農用地面積は国土の 6.7% ながら 227 万 ha を有し 一経営体当りの平均経営面積は 41.5ha(2013 ) と EU28 か国平均 (16.1ha) を上回る 農地は気象条件等から主として南部地域に限定されている 106 さらに フィンランド農家の多くは農地の他に森林を所有しており 2

Similar documents
フィンランドの農業戦略と今次CAP( )の実施状況

2. 食料自給率の推移 食料自給率の推移 我が国の食料自給率 ( 総合食料自給率 ) は 長期的に低下傾向で推移してきましたが 近年は横ばい傾向で推移しています (%) (H5 ) 43 7

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

農林水産省より 2015 年農林業センサス結果の概要 ( 確定値 ) が公表されましたので 富山県の概要について 次のとおりお知らせいたします 2015 年農林業センサス結果の概要 ( 確定値 ) について ( 農林業経営体調査 富山県分 ) - 農業経営体数が減少する一方 法人化や経営規模の拡大が

ドイツにおける条件不利地域政策 ドイツの資金供給制度

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

Microsoft PowerPoint EU経済格差

< F835A83938A6D95F12E786C73>

Microsoft Word - fcgw03wd.DOC

特集 ロシア NIS 圏で存在感を増す中国特集 ロシアの消費市場を解剖する Data Bank 中国の対ロシア NIS 貿易 投資統計 はじめに今号では ロシア NIS 諸国と中国との経済関係を特集しているが その際にやはり貿易および投資の統計は避けて通れないであろう ただ ロシア NIS 諸国の側


<4D F736F F D B4B92F6976C8EAE A6D92E894C5816A2E646F63>

H28秋_24地方税財源

平成 28 年 3 月 25 日公表平成 25 年度 農業 食料関連産業の経済計算 - 農業 食料関連産業の国内生産額は 97.6 兆円で全経済活動の約 1 割 - 統計結果の概要 1 農業 食料関連産業の国内生産額平成 25 年度における農業 食料関連産業の国内生産額は 97 兆 5,777 億円

免責条項 本報告書で提供している情報は ご利用される方のご判断 責任においてご使用下さい ジェトロでは できるだけ正確な情報の提供を心掛けておりますが 本報告書で提供した内容に関連して ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても ジェトロは一切の責任を負いかねますので ご了承下さい 2

冬季 A 期補習講座 2 ~ 比較地誌を極めよう ~ 第 1 問ニュージーランドとフィリピンに関する次の文章を読み, 下の問い ( 問 1~ 問 5) に答えよ ニュージーランドとフィリピンは, 環太平洋に位置する島嶼国という共通点をもつが, a 気 候には違いがある 国土面積もほぼ同じであるが,

EPA に関する各種試算 試算 1 EPA のマクロ経済効果分析 (3 ページ ) 内閣官房を中心に関係省庁と調整したシナリオに基づき 川崎研一氏 ( 内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官 ) が分析 WTO はじめ広く関係機関が活用している一般均衡モデル (GTAP モデル ) を使用 EPA

Slide 1

4 農林業 経営耕地面積割合 ( 農家数 ) ( 平成 27 年 ) 畑 63.4% (171 戸 ) 田 11.3% (53 戸 ) 樹園地 25.3% (102 戸 )

平成 30 年 4 月 10 日公表平成 28 年 農業 食料関連産業の経済計算 ( 概算 ) - 農業 食料関連産業の国内生産額は 兆円で全経済活動の約 1 割 - 統計結果 1 農業 食料関連産業の国内生産額平成 28 年における農業 食料関連産業の国内生産額は 115 兆 9,63

目次 1. 奈良市域の温室効果ガス排出量 温室効果ガス排出量の推移 年度 2010 年度の温室効果ガス排出状況 部門別温室効果ガス排出状況 温室効果ガス排出量の増減要因 産業部門 民生家庭部門

SGEC 附属文書 理事会 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文

日本基準基礎講座 有形固定資産

<4D F736F F D D9182CC8EB88BC695DB8CAF90A793782E646F63>

Microsoft Word - 栃木県土地改良区運営強化推進計画(最終版)

表紙(確).xlsx

Microsoft PowerPoint - ☆PTポイント・概要(セット)

1 食に関する志向 健康志向が調査開始以来最高 特に7 歳代の上昇顕著 消費者の健康志向は46.3% で 食に対する健康意識の高まりを示す結果となった 前回調査で反転上昇した食費を節約する経済性志向は 依然厳しい雇用環境等を背景に 今回調査でも39.3% と前回調査並みの高い水準となった 年代別にみ

本検討会で扱う「所有者の所在の把握が難しい土地」とは

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

農山性化1 農山漁村の 6 次産業化の考え方 雇用と所得を確保し 若者や子供も集落に定住できる社会を構築するため 農林漁業生産と加工 販売の一体化や 地域資源を活用した新たな産業の創出を促進するなど 農山漁村の 6 次産業化を推進 現 状 農山漁村に由来する様々な地域資源 マーケットの拡大を図りつつ

DOCSIS 3.0( 単独 ) LTE WiMAX 衛星ブロードバンド 各技術を統合した算出基準 : ブロードバンド総合カバレッジ - 衛星ブロードバンドを除いた上記の接続技術を対象 固定ブロードバンド総合カバレッジ - 衛星 HSPA LTE を除いた上記の接続技術を対象 NGA カバレッジ -

Vol

国産粗飼料増産対策事業実施要綱 16 生畜第 4388 号平成 17 年 4 月 1 日農林水産事務次官依命通知 改正 平成 18 年 4 月 5 日 17 生畜第 3156 号 改正 平成 20 年 4 月 1 日 19 生畜第 2447 号 改正 平成 21 年 4 月 1 日 20 生畜第 1

1 概 況

目 次 Ⅰ 集落営農数 Ⅱ 集落営農数 ( 詳細 ) 1 組織形態別集落営農数 2 農業経営を営む法人となる画の策定状況別集落営農数 3 設立年次別集落営農数 4 経営所得安定対策への加入状況別集落営農数 5 人 農地プランにおける位置づけ状況別集落営農数 (1) 中心経営体として位置づけの有無別

3. 市街化調整区域における土地利用の調整に関し必要な事項 区域毎の面積 ( 単位 : m2 ) 区域名 市街化区域 市街化調整区域 合計 ( 別紙 ) 用途区分別面積は 市町村の農業振興地域整備計画で定められている用途区分別の面積を記入すること 土地利用調整区域毎に市街化区域と市街化調整区域それぞ

三ケ島工業団地周辺地区 第一回勉強会

1 我が国の農産物輸入等の動向 (1) 概観 ( 海外依存を高めた我が国の食料供給 ) 我が国の農産物輸入は 2000 年を100として 1960 年の15.7から2015 年には165.3まで 金額ベースで10.5 倍と大幅に増加している 多様な食生活が実現される中 需要が拡大した畜産物や油脂類の

資料 5 総務省提出資料 平成 30 年 12 月 21 日 総務省情報流通行政局

我が国中小企業の課題と対応策

幸福度指標の持続可能性面での指標の在り方に関する調査研究報告書

ITI-stat91

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

加賀市農業委員会農地等の利用の最適化の推進に関する指針 平成 30 年 1 月 26 日制定 加賀市農業委員会 第 1 指針の目的 農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 という ) の一部改正法が平成 28 年 4 月 1 日に施行され 農業委員会においては 農地等

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

インド 12 3 エビ イカ オーストラリア 13 3 マグロ エビ フィリピン 14 1 マグロ カツオ エビ アイスランド 15 1 その他の魚 ハリバット 魚卵 スペイン 16 1 マグロ タコ マルタ 17 1 モロッコ 18 1 タコ イカ モーリタニア 19 1 タコ ニュージーランド

5 この施策に係る事務事業 ( 重要度 貢献度順 ) 番号 事務事業名 魅力個店づくり整備促進事業 歳出決算額 ( 千円 ) 施策への関連性 目的に対する指標 年度目標値 年度実績値 推移 区内の既存個店や出店希望 22 者が行う 魅力的な店舗づ 809 くりを支援することで 魅 力個店の集積を図る

