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高度 FRP リサイクルシステムの開発 ~ 混合溶剤による CFRP の化学処理リサイクル ~ 坂本大輔 * 1 関根正裕 * 2 Development of advanced FRP recycling system -Chemical processing of CFRP recycling in a mixed solvent- SAKAMOTO Daisuke* 1,SEKINE Masahiro* 2 抄録本研究では 常温常圧下で炭素繊維および樹脂を回収することを目的として 混合溶剤による熱可塑性 CFRPの化学処理リサイクルについて検討した 熱可塑性 CFRPのマトリックス樹脂として ポリカーボネート (Polycarbonate (PC)) を使用した ハンセン溶解度パラメーター (HSP) を利用して混合溶剤を探索し NMP-THF-アセトン系 3 種混合溶剤を選定した 混合溶剤により 常温 常圧下でCFRPプリプレグの溶解 回収実験を行った結果 PCを溶解することができ 炭素繊維 (CF) およびPCを回収することができた キーワード : 炭素繊維強化プラスチック (CFRP), ポリカーボネート, リサイクル, 混合溶剤, ハンセン溶解度パラメーター (HSP) 1 はじめに樹脂にガラス繊維 炭素繊維 (CF) などを混合させ強度を増した繊維強化プラスチック (FRP) は 高強度と軽量 耐水 耐候 耐久 耐薬品などの特性を有し 浴槽から航空宇宙分野まで幅広い用途で利用されている 中でも 樹脂に熱可塑性樹脂を使用した熱可塑性炭素繊維強化プラスチック (CFRP) は 成形時間の短縮が可能であることから 今後 自動車産業への普及が見込まれている 1,2) 一方 使用量の増加は 処分や再利用の難しい成形廃材 不良品 廃棄廃材の大量発生につながり 環境負荷の増大が懸念されている そこで 本研究では 常温常圧下で炭素繊維および樹脂を回収することを目的として 混合溶剤 * 1 技術支援室化学技術担当 * 2 技術支援室戦略プロジェクト推進担当 による熱可塑性 CFRPの化学処理リサイクルについて検討した 2 実験方法 2.1 試料 CFRP のマトリックス樹脂として ポリカーボネート (Polycarbonate (PC)) を使用した PC は 熱可塑性樹脂の中では 比較的溶剤に溶けやすいため 化学処理リサイクルに適した樹脂と考えられる さらに PC は 高い耐衝撃性を有していることから PC をマトリックスとした CFRP の研究も進められている 3) 溶解 回収実験 CFRP プリプレグには PC ペレット ( パンライト L-1250Y 帝人) を使用した 溶解実験に用いた試薬は 市販品をそのまま使用した

2.2 CFRP プリプレグの作製 シート状に成形した PC を CF 織物 ( 平織 3 K) に重ねて 熱プレス機で 300 無圧で 2 分 間保持して樹脂を溶融させた後 0.8MPa で 2 分 間加圧して CFRP プリプレグを作製した 2.3 溶解 回収実験 PC ペレット 1.0g に混合溶剤 10 ml を加え 25 の恒温器に所定時間静置した 自然ろ過後 残 留物を 105 で乾燥し 処理前後の質量から溶解 率を算出した CFRP プリプレグの溶解 回収実験では 3cm 12cm に切断した厚さ 0.4mm のプリプレグに混 合溶剤を 30ml 添加し 室温で 3 時間静置した プリプレグを取り出し 混合溶剤で洗浄したの ち CFRP プリプレグを 105 の乾燥器で乾燥 し 処理前後の質量から溶解率を算出した 処理後の混合溶剤からの PC の回収では 混合 溶剤に対して 20% の水を添加して生成した固形 物をろ過し 水洗 乾燥し 質量を測定した 2.4 CFRP プリプレグの炭素繊維質量含 有率の測定 JIS K7025 に規定される燃焼法により CFRP プ リプレグの炭素繊維質量含有率を測定した 2.5 HSP を用いた混合溶剤の探索 従来 PC の溶剤としては 塩化メチレンなど の有機塩素系炭化水素が利用されているが 環境 面 人への有害性の観点から代替溶剤が求められ ている そこで ハンセンの溶解度パラメーター (HSP) を利用して PC