【論文】

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関係機関と連携し 渋滞対策を推進することとしている MM は 渋滞対策における TDM 施策の 1 つとして 関係機関と連携しながら実施するものである なお 札幌開発建設部では 従前より渋滞対策における MM を検討 実施しており 平成 11 年度に 全国で初めての MM を札幌市あいの里地区で実施

スライド 1

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図 1 平成 19 年首都圏地価分布 出所 ) 東急不動産株式会社作成 1963 年以来 毎年定期的に 1 月現在の地価調査を同社が行い その結果をまとめているもの 2

PowerPoint プレゼンテーション

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PowerPoint プレゼンテーション

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8略都市スライド東北(郡山市)全部 [互換モード]

1.UR 都市機構における再開発共同事業者エントリー制度の概要 1 参考資料 1

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2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

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かしこいクルマの使い方を考える

県民を対象とした需要喚起方策の検討検討方針県民を対象とした需要喚起方策の検討では 今年度調査の主なターゲットのうち 都心部への自動車流入抑制 を対象とする まずは 都心部への自動車流入抑制に関する最新事例の整理を行う それを参考に 沖縄本島を対象としたケーススタディを行い 需要喚起効果及び課題を整理

目次

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目次 目次 2 調査概要 3 調査サマリー 4 歩きスマホ は危ないと思うか? / 歩きスマホ をしたことがあるか? 5 歩きスマホ をしてしまう理由は? 6 歩きスマホ をしている人に対して危ないと感じたことはあるか? 7 歩きスマホ が危ないと感じたのはどのようなシーンか? 8 歩きスマホ によ

九州新幹線 久留米駅についてのアンケート の主な結果概要 福岡県立大学人間社会学部公共社会学科 2017 年度社会調査実習 九州新幹線調査 グループ担当教員田代英美学生調査グループ一同 回答者のプロフィール 久留米市の旧久留米市域にお住いの 18 歳 ~79 歳の方から無作為で ( くじ引きのような

交通結節点が備えるべき機能を整理すると 最も基本となるものとして があり これに加えて 都市機能の誘導 集積を促進させ 都市内の中心的な拠点地区を形成する 及び 都市の顔 となる 交通結節点の計画 整備の検討においては 先に示した の三種の機能がそれぞれ交通結節性 人の交流や景観等の面で役割を果たし

(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

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第 7 回大阪市人口移動要因調査報告書 平成 27 年 3 月 大阪市都市計画局

施設までの距離は 地区中心付近からのおおよその距離 大原台 回答者の年齢構成 3 5 主な (2 箇所の行き先 ) 10% 1 70% 主な行き先 フレスタ沼田店 ( 約 0.7km) ビッグハウス沼田店 ( 約 1km) 買物目的 :7 :1 : 最寄り駅 大原 ( 約 0.7km) 駅 :88

4. 都市機能誘導区域 4.1 都市機能誘導区域設定の基本的な考え方 (1) 都市機能誘導区域とは医療 福祉 商業等の都市機能を都市の中心拠点や生活拠点に誘導し集約することにより これらの各種サービスの効率的な提供を図る区域のことです 原則として 居住誘導区域内において設定します これらの都市機能は

1. よりそうスマートプロジェクト の概要 1 当社では IoT や AI などの新たな情報技術の進展を 成長の機会 ( チャンス ) と捉え 本年 4 月に バーチャルパワープラント実証プロジェクト を開始するなど お客さまサービスのさらなる向上や将来の事業領域の拡大につながる新たなビジネスモデル

アンケート調査実施概要実施期間 :2017 年 12 月 15 日 ~24 日対象者 : カレコ カーシェアリングクラブ個人会員サンプル数 :4,980 人 ( 内訳 ) 新規会員 (2016 年 12 月以降に入会された会員 )2,570 人既存会員 (2016 年 11 月以前より在籍されている

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() 土地の総面積 利用目的別面積 所有する土地の面積は 最小で 90 m 最大で,400m であり 00~400 m との回答が最も多い 駐車場としての利用では 月極駐車場が 309 台分 日貸駐車場では 5 台分となっている 所有する総面積 00m以下 m未満 m未満

