表紙

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バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

平成19年度事業計画書

5月の病害虫発生予想と防除のポイント

「公印省略」

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予報 岡病防第16号

140221_ミツバマニュアル案.pptx

病害虫発生予察情報(11月予報)

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取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

3 園芸作物 < 果菜類 > 1-1 トマト [ ハウス ] ア導入すべき持続性の高い農業生産方式の内容 トマトは主に道央 道南および道北の施設で栽培され 作型は促成 ( ハウス加温 マルチ ) 半促成 ( ハウス マルチ ) 抑制 ( ハウス ) などである 品種は 桃太郎 ハウス桃太郎 桃太郎

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**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1)

茨城県 消費者ニーズに応えるイチゴ産地の育成 活動期間 : 平成 22 年度 ~ 継続中 1. 取組の背景鉾田地域は, メロン, ピーマン, イチゴ, トマト, 葉菜類などの野菜類の生産が盛んな, 県内有数の野菜園芸産地である 経営体の多くが複数の園芸品目を組み合わせ, 大規模な複合経営を行っている

5月の病害虫発生予想と防除のポイント

ネギ 防除法

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平成 26 年度補正予算 :200 億円 1

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

イチゴの殺虫剤 ( 福岡県 ) 使用香港と同等台湾と同等共通 6 月アーデント WP (2,-ND,ND) ランネート 45DF (1,ND,2) 7 月ロディー EC (5,5,1) アタブロン EC (2,ND,0.5) マトリック FL (0.5,ND,ND) ランネート 45DF (1,ND

26愛媛の普及原稿 軽 Ⅱ

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各都道府県知事 宛 25 消安第 175 号環水大土発第 号平成 25 年 4 月 26 日 農林水産省消費 安全局長 環境省水 大気環境局長 住宅地等における農薬使用について 農薬は 適正に使用されない場合 人畜及び周辺の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある 特に 学校 保育所 病

ナスにおける天敵の利用法

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Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

画面遷移

る ( 久保田ら 2009) ことから 未知の伝染経路がある可能性は残るものの 本ウイルスの基本的な対策は 無病苗の育成と導入による発生防止 ハサミ等の消毒による蔓延防止 土壌中のウイルスを失活させることによるほ場内伝染環の遮断ということになる 3. 重要な残さの分解無病苗の育成と導入 ハサミ等の消

H27年度2月表紙チンゲンサイ白さび病

○H29-3 表紙_バジルべと病(案2)

Japan Diamide WG

エチレンを特定農薬に指定することについてのこれまでの検討状況 1 エチレンについて (1) 検討対象の情報 エチレン濃度 98.0% 以上の液化ガスをボンベに充填した製品 (2) 用途ばれいしょの萌芽抑制のほか バナナやキウイフルーツ等の果実の追熟促進を目的とする 2 検討状況 (1) 農林水産省及

平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

Microsoft Word 予報第9号

施設キュウリ ( 抑制栽培 ) のミナミキイロアザミウマの IPM 体系マニュアル

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参考 < これまでの合同会合における検討経緯 > 1 第 1 回合同会合 ( 平成 15 年 1 月 21 日 ) 了承事項 1 平成 14 年末に都道府県及びインターネットを通じて行った調査で情報提供のあった資材のうち 食酢 重曹 及び 天敵 ( 使用される場所の周辺で採取されたもの ) の 3

平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

リンゴ黒星病、うどんこ病防除にサルバトーレME、フルーツセイバーが有効である

どうして GAP を導入するの? 産地や農家が安定した経営を続けるためには 次のような取組が必要です 産地の信頼を守るための体制を作りましょう 安全な農産物の生産は農家の責務です また 産地の農家のうち 1 人でも問題を起こせば 産地全体で出荷停止や商品回収を行わなければならず その後の取引にも影響

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目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

