タンニン酸を用いた師範RO/NF膜の酸化剤体制処理

Similar documents
タンニン酸を用いた師範RO/NF膜の酸化剤体制処理

技術資料 JARI Research Journal OpenFOAM を用いた沿道大気質モデルの開発 Development of a Roadside Air Quality Model with OpenFOAM 木村真 *1 Shin KIMURA 伊藤晃佳 *2 Akiy

密集市街地における換気・通風性能簡易評価ツールの開発 (その2 流体計算部分の開発)」

粒子画像流速測定法を用いた室内流速測定法に関する研究

風力発電インデックスの算出方法について 1. 風力発電インデックスについて風力発電インデックスは 気象庁 GPV(RSM) 1 局地気象モデル 2 (ANEMOS:LAWEPS-1 次領域モデル ) マスコンモデル 3 により 1km メッシュの地上高 70m における 24 時間の毎時風速を予測し

(Microsoft PowerPoint - \216R\223c\221\262\230_2011 [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

Microsoft Word - 表紙

<4D F736F F D2091E6358FCD31328B438FDB A5182F08ADC82DE816A2E646F6378>

ARCHITREND ZERO ボリューム計画図編

Microsoft PowerPoint - 大阪府-1

草 津 市 景 観 形 成 ガイドライン 71

PowerPoint プレゼンテーション

巻 4 号 (2017) 生産研究 で与えられる. ただし, 適用距離ならびに建ぺい率を考慮し, 建築物の前面位置 が取りうる範囲を ただし.. に制限する. 本稿では現実的なパラメータ設定を鑑み, は成立するものと仮定する. また, ならば, 道路斜線制限を受けず, 常に容積率の上限

目的 2 汚染水処理対策委員会のサブグループ 1 地下水 雨水等の挙動等の把握 可視化 が実施している地下水流動解析モデルの妥当性を確認すること ( 汚染水処理対策委員会事務局からの依頼事項 )

14 D033 CR:16 15 E015 CR:18 16 E060 CR:15 17 D E E E E E E d E E E B D D

PowerPoint プレゼンテーション

Ⅰ. 概要 団地型マンションの修繕に対する資金 ( 会計 ) は棟別に会計するのが理想とされるが 実際に棟別会計が必要か? 団地型マンションで 現在一般的に取られている会計手法を整理し 棟別会計の利点を確認 実際にはどのように棟ごとに修繕費の格差が生じているかを検証 団地型マンションにおける修繕費の

予報時間を39時間に延長したMSMの初期時刻別統計検証

Microsoft Word - (新)滝川都市計画用途地域指定基準121019

千里ニュータウン地区の今後の土地利用の考え方 豊中市 はじめに市は 平成 4 年 (1992 年 )7 月に 千里ニュータウン地区住環境保全に関する基本方針 ( 以下 基本方針 という ) を策定し 同地区内で計画される建築物などに対して その用途をはじめ 建築物の建て方 ( 容積率 建ぺい率 高さ

大谷周辺地区 及び 役場周辺地区 地区計画について 木原市街地 国道 125 号バイパス 役場周辺地区 (43.7ha) 美駒市街地 大谷周辺地区 (11.8ha) 地区計画の概要 地区計画とは住民の身近な生活空間である地区や街区を対象とする都市計画で, 道路や公園などの公共施設の配置や, 建築物の

(2) 届出内容の確認方法について 建築計画内容を確認するために 委員会でチェックしやすい届出の 様式を作成しておくと便利です チェックしやすい様式としてチェックシートがあります 建築協定で定めている建築物に関する基準の項目を一覧表にし 建築主や代理者が建築計画の内容を記入できるものにしましょう 数

Microsoft Word - 防露試験ガイドライン doc

untitled

<96B391E8>

結露の発生を防止する対策に関する試験ガイドライン

電子メール テンプレート (標準)


