課題研究シンポジウム 課題研究シンポジウム 3 つのポリシーと初年次教育 課題研究担当理事濱名篤 ( 関西国際大学 ) 関田一彦 ( 創価大学 ) 井下千以子 ( 桜美林大学 ) 将来構想担当理事山田礼子 ( 同志社大学 ) 企画趣旨 昨年 3 月の学校教育法施行規則に伴い 学位プログラムを単位とし

Similar documents
メディアデザイン学科ディプロマ ポリシー メディアデザイン学科は 科学的市民 の育成という教育理念のもとに以下の資質や能力を身につけ 所定の授業 科目を履修して卒業に必要な単位を修得した学生に 学士 ( 工学 ) の学位を授与します 1. コミュニケーション力論理的な思考力 記述力 発表と議論の能力

ICTを軸にした小中連携

自動車工学科ディプロマ ポリシー 自動車工学科は 科学的市民 の育成という教育理念のもとに以下の資質や能力を身につけ 所定の授業科目を履 修して卒業に必要な単位を修得した学生に 短期大学士 ( 自動車工学 ) の学位を授与します 1. コミュニケーション力論理的な思考力 記述力 発表と議論の能力を有

Microsoft Word - 医療学科AP(0613修正マスタ).docx

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

Comparative Study of College Students between the United States and Japan: An Analysis of JCSS

第 1 節キャリア教育の理解 6) 情報リテラシー ( コンピュータリテラシー 情報処理 ネット利用の方法とリスク ) 7) 自校教育 ( 建学の精神 教育目標 ) 8) キャリアデザインなど ( 出典 : 川島啓二 大学と学生 2008 年 5 月号 ) 2 初年次教育で重視されていること 1)

平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告

文科省・28年度『選抜実施要項』変更点等|旺文社教育情報センター

筑波大学の使命 筑波大学は その建学の理念に 変動する現代社会に不断に対応しつつ 国際性豊かにして かつ 多様性と柔軟性とを持った新しい教育 研究の機能及び運営の組織を開発 し 更に これらの諸活動を実施する責任ある管理体制を確立する と掲げ 我が国における大学改革の先導的役割を果たす 研究力開学以

副学長 教学担当 中村 久美 新しい大学づくりに向けた教育の展開 巻頭言 2012年6月に文部科学省が公表した 大学改革実行プラン は 激動の社会における大学機能の再構築を掲げています 教学に関し ては ①学生の主体的な学びの創出や学修時間の拡大化をはじめと する大学教育の質的転換 ②グローバル化に

3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

Microsoft Word 第2報2020年度以降の大学入学者選抜‐山梨大

TSRマネジメントレポート2014表紙

<4D F736F F D20906C8AD489C88A778CA48B8689C881408BB38A77979D944F82C6906C8DDE88E790AC96DA95572E646F6378>

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

平成30年度シラバス作成要領

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

成績評価を「学習のための評価」に

福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

H30全国HP

Microsoft Word (下線あり)新旧対象(大学評価基準)(31年度実施分)

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

調査結果からみえてきたこと 大学教育改革の渦中にあった 8 年間の学生の意識や学びの変化をまとめると 以下 3 点です (1) アクティブ ラーニング形式の授業が増え 自己主張できる学生が増加 大学の授業で際立って増加しているのが アクティブ ラーニングの機会です 特にこの 4 年間で ディスカッシ

濱名氏基調講演0204

卒業認定 学位授与の方針 ( ディプロマ ポリシー ) と学習評価の観点のマトリクス表 学修評価の観点 : 特に重点を置いている 〇 : 重点を置いている 知識 理解 技能 思考力 判断力 表現力 関心 意欲 態度 主体性 多様性 協働性 卒業認定 学位授与の方針 DP1 建学の理念を実践する力 D

授業概要と課題 第 1 回 オリエンテェーション 授業内容の説明と予定 指定された幼児さんびか 聖書絵本について事後学習する 第 2 回 宗教教育について 宗教と教育の関係を考える 次回の授業内容を事前学習し 聖書劇で扱う絵本を選択する 第 3 回 キリスト教保育とは 1 キリスト教保育の理念と目的

Microsoft Word - aglo00003.学力の三要素

l. 職業以外の幅広い知識 教養を身につけたいから m. 転職したいから n. 国際的な研究をしたかったから o. その他 ( 具体的に : ) 6.( 修士課程の学生への設問 ) 修士課程進学を決めた時期はいつですか a. 大学入学前 b. 学部 1 年 c. 学部 2 年 d. 学部 3 年 e

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

応用生物科学部・研究科自己点検評価書H29(最終)