今後の管理のポイント [懸案事項] ①早期作型における2番花 房の花芽分化遅延 ②炭そ病とハダニ類の発生 拡大 [対策] ①寒冷紗を被覆して 花芽分化を誘導する 2番花房 の花芽分化を確認して被覆を除去する 被覆期間の目安 9月25 10月20日 ②定期的に薬剤による防除を行う 特に葉かぎ後の 葉か

水稲いもち病当面の対策                   

わかっていること トマトすすかび病について

PowerPoint プレゼンテーション

スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

玉名農業協同組合北部集荷センターなす部会 構成員数 :124 名 生産経費削減天敵昆虫のスワルスキーカブリダニに加え 土着天敵のタバコカスミカメムシを利用し より効果的な害虫防除に努めた その結果 殺虫剤散布回数を抑えることができ 農薬代 散布労力両面においてコストの低減につなげることができた 部会

4 奨励品種決定調査 (1) 奨励品種決定調査の種類ア基本調査供試される品種につき 県内での普及に適するか否かについて 栽培試験その他の方法によりその特性の概略を明らかにする イ現地調査県内の自然的経済的条件を勘案して区分した地域 ( 以下 奨励品種適応地域 という ) ごとに 栽培試験を行うことに

情報01-1.xlsx

1 作付前に確認しましょう 管理区分 番号 土づくりの励行 適切で効果的 効率的な施肥 効果的 効率的で適正な防除 効果的 効率的で適正な防除 栽培基準等を考慮し 有機物 ( たい肥 稲わら 緑肥など ) を利用した土づくりを行っていますか 数日間高温で発酵させた完熟たい肥を使用していますか たい肥

様式集

元高虫防第 139 号令和元年 7 月 4 日 各関係機関長様 高知県病害虫防除所長 病害虫発生予察情報について 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報及び令和元年度予報 4 号 (7 月 ) を送付します 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報 Ⅰ. 気象概況半旬 (6 月 ) 平均気温最高気温最低気

ミニトマト ( 野菜類 ) ( トマトモサ イクウイルス キュウリモサ イクウイルス ) 黄化えそ病 ( トマト黄化えそウイルス TSWV) 黄化葉巻病 ( トマトイエローリーフカールウイルス TYLCV) 1. 発病株は抜き取り 苗床や本畑に発病株の根をできるだけ残さないようにする 2. 摘心 摘

(2) 新系統の発生状況平成 28 年 4~10 月にかけて府内 19 地点のネギ キャベツ及びタマネギほ場から採集したネギアザミウマの次世代を一頭飼育法 ( 十川ら, 2013) により調べた結果 南丹市以南の16 地点で新系統 ( 産雄性生殖系統 ) を確認した 山城地域では 産雄性生殖系統が優

農業指導情報 第 1 号能代市農業総合指導センター環境産業部農業振興課 発行平成 26 年 4 月 25 日二ツ井地域局環境産業課 確かな農産物で もうかる 農業!! 農家の皆さんを支援します!! 農家支援チームにご相談ください! 今年度 農業技術センター内に農家支援

高品質米の生産のために

本文、発送文

1 県指針の考え方 新潟県持続性の高い農業生産方式の導入に関する指針 の概要 持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律 を受け 県内での環境保全型農業の一 層の推進を図るため これまでの試験研究の成果や現地事例等から収量 品質を一定水準に保つ 技術レベルを掲げ これらの技術を用いて土づくりを

農林水産省登録第 号 2014 年 1 月版 製品名スワルスキープラス ( 吊り下げ型パック製剤 ) 販売 アリスタライフサイエンス株式会社 製造場 コパートビーブイ ベヘーア工場 小分製造場 アリスタライフサイエンス株式会社バイオシステムズ お問い合わせ先 IPM 営業本部東京都中央区

