第13回文科大臣賞幹細胞選考資料

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を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

学報_台紙20まで

製品特集 再生医療へつながる幹細胞培養の最新テクノロジー 新しい技術はサイエンスの発展を加速させますが, そのような技術開発には企業が大きく貢献しています. そこで 製品特集 コーナーでは最新のテクノロジーに注目し, 第一線のアカデミア研究者にサイエンスの動向をレビューいただくとともに, 開発側の各

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

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研究成果報告書

目次 IPS 細胞の継代... 3 細胞継代後の培地交換... 5 IPS 細胞の凍結... 6 凍結ストックの解凍... 8 細胞融解後の培地交換 融解後 1 日目 ON-FEEDER IPS 細胞を FEEDER-FREE 条件にて継代する方法 参考資料 AC

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

再生医療の制度的な対応の検討について 薬事法等制度改正についてのとりまとめ平成 24 年 1 月 24 日厚生科学審議会医薬品制度改正部会 1 再生医療製品については 今後も 臓器機能の再生等を通じて 重篤で生命を脅かす疾患等の治療等に ますます重要な役割を果たすことが期待される 特に ips 細胞

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この問題点の一つとして従来からの細胞培養法が挙げられます 長年行われている細胞培養法では 細胞培養フラスコやディッシュなどを使用していますが これらは実験者にとって操作しやすいものの 細胞自身に適したものでは決してありません それは 細胞が本来あるべき環境とは異なるからです 私たちの体において 細胞

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三 胚 葉 に 分 化 する 能 力 を 確 認 できました また ここで 作 製 した ips 細 胞 はドーパミン 産 生 細 胞 や インスリン 産 生 細 胞 血 液 細 胞 へと 分 化 させる 事 ができました これらの 結 果 は 今 回 開 発 した 新 しい feeder-free

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

再生医療市場

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Establishment and Characterization of Cynomolgus Monkey ES Cell Lines

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態である新生血管の発生を一部再現したものであり 疾患モデル動物の代替として病態解析や創薬スクリーニングに応用できる可能性があります 本研究の成果は 平成 29 年 6 月 14 日 ( 英国時間 ) 付けで Scientific Reports 誌 ( 電子版 ) に掲載されます 本研究は 文部科学

背景 歯はエナメル質 象牙質 セメント質の3つの硬い組織から構成されます この中でエナメル質は 生体内で最も硬い組織であり 人が食生活を営む上できわめて重要な役割を持ちます これまでエナメル質は 一旦齲蝕 ( むし歯 ) などで破壊されると 再生させることは不可能であり 人工物による修復しかできませ

長期/島本1

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

「蛋白質発現・相互作用解析技術開発」産業科学技術研究開発基本計画

幹細胞 前駆細胞 (ES 細胞 PS 細胞 体 幹細胞他 ) 体細胞 () な細胞 その作製 分 製 装置 器材 培 成分 物 培養 件 細胞 分化 子 ( 質 化合物 ) 培養の工 細胞との 物 発生工学 生 工学分子生物学 細胞工学 ム科学 工学 分化 せた幹細胞体細胞遺伝子 細胞 サイトカイン

報道発表資料 2005 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人京都大学 ES 細胞からの神経網膜前駆細胞と視細胞の分化誘導に世界で初めて成功 - 網膜疾患治療法開発への応用に大きな期待 - ポイント ES 細胞の細胞塊を浮遊培養し 16% の高効率で神経網膜前駆細胞に分化させる系

資料3-1_本多准教授提出資料

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

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報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

<1. 新手法のポイント > -2 -

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待できます. さらに, 無血清培地を使用することで, 微量の成人組織より分離した間葉系幹細胞を 1,000~10,000 人に移植できる数まで増やすことができます. 低価格な移植細胞を実現し, 多くの患者さんの治療ができるだけでなく, 再生医療の普及促進にも繋がると期待できます. 技術の概要 1)

