T ダイの流動解析 HASL 社 FlatCAD を使用した池貝製 T ダイの流動解析事例 各種の樹脂粘度を考慮した T ダイの流路設計 Rich Green on Land Deep Blue in Sky and Sea 株式会社池貝開発室横田新一郎 secj_yokota@ikegai.co.jp
手順 1 T ダイの設計フロー 製品シート フィルムの仕様を検討 押出機の条件 T ダイ幅 ロール方向の確認 材料手配ヒータ容量吊具ネック取付 3D モデル 外形全体図検討流路仮検討流路決定正式部品図 樹脂データ入手 仮流路 + 樹脂データで解析 2 樹脂判断 仮流路 ( 案 2)+ 樹脂データで解析 2 解析データ作成 1 HASL 社 FLATCAD HASL 社 FLATCAD HASL 社 Viscfit&Polybank 3 池貝解析結果シート 機械加工開始 HASL 社の解析ソフトは 設計フローの中で重要な位置を占める
手順 2-1 1 の樹脂判断 粘度 せん断速度 温度 仮テーマ : 高粘度樹脂の幅広 T ダイの設計 PP の高粘度タイプがあると仮定 ( 例 : 超高密度 PE フィラー入 プラマグなど ) あらかじめ主要樹脂が POLYBANK に入っており そのデータを使ってグラフにプロットする 粘度データが入手してない場合など 近い粘度を選定して仮データを作る際に便利である TEXT データ
手順 2-2 1 の樹脂判断 22000 θ 30000 Carreau( カロウ ) モデルと Power-lowモデルでは計算式が違うため 一部の数値が変わってくる またP0wer-lowモデルは低せん断領域の上限を仮定して モデルを作る nの数値は 粘度乗数粘度乗数であり せん断速度が上がったとき 粘度の変化に違いがでる 流路設計の判断が出来る
手順 2-3 高粘度樹脂の仮定する 200000 θ 小 パターン 1 通常せん断速度角度小 300000 前項のPP 樹脂の粘度を 10 倍して 高粘度の樹脂を仮定上はnの乗数が高いもの下はnの乗数が低いものを仮定する θ 大 パターン 2 通常せん断速度角度大
手順 2-4 高粘度樹脂の仮定する 同じ位置 1300000 パターン 3 低せん断速度 下側通常せん断速度角度大 前項の通常せん断速度よりせん断速度が低い樹脂として仮定した 通常のキャピロレオメータによる粘度測定は せん断速度が 10~ で 高粘度樹脂の場合 押出量が少ないため せん断速度が上がらないと予想される 前のパターン 1 と 2 では低せん断速度が必要なため 仮定が不十分である 樹脂を実測したほうが良い
手順 3-1 モデルを作る 2000 幅 T ダイ 設計思想角度 2 でプリランドを締めてサイド方向に流すプリランドからリップ出口まで圧を高めて 滞留時間がゆっくりと成形するイメージ モデル 1 角度 2- プリランド 2
手順 3-2 モデルを作る 2000 幅 T ダイ 設計思想角度 4 でサイドに多く樹脂を流す ただプリランドが 3mm のため 中央とサイドに分岐して流れる 圧が低く 滞留時間が短く成形するイメージ モデル 2 角度 4- プリランド 3
手順 4-1 解析用のモデルを作る モデル 2 角度 4- プリランド 3 平面図座標設定 この間 10 分 マニホールド断面設定
手順 4-2 解析用のモデルのメッシュを作る モデル 2 角度 4- プリランド 3 温度設定 マニホールド深さ確認 この間 5 分 メッシュ設定
手順 4-3 解析結果 解析結果モデル 1 角度 2- プリランド 2 パターン 3 低せん断速度 押出量 30kg/H 最大圧力が変化していることが確認できる 押出量 50kg/H
手順 4-4 モデル 1 角度 2- プリランド 2 押出量 30kg/H 30kg/H の時 せん断速度 10 程度 300kg/H の時 せん断速度は 100 程度よって 幅広ダイで高粘度の場合 低せん断速度の粘度必要なことが判明パターン 3 を使用して良い 押出量 300kg/H