資料 2 主要渋滞箇所 ( 案 ) の抽出方針について ( 一般道 ) 平成 24 年 8 月 9 日

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スライド 1

2. 各学区のまちづくりの方向性と将来ビジョン 第 3 章で整理した各学区の現状 課題等を踏まえ 学区ごとにまちづくりの方向性 ( 基本方針の 3 つの柱の何に該当するのか ) を整理します 方向性を踏まえ 施策の柱ごとに具体的なビジョンを検討します (1) 常盤学区 1 まちづくりの方向性 1-1

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常磐町内会説明会 会議要旨

アンケート内容 2

01_表紙

資料 1 第 1 号議事 六会地区における予約型乗合タクシーの導入について 1. 実証運行までの経緯と結果 1-1. これまでの経緯六会地区の公共交通利用不便地区の解消に向けた取組については 平成 21 年度に交通不便地区解消検討事業が地域まちづくり事業として決定し 地域が主体となり 市と新たな交通

コンパクトシティ構想 2つの柱 ( 郊外の開発抑制 + 中心市街地の活性化 ) まちなか住み替え事業 や 家賃補助制度 を行っているが 借りたい人はいるが 貸したい人がいない という状況 コンパクトシティという構想だけでは 民間資本は動かない (= 補助金などのインセンティブが必要 ) 中心市街地活

これらのご要望などを踏まえ 本技術を開発しました 本技術により渋滞予知の精度は大幅に向上し 渋滞があると予測した時間帯において 所要時間の誤差が30 分以上となる時間帯の割合が 従来の渋滞予報カレンダー 7 の8.2% に対して0.8% 20 分以上となる割合が26% に対して6.7% となり また

取組みの背景 これまでの流れ 平成 27 年 6 月 日本再興戦略 改訂 2015 の閣議決定 ( 訪日外国人からの 日本の Wi-Fi サービスは使い難い との声を受け ) 戦略市場創造プラン における新たに講ずべき具体的施策として 事業者の垣根を越えた認証手続きの簡素化 が盛り込まれる 平成 2

1 日本再興戦略 2016 改革 2020 隊列走行の実現 隊列走行活用事業モデルの明確化ニーズの明確化 ( 実施場所 事業性等 ) 技術開発 実証 制度 事業環境検討プロジェクト工程表技高齢者等の移動手段の確保 ( ラストワンマイル自動走行 ) 事業モデルの明確化 ( 実施主体 場所 事業性等 )

の復旧状況に関する長期的な見通しを可能な限り明らかにしながら 復旧の段階に 応じた役割の分析を行う 5) 交通事業者ヒアリング調査沿線地域に関係する交通事業者 ( 鉄道事業者 2 社 バス事業者 2 社 タクシー事業者 2 社その他 ) に聞き取り調査を行い 定性的な利用特性や地域の公共交通の問題点

計画的な再開発が必要な市街地 特に一体的かつ総合的に再開発を促進すべき地区 市町名 名称 再開発の目標 土地の合理的かつ健全な高度利用及び都市機能の更新に関する方針 特に整備課題の集中がみられる地域 ( 課題地域 ) 地区名 西宮市 C-4 浜脇 ( 約 175ha) 居住環境の向上 良好な都市景観

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能代市中心市街地活性化計画

阿賀野市の発展と市民福祉の向上を図ることを目的とした 行政運営の指針となる 阿賀野市総合計画 に定める本市の将来像 人 まち 自然が輝く幸福祉都市阿賀野 の実現に向けて また こよなく愛するふる里創造のため 全力を上げ取り組んでいるところでございます 国から地方への事務 権限移譲や三位一体改革が加速

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by ( 2003) =

県産材の需要拡大の推進について(枠組み)

事業報告書

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(5) 老上西学区 1 まちづくりの方向性 1-1. 生活拠点の形成と交通環境の充実 既存の生活拠点を中心とした 50 戸連坦制度の厳守等により市街地の拡散を抑制するこ とで 利便性の高い生活環境を維持していくものとします 老上西学区は 東側から南側にかけての一帯が市街化区域に含まれ ( 主 ) 大