Microsoft PowerPoint - 資料3-8_(B理研・古関)拠点B理研古関120613

1. 背景生殖細胞は 哺乳類の体を構成する細胞の中で 次世代へと受け継がれ 新たな個体をつくり出すことが可能な唯一の細胞です 生殖細胞系列の分化過程や 生殖細胞に特徴的なDNAのメチル化を含むエピゲノム情報 8 の再構成注メカニズムを解明することは 不妊の原因究明や世代を経たエピゲノム情報の伝達メカ

日本発バイオ3Dプリンタによるデファクト型グローバル再生医療ビジネスモデル

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胚乳細胞中のタンパク質顆粒 I(PB-I) に改変型 Cry j 1タンパク質 及びCry j 2タンパク質を蓄積させたものです 2 スギ花粉ペプチド含有米( キタアケ ) スギ花粉が有する主要アレルゲンタンパク質 2 種 (Cry j 1 Cry j 2) の7 種類の主要 T 細胞エピトープを連

icems ニュースリリース News Release 2009 年 12 月 11 日 京都大学物質 - 細胞統合システム拠点 ips 細胞研究を進めるための社会的課題と展望 - 国際幹細胞学会でのワークショップの議論を基に - 加藤和人京都大学物質 - 細胞統合システム拠点 (icems=アイセ

平成18年3月17日

STAP現象の検証の実施について

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

第 1 回 医薬品等ウイルス安全性シンポジウム

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NIHS Since 1874 平成 26 年 3 月 5 日 ヒト多能性幹細胞加工製品に残存する未分化多能性幹細胞の高感度検出法の開発 国立医薬品食品衛生研究所遺伝子細胞医薬部佐藤陽治 本発表で述べられている見解は発表者の私見であって 国立医薬品食品衛生研究所および厚生労働省の現在の公式な見解では

2. 研究の背景関節軟骨は 骨の端を覆い 腕や膝を曲げた時などにかかる衝撃を吸収する組織です 正常な関節軟骨は硝子軟骨と呼ばれます 私達の日常動作のひとつひとつを なめらかに行うためにも大切な組織ですが 加齢に伴ってすり減ったり スポーツや交通事故などの怪我により損傷をうけると 硝子軟骨が線維軟骨注

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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ips 化 再生組織 臓器 大量培養 分化 神経 血管 ips 細胞,ES 細胞 組織化 肝臓血液心臓 出庫 移植 細胞バンク 患者 第 1 図再生医療の基本的工程 Fig. 1 Basic process of regenerative medicine 第 1 表臓器を構成する細胞数 Table

本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

資料 3 産総研及び NEDO の 橋渡し 機能強化について 平成 26 年 10 月 10 日経済産業省

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医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

骨の再生を促進する複合多孔質足場材料を開発

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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ポイント 藻類由来のバイオマス燃料による化石燃料の代替を目標として設立 機能性食品等の高付加価値製品の製造販売により事業基盤を確立 藻類由来のバイオマス燃料のコスト競争力強化に向けて 国内の藻類産業の規模拡大と技術開発に取り組む 藻バイオテクノロジーズ株式会社 所在地 茨城県つくば市千現 2-1-6

コラーゲンを用いる細胞培養マニュアル

160510再生NW中間評価表紙・委員(案)

次 Ⅰ. 総論 2 Ⅱ. 重点分野 3 Ⅲ. 人材育成 確保 6 Ⅳ. 情報管理 8 Ⅴ. その他 9 1

新技術説明会 様式例

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「ヒトES細胞の樹立に関する指針」(案)及び「ヒトES細胞の分配及び使用に関する指針」(案)に関するパブリック・コメント(意見公募手続)の結果について


論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

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プレスリリース 報道関係者各位 2019 年 10 月 24 日慶應義塾大学医学部大日本住友製薬株式会社名古屋大学大学院医学系研究科 ips 細胞を用いた研究により 精神疾患に共通する病態を発見 - 双極性障害 統合失調症の病態解明 治療薬開発への応用に期待 - 慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