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ハクサイ黄化病のヘソディム

栽培面積は減少した そこで 平成 8 年に就農者を全国から募るための農業公社が設立され 2 年間の研修生の受け入れが開始された その結果 新規就農者が確保 育成されるようになり 栽培面積は年々増加し 現在ではピーク時 ( 昭和 52 年 ) を超える面積となっている 農家の平均年齢は48 歳で うち

アマミノクロウサギ保護増殖事業計画 平成 27 年 4 月 21 日 文部科学省 農林水産省 環境省

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

11月表紙

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

資料 2 セイヨウオオマルハナバチの代替種の利用方針 について 環境省農林水産省

平成 30 年 7 月 27 日 ( 表題 ) 台風第 12 号の接近に伴う農作物被害技術対策情報について ( 担当 ) 佐賀北部農業技術者連絡協議会事務局 気象庁によると台風第 12 号は 現在 ( 平成 30 年 7 月 27 日 6 時 45 分 ) 硫黄島の南 東約 80km を北東に向かっ

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技術名

資料 2 農業データ連携基盤の構築について 農業データ連携基盤 (WAGRI) WAGRI とは 農業データプラットフォームが 様々なデータやサービスを連環させる 輪 となり 様々なコミュニティのさらなる調和を促す 和 となることで 農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた造語

PowerPoint プレゼンテーション

農薬登録事項変更登録申請書

営農のしおり(夏秋キク)

Ⅳ 花き

KASEAA 51(10)

果樹の生育概況

大型の捕虫網 ( 径 42cm) を使用し 1 地区 5 地点の払い落し法により調査する 越冬後の5~6 月の指標植物としては結実しているクワ サクラ ヒイラギ及び開花中のミカン 新梢伸長中のキリが適しており また 新成虫が出現する7 月以降の好適な指標植物として結実したスギ ヒノキ サワラ ヒイラ

H17防除指針記入用ファイル

24 ごみ減量分野様式 2 ごみゼロをめざすまち 分野目標 1 ごみゼロ都市 なかの を実現するために 区民 事業者 区が連携して3Rの取組みを進め ごみの排出量が減少するまちをめざす 2 循環型社会を実現するために 資源の再使用 再生利用などの資源の有効利用が広がっているまちをめざす 成果指標 区

リン酸過剰の施設キュウリほ場(灰色低地土)における基肥リン酸無施肥が収量に及ぼす影響

190号.indb

微生物殺虫剤 < 商品のお問合せは アリスタライフサイエンス株式会社 > 天敵放飼後のレスキュー ( 臨機 ) 防除剤としては 天敵への影響が少ない微生物殺虫剤が効果的です 天敵に悪影響を与えないだけでなく 効果のある化学殺虫剤を 切り札剤 として温存することができますので

平成18年度標準調査票

e - カーボンブラック Pt 触媒 プロトン導電膜 H 2 厚さ = 数 10μm H + O 2 H 2 O 拡散層 触媒層 高分子 電解質 触媒層 拡散層 マイクロポーラス層 マイクロポーラス層 ガス拡散電極バイポーラープレート ガス拡散電極バイポーラープレート 1 1~ 50nm 0.1~1

Microsoft Word - ビワ、~1

3. 生物的方法 ある種の微生物や 病原力を脱落させた病原菌に 植物の防御能力を高める作用があり ます また 病原力を弱めたウイルス ( 弱毒ウイルス ) を前もって接種しておくと その 後の同一あるいは近縁ウイルスの感染率を低下させることが可能です それらのうち 農 薬登録されているものを表 2-

( 一財 ) 沖縄美ら島財団調査研究 技術開発助成事業 実施内容及び成果に関する報告書 助成事業名 : 土着微生物を活用した沖縄産農作物の病害防除技術の開発 島根大学生物資源科学部 農林生産学科上野誠 実施内容及び成果沖縄県のマンゴー栽培では, マンゴー炭疽病の被害が大きく, 防除も困難となっている