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【アフィリコード】総合マニュアル

【アフィリコードプラス】総合マニュアル

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同時配信実験「試験的提供B」実施結果について

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国土技術政策総合研究所 プロジェクト研究報告

自転車駐車場における 料金収受の利便性向上及び高度化に関する調査 ( 要約版 ) 商品購入やサービス利用の対価として金銭のやり取りが発生するが ここ数年では 情報通信技術や機器の発達とともに多様化が進み 現金を用いず クレジットカードや電子マネー等を利用した金銭のやり取り いわゆるキャッシュレス決済

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公益財団法人和歌山市文化スポーツ振興財団 ( 財団法人和歌山市都市整備公社から名称変更 ) 経営健全化 ( 自立化推進 ) 計画 ( 平成 22 年度 ~ 平成 25 年度 ) 取組結果報告 取組結果報告における各取組の最終進捗結果の説明区分基準 A ほぼ予定どおり 若しくは予定以上に進んだ B 取

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各実証ならびに結果の概要 実証は 単身若年世帯向けの実証 (2 件 ) と家族世帯向けの実証 (1 件 ) を実施しました 各実証の結果及び概要は 次の通りとなります 1 大学新入生向け省エネ家電の購入促進実証 ( 単身若年世帯向け実証 ) 実証概要 : 一人暮らしをする大学生の子を持つ親を対象に

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1 趣旨このガイドラインは 日本国内の公道 ( 道路交通法 ( 昭和 35 年法律第 105 号 ) 第 2 条第 1 項第 1 号に規定する 道路 をいう 以下同じ ) において 自動走行システム ( 加速 操舵 制動のうち複数の操作を一度に行い 又はその全てを行うシステムをいう 以下同じ ) を

平成27年国勢調査の5つのポイントと12の新たな取り組み

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沖縄でのバス自動運転実証実験の実施について

平成 27 年度予算概算要求予算額について ( 国勢調査経費 ) 平成 22 年国勢調査予算額 649 億円 基本数の増 調査員に係る経費: 調査員報酬に係る統一単価の見直し (6,800 円 6,830 円等 ) その他の経費: 消費税の増税 (5% 8%) 調査区数の修正: 世帯数の増加に伴う修

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けいはんなエコシティ次世代エネルギー 社会システム実証プロジェクトにおける 電気のかしこい使い方プログラム の今夏の実施結果と今冬の実施概要について 平成 25 年 12 月 2 日関西電力株式会社三菱電機株式会社三菱重工業株式会社 関西電力株式会社 三菱電機株式会社 三菱重工業株式会社の 3 社は

4. 都市づくりの目標と方針 4-1 都市づくりの基本理念 地域の個性が輝く生活快適都市 上田 ~ 魅力あるふるさと活気ある交流風格ただようまち ~ 基本理念の意味あい 上田市は 歴史 文化 自然 産業などに恵まれた特色ある地域から成り立っており 各地域が個性を発揮し 連携し合い 交流を促進しながら

2. 住民アンケート調査 以下の既往のアンケート調査から 都市計画及びまちづくりに関する住民ニーズや方向性等を以下の とおり把握 解析する (1) 第 2 次長久手町土地利用計画策定にあたってのアンケート調査 1 調査の概要 調査対象は 町内在住住民及び市街化調整区域の土地所有者とし それぞれ 2,

暴風雪災害から身を守るために~雪氷災害の減災技術に関する研究~

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5 この施策に係る事務事業 ( 重要度 貢献度順 ) 番号 事務事業名 魅力個店づくり整備促進事業 歳出決算額 ( 千円 ) 施策への関連性 目的に対する指標 年度目標値 年度実績値 推移 区内の既存個店や出店希望 22 者が行う 魅力的な店舗づ 809 くりを支援することで 魅 力個店の集積を図る

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Microsoft Word - 交特委資料P1~3,P14.doc

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5 E 沿線 駅 : 鹿児島本線博多駅 ( 徒歩 8 分 ) 所在地 : 福岡県福岡市博多区博多駅前 4 丁目 賃料 :35,000 円 共益費 ( 管理費 ):2,500 円 間取り :1K 専有面積 :25.81m2 種別 : マンション 建築年月日 :1989 年 3 月 正面が公園です!!