れていない 遺伝子改変動物の作製が容易になるなどの面からキメラ形成できる多能性幹細胞 へのニーズは高く ヒトを含むげっ歯類以外の動物におけるナイーブ型多能性幹細胞の開発に 関して世界的に激しい競争が行われている 本共同研究チームは 着床後の多能性状態にある EpiSC を着床前胚に移植し 移植細胞が

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

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資料 4 生命倫理専門調査会における主な議論 平成 25 年 12 月 20 日 1 海外における規制の状況 内閣府は平成 24 年度 ES 細胞 ips 細胞から作成した生殖細胞によるヒト胚作成に関する法規制の状況を確認するため 米国 英国 ドイツ フランス スペイン オーストラリア及び韓国を対象

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資料 3-1 CREST 人工多能性幹細胞 (ips 細胞 ) 作製 制御等の医療基盤技術 平成 20 年度平成 21 年度平成 22 年度 10 件 7 件 6 件 進捗状況報告 9.28,2010 総括須田年生

目 次 頁 公 1 希少疾病治療薬の開発 創薬技術 戦略に関する研究及びそれらに係る 情報提供活動 ア研究助成事業 ( 公募 ) 1 創薬基盤推進研究事業 1 イ調査研究事業 1 1. 一般事業委員会 1 2. 運営委員会 1 3. 医療ニーズ調査班 2 4. 創薬技術調査班 2 5. 技術移転促進

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平成14年度研究報告

安全かつ高効率に遺伝子を細胞へ導入できるナノシート開発に成功

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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システムの開発は 国内において 今後の普及拡大を視野に入れた安全性の検証等に係る研究開発が進められている 一方 海外展開については 海外の事業環境等は我が国と異なる場合が多く 相手国のユーザーニーズ 介護 医療事情 法令 規制等に合致したきめ細かい開発や保守 運用までも含めた一体的なサービスの提供が

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Transcription:

製品開発の例 別紙 3 連携機関 大阪大学 株式会社ニッピ 京都大学 味の素株式会社 功労者候補者 大阪大学蛋白質研究所教授関口清俊 株式会社ニッピバイオマトリックス研究所長服部俊治 京都大学 ips 細胞研究所講師中川誠人 事例の概要 大阪大学の関口教授は多能性幹細胞の足場となるタンパク質 ( ラミニン 511) を同定し このタンパク質の活性を保持した断片の組換えタンパク質の開発に成功 これがヒト ES 細胞 ips 細胞の培養基材として極めて有効であることを京都大学とので明らかにし 京都大学と共願で特許 ( ヒト多能性幹細胞用培養基材およびその利用 ) を取得した ( 平成 26 年 日本 米国 中国で成立 ) ( 株 ) ニッピはこの特許のライセンスを受け 医療応用に適した培養動物細胞を用いてこの組換えタンパク質を大量に製造する方法を確立し 平成 25 年より imatrix 511 の商品名で販売を開始した 京都大学の中川講師 山中教授のグループは 味の素 ( 株 ) と共同してラミニン活性断片を利用した 安全かつ高効率なヒト ips 細胞の樹立 培養法 の開発の成功 味の素 ( 株 ) はラミニン活性断片を足場とした ips 細胞の培養に最適な培地 ( 商品名 StemFit) を開発した imatrix 511 を用いる培養法は既に国内ではデファクトスタンダードとなっており 我が国の再生医療研究の基盤を支えている ポイント 1. 連携の工夫 特長 波及効果 関口教授の基礎研究の成果をライセンスを受けた企業が製品化に成功 京大グループとの緊密な連携のもと 国内標準となるヒト ips 細胞の培養法の確立に成功した 培地製造企業との連携も重要なポイント 日本が再生医療産業において世界のリーダーシップをとる上での重要な技術基盤となりつつある 2. 社会 ( 地域を含む ) への貢献 医療用ヒト ips 細胞の培養法を確立し 再生医療の実現に向けた臨床研究を加速した 3. 技術への貢献 ラミニン活性断片を足場とするヒト ips 細胞 (2014 年 ) の樹立および高効率培養法を開発 4. 市場への貢献 ( 株 ) ニッピが 製品名 imatrix 511 で H25 年 8 月から販売開始 売上げ実績 1.4 億円 味の素 ( 株 ) は imatrix 511 と組み合わせて ips 細胞の培養に用いる完全合成培地 ( 商品名 StemFit) を製造 販売している 開発した製品 装置等の写真 ヒト ips 細胞培養基材 imatrix-511 1