の代替溶剤を探索した HSP は ヒルデブランドの溶解度パラメータ ー (SP 値 ) を分散項 (dd) 極性項 (dp) 水素結合項 (dh) の 3 つに分解し 3 次元ベクトルとして表し たものである そして そのベクトルが似ている もの同士 ( ベクトル間の距離 (HSP-D) が短い ) は溶解性が高いと判断する HSP-D は 溶質と溶剤の溶解度パラメーター より 以下の式により求められる 4) HSP-D(Ra)={4*(dD1-dD2) 2 + (dp1-dp2) 2 +(dh1- dh2) 2 } 0.5 ここでは HSP-D の計算をソフトウェア Hansen Solubility Parameter in Practice (HSPiP ver. 4.1) により行った 3 結果及び考察 3.1 HSPiP を用いた混合溶剤の探索 PC の代替溶剤の例として N- メチル -2- ピロリ ドン (NMP) があげられる NMP は 安全性が高 く 引火点も高いので 取扱い性が良い溶剤であ る これまでに NMP とリモネンなどのテルペ ン系炭化水素との混合溶剤による PC の溶解処理 も検討されている 5) そこで NMP を主成分と した混合溶剤の探索を HSPiP により行った PC のハンセン溶解度パラメーターは (17.3 9.1 7.6) と設定し HSPiP により探索 した結果を表 1 に示す この結果より NMP と の混合溶剤として Butyl Diglycol Acetate (BDA) Tetrahydrofuran (THF) Glycerol Triacetate (GT) を選定した 表 1 2 種混合溶剤の探索結果 溶剤 1 溶剤 2 NMP Butyl Diglycol Acetate (BDA) Tetrahydrofuran (THF) Glycerol Triacetate (GT) 溶剤 1 (vol.%) 3.2 PC ペレットの溶解 回収実験 3.2.1 2 種混合溶剤による溶解実験 溶剤 2 (vol.%) HSP-D 62 38 0.1 51 49 0.3 59 41 0.4 PC ペレットの混合溶剤として NMP と表 1 に あげた BDA THF GT を各種比率で混合し 溶 解実験を行った結果を図 1 に示す 3 種類の混合 溶剤の中では NMP-THF 系が良好な溶解率を示 し NMP:THF=50:50~60:40 では PC ペレッ トが 100% 溶解した HSP-D が小さい BDA の溶解 率が THF よりも低くなった原因として BDA の 分子は THF よりも大きいため 溶剤がポリマー 中に浸透できず 溶解しにくくなったと推定され る 6)

合溶剤および塩化メチレンを使用し PC ペレットを溶解させた 溶解後の溶剤に 水の添加または自然乾燥により PC を回収した結果を表 2 に示す 水の添加 自然乾燥による回収方法ともに回収率は 97% 以上と良好な値を示した ただし いずれの回収物も塩化メチレンによる回収物とは異なり 白色物であったため 赤外分光光度計 (FT- IR) および熱分析により物性評価を行った 表 2 PC の回収結果 図 1 NMP と各種溶剤との 2 種混合溶剤による PC の溶解率 ( 処理時間 6 時間 ) 3.2.2 3 種混合溶剤による溶解実験次に NMP-THF 系 2 種混合溶剤よりさらに溶解率を向上させる添加溶剤を HSPiP により探索した その結果 NMP-THF 系 2 種混合溶剤の HSP-D は 0.3( 表 1) であったが NMP-THF-アセトン系 3 種混合溶剤では HSP-D が 0.1 まで低下することが分かった そこで NMP-THF-アセトン系の 3 種混合溶剤による溶解実験を行った結果を図 2 に示す NMP-THF にアセトンを 6% 添加することにより アセトン無添加よりも溶解率が向上し 95% となった 図 2 NMP-THF-アセトン混合溶剤による PC の溶解率 ( 処理時間 3 時間 ) 3.2.3 PC の回収 PC の溶剤として NMP:THF=50:50 の 2 種混 1-1 1-2 2 混合溶剤 NMP:THF=50:50 塩化メチレン 溶解率 (%) 100 100 100 回収方法 水添加 自然乾燥 自然乾燥 回収率 (%) 97.6 