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Ⅴ.( 仮称 ) 登大路バスターミナル整備計画 3-3. 平面図 (1) 地上部 1 階平面図 33

問 2. 現在 該当区域内に居住していますか 1. 居住している % 2. 居住していない % 無回答 % % 単位 : 人 1.9% 32.7% 65.4% 1. 居住している 2. 居住していない無回答 回答者のうち 居住者が約 65

都道府県の食品ロス削減の取組状況 1 47 都道府県全てから回答があった 平成 8 年度に食品ロス削減に関する取組を 行っている と回答したのは 4 自治体で 食品ロス削減施策に関する予算が ある と回答したのは 5 自治体であった 平成 7 年度の調査結果と比較するといずれも増加している 食品ロス

資料3 日常生活CO2情報提供ツール(仮称)の更新について

参考 調査員調査の対象者へのアンケート ( 平成 21 年 4 月実施 ) の概要 1 目的総務省統計局が調査対象者から直接 調査員調査の実施状況を把握し 平成 20 年度の委託業務の中で調査員調査の検証を行うとともに 今後の民間調査機関への指導についての参考資料を得る また 本アンケートでは 回答

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JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

1. 調査の背景 目的 (1) 本調査の背景 1 自動運転システムに関する技術開発が日進月歩で進化する中 自動運転システムの機能や性能限界等に関する消費者の認識状況 自動運転システムの普及に必要な社会的受容性への正しい理解等 解消すべき不安 ( リスク ) についての事前調査および議論がまだ広範かつ

ニュースレター「SEI WORLD」2016年6月号

スライド 1

試行の概要 試行の目的石狩川滝川地区水害タイムライン ( 試行用完成版 ) を試行的に運用することにより 対応行動や実施手順を確認するとともに 運用結果を検証し 同タイムラインを精査することを目的とする 試行の概要 実施時期 : 平成 29 年出水期 (8 月 ~10 月ごろ ) 実施場所 : 各主

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<第1回> 帯広市都市計画審議会 第二次 都市計画マスタープラン検討                   専門部会

Transcription:

年 福岡市都心部における交通環境改善に向けたソフト施策の活用について 福岡国道事務所計画課 池田稔浩 木村義成 二口卓史他 1. はじめに 福岡市は 九州を代表する人口約 148 万人 ( 千人 ) ( 千人 ) 135,000 1,500 の都市であり 中心市街地である天神 博多地 130,000 125,000 区には九州だけでなくアジア各国からも来訪が 120,000 ある活気あふれる魅力的な都市である しかし 115,000 商業や業務の集積地である天神 博多の都心部 110,000 への交通集中等により 慢性的な交通渋滞 環 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 ( 年 ) 全国人口福岡市福岡市境悪化といった交通問題が発生しており これ ( 予測値 ) ( 予測値 ) ( 実績値 ) まで道路整備やTDM 施策などの対策を講じて図 -1 全国と福岡市の将来人口の推移きたが 全ての交通課題の解決には至ってない状況である また今後も人口の増加が予測され ( 図 -1) なおかつ 自動車の依存度も年々増加していることから ( 図 -2) さらなる交通問題の深刻化が懸念される 一方で 全国的な取り組みとして 近年 市民ひとり一人に対してコミュニケーションを通じて自発的な交通行動の変容を促し クルマの使い方図 -2 福岡市の移動手段の推移を見直す取り組みである モビリティ マネジメント が各地で展開され 渋滞の緩和やCO2 排出量の削減効果などが報告されている 本稿は 昨年度に実施したモビリティ マネジメントの取り組みと効果検証 さらには ソフト施策の一環として古賀市において実証運用した ITSを活用したパーク & ライド の取り組みと評価 そして今後の展開について紹介する 1,450 1,400 1,350 1,300 1,250 1,200 資料 : 北部九州圏 PT 調査 2. モビリティ マネジメントの取り組み 2.1. モビリティ マネジメントとは? モビリティ マネジメント ( 以下 MMという ) とは 過度にクルマに頼る状態 から 公共交通や徒歩 自転車などの交通手段を適度に (=かしこく) 利用する状態 へ少しずつ変えていく交通マネジメントの施策である つまり 無理にクルマから離れさせることではなく 自ら納得した上でクルマ利用を控えてもらい 公共交通や徒歩 自転車などを使ってもらう自発的な交通行動の転換を促していくための取り組みである