1. 連携の工夫 特長 波及効果 培養基材開発 ips 細胞研究 培地開発が三位一体となった研究体制 : 培養基材を研究している大阪大学とiPS 細胞を研究している京都大学が中核となり 培養基材メーカーの ( 株 ) ニッピと培地メーカーの味の素 ( 株 ) が緊密に連携して 高効率かつ安全性が担保された医療用 ips 細胞の培養技術を開発した ( 図参照 ) 共同開発における知的財産管理および事業化の経緯 : 大阪大学と京都大学はヒトES 細胞 /ips 細胞の培養に好適な培養基材 ( ラミニン活性断片 ) の特許 ヒト多能性幹細胞用培養基材およびその利用 をH22 年に出願 (H26 年に日本 米国 中国で成立 ) ( 株 ) ニッピは本特許のライセンスを受けて imatrix-511の商品名で製造 販売をH25 年 8 月より開始した ( 株 ) ニッピは ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構から求められた安全性試験を実施し H27 年 6 月より医療用 imatrix-511の製造 販売を予定している 連携体制と競争的資金の獲得 : 大阪大学と ( 株 ) ニッピは 再生医療実現拠点ネットワークプログラム 技術開発個別課題 幹細胞培養用基材の開発 ( 代表研究者 : 大阪大学関口清俊 ; 分担機関代表研究者 :( 株 ) ニッピ服部俊治 ) をH25より実施中 ベンチャー設立に向けた取り組み : 大阪大学の関口教授は ( 株 ) ニッピをパートナー企業として 官民イノベーションプログラム ( 国立大学出資事業 ) の支援を受け ベンチャー設立に向けたを H26 年度より開始した ( 研究課題 再生医療 創薬の基盤と大阪大学なる幹細胞培養用基材の開発 ) 蛋白質研究所 人事交流 : 味の素 ( 株 ) の千田主任研究員は H23 年 8 月 ~ H26 年 3 月まで 京都大学 ips 細胞研究所 中川講師の研究室に出向して ラミニン活性断片を用いるヒト ips 細胞の培養に最適化した完全合成培地を完成 ( 株 ) ニッピからは 研究員一名が大阪大学蛋白質 研究所 関口教授の研究室に出向し 新たな幹細胞培養用基材の開発を進めている 味の素 ( 株 ) イノベーション研究所 ips 細胞用完全合成培地の開発 幹細胞用培養基材ラミニン活性断片の開発 ライセンス ヒトiPS 細胞用培養基材 imatrix-511 ( 株 ) ニッピバイオマトリックス研究所 医療グレードのラミニン活性断片の製造法の開発 ヒト ips 細胞用完全合成培地 StemFit 2 京都大学 ips 細胞研究所 ラミニン活性断片を利用したヒト ips 細胞培養法を開発