73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

Microsoft PowerPoint - 愛知県-1

スライド タイトルなし

特に条件を定めない 条件付きで緩和する 緩和を認めない B 保存樹木 文化財等 世田谷区みどりの基本条例 ( 平成 17 年 3 月 14 日条例第 13 号 ) 第 9 条に基づき指定された保存樹木等又は 同条例第 18 条の規定に基づく小樹林の保全のために これらの存する土の部分を避けて建築する

物 件 調 書

Microsoft Word - ●決定⑤地区計画-2.docx

第 Ⅱ ゾーンの地区計画にはこんな特徴があります 建築基準法のみによる一般的な建替えの場合 斜線制限により または 1.5 容積率の制限により 利用できない容積率 道路広い道路狭い道路 街並み誘導型地区計画による建替えのルール 容積率の最高限度が緩和されます 定住性の高い住宅等を設ける

表紙

1. 空港における融雪 除雪対策の必要性 除雪作業状況 H12 除雪出動日数除雪出動回数 H13 H14 H15 H16 例 : 新千歳空港の除雪出動状況 2. 検討の方針 冬季の道路交通安全確保方策 ロードヒーティング 2

としてまとめました 準備実験では 試験体の内外に 518 カ所の温度センサー ( 熱電対 ) と 41 カ所の熱流センサー ( 熱流束計 ) を設置して計測を行ったほか ビデオカメラを試験体内に 13 台 試験体外に 9 台設置して火災の様子を観察しました 2.2 準備実験より得られたこと木造 3

Microsoft PowerPoint - H24 aragane.pptx

国土技術政策総合研究所 研究資料

資料 4 H 検討会 木造庁舎計画 設計基準の熱負荷計算について (1) 木造建築物に使用する材料の熱定数表を下に示す 熱伝導率 容積比熱 材料名 λ cρ [W/(m K)] [kj/(m 3 K)] 複合金属サイディング 55% アルミ- 亜鉛めっき鋼板 45 3,600 + 硬質

公津西地区地区計画運用基準

3. 市街化調整区域における土地利用の調整に関し必要な事項 区域毎の面積 ( 単位 : m2 ) 区域名 市街化区域 市街化調整区域 合計 ( 別紙 ) 用途区分別面積は 市町村の農業振興地域整備計画で定められている用途区分別の面積を記入すること 土地利用調整区域毎に市街化区域と市街化調整区域それぞ

区域の整備 開発及び保全に関する方針 地区施設の整備の方針 建築物等の整備の方針 (1) 道路の整備方針区域内外との円滑な交通ネットワークの形成と歩行者等の安全で快適な歩行環境の向上を図るため 街区幹線道路及び区画道路を整備する 生活利便施設や良質な街並みを形成する住宅等の立地を誘導し 地域拠点にふ

平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

3. 試験体および実験条件 試験体は丸孔千鳥配置 (6 配置 ) のステンレス製パンチングメタルであり, 寸法は 70mm 70mm である 実験条件は, 孔径および板厚をパラメータとし ( 開口率は一定 ), および実験風速を変化させて計測する ( 表 -1, 図 -4, 図 -) パンチングメタ

PowerPoint Presentation

ⅱ 調査地点調査地点は 事業実施区域の敷地境界 2 地点とし 調査時において 風上 風下となる地点とした 調査地点を図 7.4-1に示す ⅲ 調査方法調査方法を表 7.4-3に示す 表 悪臭の調査方法 調査項目 悪臭の状況 気象の状況 調査方法 臭気指数 : 三点比較式臭袋法試料採取時の

<967B8E8E8CB196E291E82E786264>

山手地区の概要 面積 約50ha 用途地域 工業地域 建ぺい率 60 容積率 200 高さの限度 第一種高度地区 最高限20m 2


大阪府営門真住宅まちづくり基本構想 平成 25 年 6 月 大阪府 門真市

PowerPoint プレゼンテーション

南栗橋地区の地震被害における道路復旧後の測量に関する説明会 日時 : 平成 24 年 1 月 28 日 ( 土 ) A 地区 午前 10 時から B 地区 午後 2 時から 平成 24 年 1 月 29 日 ( 日 ) C 地区 午前 10 時から D 地区 午後 2 時から 場所 : 栗橋コミュニ