2 農業委員会の運営 2 農業委員会は 市町村長が議会の同意を得て任命した 農業委員 で組織され 農業委員は 合議体としての意思決定 ( 農地の権利移動の許可 不許可の決定など ) を担当 農業委員会は 農地利用最適化推進委員 ( 以下 推進委員 という ) を委嘱し 推進委員は 担当区域における農

( 問 3) 売却証明書を発行することができるのは どのような市場ですか 売却証明書を発行できるのは 以下の市場において売却した場合です 1 家畜市場家畜取引法 ( 昭和 31 年法律第 123 号 ) 第 2 条第 3 項に規定する家畜市場及び同法第 27 条に規定する臨時市場 2 中央卸売市場

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

唐津市農業委員会 農地等の利用の最適化の推進に関する指針 平成 2 9 年 11 月 8 日 唐津市農業委員会 第 1 基本的な考え方農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 といいます ) の改正法が平成 28 年 4 月 1 日に施行され 農業委員会においては 農地

平成14年度社会保障給付費(概要)

PowerPoint プレゼンテーション

検査の背景 (1) 事業者免税点制度消費一般に幅広く負担を求めるという消費税の課税の趣旨等の観点からは 消費税の納税義務を免除される事業者 ( 以下 免税事業者 という ) は極力設けないことが望ましいとされている 一方 小規模事業者の事務処理能力等を勘案し 課税期間に係る基準期間 ( 個人事業者で

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

国営農地再編整備事業 ニセコ地区 事業の概要あぶたぐん本事業は 北海道南西部に位置する虻田郡ニセコ町の畑地帯において 区画整理を行い 生産性の高い基盤の形成を通じて農業の振興と耕作放棄地の解消 発生防止を図るものである 事業の目的 必要性本地区の農地は 基盤整備が遅れているため 小区画や急傾斜であり

ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)

(Microsoft Word \224N\203\215\203V\203A\213\311\223\214\223\212\216\221.doc)

ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

資料2  SJAC提出資料

Microsoft Word - (HP用)H31年度企画書記載例doc

長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) 骨子 ( 案 ) に関する参考資料 1 骨子 ( 案 ) の項目と種子の生産供給の仕組み 主要農作物種子法 ( 以下 種子法 という ) で規定されていた項目については 長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) の骨子 ( 案 ) において すべて盛り込むこ

ロシアの農業経営について 目次 1, はじめに 2, ロシア農業の歴史 3, ロシア農業の現状 4, まとめ 2 年 15 組長谷川

2

概算要求基準等の推移

国民 1 人当たり GDP (OECD 加盟国 ) ( 付表 2)OECD 加盟国の国民 1 人当たりGDP(2002~2009 年 ) 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 1 ルクセンブルク 58,709 ルクセンブルク 59,951 ルクセンブルク 64,016 ルクセンブル

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

ニュースリリース 農業景況調査 : 設備投資 平成 2 9 年 3 月 24 日 株式会社日本政策金融公庫 農業者の設備投資意欲が過去最高 ~ 生産効率関連の農業機械投資が最多 後継者確保に課題も ~ < 平成 28 年下半期農業景況調査関連 > ( 注 1) 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公

Microsoft PowerPoint - 参考資料2

【千葉県事業計画】別記様式第3号別添

Microsoft PowerPoint - 08economics4_2.ppt

資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

農業指導情報 第 1 号能代市農業総合指導センター環境産業部農業振興課 発行平成 26 年 4 月 25 日二ツ井地域局環境産業課 確かな農産物で もうかる 農業!! 農家の皆さんを支援します!! 農家支援チームにご相談ください! 今年度 農業技術センター内に農家支援

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

5 仙台市債権管理条例 ( 中間案 ) の内容 (1) 目的 市の債権管理に関する事務処理について必要な事項を定めることにより その管理の適正化を図ることを目的とします 債権が発生してから消滅するまでの一連の事務処理について整理し 債権管理に必要 な事項を定めることにより その適正化を図ることを目的

報告事項     平成14年度市町村の決算概要について

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

ワクチンの研究開発促進と生産基盤確保

< F2D E738BC794B A C8892E >

資料5 汚濁負荷量の状況

企業中小企(2) 所得拡大促進税制の見直し ( 案 ) 大大企業については 前年度比 以上の賃上げを行う企業に支援を重点化した上で 給与支給総額の前年度からの増加額への支援を拡充します ( 現行制度とあわせて 1) 中小企業については 現行制度を維持しつつ 前年度比 以上の賃上げを行う企業について

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

審議事項 (2) 年 7 月 ASBJ/EFRAG のスタッフがのれんと減損に関する定量的調査の付属資料として作成した付録付録 1: 定量的調査の概要付録 2: 主要なデータ セット 参考訳 財務会計基準機構の Web サイトに掲載した情報は 著作権法及び国際著作権条約をはじめ

Taro-中期計画(別紙)

柔軟で弾力的な給付設計について

書き方 ( 例 ) 別記第 17 号様式 農業生産法人報告書 自 至 平成 年 月 日平成 年 月 日 伊達市農業委員会会長様 平成年月日 主たる事務所の所在地伊達市 町 番地 法人の名称株式会社 代表者氏名 印電話番号 次のとおり農地法第 6 条第 1

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

図 12 HACCP の導入状況 ( 販売金額規模別 ) < 食品販売金額規模別 > 5,000 万円未満 ,000 万円 ~1 億円未満 億円 ~3 億円未満

調査の仕様

IFRS基礎講座 IAS第37号 引当金、偶発負債及び偶発資産

平成16年版 真島のわかる社労士

Microsoft Word - 介護保険最新情報vol.556表紙

税制について

めに必要な情報を提供するとともに 2 関係者一体となった契約栽培等の需要と直結した生産を推進していく また 生産者の収益性向上につながる地域の気候風土を活かした特色ある野菜等園芸作物への作付を促進し 産地づくりを進めていくため 生産者への作付誘導のインセンティブとなる産地交付金を戦略的に活用していく

1.% で ともに 年連続の上昇となった 農業所得の増加や農業利益率の上昇に至った背景には 多くの農産物において価格が上昇したことがある ( 頁の参考図表 1 参照 ) 高齢農業者のリタイア増加を背景とする国産農産物の需給引き締まりや 新興国の経済発展を受けた輸入農産物の価格上昇といった近年の傾向は

年金・社会保険セミナー

3. 行政分野への女性の参画 (1) 行政分野への女性の参画の実態 1 国 オランダには 13 の省があり それらの関係政府機関に現在約 20 万 7 千人の国家公務員が勤務している オランダの国家公務員全体における女性比率は約 3 割 (2005 年 ) で 約 6 万 5 千人の女性公務員が勤務

Transcription:

(7) フィンランド 1 基礎データ フィンランドは豊富な森林資源を活かした製紙 パルプ 木材を伝統的な基幹産業とするが 金属 機械産業がこれに加わり 近は情報通信産業が主要産業の一角をなしている 101 フィンランドは また EU でも最北の農業を営む地域であり 寒冷な気候のために生産性は中央ヨーロッパの半分ほどしかなく, かつ生産コストが高い その反面, 歴史的背景により農村部における人口の維持や食料自給の重要性が国民共通の課題として認識され 手厚い農業保護が行われてきた 具体的には, ソビエト連邦と隣接する地理的要因によって 防衛政策の一環としてフィンランド全土に小農家族経営が広範に形成されたこと 冷戦直下における食料安全保障の観点から食料自給政策が重視されてきたこと等が挙げられる 102 1995 の EU 加盟によって安価な国外農産物の流入が増加し 20 間で EU 加盟以前の農家数の 40% に相当する 4 万戸以上の農家が離農したが 共通農業政策 (CAP) 下に組み込まれた現在でも EU 予算の直接支払や自国予算を組み合わせた条件不利地域支払等によって手厚い農業保護を実施し その結果, 主要農産物の自給率は総じて高い値を達成している 103 2015 の農業 園芸部門の生産額は 44 億ユーロ 付加価値額は 11 億ユーロであり 総付加価値額の 0.6% を占めている また 食品加工産業の付加価値額は 26 億ユーロで 製造部門付加価値額の 8.4% を占めている さらに食品 飲料サービス産業は総付加価値額の 1.3% にあたる 24 億ユーロの付加価値額を有しており これらを含めると 農業 食品部門はフィンランド経済全体に大きな影響を与える存在であると考えられている 104 1) 農地の状況 ( 国土面積 農用地面積 平均経営面積 等 ) 図表 89 フィンランド地図 出所 : 外務省 国 地域フィンランド共和国 フィンランドは緯度 60 度 ~70 度の間に位置する欧州最北端の国で 国土面積は日本よりやや狭い 33.8 万平方キロメートルである 面積の 1/4 は北極圏に属し およそ 2/3 は森林で覆われている 地形は北部ラップランドを除けばほぼ平坦である 約 18 万もの小島が散在し 沿岸地方には推定 95,000 もの島々が世界で最も入り組んだ群島を形成している 105 101 102 外務省 国 地域フィンランド共和国基礎データ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/finland/data.html#section4 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 農林水産政策研究所 プロジェクト研究 主要国農業戦略 研究資料第 10 号 平成 27 度カントリーレポート :EU(CAP 改革 フランス スコットランド デンマーク フィンランド 酪農 ) 115-154 頁 3 月 103 浅井真康 フィンランドの普及システム 農林水産政策研究所 農林水産政策研究レビュー No. 72 7 月 104 Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. 105 駐日フィンランド大使館ウェブサイト フィンランドについて- 環境 107

農用地面積は国土の 6.7% ながら 227 万 ha を有し 一経営体当りの平均経営面積は 41.5ha(2013 ) と EU28 か国平均 (16.1ha) を上回る 農地は気象条件等から主として南部地域に限定されている 106 さらに フィンランド農家の多くは農地の他に森林を所有しており 2014 における農家の平均所有森林面積は 52ha である 農家の林業 製材業に関係する収入は 全収入の 10~15% に相当する 107 図表 90 フィンランドと日本の農地の状況 (2014 ) 108 出所 : 農林水産省 フィンランドの農林水産業概況 2) 農家等の状況 ( 総人口 農家数 青農業者数 等 ) フィンランドの総人口は 549 万人 農家数はおよそ 5 万世帯である 農業従業者数は 65,000 人で 全従業者数の 2.7% である 109 農家数 農業従業者数とも減少を続けており 1995 比で農家数は 50% 農業従業者数は 46% の水準となった 図表 91 フィンランドの農家数及び農業従業者数の推移 160 (1,000 世帯 人 ) 140 120 100 80 110 60 40 20 0 農家数 農業従業者 1995 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 出所 :Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. 農業者の齢構成を見ると 111 34 歳以下の青農業者は で 9.1% 他方 35~49 歳が 31.9% 50~64 歳が 46.7% 65 歳以上が 12.4% である 2010 と を比較すると 絶対数は 65 歳以 http://www.finland.or.jp/public/default.aspx?nodeid=46057&contentlan=23&culture=ja-jp 106 農林水産省 フィンランドの農林水産業概況 9 月 107 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 108 農林水産省 フィンランドの農林水産業概況 9 月 109 いずれも 人口は European Commission, Statistical Factsheet Finland, June, 農家数及び農業従業者数は Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17 による 110 Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. 108

上を除きいずれの齢層でも減少しているが 構成比率では 34 歳以下がわずかに増加し 35~49 歳は減少 50~65 歳はほぼ変わらず 65 歳以上は増加する形となっている 図表 92 フィンランド農業者の齢構成別推移 60.0 100% (1,000 人 ) ~34 歳 35~49 歳 50~64 歳 65 歳 ~ 90% 7.3% 8.5% 7.6% 9.1% 9.6% 10.8% 12.4% 50.0 3.8 4.3 80% 3.7 4.3 4.4 4.8 5.4 70% 40.0 46.9% 46.7% 47.4% 47.2% 47.2% 46.4% 46.7% 24.2 60% 23.7 22.9 22.5 30.0 21.6 20.4 50% 20.3 40% 20.0 30% 19.2 18.3 17.5 16.6 15.6 10.0 14.6 13.9 20% 37.1% 36.1% 36.1% 34.9% 34.0% 33.2% 31.9% 10% 0.0 4.5 4.4 4.3 4.2 4.2 4.2 4.0 0% 8.8% 8.7% 8.9% 8.7% 9.2% 9.6% 9.1% 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2010 2011 2012 2013 2014 2015 出所 :Luke, Statistics database より作成 3) 農業所得 ( 農業所得 直接支払額 農業所得に占める直接支払の割合 等 ) EU 諸国の農業統計データベースである FADN(farm accounting data network: ファームアカウンティングデータネットワーク ) のデータより フィンランドの農業所得構造と補助金の関係について以下のとおり分析した コード 図表 93 フィンランド農業部門別純所得および補助金 (1 農家当り平均 2015 ) ( 単位 : ユーロ ha) 営農タイプその他科目その他草穀食家全農家耕種作物園芸永作酪農混合農業食家畜畜物 SE420 純所得 (a) 17,255 6,667 39,805-29,366 24,951 50,980 17,956 補助金計注 1 (b) 52,552 32,550 42,442-73,991 87,314 94,908 78,920 SE605 2 補助金計注 51,636 32,376 41,055-71,711 85,806 93,393 78,133 SE610 作物 977 1,103 1,148-709 595 821 1,903 SE615 家畜 10,711 23 0-27,464 30,557 18,901 10,647 SE624 農村開発 25,778 20,202 4,924-29,159 40,177 48,401 41,086 SE625 中間消費 52 26 0-108 10 158 186 SE626 外部投入要素 178 46 537-238 413 355 515 SE630 テ カッフ ル支払 11,159 10,362 2,668-11,606 12,673 15,670 18,228 SE699 その他 2,782 614 31,778-2,427 1,381 9,086 5,568 SE406 投資補助金 916 174 1,387-2,280 1,508 1,515 787 補助金 / 純所得 (b/a) 305% 488% 107% - 252% 350% 186% 440% SE025 農地面積 (c) 61.3 56.6 12.6-63.7 71.9 88.4 99.5 1ha 当り純所得 (a/c) 281 118 3,159-461 347 577 180 1ha 当り補助金額 (b/c) 857 575 3,368-1,161 1,214 1,074 793 111 出所 :FADN Public Database より作成 民間所有の農場における農業者 民間所有の農場は全農場 ( 農家 ) の 86% を占める ( ) このため図表 37 の農業者数は図表 36 とは異なる 109