( 候補者の主な役割 ) 関口清俊 ( 大阪大学蛋白質研究所 教授 ): 細胞接着分子の専門家 マウス初期胚の多能性幹細胞の足場となる接着因子の網羅的解析からラミニン 511 が多能性幹細胞の生理的な足場であることを見いだす ラミニン 511 の細胞接着活性を 100% 保持した活性断片の作製に成功し これがヒト多能性幹細胞の培養基質として極めて有効であることを京都大学とので明らかにした ラミニン 511 活性断片を国内の多くの研究者に提供し ヒト ips 細胞を使った我が国の再生医療研究の推進に貢献している 服部俊治 (( 株 ) ニッピバイオマトリックス研究所 所長 ): コラーゲンの専門家 H18 年から H22 年度まで 大阪大学の関口教授とヒト多能性幹細胞の分化誘導に有効な培養基材のを行う H23 年からラミニン 511 活性断片の製品化に向けたを開始した 抗体医薬製造用の CHO 細胞を用いるラミニン 511 活性断片の組換え蛋白質の製造法を大阪大学と共同して開発し H24 年 10 月に製造と販売に関するライセンスを大阪大学と京都大学から受ける H25 年 8 月よりラミニン 511 活性断片 ( 商品名 imatrix-511) の販売を開始 ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構の対面助言を受け imatrix-511 が生物由来原料基準に適合するとの判断を H26 年 12 月に得ている 医療グレードの imatrix-511 の製造 販売を H27 年 6 月から開始する予定である 中川誠人 ( 京都大学 ips 細胞研究所 講師 ): ヒト ips 細胞の専門家 H17 年に京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授の研究室の助手となり H21 年から ips 細胞研究所講師 臨床研究に使用できるヒト ips 細胞の樹立 維持培養方法の開発を行っている H22 年から大阪大学の関口教授とのを開始し ラミニン 511 活性断片を利用した真に臨床応用可能な ips 細胞の樹立および高効率拡大培養法を確立した また 味の素 ( 株 ) と共同して ラミニン 511 活性断片を利用したヒト ips 細胞の培養に最適化した完全合成培地の開発に成功した (H26 年 1 月 ) 同培地 ( 商品名 StemFit) は imatrix-511 と組み合わせて 国内の多くの ips 細胞研究者に利用されている 3

2. 社会 ( 地域を含む ) への貢献 ヒト ips 細胞を利用した再生医療研究を加速 : 異種動物成分を含まず 化学組成が明確な培養基材と培地を組み合わせたヒト ips 細胞の製造 維持 拡大培養法を確立した 京都大学 ips 細胞研究所は この培養法を用いて医療用ヒト ips 細胞の製造を開始しており この ips 細胞を使った再生医療研究が我が国の多くの研究機関で進められている 本開発の成果は ips 細胞を利用した国内外の再生医療研究を支えているといっても過言ではない パーキンソン病治療用の神経細胞の製造 ( 京大 ) 網膜黄斑変性疾患治療用の網膜色素上皮細胞 (( 株 ) ヘリオス ) 心疾患治療用の心筋細胞 ( 阪大 慶應大 ) 肝疾患治療用の肝臓細胞 ( 横浜市立大学 ) など 様々な再生医療研究で本発明の成果が利用されている ヒトiPS 細胞の培養法の世界標準へ : ヒトiPS 細胞を利用した再生医療研究は 世界各国が独自の取り組みでしのぎを削っている状況にある 日本発の再生医療を世界に普及させるため 本培養法が世界標準となるよう海外展開を急いでいる 平成 26 年 1 月 9 日 ( 木 ) 朝日新聞 ( 朝刊 ) ヒトiPS 細胞の樹立から維持 拡大培養 分化誘導までを一貫してサポートする幹細胞培養技術 心筋細胞 膵島細胞 骨細胞 造血細胞 骨格筋細胞など + 初期化因子 神経細胞 樹立 ラミニン 511 活性断片 維持 拡大培養 分化誘導 網膜細胞 肝臓細胞 細胞移植 ips 細胞ストック 4