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作物ごとの対策については 以下のとおりです 水稲 水稲に対する日照不足の影響で最も懸念されることはいもち病の発病であり 出穂期以降では登熟障害 いわゆる白未熟の発生が懸念される また 大雨により河川の水位が高くなり 排水路の水が河川に放流できずに冠水被害をもたらすことがある これらを考慮して健全な生

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持続性の高い農業生産方式の導入指針

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資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

殺虫数(頭(2) 京田辺市におけるフェロモントラップへの誘殺虫数 (7 月第 6 半旬 ~8 月第 5 半旬の合計値 ) は81.0 頭で 平年の22.4 頭を上回っている (+)( 図 1) また 本年度からフェロモントラップを設置した亀岡市および京丹後市でも 8 月第 4 半旬から誘殺数が急増し

炭疽病並並やや少 (-) やや多 ~ 並 降水並 ~ 少 (-) 8 月降水量多 チャ カンザワハダニ並並並 やや多 ~ 少 気温並 茶研予察ほ降水並 ~ 少少 (-) クワシロカイガラムシ 並並やや少 (-) 並 ~ やや少 気温並 降水並 ~ 少 カンキツ 黒点病並やや多少 (-) ミカンハダニ

福井県建設リサイクルガイドライン 第 1. 目的資源の有効な利用の確保および建設副産物の適正な処理を図るためには 建設資材の開発 製造から土木構造物や建築物等の設計 建設資材の選択 分別解体等を含む建設工事の施工 建設廃棄物の廃棄等に至る各段階において 建設副産物の排出の抑制 建設資材の再使用および

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アスパラガス IPM 実践マニュアル 平成 3(209) 年 月栃木県農政部

IPM( 総合的病害虫 雑草管理 ) について () 環境にやさしい病害虫 雑草防除の基本的な考え方現在 病害虫 雑草防除は化学農薬による防除が主流です 化学農薬は最も容易で有効な防除手段のつであり 使用基準に定められた使用方法を遵守して使用する上では人や環境への悪影響はありません しかし 化学農薬が繰り返し使用されることで 病害虫 雑草の薬剤抵抗性の獲得が懸念されます 過度な化学農薬への依存は 薬剤抵抗性の発達に拍車をかけ 結果として 防除にかかる労力や経費の増大という悪循環を招きます また 国の定める安全性基準をクリアしているとはいえ 化学農薬の使用は空気中や土壌中に化学合成物質を放出することを意味します そのため 環境問題への関心が高まる昨今 農薬使用者には 農薬の使用に際し より細心の注意を払うとともに 必要最小限に抑える取組が求められています こうした状況から 化学農薬への過度な依存を脱却し 環境負荷を低減するこ とで 将来にわたって安定的に持続可能な防除体系の構築が求められています このためには 従来の 病害虫の発生をゼロにする という考え方ではなく 栽培 期間を通じて経済的な被害が生じない水準以下に病害虫の発生を抑える という考え方 が重要になってきます そこで注目されるのが IPM(Integrated Pest Management: 総合的病害虫 雑 草管理 ) です IPMとは 予防 あらかじめ病害虫や雑草が発生しにくい環境を整え 判断 防除が必要であると判断した場合にのみ 防除 様々な防除法を適切に選択して行う病害虫 雑草の管理手法のことです IPM は様々な防除技術や情報活用の組合せから成り立っていますが はじめから全 ての技術を実施する必要はありません