注 1: 投資補助金を含む注 2: 投資補助金を除く FADNのデータ (2015 ) によれば フィンランド農業を全農家平均で見た時の純所得は 17,255 ユーロであるのに対して 補助金総額は 52,552 ユーロである 従って フィンランド農業の全部門平均の農業純所得 112 に占める補助金総額の割合は実に 305% にのぼる 補助金 ( 投資への補助金を除く ) の内訳は 農村開発への補助金 (SE624) が 25,778 ユーロで最も多く 113 次いでデカップル支払 (SE630) が 11,159 ユーロ 114 家畜に対する補助金(SE615) が 10,711 ユーロ, その他の補助金 (SE699) が 2,782 ユーロとなっている 純所得に占める補助金の割合は営農タイプによって差があり 耕種作物 (488%) 混合農業 ( 440%) できわめて高い 他方 園芸 (107%) 穀食家畜(186%) では相対的に割合が低いが いずれも 100% を超えている 浅井 [] は このように極めて高いフィンランドの補助金依存度に関して アイルランド トリニティカレッジのAlan Matthew 教授のFADNを用いた分析結果を以下のように紹介している 2012 のデータ分析によれば, 直接支払が経営所得に占める割合はEU27 か国平均が 37.6% であったのに対し, フィンランドは 143% とEU 内で最も高い値を示した これについてMatthew 教授は フィンランドの農業とは その活動がもたらす非経済価値に対して納税者が支払う純消費財として捉えられる と述べている 事実 国防上の観点から農村部の人口維持が重要視され 気候や政治情勢における有事のための食料安全保障の重点化等 農業保護の重要性が国民の共通認識となっていることを裏付けるものである 115 営農タイプと農地面積及び補助金額の関係に着目すると 農地面積の最も大きい混合農業とその次に大きい穀食家畜が各々 78,920 ユーロ 93,908 ユーロと多額の補助金を受け取っているのに対して 農地面積の小さい園芸に対する補助金額は 43,442 ユーロと 1.8~2.2 倍の開きがある しかし農地面積について 7.0~7.9 の開きがあることを考慮すると 農地面積による補助金格差はかなりの程度補正されていると言うことができる それは専らその他の補助金 (SE699) すなわち災害対策補助金や金銭的な補償等の特別補助金等によって行われていると見られる 4) 主要農作物 近のフィンランド農作物の生産高構成は以下のとおりである 牛乳が最大の 31.9% を占めるが その他は穀物類 (11.9%) 野菜 園芸作物 (11.5%) 牛 (9.3%) 豚 (7.4%) 等 比較的多様化している 農産物 食品における主要輸出品目は蒸留酒 乳製品等であり 他方 輸入品目は調製食料品 チーズ等多様であるが 輸入額は輸出額を大きく上回る 農産物 食品全般として 輸出額は過去 20 数間で約 3 倍に増加しているのに比べて 輸入額は約 5 倍に増加している 主な輸出先は ロシア スウェーデン エストニア等の近隣諸国であるが ロシアについては 2014 の経済措置によって輸出額の 15% 分を失うことになった 他方 主な輸入先はドイツ オランダ スウェーデン デンマーク等の近隣諸国であるが 2004 の東欧諸国の EU 加盟によってポーランドやエストニア等新規加盟国のシェアも増えている 116 112 FADN において, 農業純所得 (SE420) は次の式で定義される 農業純所得 (SE420)= 総産出額 (SE131)- 中間消費 ( SE275)+ 補助金税金収支 (SE600)- 減価償却費 (SE360)- 投資への補助金税金収支 (SE405)- 外部投入要素 (SE365) ( 一瀬裕一郎 オランダの農業と就業構造 日本労働研究雑誌 10 月号 (No.675) より ) 113 内訳は環境補助金 (SE621) が 10,178 ユーロ 条件不利地補助金 (SE622) が 14,880 ユーロ その他 (SE623)720 ユーロである 114 デカップル支払 11,159 ユーロのうち 単一支払が 6,792 ユーロで 61% を占めている 115 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 なお ここでの 経営所得 とは 総生産額 - 総中間消費額 + 補助金 - 減価償却費で表された農場純付加価値 (Farm Net Value Added) である 116 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 110

図表 94 フィンランド農作物の生産高構成 (2014- 平均 ) 工芸作物シリアル食品 1.6% 11.9% 鶏卵 1.7% その他 12.2% 牛乳 31.9% 飼料植物 4.9% 野菜 園芸用品 11.5% じゃがいも 1.3% 果物 2.0% 畜牛 9.3% 豚 7.4% 羊 山羊 0.2% 家禽 3.8% 出所 :European Commission, "The CAP in your country Finland" June. 図表 95 フィンランド農産物 食品の主要輸出乳品目 ( 上位 10 品目 2013 ) 輸出 輸入 品目 金額 (1,000US$) 品目 金額 (1,000US$) 蒸留酒 151,515 調製食料品 406,065 全乳チーズ 148,149 全乳チーズ 333,560 全乳バター 136,195 ペストリー 266,126 脂肪酸 117,004 ワイン 249,364 オート麦 96,515 原料 238,599 乳清 ( 乾燥 ) 89,743 コーヒー豆 213,681 チョコレート製品 86,467 タバコ 175,087 スキムミルク 78,976 チョコレート製品 162,783 プロセスチーズ 71,843 蒸留酒 130,162 豚肉 65,758 ペットフード 126,639 出所 :FAOSTAT より作成 図表 96 フィンランド農産物 食品の輸出入額の推移 ( 単位 :100 万ユーロ ) 出所 :Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. 111

2 フィンランドにおける農家所得支持政策 フィンランドにおける農家の所得支持政策は 主に CAP 直接支払 ( 第一の柱 ) 自然等制約地助成 ( 第二の柱 ) 農業環境助成 ( 第二の柱 ) そして自国予算の助成 ( 北部地域助成 南部地域助成等 ) の 4 つから成り立っている 117 CAP 直接支払はすべて EU 予算で賄われるが 条件不利地域助成でと環境助成では 各々 20% 以下と 40% 以上が EU 予算から支払われる 自国予算助成と併せて 農業補助金全体に占めるフィンランド政府の負担割合は 56% であり 44% が EU 予算から支出されている 118 図表 97 フィンランド農業補助金の推移 ( 単位 : 百万ユーロ ) 出所 :Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. フィンランドでは 自然環境を考慮して国内を 6 つの地区に分類し それぞれの地区ごとに助成単価を設定している 119120 CAP 直接支払 条件不利地域助成及び環境助成は全地区で支払われるが 自国予算助成の北部地域助成は C 地区 (C1 C2 C2 north C3 及び C4) のみで 同じく南部地域助成は AB 地区のみで支払われる 121 117 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 118 Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. 119 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 なお 同論文では地区数は 7 つ となっているが その後 A 地区と B 地区が統合され AB 地区となったため 6 つ に修正した 各地区を構成する行政区域については以下の法令に規定があるが その区分条件についての記述は見当たらない 120 各地区を構成する行政区域については以下の法令に規定があるが その区分条件についての記述は見当たらない Valtioneuvoston asetus maatalouden tukien tukialueista ja niiden saaristoksi luettavista osa-alueista (Government Decree on Supporting Areas of Agriculture Aid and their Archipelago Areas), 8 January 2015. http://www.finlex.fi/fi/laki/alkup/2015/20150005 121 Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. 112

図表 98 フィンランドの農業補助対象地区区分 出所 :Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. 3 第一の柱の実施状況 フィンランドの CAP 第 3 期 (2014- ) における CAP 予算枠は図表 99 のとおりであり EU 全体の総予算の 1.5% に相当する このうち第一の柱である直接支払に充てられる予算は 36.7 億ユーロであり 平均 5.2 億ユーロと想定される フィンランドにおいては 直接支払 条件不利地域支払 環境支払によって重層的に農家所得を補償しているため 柱間の財源移転は行わず 各柱の予算額が維持される 122 図表 99 フィンランドの現行 CAP(2014-20) の予算配分 ( 単位 :100 万ユーロ ) 2014 2015 累計 平均 第一の柱 524 523.3 523.4 523.5 524.1 524.6 524.6 3,667.5 524 第二の柱 335 337 338 340 341 343 345 2,380 340 出所 : 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 2015 のフィンランドの直接支払の受益者数は 55,900 人 123 総農業者数はおよそ 65,000 人であ 122 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 123 European Commission " Annex 1 INDICATIVE FIGURES ON THE DISTRIBUTION OF AID, BY SIZE-CLASS OF AID, RECEIVED IN THE CONTEXT OF DIRECT AID PAID TO THE PRODUCERS ACCORDING TO COUNCIL GULATION (EC) 113