目次 はじめに 1 Ⅰ. 調査の概要 1 Ⅱ. アンケート調査結果 ( 速報 ) 2 Ⅲ. 基礎集計 8 資料 アンケート調査票 11 アンケート依頼 15

自己点検・評価表

「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン

<362D A8F B2E786C7378>

大学と学生第549号広島大学におけるアクセシビリティ支援と人材育成プログラム_広島大学(岡田 菜穂子)-JASSO

Microsoft Word - 02_小栗章_教育_v019e.doc

生涯学び続け、主体的に考える力をはぐくむ大学へ -学生調査からみる大学生のエンゲージメント-

5-1. 高大連携活動の実施状況 高校生のの通常授業の履修 聴講が入学後にの単位となる制度を 15% が実施 高大連携活動としてたずねた項目のうち 多く実施されているのは 高校への出張授業 93.5% 次いで オープンキャンパス以外の高校生向けの公開講座 授業 ( 高校での単位付与なし ) 69.0

1-澤田-インクル.indd

資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

Microsoft PowerPoint - h25-1gakuchorejume1

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

総合的な学習の時間とカリキュラム・マネジメント

看護学部アドミッション ポリシー 求める学生像岩手県立大学の全学のアドミッション ポリシーのもと 看護学部では 次のような資質を備えた学生を求めています (1) 自ら学習を計画し 継続的に学ぶことができる人 ( 主体性 ) (2) 自分の考えを他者に伝わるように表現できる人 ( 思考力 判断力 表現

市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

Microsoft PowerPoint - 中学校学習評価.pptx


01-02_入稿_0415

<4D F736F F D E937893FC8A778E8E8CB196E291E8>

選択評価事項C 水準判定のガイドライン(案)

教育と法Ⅰ(学習指導要領と教育課程の編成)

愛媛県学力向上5か年計画

PowerPoint プレゼンテーション

306

平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

2021 年度入学者選抜について ~ ひとりひとりの個性と可能性を見つめる入試へ ~ 4 月 4 日 関西学院大学 関西学院の使命は キリスト教主義教育によって Mastery for Service を体現する世界市民 を育み 世に輩出することにあります 世界市民 とは 他者と対話し共感する能力を

Microsoft PowerPoint - 講演資料(山田剛史)

入研協2019電子調査書

3 年生からは航海と機関の各コースに分かれた専門授業が多くなり 将来の進路に直結した内容を学修する 5 年生の卒業研究では課題や問題に対して自ら解決し他に伝える表現力などを学ぶ 大型練習船実習は4 年後期 5ヶ月 6 年前期 ( 社船実習も有る ) で行なわれ 船員に必要な実践力を身につける 3.

1

平成20年度AO入試基本方針(案)

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D A8D CA48F43834B C E FCD817A E

2021 年度入学者選抜 (2020 年度実施 ) について 静岡大学 本学は,2021 年度入学者選抜 (2020 年度実施 ) より [ 註に明記したものは, その前年度より ], 志願者のみなさんの能力をこれまで以上に多面的に評価することを目的として, 課す教科 科目等を以下のとおりに変更いた

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

山梨大学教職大学院専攻長 堀哲夫教授提出資料

Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students A Dissertation Submitted t

Microsoft Word - 全国調査分析(H30算数)

高大接続システム改革会議

Taro-14工業.jtd

「標準的な研修プログラム《

平成 30 年度授業シラバスの詳細内容 科目名 ( 英 ) 担当教員名 情報技術と職業 - 演習 (Information Technology at Work Place - 授業コード exercise ) 松永多苗子 星芝貴行 坂井美穂 足立元 坪倉篤志 科目ナンバリン 福島学 グコード 配当


造を重ねながら取り組んでいる 人は, このような自分の役割を果たして活動すること, つまり 働くこと を通して, 人や社会にかかわることになり, そのかかわり方の違いが 自分らしい生き方 となっていくものである このように, 人が, 生涯の中で様々な役割を果たす過程で, 自らの役割の価値や自分と役割

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

1.(1) 名古屋美容専門学校教育理念 美容に必要な基礎教育と専門的実践教育を行い 豊かな知性と誠実な心を持ち 社会に貢献できる人材を育成する (2) 名古屋美容専門学校学則 第 1 章総 則 ( 目的 ) 第 3 条本校は 教育基本法の精神に則り 学校教育法に従い 美容に必要な基礎教育と専門的実践

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

「GMP担当者研修・認定講座」の運用規定(案)

目次 Ⅰ. 建学の精神と社会的使命 1. 建学の精神 2. 社会的使命 3. 教育方針 Ⅱ. 長期ビジョン 1. 策定の趣旨 2. 計画の期間 3. 本学が目指す大学像 4. 大学像実現へ向けた方向性 Ⅲ. 中期計画 ( 前期 ) 1. 経済社会環境の変化に対応した教学組織の再編成 (1) 学部の再

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

卒業認定 学位授与の方針 ( ディプロマ ポリシー ) と学習評価の観点のマトリクス表 学修評価の観点 : 特に重点を置いている 〇 : 重点を置いている 知識 理解 技能 思考力 判断力 表現力 関心 意欲 態度 主体性 多様性 協働性 卒業認定 学位授与の方針 DP1 建学の理念を実践する力 D