99.9 95.4 回収物 白色スポンジ状 白色粉末 透明フィルム状 3.2.4 回収物の物性評価回収物を FT-IR(Thermo Fisher Scientific 製 Nicolet in10mx/iz10) を用いて 1 回反射 ATR 法により測定した結果を図 3 に示す 回収物は PC の波形であり PC ペレットと比較して いずれの回収方法でもスペクトルに大きな差異はないことが確認できた 次に 回収物の示差熱熱重量 (TG-DTA) 測定 ( リガク製 TG-DTA8120) を行った結果を図 4 に示す 測定は 室温から 600 まで昇温速度 10 /min にて行った DTG 曲線を比較すると 混合溶剤による回収物 (1-1 1-2) は PC ペレットよりも分解温度はやや低いが 大きな差異はみられなかった さらに 回収物の示差走査熱量 (DSC) 測定 ( リガク製 DSC8230) を行った結果を図 5 に示す 測定は 室温から 300 まで昇温速度 10 /min にて行った PC ペレット 塩化メチレン回収物は 150 付近にガラス転移点のみが現れた 一方 NMP-THF による回収物は 230 付近に融点のみが現れた この結果より 溶剤による回収物は結晶化を起こして白色になった PC と

考えられる 図 3 回収物の FT-IR スペクトル 真を図 6 に SEM 画像を図 7 に示す 燃焼法により測定した CFRP プリプレグの繊維質量含有率 (52%) から 溶解処理後の CF 回収率を求めると 100% であった 回収した CF は 元の繊維長を保持したままの状態であり SEM 画像からも見かけ上に大きな差異は見られなかった さらに CFRP プリプレグを溶解させた後の混合溶剤に水を添加して PC を回収した結果 回収率は 93% であった 以上の結果より 混合溶剤により CFRP プリプレグ中の PC の溶解 除去および CF と PC の回収が可能であることが分かった (a) 処理前 (b) 処理後 図 6 溶解処理前後の CFRP プリプレグ 図 4 回収物の TG-DTA 測定結果図 5 回収物の DSC 測定結果 3.3 CFRP プリプレグの溶解 回収実験 CFRP プリプレグの溶解には NMP:THF: アセトン=47:47:6 の比率で混合した溶剤を使用し 溶解 回収実験を行った 溶解処理前後の写 (a) 未使用 (b) 処理後図 7 CF の SEM 画像 4 まとめ (1) 3 種混合溶剤による PC ペレットの溶解 HSP を用いて PC の混合溶剤を探索し NMP- THF-アセトン系 3 種混合溶剤を選定した 3 種混合溶剤により PC ペレットの溶解実験を行った結果 溶解率は 95% であった (2) PC ペレットの回収 PC ペレットを溶解した混合溶剤を水添加または自然乾燥することにより PC を 97% 以上回収することができた 回収した PC には低分子量成分はみられなかったが PC ペレットとは異なり結晶化が認められた (3) CFRP プリプレグの溶解 回収 3 種混合溶剤により CFRP プリプレグの溶解 回収実験を行った結果 PC の溶解率 100% CF の回収率 100% PC の回収率 93% となった

以上の結果より 混合溶剤により 常温常圧下で CFRP プリプレグ中の PC の溶解 除去および CF と PC の回収が可能であることが分かった 今後は CFRP からの炭素繊維 樹脂のリサイクルおよび 溶剤の回収 再利用も含めたリサイクルシステムについて検討していく予定である 参考文献 1) 平成 22 年度 NEDO 中間評価報告書, サステナブルハイパーコンポジット技術の開発 2) 影山裕史, 廃棄物資源循環学会誌 24(5), 351,(2013) 3) 田中和人, 柏原仁, 片山傳生, 材料 60(3), 251,(2011) 4) ハンセン溶解度パラメータ ユーザーフォーラム,https://pirika.com/NewHP-J/JP/4Beginner. html 5) 清水和夫 :CD DVD などの情報記憶媒体の処理方法, 特開 2009-84538 6) ハンセン溶解度パラメータ ユーザーフォーラム, http://www.pirika.com/newhp-j/jp/ 10reason.html