ることから フィンランドの直接支払の受益者数の割合は総農業者数の 86% に相当する 1 ヘクタール当たりの直接支払の支払単価はおよそ 240 ユーロであり 図表 100 の通り EU 加盟国平均 ( 256 ユーロ ) を下回る 2015 のフィンランドの直接支払の予算構成は 再分配支払 :0% 基礎支払 :49.0% カップル支払 :20.0% 青農業者支払 :1.0% グリーニング支払 :30 % である 124 フィンランドでは 加盟国の任意である 小規模農業者支払 は採択しない 同国においては 10 ヘクタール以下の農家数は全体の 20% であり 小規模農家への特別措置は必要ないとの判断によるものである また 自然制約地域支払も採用されなかった 第二の柱において EU 予算と自国予算を併用しながら 自然制約地域支払を継続するためである 125 直接支払の実施機関はフィンランド農村庁 (Maaseutuvirasto:Mavi) であるが 支払業務そのものは 自治体及びフィンランド産業運輸環境センター (ELY センター ) に委託されている ELY センターは国内を 16 の地域に分け 各地域に事務所が設置されている また ELY センターは農家からの直接支払申請がその内容通りに適正管理されているかを検査する役割を担っており 農家に対する実地検査を行っている 126 また 直接支払の施行にかかるフィンランドの法律は 農業補助金の施行に関する法律 ( Laki maatalouden tukien toimeenpanosta )( 2013 3 月 15 日 ) 127 である 図表 100 各加盟国の 1ha 当たりの直接支払の支払単価 (2015 ) 128 PEA: Potentially Eligible Area: it corresponds to the total area declared by beneficiaries and potentially eligible for payment. CNDP: Complementary National Direct Payments. TNA: Transitional National Aids. 出所 :European Commission " REPORT on the Implementation of direct payments [outside greening] Claim year 2015" Nov. No 73/2009 (FINANCIAL YEAR 2015)" Feb. 124 European Commission Direct payments 2015- Decisions taken by Member States, June. 125 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 126 同上 127 http://www.finlex.fi/fi/laki/alkup/2013/20130192 128 European Commission " REPORT on the Implementation of direct payments [outside greening] Claim year 2015" Nov. 114

フィンランドにおいて, 直接支払および自国予算の助成を受給するためには次の主要条件を満たしている必要がある 129 活動農業者 (active farmer) であること 支払受給権と適格農地を所有していること 前度の支払総額が 200 ユーロ以上であること ( 最低受給基準 ) クロスコンプライアンスおよび農業環境管理規準 (Good Agricultural and Environmental Conditions: GAEC) を遵守していること グリーン化支払の 3 要件を満たしていること 実質的な活動農業者と呼べない者を排除するためのネガティブリストについては フィンランドは EU 基準に合致させており 追加条項は設けていない ただし, 同国ではネガティブリストに当てはまったとしても 前度の農業収入が全収入の 5% 以上であった場合 または前度の直接支払の受給額が 5,000 ユーロ以上であった場合には活動農業者とみなされる フィンランドでは 農地の他に森林所有者が多く また多角的な経営を行っている受給者も多いため ネガティブリストの影響をできる限り排除するためにこの選定基準が設けられた 130 1) 基礎支払 基礎支払は 従来の単一支払に特定品目に対する給付を上乗せするハイブリッド方式によって行われる フィンランドでは 2006 より国内を 3 地区 ( A 地区 B 地区及び C1 特 C1 以外の C 地区 ) に分類し 地区ごとに基準次に給付された直接支払総額を単一支払の給付申請面積で除して単価を求める 地域平準型 を支払体系の基盤とし 耕種作物 ( 穀物, 油糧種子等 ) 繁殖メス牛 雄牛 羊 ヤギ等に対する特定の目的に応じた給付単価の上乗を行うこと ( 部分的デカップリング ) が行われていた 現在の単一支払における面積 (1 ヘクタール ) 当たりの単価は (A 地区と B 地区の合併した )AB 地区が 123 ユーロ C 地区が 110 ユーロである 131 また 上乗せ支払の品目別単価 (2015 ) と予算割り当ては図表 45 のとおりであるが 以降は 甜菜以外の上乗せ給付がカットされ には完全に撤廃される 2015 度の基礎支払総額は 2 億 5,640 万ユーロで 第一の柱の財源の 49% を占めていた 132 図表 101 上乗せ支払の品目別単価 (2015 ) と予算割当 ( 単位 :100 万ユーロ ) 品目単価 2014 2015 牛乳, 肉牛, 馬鈴薯澱粉 特別受給者 ( 酪農および肉牛 ) 種牛 22.05 ユーロ /LU 肥育牛 15.75 ユーロ /LU 馬鈴薯澱粉 6.19 ユーロ / トン牛乳追加支払 8.57 ユーロ / トン 23.515 11.758 0 0 0 0 0.003 0.002 0 0 0 0 甜菜 64.97 ユーロ / トン 9.441 4.720 2.360 2.360 2.360 0 ティモシー ( 牧草 ) 2007-09 度の平均支払単価より各自算出 1.041 0.520 0.260 0 0 0 合計 34.000 17.000 2.620 2.360 2.360 0 出所 : 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 129 130 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 131 フィンランド農林省ウェブサイト http://mmm.fi/en/basic-payment なお フィンランドは より面積単価の完全平準化を導入し地区間を単価は同一となる予定である 132 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 115

2) 再分配支払 フィンランドでは基礎支払関して 間 15 万ユーロ以上を受け取る高額受給者については その 15 万ユーロを上回る部分に対して 5% の減額が行われる よって 同等措置とされる 再分配支払 ( 直接支払の 5% 以上を再分配支払に充てること ) は行わない 133 3) グリーニング支払 フィンランドにおける 2015 のグリ ニング支払予算額は 第一の柱の支払予算額の 30% に当たる 1 億 5,700 万ユーロであった 134 単位面積 (1 ヘクタール ) 当たりの支払額は概ね 66~74 ユーロである 135 グリ ニング支払の単価は, 原則としてグリーン化支払に充てられる予算額を総適格農地面積で除した額としている フィンランドは 基礎支払と同じ 2 地域においてそれぞれ一律の面積単価を設定した 単価算定は, 予算額を各地区内の総合適格農地面積で割ったものであり AB 地区では 74 ユーロ /ha,c 地区では 66 ユーロ /ha となった 136 フィンランドにおけるグリーニング支払受給の 3 要件への対応は以下の通りである a) 永草地の維持 : 現行 Natura 2000 137 対象地域内の草地を全て保全対象とする永草地に指定 またその維持に当っては国レベルで実施する b) 生態系保全用地 (Ecological Focus Area: EFA) の設定 :EU 規則 ( 直接支払規則 )No.1307/2013 第 46 条 7 に基づき 農家の平均所有森林面積が 50 ヘクタール以上であるフィンランドでは 多くの地域において森林を EFA と見なす森林特例 (forest exemption) の承認を受けた これにより EFA 設定要件は フィンランド南部沿岸の南西スオミ県 ウーシマー県およびオーランド諸島の 3 県のみとなった 上記 3 県において合計 15 ヘクタール以上の農地を所有する農家は 全所有農地のうち 5% 以上を生態系保全用地に該当する土地利用を行わなくてはならない c) 作物の多様化 : 作物多様化の要件は図表 102 のとおりである いずれの地区でも適格農地面積 10 ヘクタール以下の農家は免除となる 図表 102 地区別の作物多様化の要件 地区 適格農地面積 作物多様化の要件 AB 地区 10-30ha 最低 2 作目 主作物の作付面積は全体の 75 % 未満 30ha 以上 最低 3 作目 主作物の作付面積は全体 75 % 未満, かつ作付面積 1 位と 2 位の作物の合計作付面積は全体の 95 % 未満 C 地区 10ha 以上 最低 2 作目 主作物の作付面積は全体の 75 % 未満 出所 : 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 この結果 フィンランドにおいて少なくとも一つ以上のグリーニング要件が課された農地面積は 1,973,301ha 対象農民数は 41,575 人となり 138 フィンランド全農地面積の 87% 全農業者の 64% に相当することとなった 4) 青農業者支払 青農業者支払は 全加盟国が導入を義務づけられ 予算割当上限は直接支払財源の 2% までと定められている フィンランドでは 1% を配分するが 申請数が予想よりも多い場合は 今後最大 133 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 134 同上 135 フィンランド農林省ウェブサイト http://mmm.fi/en/greening-payments 136 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 137 EU の生息地指令 (Habitats Directive, 1992) により確立された生物保護区のネットワーク EU 域内 26,000 地区 EU 全土の約 18% に相当する面積がその対象となっている 138 European Commission, Commission Staff Working Document, Review of greening after one year Annex II, June. 116