2.2. 過年度の MM プログラム実施概要 福岡国道事務所では 平成 17 年度より MM プログラムを実施している 平成 22 年 度までに実施してきたプログラムの概要について以下のとおり整理した ( 表 -1) また 関係機関の各種施策を連携し継続的に実施するための組織として平成 20 年度 より 福岡モビリティ マネジメント推進連絡会 (fuku-pomm) ( 座長 : 京都大学藤井聡 ) を立ち上げ 関係機関と連携したプログラム手法の検討および実施をしている 時期プログラム名実施地区対象者 H 17 家庭訪問型プログラム南区長住 H18 区役所窓口プログラム城南区 H19 大規模なポスティングプログラム城南区 H22 ポスティングプログラム Web プログラム 表 -1 過年度 ( 平成 22 年度まで ) のプログラム実施概要 東区 居住者 [1,054 人 ] 転入者 [434 人 ] 居住者 [36,000 人 ] 居住者 [18,000 人 ] 概要家庭訪問による対話方式のコミュニケーションによる情報提供を行い 居住者の自発的な交通行動の転換を促す施策 [ 効果 ] クルマ利用時間 20% 減少 (2ヶ月後) 情報提供年 9ヶ月後も効果継続を確認公共交通情報の所有が少なく 移動に関して確立されていないと考えられる福岡市外からの転入者を対象に情報提供し 転入者の自発的な交通行動の転換を促す施策 [ 効果 ] 鉄道利用時間 52% 増加 バス利用時間 18% 増加 情報提供 1 年後も効果継続を確認より 大規模 で より 効率的 な効果を得るために 大勢の居住者にポスティング方式の情報提供を行い 居住者の自発的な交通行動の転換を促す施策 [ 効果 ] クルマ利用時間 8.5% 減少 地下鉄七隈線の乗車人員 3.6% 増加従来の ポスティングプログラム と Webを活用したプログラム による情報提供を行い 定性的な行動変容の差異を検証 [ 結果 ] アンケート回収率ポスティング :10% Web:2% 公共交通への転換の可能性は大きな差異はない 今後に向けた新たなプログラムを展開するにあたり 上記の過年度プログラムの実績を踏まえて 比較的に大規模な実施に適していると考えられるポスティング形式とWeb 形式を選定した 平成 23 年度の取り組みは 将来的に自治体が主体的かつ継続的に実施できるように実施規模や得られる効果と掛かるコストを考慮し Web 形式 とした しかし平成 22 年度も同様にWebを活用したプログラムを行ったが 前回のWeb 方式の改善として MM の効果を計測するための情報を提供しないグループの設定やアクセス率 回答率の向上を目指し 初めての試みとしてプログラム対象者をWebアンケートモニターとした 2.3.Webアンケートモニターを対象としたMMプログラム 2.3.1 実施エリアの選定福岡市は 天神 博多およびその周辺部において 渋滞が発生している 自動車すべてが天神 博多を目的とするわけではないものの これらの都心部へ集中する自動車を都心部へ集中する自動車を他の交通手段に転換することは 都心部の渋滞緩和に貢献することが期待できる このため 自動車を用いて多くの人が移動している地域として 天神へ自動車を利用した移動が多い地域をプログラム実施エリアとして選定した 図 -3 ゾーン別天神への自動車分担率 ( 私用目的 ) 資料 : 北部九州圏 PT 調査