まずは 農薬散布による負担が最も大きな病害虫に対して導入できる技術から始め 成果を確認しながら 徐々に対象病害虫と実施する技術を増やしましょう (2)IPMのメリット防虫ネットや天敵生物など様々な手段を活用しつつ 病害虫の発生状況に応じた農薬散布を行うことで 環境に対する負荷の軽減 2 人の健康に対するリスクの軽減 3 病害虫の薬剤抵抗性発達の回避 4 労力や経費の削減につながります さらに 環境にやさしい農業の実践は 消費者からの支持につながることが期待され ます (3)IPMの体系 予防 あらかじめ病害虫や雑草が発生しにくい環境を整えましょう ほ場内の病害虫密度の低減 前作の残渣処理の適正処理や 資材類の消毒を行いましょう 病害虫の発生しにくい環境づくり 土壌診断を行い 適正な肥培管理を心がけましょう 深耕や暗きょ排水等の排水対策を実施し ほ場内の排水を良くしましょう 換気や刈込によって通風を良くし 過湿を避けましょう 病害虫の侵入抑制 防虫ネットの展張や光反射資材の設置等により 病害虫の侵入を防止しましょう 光反射資材併用衝立式ネット の設置による害虫の侵入防止 循環扇を使用した換気に よる過湿防止 防虫ネット展張による 害虫の侵入防止 2

2 判断 ほ場をよく観察し病害虫や天敵の発生状況の把握に努め また 県などが発表する病害虫発生予察情報を参考に 防除の要否と時期を判断しましょう 病害虫発生状況の把握 ほ場の観察や粘着板の設置により 病害虫 天敵の発生状況を把握しましょう 地域の生産者間で 病害虫発生情報を共有することも大切です 病害虫発生予察情報の活用 農業環境指導センターの病害虫発生予察情報を防除の判断に活用しましょう 粘着板の設置による害虫発生状況の把握 発生予察情報の利用 病害虫 雑草による被害が想定される場合 3 防除 防除が必要な場合は 最適な防除手段を選択しましょう 生物的防除 灰色かび病の発生前 ~ 発生初期には 微生物製剤を利用しましょう コナジラミ類 アザミウマ類の防除には天敵製剤を利用しましょう 物理的防除 罹病株や罹病部位は 見つけ次第 早期に除去してほ場外に出し 適切に処分しましょう 薬剤抵抗性の発達しにくい気門封鎖剤等を活用しましょう 化学的防除 コナジラミ類 アザミウマ類の天敵であるスワルスキーカブリダニ 病害虫の薬剤抵抗性発達を防ぐため 同一系統薬剤の連用は避けましょう 3

2 アスパラガスの IPM 実践指標 IPM 実践指標とは IPM をどの程度実践しているかを確認するためのものです アスパラガスの IPM 技術を 予防 判断 防除 のそれぞれの視点から まとめました これらの技術を 対象となる病害虫を確認の上 相互に組み合わせて利用しましょう 様々な技術を組み合わせ より高いレベルでの IPM の実践を目指しましょう () 予防 : 病害虫 雑草の発生しにくい環境の整備 管理項目 技術の名称 主な対象病害虫等 チェック管理ポイント欄配点技術の内容目標実践 土壌消毒 ( 新植及び改植時 ) 土壌 苗の定植前に土壌病害の発生が懸念されるほ場では土壌消毒を行う 以前に果樹等を作付けしていた土地では 紋羽病が発生することがあるので注意する 土壌表面の焼却 斑点病 褐班病等 残茎や擬葉等の除去後に 土壌表面をバーナーで焼却処理する 残茎の埋没処理 斑点病 褐班病等 立茎開始前から畦面に盛り土することで 斑点性病害の感染源となる残茎を埋没させる 資材の消毒 斑点病 褐班病等 前作で使用した支柱や資材は 付着した残渣を取り除き 必ず消毒する 土壌診断に基づく適正な施肥管理 土壌診断を行い 適正な施肥を行うことで健全な作物育成を行う 堆肥を施用する場合 堆肥に含まれる成分を十分考慮し 過剰とならないよう施肥量に注意する 育苗土には病害による汚染や雑草種子の混入がないものを用いる 健全苗の確保 ( 新植のみ ) 品種の特性に応じた適切な施肥管理及び温度管理を行う 育苗中は過度の灌水を避けるなど 高温多湿にならないようにする 害虫全般 育苗施設は開口部に防虫ネットを設置するなどして 害虫の侵入を防止する 健全苗のみ定植する 病害虫の発生が見られた苗は 速やかに除去し まん延を防止する 栽植密度 ( 新植及び改植時 ) 品種に応じた適正な栽植密度で定植する 4