2% まで配分を上げることを予定している フィンランドにおける新規就農者は 2013 が 597 人 2014 が 1,100 人であったことから 2015 は 1,000 人と予想し 1 ヘクタール当りの給付単価は 50 ユーロと設定された なお C 地区の新規就農者に対しては 50 ユーロに加えて 北部地域助成から面積単価 36 ユーロが更に上乗せされる また 18 歳以上 40 歳未満で 初めて就農する者に対しては 第二の柱予算枠による 優先事項 2B の一環として スタートアップ手当て助成が行われる 139 フィンランドにおける 2015 の青農業者支払の受給権者の割合はおよそ 9% 弱であり オランダに次いで加盟国中第 3 位の水準であった また 同の青農業者支払実績は 当初予定の直接支払財源の 1% を上回り 2% 弱となった 図表 103 直接支払受給者に占める青農業者支払の受給権を有する農業者の割合 出所 :European Commission " REPORT on the Implementation of direct payments [outside greening] Claim year 2015" Nov. 図表 104 加盟国の 1ha 当りの青農業者支払額 出所 :European Commission " REPORT on the Implementation of direct payments [outside greening] Claim year 2015" Nov. 139 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 117

図表 105 青農業者支払額と想定支払額 出所 :European Commission " REPORT on the Implementation of direct payments [outside greening] Claim year 2015" Nov. 5) カップル支払 EU 規則 ( 直接支払規則 )No.1307/2013 ではカップル支払に充てる予算は 原則として直接支払の 8% 以下とすることが定められている (53 条の 1) しかし フィンランドは 2008 のヘルスチェックにて直接支払予算枠の 10% までカップル支払に割り当てることができた 今次 CAP においても 2010 から 2014 の間に 1 間でも直接支払予算枠の 10% を上回るがあれば,13% を上回る予算を充てることが可能 (53 条の 4) 蛋白作物向けの支払を 2% 以上行うことを条件に 最大 2% まで上乗せが可能 (53 条の 3) を法的根拠に 欧州委員会より 20% まで引き上げる承認を得た ただし その後は割当額を率 0.4% ずつ減少させ には予算枠の 18% とする予定である 140 フィンランドにおいては以下図表のように 牛肉 子牛肉 酪農 羊肉 山羊 蛋白作物 野菜 果実 甜菜 穀物 でんぷん用馬鈴薯 の 8 部門でカップル支払が採用されているが 肉牛 酪農への支払が大半を占めている 加盟国 地域 図表 106 フィンランドにおけるカップル支払の部門別支払内容 ( 牛肉 子牛肉部門 ) 施策 支払対象数 ( 頭 ) 2015 1 頭当たり支払 ( 単位 : ユーロ ) 合計支払金額 ( 単位 : 百万ユーロ ) EU 全体 - 18,616,664 91.7 91.4 91.2 91.2 91.2 91.2 1,706.3 1,701.6 1,698.4 1,698.1 1,697.0 1,697.6 2015 フィンランド ( 合計 ) 260, 486 141-721 133-7 21 126-7 21 118-7 21 111-7 21 103-7 21 56..17 54.09 52.01 50.32 48.73 46.83 140 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 118

加盟国 地域 施策 図表 107 フィンランドにおけるカップル支払の部門別支払内容 ( 酪農部門 ) 支払対象数 ( 頭 ) 2015 1 頭当たり支払 ( 単位 : ユーロ ) 合計支払金額 ( 単位 : 百万ユーロ ) EU 全体 - 12,321,533 67.3 67.9 68.6 69.4 70.1 68.9 829.21 836.85 845.29 854.63 863.42 849.09 2015 フィンランド ( 合計 ) 65,187 118-728 118-728 728-728 118-728 728-728 118-728 32.20 32.20 32.20 32.20 32.20 32.20 加盟国 地域 図表 108 フィンランドにおけるカップル支払の部門別支払内容 ( 羊肉 山羊部門 ) 施策 支払対象数 ( 頭 ) 2015 1 頭当たり支払 ( 単位 : ユーロ ) 合計支払金額 ( 単位 : 百万ユーロ ) EU 全体 - 41,627,791 11.5 11.6 11.6 11.7 11.8 11.9 478.0 480.9 484.0 487.3 490.5 496.0 フィンランド ( 合計 ) 68,642 28-98 28-98 28-98 28-98 28-98 28-98 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2015 加盟国 地域 図表 109 フィンランドにおけるカップル支払の部門別支払内容 ( 蛋白作物部門 ) 施策 支払対象数 (ha) 2015 1ha 当たり支払 ( 単位 : ユーロ ) 合計支払金額 ( 単位 : 百万ユーロ ) EU 全体 - 4,318,571 99.0 100.3 101.6 103.0 104.3 103.9 427.64 433.01 438.75 444.85 450.58 444.57 フィンランド 蛋白作物 176,570 36 36 36 34 32 31 6.30 6.30 6.30 6.00 5.70 5.50 2015 加盟国 地域 図表 110 フィンランドにおけるカップル支払の部門別支払内容 ( 野菜 果実部門 ) 施策 支払対象数 (ha) 2015 1ha 当たり支払 ( 単位 : ユーロ ) 合計支払金額 ( 単位 : 百万ユーロ ) EU 全体 - 675,186 301.9 308.5 311.0 312.6 314.1 308.8 203.85 208.28 209.98 211.08 212.08 208.53 フィンランド 野菜 果実 ( 異なる種類 野菜 ) 7,039 171 171 171 171 156 156 1.20 1.20 1.20 1.20 1.10 1.10 2015 加盟国 地域 施策 図表 111 フィンランドにおけるカップル支払の部門別支払内容 ( 甜菜部門 ) 支払対象数 (ha) 2015 1ha 当たり支払 ( 単位 : ユーロ ) 合計支払金額 ( 単位 : 百万ユーロ ) EU 全体 - 497,222 350 356 358 360 362 341 174.25 176.98 177.99 179.10 180.22 169.36 フィンランド 甜菜奨励金 14,820 67 67 67 67 67 67 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 2015 加盟国 地域 施策 図表 112 フィンランドにおけるカップル支払の部門別支払内容 ( 穀物部門 ) 支払対象数 (ha) 2015 1ha 当たり支払 ( 単位 : ユーロ ) 合計支払金額 ( 単位 : 千ユーロ ) EU 全体 - 1,935,435 45 46 47 47 46 46 86,902 89,104 90,747 90,003 89,259 89,697 フィンランド ライ麦奨励金 26,950 56 56 56 56 56 56 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 2015 119

図表 113 フィンランドにおけるカップル支払の部門別支払内容 ( でんぷん用馬鈴薯部門 ) 加盟国 地域 施策 支払対象数 (ha) 2015 1ha 当たり支払 ( 単位 : ユーロ ) 合計支払金額 ( 単位 : 千ユーロ ) 2015 EU 全体 - 58,145 304 304 305 305 306 290 17,649 17,684 17,717 17,761 17,803 16,870 フィンランド でんぷん用馬鈴薯奨励金 6,720 551 551 551 551 551 551 3,700 3,700 3,700 3,700 3,700 3,700 出所 :European Commission Voluntary coupled support Sectors mostly supported. Notification of decisions taken by Member States by 1 August 2014" Informative note 30 July 2015 及び European Commission "Voluntary coupled support Other Sectors supported. Notification of decisions taken by Member States by 1 August 2014" Informative note December 2015 120