(3) 容積率 1-の改修 + 増設 1-2 現図書館の位置に建替 3ラピオ内改修 容積率 200% 400% 400% 建築可能延床面積 9,846m2以下 15,212m2以下 ( 延床面積 ) (4,923 m2 200%) (3,803 m2 400%) 容積率とは 敷地面積に対する建築物の

金沢都市計画地区計画の変更

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - H30 市税のしおり最終版

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名宮口克一 論文題目 塩素固定化材を用いた断面修復材と犠牲陽極材を併用した断面修復工法の鉄筋防食性能に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 塩害を受けたコンクリート構造物の対策として一般的な対策のひとつである, 断面修復工法を検討の対象とし, その耐久性をより

指定標準 適用区域 建ぺい率 容積率 建築物の高さの最高限度 m 用途地域の変更に あたり導入を検討 すべき事項 ( 注 2) 1. 環境良好な一般的な低層住宅地として将来ともその環境を保護すべき区域 2. 農地等が多く 道路等の都市基盤が未整備な区域及び良好な樹林地等の保全を図る区域 3. 地区計

研究の背景これまで, アルペンスキー競技の競技者にかかる空気抵抗 ( 抗力 ) に関する研究では, 実際のレーサーを対象に実験風洞 (Wind tunnel) を用いて, 滑走フォームと空気抵抗の関係や, スーツを含むスキー用具のデザインが検討されてきました. しかし, 風洞を用いた実験では, レー

別記様式第4

天空率制度の有効性

<4D F736F F D208E9197BF315F B838D C8C768E5A977697CC5F FC C8AEE8F808F808B925F E646F63>

1 目的 建築基準法第 68 条の 5 の 5 第 1 項及び第 2 項に基づく認定に関する基準 ( 月島地区 ) 平成 26 年 6 月 9 日 26 中都建第 115 号 建築基準法 ( 昭和 25 年法律第 201 号 以下 法 という ) 第 68 条の 5 の 5 第 1 項 及び第 2

藤沢市地区計画運用基準 施行平成 30 年 4 月 1 日 る 本運用基準は, 地区計画の届出に際しての審査の画一化及び円滑化を図るため, 必要な事項を定め 項目第 1 建築物等の用途の制限に関する事項第 2 建築物の容積率の最高限度に関する事項第 3 建築物の建蔽率の最高限度に関する事項第 4 建

Microsoft Word - 岡崎駅南リーフレット案【最終】

Microsoft Word - 暱京髟裆 平拒16年(衄ㇳ)32.docx

鹿嶋市都市計画法の規定による市街化調整区域における

新事業分野提案資料 AED(自動体外式除細動器) 提案書

θ の中心 次に 開口直上部分等から開口部の中心線までの距離 :( 垂直距離 ) ( 上図参照 ) を求めます. この を で割った値 = = θ θ の値が大きいほど採光に有利 上式が 採光関係比率 となります. 採光関係比率というのは, 水平距離 : が大きくなるほど大きくなり, 垂直距離 :

Microsoft PowerPoint - 第7章(自然対流熱伝達 )_H27.ppt [互換モード]

5

平成9年度水道事業年報 1概況 2施設

ボルツマンマシンの高速化

<3190DD8C76905C90BF8F E94C5816A2E786C7378>

Bentley Architecture Copyright(C)2005 ITAILAB All rights reserved

Microsoft Word - 高度地区技術基準(H _HP公開用).doc

粒子画像流速測定法を用いた室内流速測定法に関する研究

第2章

画像類似度測定の初歩的な手法の検証

スライド 1

区域の整備 開発及び保全に関する方針地区施設の整備の方針建築物等の整備の方針 (2) 公園 緑地の整備方針地域に親しまれる やすらぎと憩いの空間を形成するとともに 西武立川駅から玉川上水に向けて形成される緑のネットワークの拠点となるよう公園や緑地を配置する (3) その他の公共空地の整備方針各敷地の