管理項目 技術の名称 主な対象病害虫等 チェック管理ポイント欄配点技術の内容目標実践 適正な立茎 親茎の本数は 適正な立茎法 ( 標準 : 太さ cm 程度 本数 0~2 本 /m) とし 後に過繁茂とならないよう注意する 立茎期のかん水 立茎期は 茎に直接水がかかると 病害の発生を誘発するため かん水の圧力を下げて 茎にかからないようにする 摘心作業 摘心高は ハウスの仕様に合わせて適正な高さとする 作業の実施タイミングは 擬葉が開ききって茎が硬化した頃とし 晴天日の午前中に実施し 傷口乾燥によって病害の侵入を防止する 各ほ場条件に合わせて排水対策を実施する ( 暗きょ 深耕 トレンチャー溝掘り等 ) 排水対策及び適正な温湿度管理 過繁茂を避け トリマー等で側枝を随時 刈込整理行って 通風を良くする 適切な換気や循環扇の使用等により ハウス内の空気を循環させ 過湿を防止する 害虫全般 施設内外には害虫の発生源となる植物の植栽を避け 雑草は放置せずにこまめに管理する ほ場周辺の植生管理 雑草抑制や泥はね防止のため 敷きわらや防草シート マルチ等で株元や通路等を被覆する 防虫ネットの展張 ハスモンヨトウヨトウガ等 ヨトウムシ類の侵入防止のため 目合い 4mm 以下の防虫ネットを施設開口部に展張する 微細ネットや赤色ネット 光反射資材を織り込んだネットの活用 アザミウマ類アブラムシ類コナジラミ類等 微小害虫の侵入防止のため 施設開口部に目合い 0.4mm 防虫ネットか赤色ネットや光反射効果のあるネットを展張する 注意 微細ネット展張時は 施設内が高温となりやすいため注意する 紫外線除去フィルムの展張 アザミウマ類 紫外線除去フィルムを展張することで 微小害虫の侵入を抑制する 5

管理ポイント技術の内容目標実践ハスモンヨトウヨトウガ等害虫の増殖を阻害し密度抑制を図るため 性フェロモン剤を設置する ハスモンヨトウヨトウガ等施設内へのチョウ目害虫の侵入と 施設内での活動 産卵を抑制するため 黄色灯を設置する アザミウマ類アブラムシ類コナジラミ類等害虫の飛び込み対策として 施設側面開口部周辺に粘着シートを設置し 害虫を捕殺する アザミウマ類アブラムシ類コナジラミ類等施設開口部周辺に光反射資材を設置し 害虫の侵入を抑制する 施設側面開口部への光反射シートの設置 アザミウマ類アブラムシ類コナジラミ類等施設側面開口部の外側に光反射シートを敷設し 施設の通風確保のため 0.5 ~m 離して衝立式ネットを設置することで 害虫の侵入を抑制する 乱反射資材併用衝立式ネットの設置チェック欄光反射資材の設置黄色灯の設置によるヨトウムシ類等の被害抑制粘着シートの設置配点性フェロモン剤の設置管理項目主な対象病害虫等技術の名称 6