4 第二の柱の内 直接支払に関係する施策の実施状況 ( 条番号は農村振興規則 No. 1305/2013 のもの ) フィンランドの CAP 第 3 期 (2014- ) の農村振興プログラム ( 英 :rural development progamme:rdp 芬 :maaseudun kehittämisohjelma 2014-) は 2014 12 月 12 日に欧州委員会によって正式に採択された RDP はフィンランド本土とオーランド諸島 ( スウェーデン語を公用語とする自治領 ) の 2 つに分けられており それぞれの予算枠組みは下表の通りである 図表 114 フィンランド農村振興プログラム (2014-20) の予算配分 ( 単位 : 億ユーロ ) EU 予算 自国負担 合計 フィンランド本土 23 58 83 オーランド諸島 0.207 0.384 0.59 出所 :European Commission, FINLAND CAP IN YOUR COUNTRY, June より作成 また フィンランド本土における RDP の優先課題は以下の 3 点である 141 農業及び森林に関わる生態系の回復 維持及び増進 社会的包摂 (social inclusion) と経済開発の促進 農村地域における貧困削減 農産物の加工及びマーケティングを含むフードチェーン組織の振興 動物福祉 農業におけるリスクマネジメント フィンランド本土の RDP の分野 施策別予算額は下図表のとおりであり 予算額から見た優先施策は以下のものであることが分かる 37.3 億ユーロ : 自然制約地域支払 (Areas facing natural constraints) 15.9 億ユーロ : 農業環境 気候支払 (Agri-Environment-Climate) 9.8 億ユーロ : 物理的資産への投資 (Investments in physical assets) 4.6 億ユーロ : 動物福祉 (Animal welfare) 図表 115 フィンランド本土の農村振興プログラム (2014- ) 概要優先事項予算額 ( 単位 : 百重点分野施策万ユーロ ) 優先事項 (1): 農林業と農村地域における知識移転と革新の促進 * - - 142 割合 (%) (a) 農村地域における革新 協同 そして知識基盤の発達の促進 (b) 農業 食品生産 林業と 研究 革新の間の結びつき強化 環境の管理 パフォーマンスを改善するためのものを含む (c) 農林業部門における生涯学習と職業訓練の促進 14 条知識移転と情報活動 - - 15 条助言サービス 農業経営 農場支援サービス 35 条協同 - 35 条協同 - - 14 条知識移転と情報活動 - - 141 同上 142 European Commission " Factsheet on 2014- Rural Development Programme for Mainland Finland" Dec. 2014 121

優先事項 (2): すべての種類の農業の競争力向上と農場の存続能力向上 1,024.4 12.39 (a) 全ての農場の経済パフォーマンス促進 特に市場参加 指向の拡大ならびに農業多様化の観点から (b) 新規就農者 14 条知識移転と情報活動 5.0 0.06 17 条物理的資産への投資 871.4 10.63 14 条知識移転と情報活動 3.0 0.04 19 条農業及び事業開発 145.0 1.77 優先事項 (3): フードチェーン組織と 動物福祉 農業のリスク管理の振興 559.0 6.76 (a) 品質制度 農産物への付加価値 地場市場 供給経路の中抜きによる販売促進 生産者集団 組織 および垂直部門間組織を通じた 一次生産者の農食品チェーンへの統合改善による競争力向上 14 条知識移転と情報活動 3.0 0.04 15 条助言サービス 農業経営 農場支援サービス 5.0 0.06 17 条物理的資産への投資 44.0 0.54 33 条動物福祉 458.0 5.59 35 条協同 49.0 0.60 優先事項 (4): 農林業に関わる生態系の回復 維持 増進 5,699.5 68.96 (a) 1Natura 2000 地域や 自然ないしその他特定の制約に直面している地域等における生物多様性 2 また自然的な価値 (nature value) の高い農業 ならびに 3 欧州的な景観の状態の 回復 維持 増進 (b) 水管理の改善 肥料 農薬管理等 (c) 土壌侵食の防止と土壌管理の改善 14 条知識移転と情報活動 11.2 0.14 15 条助言サービス 農業経営 農場支援サービス 21.0 0.26 17 条物理的資産への投資 6.0 0.07 28 条農業環境 気候対応 1,586.3 19.36 29 条有機農業 326.0 3.98 31~32 条自然ないしその他制約のある地域 3,734.0 45.56 35 条協同 15.0 0.18 優先事項 (5): 農業 食品 林業部門における 資源効率の促進と 炭素排出が少なくかつ気候に対する抵抗力の強い経済への移行支援 150.4 1.82 14 条知識移転と情報活動 3.0 0.04 (b) 農業および食品加工におけるエネルギー使用の効率向上 15 条助言サービス 農業経営 農場支援サービス 2.0 0.02 35 条協同 7.0 0.09 (c) 再生可能なエネルギー源 副産物 廃棄物 残渣 およびその他の非食用原料の バイオ経済のための供給 使用促進 14 条知識移転と情報活動 1.6 0.02 15 条助言サービス 農業経営 農場支援サービス 2.0 0.02 17 条物理的資産への投資 56.8 0.69 35 条協同 7.0 0.09 (d) 農業からの温室効果ガスおよびアンモニアの排出削減 14 条知識移転と情報活動 1.6 0.02 15 条助言サービス 農業経営 農場支援サービス 2.0 0.02 17 条物理的資産への投資 56.8 0.69 122 35 条協同 3.5 0.04

14 条知識移転と情報活動 1.6 0..02 (e) 農林業における炭素保全 貯蔵の促進 15 条助言サービス 農業経営 農場支援サービス 2.0 0.02 35 条協同 3.5 0.04 優先事項 (6): 農村地域における社会的包摂 貧困削減 経済振興の促進 762.0 9.22 (a) 企業の多様化 創設 発達ならびに雇用創出の促進 (b) 農村地域における小地域振興の促進 14 条知識移転と情報活動 48.0 0.59 19 条農業及び事業開発 257.0 3.14 35 条協同 72.0 0.88 14 条知識移転と情報活動 1.0 0.01 20 条農村地域における基礎的サービスと村の再生 50.0 0.61 35 条協同 3.0 0.04 (c) 農村地域における情報通信技術 (ITC) の入手しやすさ 使用 質の強化 42~44 条 LEADER 300.0 3.66 14 条知識移転と情報活動 1.0 0.01 20 条農村地域における基礎的サービスと村の再生 30.0 0.37 技術支援 70.0 0.85 予算総額 8,265.3 100 * 優先事項 (1) については, 他の優先事項の実施過程で達成できるものとし, 特別に予算配分はなされていない 以下 上述の 4 施策を含む主要な施策について説明する 1) 31~32 条 : 自然ないしその他制約のある地域 (Article 31 Payments to areas facing natural or other specific constraints and Article 32 Designation of areas facing natural and other specific constraints) 自然ないしその他制約のある地域 (31~32 条 ) は自然等制約地域支払であり 政府が指定する 1 山岳地域 2 山岳地域以外の自然制約地域 3 特定制約地域で農業を維持するための面積支払である フィンランドでは C1-4 地域が区分 1 AB 地域が区分 2 にあてはまるとし 全国で当該支払を実施する 2014- 期の支払の総予算は 37 億 3,400 万ユーロで 第二の柱の予算のおよそ 45% を占める このうち 18 億 1,000 万ユーロは EU 予算 ( 全体の 42% で 7 億 620 万ユーロ ) と自国負担 ( 残りの 58% で 10 億 480 万ユーロ ) によるもので さらに EU 規則 ( 農村振興規則 )No. 1305/2013 の 82 条に定められた自国予算による追加予算として 19 億 2,400 万ユーロが投じられる これでフィンランドの拠出総額は 29 億 7,380 万ユーロに上り EU 予算の占める割合は全体の 18% にとどまる 143 支払額の面積単価は図表 116 のとおりである 助成単価を算定する際には 制約地における農業の追加コストあるいは収入減を 制約のない土地と比較する必要があるが フィンランドでは全土が助成対象に該当する このため FADN(Farm Accounting Data Network) による他国の会計データを用いて 国内で最も生産環境の良いフィンランド南部と, 北緯 60 度前後に位置する他国の 4 地域 ( スウェーデン南部 デンマーク ドイツ北部 スコットランド ) の農家の会計データを使い ヘクタール当たりの農家純付加価値 (Farm Net Value Added) を比較することにより 単価が設定された 144 143 144 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 同上 123