自動車に過度に依存している地域の選定に あたっては 次の選定条件を満たす地域を抽出 した 1 天神への自動車分担率が高い地域 ( 図 -3) 2 天神への自動車分担率が 近年急激に上昇 した地域 ( 図 -4) 公共交通が充実しており 上記 1 または 2 に 該当する地域を実施候補エリアとして設定した 結果 香椎エリア 姪浜エリア 外環南部エリア 雑餉隈エリアの 4 エリアを抽出した Web プログラム実施対象エリアは 福岡市の 郊外部に位置し 相対的に自動車に依存している と考えられる 福岡市東区 福岡市南区 福岡市西区 の Web アンケートモニターを対象 とした ( 図 -5) 実施にあたり 自動車を運転する可能性の高い 層として 20 代以上のアンケート モニター (3 区合計 13,203 名 ) を選定 してプログラムを実施した ( 表 -2) 2.3.2 プログラムの実施 Web アンケートを用いたプログラムは 1 コミュニケーションアンケート 2 事後ア ンケートと 3 フィードバックで構成する ( 図 -6) アンケート画面へ誘導する URL を含むメールを配信 モニターがアンケート画面にア クセス 日常の移動状況を伺うとともに かしこいクルマの使い方に向けた態度 行動 変容を促すために クイズ形式を用いた簡単な動機付けを行うアンケート調査を実施し た ( 図 -7) 表 -2 Web アンケートのモニター数 福岡市西区 福岡市南区 図 -4 ゾーン別天神への自動車分担率の増減 ( 私用目的 ) 資料 : 北部九州圏 PT 調査 姪浜エリア 香椎エリア 外環南部エリア 雑餉隈エリア 福岡市東区 凡 例 MM 施策実施候補エリア 人口 0 ~ 1000 1000 ~ 2000 2000 ~ 3000 3000 ~ 4000 4000 ~ 5000 > 5000 交通ネットワーク 鉄道主要幹線道路 図 -5 Web アンケートの対象エリア資料 : 平成 17 年国勢調査 クイズ形式で回答を促した 図 -6 プログラム (Web アンケート ) の全体構成 図 -7 コミュニケーションアンケートの流れ

2.3.3 効果検証福岡市東区 南区 西区の3 区合計 13,203 名 のWebアンケートモニターに対してコミュニケーション調査については 1,976 名 (15.0%) 事後調査については 1,543 名 (11.7%) からの回答を得た 平成 22 年度に実施したWebプログラムでは 9,379 世帯 を対象にポスティングにて配布したチラシにWebアンケートの協力を依頼した結果 コミュニケーション調査については 163 世帯 (1.7%) 事後調査については 47 世帯 (0.5%) の回収のみであったことから Webアンケートモニターを活用したプログラムのほうが より効率的に参加者を募集することが可能であることが確認できた 移動に関する意識の変化について 健康 環境 安全 コストに関する情報を事前提供したグループ ( 施策群 ) と提供してないグループ ( 制御群 ) との比較を行った 健康に関する意識の変化として 施策群にはクルマからバス 電車に変えることによる消費カロリーについて情報提供を行った結果 制御群のポジティブな意識が3.6% 低下していることに対し 施策群は4.6% 向上した ( 図 -8) 他に環境 安全 自動車利用に関する意識の変化も概ね同様な結果図 -8 健康意識の変化となった また プログラム実施前後の自動車利用時間の変化を見ると3 区合計で6.1% の減少となった 西区においては もともと自動車の利用が多く かつ情報提供前の意識 情報提供への反応が相対的に低かったことが この結果の一つの要因と考えられる ( 図 -9) 図 -9 自動車利用時間の変化 図 -10 自動車利用からの転換の有無 図 -11 自動車利用からの転換内容