地区計画パンフレットP.1

CW単品静解析基礎

<8D5C91A28C768E5A8F91836C C768E5A8F A2E786C73>

用途地域変更の考え方 ( 素案 ) 1 駅 駅前広場 アクセス道路沿道の土地利用の促進 駅 北側沿道 25m 以内及び沿道南側街区を近隣商業地域へ変更 18

目 次 1. 想定する巨大地震 強震断層モデルと震度分布... 2 (1) 推計の考え方... 2 (2) 震度分布の推計結果 津波断層モデルと津波高 浸水域等... 8 (1) 推計の考え方... 8 (2) 津波高等の推計結果 時間差を持って地震が

Microsoft Word - 平屋調査リリース4_所長コメント付)

構造力学Ⅰ第12回

日本橋・東京駅前地区

○新潟県高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行細則

申請者等の概要 ( 第二面 ) 1. 申請者 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 郵便番号 住所 電話番号 2. 代理者 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 建築士事務所名 郵便番号 住所 電話番号 3. 建築主 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 郵便番号 住所 電話番号 4. 設計者 資格

広島市都市計画関係手数料条例の一部改正について ( お知らせ ) 建築基準法施行令の改正に伴い, 小荷物専用昇降機に係る建築物に関する確認申請手数料等を定める とともに, 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の制定に伴い, 建築物エネルギー消費性能 向上計画認定申請手数料等を定める条例改正を

1 ( ( ) ( ) ( )

untitled

Microsoft Word - Hよよ _景観形成ガイドライン (最終)●●● - コピー

1. 目的 本町の第 3 次総合計画において 本町の将来像である ( みんなが主役 やすらぎと健康福祉のまち ) の実現に寄与すべく 本町の市街化調整区域における地区計画の運用にかかる基本的な方針を示すため 市街化調整区域における地区計画運用指針 ( 以下 運用指針 という ) を策定しました この

Microsoft Word - 09池町通り.doc

見直し後11 基準相当1.64GJ/ m2年hh11 基準相当見直しH11 基準と見直し後の省エネ基準の比較について 住宅 建築物判断基準小委員会及び省エネルギー判断基準等小委員会平成 24 年 8 月 31 日第 2 回合同会議資料 1-1 より抜粋 設備機器の性能向上により 15~25% 程度省

Transcription:

戸建住宅の建物配置と通風量の関係に関する研究 竹本優貴 1* 竹林英樹 1* 1 工学研究科建築学専攻 キーワード : 戸建住宅 自然通風 CFD 換気回数 住宅団地 本研究では, 実在住宅モデルを対象として開口面積や主風向と換気回数の関係を分析した. 更に, モデル化した住宅街区を対象として隣棟間隔や角地などの住宅配置と平均通風量比の関係を分析した. 標準的な住宅団地では, 南側と北側の住宅間の換気回数に大きな差が生じるが, 隣棟間隔を広くするか, 雁行配置にすると, 住宅団地全体の通風状態が改善される. 主風向に応じて換気回数が大きくなる場合とあまり変化しない場合があるため, 対象地域の主風向に応じて配置の検討を行う必要がある. 芦屋市内の住宅団地の様に整列配置の住宅団地モデルに配置パターンが類似している場合には計算結果の傾向と概ね一致する. ただし, 周辺のオープンスペースやわずかな形態の違いにより, 換気回数が大きく変化する場合もあるため, 周辺の住宅配置や街区特性の局所的な影響にも配慮する必要がある. 1. はじめに 自然環境との親和性や省エネルギーを意識したライフスタイルを志向する居住者にとって住宅周辺の微気候を有効に活用した環境改善は魅力的な方策である. また, 中間期, 夏期において通風を利用することは, 省エネルギーを図りつつ, 室内温熱環境を改善することに有効である. 通風利用による室内温熱環境改善効果は, 可感気流による体感温度低下効果より, 排熱効果が大幅に大きいことが赤林ら 1) により明らかになっている. 本研究においても室内温熱環境改善効果を排熱効果 ( 換気回数 ) により評価する. 本研究では, 実在住宅モデルを対象として開口面積や主風向と換気回数の関係を分析する. 更に, モデル化した住宅街区を対象として隣棟間隔や角地などの住宅配置と平均通風量比の関係を分析する. 表 1 計算対象住宅 プラン番号 延床面積 (m 2 ) 玄関方位 屋根形状リビング階段 階段位置 1 117.0 寄棟 無 NE 2 117.0 切妻無 NW S 3 118.8 切妻有 E 6 125.5 寄棟 有 N 13 117.0 寄棟 無 N 14 118.0 切妻有 N 15 118.5 EW 切妻無 N 17 122.0 寄棟 有 Center 22 116.0 切妻 無 W 23 116.0 寄棟無 N 24 116.5 N 寄棟有 Center 26 122.5 切妻 有 E 2. 建物形状及び開口条件と換気回数の関係 2. 1 計算の概要 2 階建て戸建住宅 12プランを対象として数値計算を行った. 計算対象住宅を表 1, 計算領域とその中の詳細領域を図 1, 例としてプラン1の解析対象モデルを図 2, 計算条件を表 2に示す. 解析には,RANSモデル系の標準 k-ε 乱流モデルを用いた. 計算領域は詳細領域と周辺領域に分けて設定し, 詳細領域の格子間隔は,100mm 100mm 100mmを基準とし, 開口部の形状や大きさを再現するために, 最小のメッシュ幅を60mmとし, 周辺領域は徐々に広がる不等間隔とした. 開口部は網戸の設置を考慮し, 開口率 70% とした. 全 96パターン (12プラン 8 風向 ) の計算結果で開口部の風速を算出した. 図 1 計算領域 ( 左 ) と詳細領域 ( 右 ) 図 2 解析対象モデルの例 ( プラン 1)