図表 116 条件不利地域支払面積単価 ( 単位 : ユーロ /ha) AB 地区 C 地区 耕種農家 217 242 畜産農家 277 302 出所 :Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17 より作成 2) 28 条 : 農業環境 気候対応 (Article 28 Agri-environment-climate) 農業環境 気候対応 (28 条 ) は農業環境 気候支払である 農場における義務的基準 ( クロスコンプライアンスや GAEC) の遵守に加えて 全圃場に対する施肥管理の徹底により 作物では 54 ユーロ /ha 園芸作物では 200 ユーロ /ha が支払われる このベース支払に加えて 環境への負荷を減らす管理 ( 温室効果ガス排出の抑制 水環境の保全 生物多様性の保全 ) を圃場レベルで行った農家は受給単価を上乗せすることができる 145 フィンランドの 2014- 期の支払の総予算では 15 億 8,630 万ユーロ 第二の柱の予算枠の約 20% が充てられている 2015 にはフィンランドにおける全活動農業者 (active farmers) の 86% に相当する 45,624 農家がこの農業環境支払に申請を行い その農地面積は基礎支払申請を行った農家の農地面積の 90% 以上に相当する 206 万ヘクタールに上っている 146 3) 17 条 : 物理的資産への投資 (Article 17 Investments in physical assets) 物理的資産への投資 (17 条 ) の対象となる投資分野は 農業経営の改善全般 農産物の加工 販売 開発 インフラストラクチャー 農業環境 気候 農場の再編 青農業者の新規就農 EU 法による新たな要件への対応である フィンランドの 2014- 期の予算では 総額で 9 億 7,820 万ユーロが複数の分野に計上されているが そのうち 8 億 7,140 万ユーロ ( 予算枠比 10.6%) は 農場の経済パフォーマンス促進 に充てられている 4) 33 条 : 動物福祉 (Article 33 Animal welfare) 動物福祉 (33 条 ) は動物福祉支払である クロスコンプライアンスによる義務的な基準を上回る動物福祉の取組に対する次の助成であり 当該取組による追加的費用と所得喪失の範囲内で支払われる フィンランドの 2014- 期の予算では 予算枠総額の 5.6% に相当する 4 億 5,800 万ユーロが割当られている 助成対象は牛 豚 羊 山羊 鶏 七面鳥であり 家畜単位 (livestock unit:lu) に対して 5 ユーロから最大 439 ユーロが支払われる 5) 19 条 : 農業および事業開発 (Article 19 Farm and business development) 農業および事業開発 (19 条 ) は起業助成 ( 青農業者 農村の農外事業 小規模農場 ) 農外事業の創出 展開への投資 離農する小規模農業者への支払である フィンランドの 2014- 期の予算では 新規就農者及び企業の多様化 創設 発達ならびに雇用創出の促進に対して 合計で予算枠全体の 4.9% に当る 4 億 200 万ユーロが計上されている 6) 29 条 : 有機農業 (Article 29 Organic farming) 有機農業 (29 条 ) は有機農業への転換および有機農業の維持に対して支払われる助成である 助成額は当該取組による追加的費用および喪失費用の範囲内で 5 間から 7 間の面積支払である フィンランドにおける有機栽培面積は 241,000 ヘクタール ( ) で 全耕地面積の 10.5% に相当する 他方 有機栽培農産物の市場シェアは約 2.5% にとどまり 更なる振興が必要と認識されている このため フィンランド農林省は有機栽培面積を までに全耕地面積の 20% に 145 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 146 Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17. 124

まで拡大する目標を設定している 147 この目標に沿って 2014- 期の RDP においては 予算枠全体の約 4% に当る 3 億 2 600 万ユーロが計上されている 2015 度の支払単価は 転換期間および転換後に関係なく 160 ユーロ /ha である また家畜単位が 0.3 以上の家畜を飼養している有機農家へは 追加的に 134 ユーロ /ha が 生産リスクの高い有機野菜の露地栽培を行っている場合は 600 ユーロ /ha が支払われる 支払は全て面積単価で支払われるが 最低 5ha( 園芸栽培の場合は 1ha) の農地を所有していることが受給条件である 支払は 5 間継続して行われる 148 7) 42~44 条 :LEADER(Article 42 LEADER local action groups, Article 43 LEADER start-up kit, Article 44 LEADER co-operation activities) LEADER(42~44 条 ) は LEADER( 農村経済振興活動間連携 地元主導の小地域振興 ) 開始時の能力開発 小規模試行プログラムへの助成 LEADER の地域間協力活動への助成である フィンランドでは LEADER の実施単位である 54 のローカル アクション グループ (LAG) が活動を行っており その構成メンバーは 12,000 人を超える 2007-2013 期の RDP では 8,000 以上のプロジェクトを通じて 2,000 人以上の新規雇用創出と 800 以上の新規企業設立をもたらしたとされる 149 2014- 期の RDP においては 3 億ユーロの予算が計上されており ( 予算枠比 3.7% ) 更なる振興活動の促進が企図されている 8) 35 条 : 協同 (Article 35 Co-operation) 協同 (35 条 ) は協同活動への助成である 1 農林業部門およびフードチェーン等における生産者集団 協同組合 垂直部門間組織の間の協力活動 2 クラスターないしネットワークの創出 3EIP( 欧州革新パートナーシップ ) 運営集団の設立 運営を指す フィンランドの 2014- 期の予算では 優先事項 (2) を除くほぼ全ての重点分野に対して予算が計上されており その額は合計で 1 億 5,300 万ユーロ ( 予算枠全体の 1.9%) である 5 その他 ( 自国予算による助成 ) 自国予算のみによる助成は C 地区 (C1 C2 C2 north C3 及び C4) を対象とする北部地域助成と AB 地区を対象とする南部地域助成である 150 北部地域助成は EU 加盟条約第 142 条において北緯 62 度以北地域 (C 地区 ) に対する国家援助として存続を認められたものであり 全耕地面積の 55.5% に相当する約 140 万ヘクタール強がその対象となる 助成項目は生乳生産 ( リットル当たり ) 肉牛 羊 山羊 馬の飼育 ( 頭数当たり ) 耕種作物の生産 ( 作物別面積単価 作物種を問わない一般面積単価 及び青農業者補助 ) の他 グリーハウス栽培 トナカイ繁殖 輸送 園芸作物の貯蔵等小規模農家を対象とするものも含まれる このうち最も主要なものは生乳生産に対する助成であり の北部地域助成額およそ 2 億 9,700 万ユーロのうち 1 億 6,120 万ユーロを占めた また 家畜に対する助成額は 7,600 万ユーロであった 北部地域助成の有効性は 5 毎に評価される に行われた直近の評価結果に基づき 欧州委員会はフィンランド北部地域助成に対する決定を行い 1 月に発効した この決定においては フィンランドが当該助成の実施とモニタリングをより柔軟に行うことが認められている 151 南部地域助成は EU 加盟条約 141 条により EU 加盟による影響緩和のための暫定措置として認められたものであったが 2013 からその法的根拠は EU 規則 No. 1308/2013( 第 213 条及び 214 条 ) 147 148 同上 浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 前掲 149 フィンランド農林省ウェブサイト http://mmm.fi/en/rural-areas/leader?p_p_id=56_instance_sskdne5odink&p_p_lifecycle=0&p_p_state=normal&p_p_mode=vi ew&p_p_col_id=column-2&p_p_col_count=2&_56_instance_sskdne5odink_languageid=en_us 150 その他に条件不利地域 (LFA) に対する追加的助成が行われていたが 2015 以降は第二の柱の自然等制約地域支払 に統合された 151 Natural Resources Institute FINLAND (Luke), Finnish agriculture and food sector /17 及びフィンランド農林省ウェブサイト (http://mmm.fi/en/food-and-agriculture/support-and-aid/national-agricultural-aid) 125

及び 1310/2013( 第 9 条 ) に移行するとともに までに 1 億 7,000 万ユーロ (2013 額の 30%) に減額することが義務付けられた このため フィンランドは 2015 に生乳生産 肉牛 羊 山羊の飼育に対する補助を CAP のカップリング支払に移行することを決定し 南部地域助成としては養豚 養鶏及び温室栽培が継続することになった なお この結果 助成の方法は変化したものの AB 地区と C 地区 ( 南部 ) における酪農 肉牛 羊 山羊に対する助成単価は概ね同額が維持されている 152 152 上記 ( 注 70) 及び浅井真康 フィンランドの農業戦略と今次 CAP(2014-) の実施状況 126