コミュニケーション調査以降 クルマ利用を他の交通手段に変更したことが 一度でもあった と回答した人は約 30% いた ( 図 -10) 転換内容としては クルマの代わりに電車やバスを使う が55% 程度と最も多く 次いで クルマの代わりに自転車やバイクを使う が35% 程度となっている ( 図 -11) また プログラム実施前後の1 日当たりCO2 排出量の変化を見ると CO2 排出量が約 6% 1 日当たり約 290kg 減少し これは福岡ドーム (7ha)1.4 個分の面積の土地に木を植えた時のCO2 吸収量に相当し 今回の取り組みが有効であることが確認できた ( 図 -12) 図 -12 参加者当たりの CO2 排出量の変化 3. ITS の取り組み 3.1. 古賀市におけるパーク & ライド JR 古賀駅 3.1.1 実施箇所の選定平成 22 年度の福岡市西区橋本で実施したITS 活用パーク & ライドの成果を基に ETC と 携帯電話 を連携し 他の地域でも従来のパーク & ライドの更なる利用促進を図る目的で 実施可能な地域の検討と実証運用を行った 具体には 福岡市郊外で福岡市都心部まで自動車による通勤圏内に入る地域で かつ交通結節点に近接している駐車場を条件に候補地を抽出し 調整した結果 JR 古賀駅に近い駐車場を選定した ( 図 -13) JR 古賀駅周辺駐車場ゲート 実施駐車場 3.1.2. 実施内容 図 -13 ITS 活用パーク & ライド実施位置図 平成 23 年 9 月 12 日より JR 古賀駅近くで行った ITS を活用したパーク & ライ ド の実証運用は 以下のサービス内容で実施した ( 表 -3) 表 -3 古賀で実施した P&R の特長 1ETCを使って幅寄せいらずの入出庫が可能に駐車場のゲートに設置したETCアンテナが あらかじめ登録した車載のETCカードリーダーのID を読み取り バーが自動開閉 これにより発券機 精算機に幅寄せせずにスムーズな入出庫が可能 また 入庫直後の時刻に合わせてJRの時刻表や列車遅延等の情報を携帯電話に配信 ( 図 -14) 2 携帯電話への情報配信 JR 古賀駅の発車時刻について 入庫直後の時刻から3 本先まで配信 JR 鹿児島本線上下線の列車が事故 災害等で30 分以上の遅れが見込まれる場合に配信 駐車場より運営 管理に関するお知らせや駐車場周辺のイベント等の情報を配信 ( 図 -15)

自宅 クルマ 駅 古賀駅 都心部駅 P&R 駐車場 アンテナ設置 JR の発車時刻等の情報を受信 制御盤設置 図 -14 古賀市におけるパーク & ライドの流れ 図 -15 携帯電話への配信内容 3.1.3. 評価利用者のアンケートで ETCゲートの自動開閉サービスで便利になったとの回答が殆どであったが 改善要望として代車利用時の対応策や利用料金の自動引き落とし精算等のニーズがあった また 携帯電話への情報配信については ほぼ定時性の保たれたJRのパーク & ライドのため 利用の必要性を感じる方は少なかったが JRとバスの乗り継ぎ情報のニーズがあった 駐車場事業者やゲート保守業者からは コストに関する問題が挙がったが 利用者から今回のサービス内容に対して利用料の上乗せをしても利用意向があることを確認したため 他地域へ展開するためには これを踏まえて導入費用や運営費用を考慮したサービスモデルの仕組みの構築が必要である ( 表 -4) 表 -4 利用者 事業者からの意見 利用者からの意見 ( 回答数 :7) ETCゲートについて精算機への幅寄せの必要がなくなった (6) 精算機での窓の開閉をする手間が省けた (7) 代車利用によるETCと駐車場カードの併用希望 (4) ETCによる自動引き落とし精算希望 (4) 携帯電話への情報配信について直近の時刻表が分かったので慌てず乗車できた (2) JRとバスの乗り継ぎ情報の希望 (2) 今回の付加サービスの貨幣価値駐車料金にプラス500 円程度は加算されてもよい (6) 事業者からの意見駐車場事業者利用者の半数近くはETC 車載器のない車両のため 開発費を出してまでシステムを改善しても回収費がペイ出来ないと考えるゲート保守業者現状は受注生産のため ETCシステムの導入費用を抑えるためにはパッケージ化等が必要 4. 今後の展開に向けて MMプログラムの対象エリアとして抽出した福岡市東区 ( 香椎エリア ) 西区( 姪浜エリア ) 南区( 外環南部エリア ) 博多区( 雑餉隈エリア ) において 計画的にMMを展開していくこととするが その際には 平成 23 年度に実施したWeb 方式のプログラム実施のノウハウを有効に活用するとともに 平成 22 年度以前に実施したポスティング方式についての有効性が実証されていることも踏まえて展開していきたい 併せて MMとITSを活用した仕組みをコラボすることにより クルマから公共交通等への転換意識を更に高め 効果が持続できるような取り組みを実践していきたい