2. 2 開口面積と換気回数開口部の流出入風速から各プランの換気回数を求め, 建物形状と換気回数との関係を考察する. 各プランの方位別開口面積を図 3に示す. 南側開口面積を図 3に示す. 南側開口面積は, プラン3とプラン22を除いて非常に大きく, 東, 西, 北側開口面積は全てのプランで小さい. 開口面積率 ( 東 西 南 北 ) と換気回数 ( 風向 E W S N) の関係を図 4に示す. 全体的に南側開口面積率は大きく, 北側 東側 西側開口面積率は小さい. 北側 東側 西側開口面積率の増加に伴い, 換気回数も増加する. 南側開口面積率と換気回数には相関がみられず, ばらついている. 以上より, 主風向側の開口面積が増加すると, 換気回数は増加するが, 大きな開口面積を有する南側では, 既に大きな換気回数になっており, 開口面積が増加しても換気回数は変化しない. 表 2 計算条件 熱流体解析ソフト STREAM ver.8, ver.9 乱流モデル 標準 k-εモデル (RANSモデル系) 流入境界 基準高さ17.2mを3.8m/sとしたべき乗則 流出境界 自然流出流入境界 ( 法線速度勾配 0) 側面境界上空境界地表面境界建物壁面境界圧力損失境界 free-slip 条件一般化対数則条件開口率 70% 地表面粗度区分 Ⅲ( べき数 a=0.20) 収束判定条件 10-4 解析風向 N, E, S, W, NE, NW, SE, SW 3. 隣棟間隔および住宅配置と換気回数の関係 3. 1 計算の概要赤林ら 1) は各方角に同面積の開口を設けた単純住宅モデルを用いて, 周辺建蔽率を段階的に変化させたときの建蔽率と平均通風量比の関係を求めた. また, 住宅団地内の隣接する4つの単純住宅モデルを対象に, 室内通風デグリーアワーを算出し, 建物の配置計画や建蔽率との関係を求めた 2). 本研究では, 宅地計画における通風への配慮を想定し, 隣棟間隔および住宅配置 ( 整列と雁行配置 ) に注目して検討を行う. 2 階建て単純住宅モデルを用いて, 住宅団地モデルを構成する. 単純住宅モデルの立面図 平面図 俯瞰図と寸法を図 5, 図 6, 表 3に示す. 表 1の2 階建て戸建住宅 12プランの寸法の平均に基づき決定した. 一般的な戸建住宅団地を想定し, 住宅は5 棟 2 列を1 ブロックとし, 団地内の道路幅は6mとした. 東西に主要道路を持つ住宅団地と, 南北に主要道路をもつ住宅団地を対象とする. 住宅団地モデルの寸法の例を図 7, 配置パターンを表 4に示す. ただし, 住宅団地モデルの寸法や, 単純住宅モデルの敷地寸法は住宅団地モデルの配置パターンによっても変化する. 東西と南北の隣棟間隔を2m,5m,8mと変化させ, 雁行配置の場合は東西 ( 南北 ) に移動させる距離を変化させた. 隣棟間隔を変化させる場合は解析対象領域以外の住宅団地モデルも同様に変化させ, 雁行配置に変更する場合は, 解析対象領域のみ変化させた. 計算領域の例を図 8に示す. 計算条件は表 2と同様のものであり, 計算領域や開口部の設定方法も前章の方法を踏襲した. 住宅の配置に対称性がある場合はN,NW,S,SW,Wの5 風向, 対称性が見られない場合はE,N,NE,NW,W,S,SE,SW,Wの8 風向で計算を行った. 詳細領域内部の住宅団地を解析対象領域とし, 各単純住宅モデルに立地箇所に応じて1~10の番号を割り当てた. 3. 2 計算結果と考察計算結果のコンター図の例を図 9に示す. 主要道路が東西の場合の標準的な住宅団地モデルでは, 主要道路上で風速が大きくなり, 開口が主要道路に面している住宅や風上側の住宅において風がよく流入している. 流入風向が45 度 ( 風向 SW, 風向 NW) の場合, 風上側の角地の住宅で特に風が流入している. 東西 南北の隣棟間隔を広げると, 住宅間に風の道が形成され風速が大きくな 図 3 各プランの方位別開口面積図 4 開口面積率 ( 東 西 南 北 ) と換気回数 ( 風向 E W S N) の関係図 5 単純住宅モデルの立面図