3. 技術への貢献 具体的説明 ヒト ES/iPS 細胞の安定かつ高効率な増幅を可能とする培養基材 ( ラミニン 511 活性断片 ) とそれを用いる ES/iPS 細胞の培養方法を開発 従来法の 200 倍の効率でヒト ES/iPS 細胞を増幅することが可能 医療用細胞の製造に使用可能な製品の製造 販売を開始を予定 (H27 年 6 月 ) 本基材を使うと ips 細胞の樹立から維持 拡大培養および分化誘導までを一気通貫に行うことが可能 現在の開発段階 状況 ( 臨床試験等含む ): 京都大学 (ips 細胞研究所 ) で進めている医療用ヒト ips 細胞ストックの製造に使用されている パーキンソン病治療用神経細胞 黄斑変性疾患治療用網膜色素上皮細胞の製造でも使用されている どちらも 1 2 年以内に臨床試験が開始される予定 特許 : 主要なもの ( 成立 ( 国内 海外 ) 出願 ( 国内 海外 )) の特許名及びパテント番号 ヒト多能性幹細胞用培養基材とその利用 ( 特許第 5590646 号 ; 米国 中国でも成立 ) 他に関連する 8 件の特許を出願中 ( 次頁参照 ) 査読付論文等 : 主要なもののタイトルや掲載誌情報 Laminin E8 fragments support efficient adhesion and expansion of dissociated human pluripotent stem cells, Nature Communications 3:1236(2012). A novel efficient feeder-free culture system for the derivation of human induced pluripotent stem cells, Scientific Reports, 4:3594 (2014). 4. 市場への貢献 具体的説明 ( 株 ) ニッピが 製品名 imatrix-511 で H25 年 8 月から製造 販売を開始 味の素 ( 株 ) が imatrix-511 と組み合わせて ips 細胞を長期にわたり安定に増殖させる完全合成培地 ( 製品名 StemFit AK3) を製造し ユーザーへの提供を開始 (H26 年 2 月 ) 売上実績 (imatrix-511): H25 年度 (2,000 本 2,000 万円 ) H26 年度 (12,000 本 12,000 万円 ) H27 年度予定 (20,000 本 20,000 万円 ) 国内市場占有率 : N/A 主なユーザー : 京大 ips 細胞研究所 ( 医療用 ips 細胞ストックの製造 ; パーキンソン病治療用神経細胞の製造技術開発他多数 ) 理化学研究所および ( 株 ) ヘリオス ( 黄斑変性疾患治療用網膜色素上皮細胞の製造ほか ) 阪大 ( 移植医療用心筋細胞 角膜上皮細胞など ) 慶應大 ( 脊髄損傷治療用神経細胞 移植用心筋細胞など ) 横浜市大 ( 移植医療用肝臓細胞 ) など 京大 ips 細胞研究所から細胞の供給をうけている研究機関は本培養法にて ips 細胞を培養 維持している ヒト ES 細胞の研究の世界的権威である Austin Smith 教授 ( 英国 ケンブリッジ大 ) の研究室でも使用されている ライセンス実施状況 : ラミニン活性断片の製造法およびこれを利用したヒト ES/iPS 細胞の培養法の特許 ( 特許第 5590646 号 ; 米国 中国でも成立 ) を ( 株 ) ニッピにライセンス (H24 年 10 月 ) 5

