又は遺贈により取得したとみ 経過 (20 年間農業経営を継続する ) 3 特例農地等を農業後継者に生前一括贈与 ( 農地等に対する贈与税の納税猶予制度の適用 ) する場合 その贈与の日 相続税の申告期限内に納税猶予の特例を受ける旨記載した申告書の提出 なされたもの手申告書に納税猶予の適格者である旨の農業委員会の証明書の添付 相続税の申告期限から3 年目ごとに 引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する事項を記載 納税猶予額に見合う担保を提供すること 以上のように結果的には 贈与税の納税猶予と相続税の納税猶予制度を連続して適用することで 農業経営を継続する限り贈与税と相続税がいずれも免除されることになります 質問 4 個人事業が農業以外の商工業等である場合の事業承継において活用できる相続税における現行税制上の特例措置について教えて下さい 以上の要件を満たした農地の相続について納税 猶予の特例を受けている場合 相続人が特例の対象農地等の譲渡や転用を行った場合 農業経営を廃止した場合等の様に 一定の事由に該当することとなった場合は猶予を受けていた相続税額について利子税とともに納付が必要となるので注意が必要です ただし 以下 1~3のいずれか早い日まで納税が猶予された相続税は原則として免除されます 回答 農業及び林業並びに医業を除く一般の商工業等においては 贈与税や相続税に係る納税猶予の特例は現行税制の下では存在しません この 個人事業主が死亡した場合の相続税の申告納税においては 特定の要件を満たす事業用の土地 ( 宅地 ) が相続財産となる場合において 課税価額を軽減する特例 ( 小規模宅地の特例という ) が活用でき 1 農業相続人の死亡 ます この特例について概要を要約すると表 3 の 2 相続税の申告書の提出期限の翌日から 20 年を 通りです 50 福島の進路 2019. 2

税務 財務 会計相談 Q&A 表 3 小規模宅地の特例 ( 被相続人の事業の用に供されていた宅地等 ) の概要及び要件 項目特例の概要及び要件限度面積減課税価額の 額効果 400m2まで ( 他の小規模宅地の特例と併用する場合には別途計算による ) 対象宅地の評価において相続税評価額の ては 農業を中心とした支援のための税制上の特例措置として運用されてきました しかし その支援制度の内容は農地や事業用の宅地といった 主に土地の承継に限定されたものとなっており 個人事業の継続には建物 機械装置等の償却資産や運転資金としての金融資産も不可欠であること 80% 等を減額する事業の種類 貸付事業 ( 不動産貸付業 駐車場業 自転車駐車場業 及び事業と称するに至らない不動産の貸付等 ) 要以外の事業であること宅地 相続開始の直前において被相続人の事業の件の の要件用に供されていた宅地であること相続人の要件を考えたとき 現行税制上十分な事業承継支援がなされているとは必ずしも言えない現状にあります そこで今般 平成 31 年度税制改正大綱で示され その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ かつ その申告期限までその事業を営んでいること その宅地等を相続税の申告期限まで継続し た 個人版事業承継税制の概要 によれば 10 年間の限定措置として 事業用の土地建物及び減価償却資産について 一定の要件を満たし計画的に手続きを進めることで100% 納税猶予の対象となる可能性がでてきました さらに 個人事業者の て保有していること手続き 小規模宅地の特例を受ける旨記載し 計算の明細書を添付した相続税の申告書を期限内に申告 相続税の申告書に遺産分割協議書の写し等を添付 業種については 青色申告の承認を受けている者であれば医業や農業など 幅広い業種で適用が受けられるようです ( ただし 不動産貸付業等は除かれます ) 今後は個人事業における事業遂行に必要な資産 これは 貸付事業以外の幅広い業種の個人事業 を明らかにすることにより 事業承継に伴って生 に適用可能であり 宅地の評価額が 80% 減額でき じる贈与税や相続税のシミュレーションを交えて ることは相続税の軽減効果も大きいので 相続税 事業の承継計画を立案検討するうえで 個人版事 の申告納税には積極的に活用されている現行の事 業承継税制の適用も検討していくことが重要とな 業承継制度と言えるでしょう るでしょう 以上 我が国の個人事業に係る事業承継につい 福島の進路 2019.2 51