っている. 雁行配置にすると, 整列配置の際に生じていた風の道に相当する箇所に住宅が位置するため, 風下側の住宅でも風上側の住宅同様に風が流入している. 南北主要道路の場合も, 東西主要道路の場合と同様の傾向が確認される. 3. 3 隣棟間隔および雁行配置と換気回数の関係立地箇所別の平均換気回数を図 10に示す. 東西主要道路の場合, 角地, すなわち, 南側住宅の1と5, 北側住宅の6と10の換気回数が比較的大きい. 南側住宅 (1~5) の換気回数は, 北側住宅 (6~10) より全体的に大きい. 雁行配置にすることで南側住宅と北側住宅の換気回数の差が減少し, 全体的に大きくなる. 南北主要道路の場合も, 角地, すなわち, 西側住宅の1と5, 東側住宅の6と10の換気回数が比較的大きい. 西側住宅 (1~5) と東側住宅 (6~10) の換気回数にほとんど差はない. 隣棟間隔別, 立地箇所別平均換気回数を図 11に示す. 東西主要道路の住宅団地モデルの場合, 東西の隣棟間隔を広げると, 住宅間に風の道が形成されて風速は大きくなるが, 換気回数は大きく増加しない. ただし, 東西の住宅間の換気回数の差は小さくなる. 雁行配置にすると, 整列配置の場合に生じていた風上側と風下側の換気回数の差が小さくなる. また, 東西隣棟間隔が5mの場合, 南側と北側の住宅間で生じていた大きな換気回数の差はほぼ無くなり, 大きな値となる. 南北主要道路の住宅団地モデルの場合, 南北隣棟間隔を広げると, 角地の換気回数は大きく増加しないが, 南北の住宅間の換気回数の差は小さくなる. 図 6 単純住宅モデルの平面図 ( 左 ) と俯瞰図 ( 右 ) 表 3 単純住宅モデルの寸法 各パラメータ 12プラン平均 単純住宅モデル 延床面積 (m 2 ) 118.7 135.5 間口 (m) 7.7 7.7 奥行き (m) 8.8 8.8 高さ (m) 8.2 8.2 南側開口面積 (m 2 ) 7.5 7.5 東側開口面積 (m 2 ) 1.1 1.2 西側開口面積 (m 2 ) 1.2 1.2 北側開口面積 (m 2 ) 1.3 1.2 合計開口面積 (m 2 ) 11.1 11.1 図 7 住宅団地モデルの寸法の例 (case A-5) と立地箇所番号割り振り 表 4 住宅団地モデルの配置パターン 東西主要道路 南北主要道路 整列配置 隣棟間隔隣棟間隔整列配置東西南北東西南北 case A-1 2m 2m case B-1 2m 2m case A-2 2m 5m case B-2 2m 5m case A-3 2m 8m case B-3 2m 8m case A-4 5m 2m case B-4 5m 2m case A-5 5m 5m case B-5 5m 5m case A-6 5m 8m case B-6 5m 8m case A-7 8m 2m case B-7 8m 2m case A-8 8m 5m case B-8 8m 5m case A-9 8m 8m case B-9 8m 8m 雁行配置 隣棟間隔隣棟間隔雁行配置東西南北東西南北 case A-10 南側東 3.5m 5m 5m case B-10 西側北 6.05m 2m 2m case A-11 南側東 5.5m 2m 2m case B-11 西側北 6.05m 5m 2m case A-12 南側東 5.5m 2m 5m case B-12 西側北 7.55m 2m 5m case A-13 南側東 7.0m 5m 5m case B-13 西側北 7.55m 5m 5m case A-14 北側東 3.5m 5m 5m case B-14 東側北 6.05m 2m 2m case A-15 北側東 5.5m 2m 2m case B-15 東側北 6.05m 5m 2m case A-16 北側東 5.5m 2m 5m case B-16 東側北 7.55m 2m 5m case A-17 北側東 7.0m 5m 5m case B-17 東側北 7.55m 5m 5m 図 8(a) 計算領域の例 (case A-5, 周辺領域 ) 図 8(b) 計算領域の例 (case A-5, 詳細領域 )

図 9(a) case A-5 図 9(b) 東西隣棟間隔変化 (case A) 図 9(c) 雁行配置 (case A) 図 9(d) case B-5 図 9(e) 南北隣棟間隔変化 (case B) 図 9(f) 雁行配置 (case B)

図 10 立地箇所別平均換気回数 図 11 隣棟間隔別, 立地箇所別平均換気回数 4. 実街区における検討 4. 1 概要典型的な新興住宅地である芦屋市内の住宅団地を対象として同様の検討を行う. 解析対象モデルを図 12に示す. 住宅団地内の住宅を, 単純住宅モデルに置き換えて計算を行い, 換気回数を算出し, 住宅団地モデルの計算結果と比較する. 解析対象領域内の単純住宅モデルに立地箇所に応じて1~4の番号を割り振った. 計算条件などは住宅団地モデルの計算と同様である. 4. 2 計算結果と考察計算結果のコンター図の例を図 12に示す. 芦屋市内の住宅団地は, 典型的な新興住宅団地であり, 住宅の形状のばらつきが少なく, 住宅区画も整理されており, 整列配置の住宅団地モデルに配置パターンが類似している. 解析対象領域の北と南に存在する道路沿いのオープンスペースから風が流入している. 図 12 解析対象モデル ( 芦屋市 ) 4. 3 実街区における隣棟間隔と換気回数の関係風向別の換気回数を図 14に示す. 同様の隣棟間隔を持ち同じ立地箇所である, 整列配置の住宅団地モデルの単純住宅モデルを比較対象として選定する. 芦屋市の立地箇所 1の住宅では, 風向 0 の場合を除いて整列配置と同様である. 風向 0 の場合には南に存在する道路沿いのオープンスペースからの流入量が増加している. 図 13 計算結果の例 ( 芦屋市 :case 1, 風向 S)