5. 補足資料等 ( データ ) < 事例に係る特許等の件数 > 特許出願 ( 申請 ) 件数 ( 件 ) 国内 8 海外 6 特許取得 ( 成立 ) 件数 国内 1 海外 1 ライセンス件数国内 1 海外 1 ( 主要なもの ( 成立 ( 国内 海外 ) 出願 ( 国内 海外 )) の特許名 特許文献番号 発明者 出願人 ) 1( 特許第 5590646 号 ) 名称 : ヒト多能性幹細胞用培養基材およびその利用 発明者 : 関口清俊 二木杉子 谿口征雅 他 5 名出願人 : 大阪大学および京都大学 2(PCT/JP2012/059720) 2012 年にPCT 出願 2013 年に指定国移行 ( 日本 米国 中国 欧州 ) 名称 : 改変ラミニンおよびその利用 発明者 : 関口清俊 谿口征雅 中川誠人出願人 : 大阪大学および京都大学 3(PCT/JP2013/80405) 2013 年にPCT 出願 ( 現在 補正書を提出中 ) 名称 : コラーゲン結合性分子を付加した改変ラミニンおよびその利用 発明者 : 関口清俊 李紹良 佐藤涼子出願人 : 大阪大学 4(PCT/JP2014/062449) 2014 年にPCT 出願名称 : ラミニンフラグメントが乾燥状態でコーティングされている細胞培養器具 発明者 : 関口清俊 筒井仰出願人 : 大阪大学 < 事例に係る主な補助金 委託費の件数 > 8 件 年度 4 補助者 委託者 ( 受託者ではない ) について 配分機関名 事業名 採択課題名 交付金額 ( 単位 : 千円 ) H25-H29 ( 独 )JST 再生医療実現拠点ネットワークプログラム 技術開発個別課題 幹細胞培養用基材の開発 252,115 H21-H25 文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラム多能性幹細胞フィーダーフリー培養基材の開発 81,846 H22-H25 ( 独 )NEDO ヒト幹細胞産業応用促進基盤技術開発ヒト幹細胞の実用化に向けた評価基盤技術の開発 192,560 H22-H25 ( 独 )NEDO 次世代機能代替技術の研究開発幹細胞ニッチ制御による自己再生型心血管デバイスの基盤開発 145,934 H22-H25 ( 独 )JST 戦略的イノベーション創出推進事業 遺伝子 / 細胞操作を駆使したヒト ES/iPS 細胞利用基盤技術の開発 6 17,550

5. 補足資料等 ( データ ) < 事例に係る共同 受託研究の件数 > 13 件 * / 受託研究 4 件 ** 共同 / 受託研究 実施時期 / 受託研究の参加機関 ( 自社含む ) 内容実施額 ( 千円 ) H23.3 H25.3 阪大 ( 蛋白研 ) ( 株 ) ニッピラミニン / コラーゲン等細胞接着分子の研究 950 H23.9 H26.3 阪大 ( 蛋白研 ) 京大 CiRA ( 株 ) ニッピ H25.3 H27.3 阪大 ( 蛋白研 ) 理研 ( 株 ) ヘリオス H25.6 H27.3 阪大 ( 蛋白研 ) 味の素( 株 ) H24.4 H28.3 阪大 ( 蛋白研 ) 京大 CiRA 臨床試験に利用可能な ips 細胞の培養基材としてのヒトラミニンフラグメントの製造方法および品質規格等に関する研究 ips 細胞由来網膜色素上皮細胞の臨床応用における細胞外マトリクスの利用可能性の検討 改変ラミニン及びそれに適合する幹細胞用培地の開発 ヒト ips 細胞から神経細胞への分化誘導において有効な培養基質の検討 950 0 0 0 * 上記以外にも 神経分化誘導 ( 慶應大 医 ) 腸管上皮幹細胞の増殖およびオルガノイド形成 ( 東京医歯大 慶應大 医 ) 始原生殖細胞の分化誘導 ( 京大 医 ) 内耳組織の分化誘導 ( 京大 医 ) 血管内皮細胞の分化誘導 ( 京大 CiRA) 巨核球からの血小板産生 ( 京大 CiRA) 神経堤細胞の機能維持 ( 京大 CiRA) に有用な培養基材の開発を大学間あるいは大学と企業間の契約を締結して実施している ** 本事例に関わる受託研究は いずれも ( 独 ) 新エネルギー 産業技術総合開発機構の委託を受けて行った受託研究である 前頁に記載のもの以外に H26 年度から分担者として参加している受託研究には 再生医療の産業化に向けた細胞製造 加工システムの開発 ( 研究代表者 : 紀ノ岡正博阪大教授 ; H26-H30) ( 再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業 ) 細胞を用いた機能的な立体臓器作製技術の研究開発 / 革新的な三次元精密細胞配置法による立体造形と小口径血管を有するバイオハートの研究開発 ( 研究代表者 : 明石満阪大教授 ; H26-H30)( 立体造形による機能的な生体組織製造技術の開発 ) の 2 件がある < その他 > 特になし 7