(2) 判断 : 観察や情報の活用による防除の判断 管理項目 技術の名称 主な対象病害虫等 チェック管理ポイント欄配点技術の内容目標実践 習慣的な観察の実施 ルーペ等を持ち歩き 作物上の病害虫や天敵を観察する習慣をつける 資材設置によるほ場の病害虫発生状況の把握 害虫全般 粘着シートやフェロモントラップ等の資材を用いて ほ場及びその周辺の病害虫の発生状況を把握し 防除の要否 時期を判断する 粘着シートの色黄 : コナジラミ類 アブラムシ類青 : アザミウマ類 天敵発生状況の把握と活用 害虫全般 天敵製剤を使用する場合には 作物上における天敵の発生 定着状況を把握し 防除の要否を判断する 気象情報の活用 気象情報を把握し 防除の要否や時期の判断に活用する また 豪雨や暴風は しばしば病害の多発要因となるため とちぎ農業防災メールを活用し 情報収集に努める とちぎ農業防災メール QR コード 病害虫発生予察情報の確認 農業環境指導センターが発表する病害虫発生予察情報や地域予察情報等を入手し 病害虫防除要否の判断に活用する 農業環境指導センター URL: http://www.jppn.ne.jp/tochigi/index.html 7

(3) 防除 : 多様な手段による防除とそのポイント 管理項目 技術の名称 主な対象病害虫等 チェック管理ポイント欄配点技術の内容目標実践 微生物製剤の使用 ( 病害 ) 灰色かび病 病害発生前か初期に微生物製剤 ( バチルスズブチリス剤 ) を使用する 微生物製剤の使用 ( 虫害 ) ハスモンヨトウ等 コナジラミ類アザミウマ類アブラムシ類等 チョウ目害虫に対して BT 剤 ( バチルスチューリンゲンシス剤等 ) を使用する コナジラミ類等に対して ボーベリア剤等の微生物製剤を使用する 天敵製剤の利用 コナジラミ類アザミウマ類 スワルスキーカブリダニ等の天敵製剤を使用する 気門封鎖剤の使用 ハダニ類アブラムシ類コナジラミ類うどんこ病 病害虫の薬剤抵抗性が発達しにくい 気門封鎖剤を活用する 注意 薬液が病害虫に直接かからなければ効果が得られないので 十分量をていねいに散布する 天敵 微生物製剤利用時の薬剤選択 天敵製剤や微生物製剤の使用前後は 天敵に悪影響がある薬剤の使用を避ける また 影響が長期間に及ぶものもあるため 影響期間を考慮し計画的に使用する 適正な薬剤散布方法 量の選択 作物の生育に合わせ 十分な薬効が得られる範囲で最少の使用量となる最適な散布方法を検討した上で 使用量 散布方法を決定する 薬剤のローテーション使用 薬剤を使用する場合には 特定の系統 ( 成分 ) のみを繰り返し使用しない 薬剤抵抗性 ( 耐性 ) の発達が確認されている薬剤は使用しない 栽培終了後における残さの処理 栽培終了後の残さは病害虫の発生源となるため 残茎や落下した擬葉等の除去を徹底する 作業日誌の記帳 作業日 病害虫 雑草の発生状況 薬剤の名称 使用時期 使用量 散布方法等の栽培管理状況を作業日誌として別途記録する 研修会等への参加 県や農業協同組合等が主催する IPM 研修会等に参加する 合計点数 (42 点中 ) 8

3 IPM 実践度を確認しましょう! 4~8 ページの実践指標を基に 実践していることは何か 改善できることはあるかを確 認 評価し IPM の取組をステップアップさせていきましょう 栽培開始前に実施目標を立て チェック欄 ( 目標 ) を確認し 目標点数を決める 2 栽培終了後 実施できた項目について チェック欄 ( 実践 ) を確認し 合計点数を求め る 3 合計点数から IPM 実践レベルを評価する アスパラガス IPM 実践指標 管理項目による点数の総計 : 42 点 自分でチェックした合計点数( の数) が42 点満点中 34 点以上 IPM 実践度 A(IPM 実践レベルが高い ) 26 点 ~33 点 IPM 実践度 B(IPM 実践レベルが中程度 ) 25 点以下 IPM 実践度 C(IPM 実践レベルが低い ) 評価基準 A:80% 以上 B:60% 以上 ~80% 未満 C:60% 未満 4 IPM 実践レベルを評価し 次作の取組に反映させる 9