図 11 隣棟間隔別, 立地箇所別平均換気回数 5. 結論本研究では, 実在住宅モデルを対象として開口面積や主風向と 換気回数の関係を分析した. 更に, モデル化した住宅街区を対象として隣棟間隔や角地などの住宅配置と平均通風量比の関係を分析した. 実在住宅モデルにおいて, 各方位に開口面積が大きく取られている場合は, 明確な通風輪道が形成され換気回数は大きくなる. 主風向側の開口部の面積が増加すると換気回数は増加するが, 南側開口面積と換気回数には関係は確認されない. 全てのプランで南側開口面積が大きく, 十分に大きな換気回数となるためである. 玄関方位などのプランによる影響より, 地域の主風向による影響が大きいと考察された. 標準的な住宅団地では, 北, 南の風向の場合には, 風上側と風下側の換気回数の差が大きい. 風向が住宅団地に対して45 度の場合には, 風上側の角地の換気回数が大きい. 西, 東の風向の場合には, 開口面積の大きい南側開口が道路に面しているため, 南側の住宅の換気回数が大きい. 東西主要道路の住宅団地モデルの場合, 東西の隣棟間隔を広げると, 住宅間に風の道が形成されて風速は大きくなるが, 換気回数は大きく増加しない. ただし, 東西の住宅間の換気回数の差は小さくなる. 南北隣棟間隔を広げると, 南側の住宅の換気回数は増加しないが, 南北の住宅間の換気回数の差は小さくなる. 雁行配置にすると, 整列配置の場合に生じていた風上側と風下側の換気回数の差が小さくなる. 整列配置の際に生じていた風の道の上に住宅が位置するため, 面積の大きい南側開口から風が流入する. 南北主要道路の住宅団地モデルの場合, 東西の隣棟間隔を広げても換気回数は大きく増加せず, 南北の住宅間の換気回数の差もほとんど変化しない. 南北隣棟間隔を広げると, 角地の換気回数 は大きく増加しないが, 南北の住宅間の換気回数の差は小さくなる. 雁行配置で住宅を北側へ平行移動すると, 整列配置の際に生じていた風の道上に住宅が位置するため, 風向 E,Wの場合の換気回数が大きくなる. 住宅を交互に東へ移動させると, 南側の風向の場合に, 開口面積の大きい南側開口から風が流入し, 整列配置の場合よりも換気回数が大きくなる. 主風向により換気回数が大きくなる場合とあまり変化しない場合があるため, 対象地域の主風向に応じて適切な配置を検討する必要がある. 芦屋市内の住宅団地の様に整列配置の住宅団地モデルに配置パターンが類似している場合には計算結果の傾向と概ね一致する. ただし, 周辺のオープンスペースやわずかな形態の違いにより, 換気回数が大きく変化する場合もあるため, 周辺の住宅配置や街区特性の局所的な影響にも配慮する必要がある. [ 謝辞 ] 本研究は神戸大学持続的住環境創成 ( 積水ハウス ) 寄附講座の平成 27 年度研究費を受けて実施したものである. 本研究を実施するにあたってご協力頂いた積水ハウス株式会社の角本茂氏, 板倉浩二氏, 埴淵晴男氏に感謝の意を表します. 参考文献 1) 赤林伸一, 坂口淳, 細野淳美, 佐藤英樹, 久保俊輔 : 室内気流分布を考慮した通風性能評価に関する研究, 日本建築学会環境系論文集,No.633,1261-1266,2008 2) 川崎みなも, 赤林伸一, 坂口淳, 山口遵 : 戸建住宅を対象とした通風性能評価に関する研究その18 戸建て住宅団地の配置計画と通風性能に関する研究, 日本建築学会北陸支部研究報告集, 第 52 号,251-254,2009