手順 4-5 モデル 1 角度 2- プリランド 2 パターン 1 通常せん断速度角度小 押出量 30kg/H 圧力 滞留時間 流速 中央 100s サイド 2500s 流速均一
手順 4-6 モデル 1 角度 2- プリランド 2 パターン 2 通常せん断速度角度大 押出量 30kg/H 圧力 滞留時間 流速 中央 40s サイド 1500s 中央流速早い
手順 4-7 モデル 1 角度 2- プリランド 2 パターン 3 低せん断速度 押出量 30kg/H 圧力 滞留時間 流速 パターン 1 と 2 70MPa パターン 3 50MPa 中央 100s サイド 2500s 流速均一
手順 4-8 モデル 2 角度 4- プリランド 3 パターン 1 通常せん断速度角度小 押出量 30kg/H 圧力 滞留時間 流速 モデル 1 圧力 70MPa モデル 2 圧力 40MPa 中央 100s サイド 2500s 流速均一
手順 4-9 モデル 2 角度 4- プリランド 3 パターン 2 通常せん断速度角度大 押出量 30kg/H 圧力 滞留時間 流速 中央 100s サイド 2500s 中央流速早い
手順 4-10 モデル 2 角度 4- プリランド 3 パターン 3 低せん断速度 押出量 30kg/H 圧力 滞留時間 流速 パターン 1 と 3 40MPa パターン 2 60MPa 中央 100s サイド 2500s 滞留時間同じ 流速均一
手順 4-11 モデル 1 とモデル 2 通常の粘度樹脂 押出量 30kg/H モデル 1 の流速 モデル 2 の流速 高粘度樹脂多少中央早い通常粘度樹脂多少サイド早い
手順 5-1 モデル 2 のメッシュデータを修正 モデル 2 モデル 2 のプリランドは 3mm であり 流速出口のグラフで見ると 多少中央に流れやすい これを解決するために プリランドに樹脂の抵抗になる島を設ける 島のスキマを 1.5mm に設定すると 樹脂がどのような挙動になるかを検証する FLATCAD では メッシュの修正と樹脂の挙動をみれるストリームラインの機能が備わっている
手順 5-2 プリランド 3mm 均一のストリームライン 中央の部分に樹脂が多く流れ サイドには樹脂が流れにくい
手順 5-3 プリランド 3mm にスキマ 1.5mm の島を設けた場合 中央の部分に樹脂が流れにくくなり サイドに樹脂が流れやすくなる チョークバーとして補正を考えるか 高圧力のために固定式を考えるか検討の余地有り
まとめ 高粘度樹脂の場合 2 種類の粘度計算式では 樹脂の圧力や流速が変わる 高粘度樹脂に対して せん断速度が低い領域の粘度も予測する 2 種類の T ダイのプリランドが違うため 最大圧力が違う 2 種類の T ダイの滞留分布は同じように思われるが モデル 2 のサイドに滞留が多い 2 つのモデルとも 粘度指数が変化すると 圧力が変わる 出口の流速分布を確認すると どちらのモデルも出口流速は均一に近い ただし 圧力の差が大きい 通常粘度と高粘度の流速を比較すると 中央とサイドの流速傾向が逆になる メッシュ修正などを使えば モデルの修正が可能である ( 一般的にはモデル修正は 1 からやり直す ) モデル作成と解析時間が短いので リトライがしやすいメッシュモデルと樹脂モデルを組み合わせれば 条件を変えても樹脂圧力や滞留分布や流速など 予想通りの結果になった 解析結果を踏まえて モデルを修正することも可能であるため T ダイの設計やラボでの活躍が期待される 私個人としては 1 日ずっと使用しても いろいろな条件が試せるので 飽きずに集中して使用できて 思い通りの結果が出たときなどは楽しくなる シュミレーションは たまに使うのでは実力は発揮できず 継続的に使うことにより T ダイのパターンのひらめきや樹脂の傾向がつかめるので スキルアップツールにもなると感じている