東京大学推薦入試FAQ

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

資料 9 今後の高等教育の将来像について 平成 30 年 2 月 8 日文部科学省

<4D F736F F D E93785F8A7789C895CA5F8A778F438E9E8AD481458D7393AE814588D3977E5F8C8B89CA322E646F6378>

Microsoft PowerPoint - 山形大学EMIR勉強会130222配布用.pptx

習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と

PowerPoint プレゼンテーション

74

用語集

各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

Microsoft Word - 平成27年度 自己評価委員会報告書

香川大学教育研究 3. 調査の概要 調査対象は 平成 25 年 10 月 15 日 ( 火 ) の2 校時に全学共通科目の学問基礎科目 主題科目を受講している学生である 担当教員の協力のもと授業時間内に調査票を配布し 回収を行った 有効回答者数は 819 名であった 次節で詳しく見ていくが アンケー

< F2D318BB388E789DB92F682CC8AC7979D F >

資料5 関西学院大学説明資料

Transcription:

3 つのポリシーと初年次教育 課題研究担当理事濱名篤 ( 関西国際大学 ) 関田一彦 ( 創価大学 ) 井下千以子 ( 桜美林大学 ) 将来構想担当理事山田礼子 ( 同志社大学 ) 企画趣旨 昨年 3 月の学校教育法施行規則に伴い 学位プログラムを単位として 学位授与 卒業認定に関する方針 ( ディプロマ ポリシー, DP) 教育課程編成の方針( カリキュラム ポリシー, CP) 入学者選抜の方針 ( アドミッション ポリシー, AP) の3つのポリシーを見直し 本年 3 月末までに公表することを各大学に求めた こうした3つのポリシーの中で初年次教育はどのように取り扱われているのか 高大接続改革の中で初年次教育をいかに位置づけていけばいいのかについて議論する 本年 5 月から 6 月にかけて初年次教育学会の会員を対象に 卒業認定 学位授与の方針 ( ディプロマ ポリシー ) など, いわゆる3ポリシーの見直しに伴う初年次教育の取組みに関連した調査を実施した 本課題研究では 最新の会員調査の分析結果も明らかにする 登壇者 1) 3つのポリシーの中でどのように初年次教育を実際に位置づけるのか カリキュラムポリシーとの関係を考える 濱名篤 ( 関西国際大学 ) 2) 2017 年度初年次教育学会会員調査結果から 3 つのポリシーと初年次教育の関係を中心とした分析 山田礼子 ( 同志社大学 ) 3) 3 つのポリシーと 主体的に考えて書く力 2017 年度初年次教育学会会員調査結果と事例分析をもとに 井下千以子 ( 桜美林大学 ) 司会 関田一彦 ( 創価大学 ) 日時 2017 年 9 月 7 日 ( 水 )13:00 15:20 会場 中部大学不言実行館 ACTIVE PLAZA 1 階アクティブホール 1

3 つのポリシーの中でどのように初年次教育を実際に位置づけるのか カリキュラム ポリシーとの関係を考える 濱名篤 ( 関西国際大学 ) 1. 高大接続改革の中での3つのポリシー中央教育審議会の議論の中では 学士課程教育の構築に向けて ( 審議のまとめ ) (2008 年 3 月で 3つの方針 すなわち学位授与の方針 (DP) 教育課程編成の方針 (CP) 入学者選抜の方針 (AP) に貫かれた教学経営が求められた これらの方針の明確化とりわけ DP の明確化は 学習成果に対する世界の趨勢を受けたものであることは確かである 高大接続答申 (2014) では 3つのポリシーの一体的な作成を法令上位置づけることがはっきり明記され ( 答申 20 頁 ) これを受けて 学校教育法施行規則の改正が行われ 2017 年 3 月末までに各大学は 3つのポリシーの一体的見直し整備と公表が求められた 同答申での初年次教育についての論及は 高大接続の観点から 高等学校教育の質の確保 向上とアドミッション ポリシーに基づく大学入学者選抜の確立の上に その意義をもう一度見直すならば 初年次教育は 高等学校で身に付けるべき基礎学力の単なる補習とは一線を画すべきであり 高等学校教育から大学における学修に移行するに当たって 大学における本格的な学修への導入 より能動的な学修に必要な方法の習得等を目的とするものとして捉えるべき ( 答申 21 頁 ) また 大学初年次教育の展開 実践は 高等学校教育の成果を大学入学者選抜後の大学教育へとつなぐ 高大接続の観点から極めて重要な役割を果たすものであり その質的転換を断行するには 高等学校教育 大学教育の新しい姿を確立するととともに これらの教育で育成すべき力を円滑に接続するための研究開発が必要である ( 同 21 頁 ) と述べられ 学士課程教育の中で果たすべき役割の明確化と 高大接続のおける期待の大きさが求められた 文科省が作成した下図をみても 初年次教育の位置づけは高大接続改革の中で非常に重要な位置づけをされていることがわかる CP と AP を有機的に繋ぐ役割であり AP の方針に沿いつつ CP の方針にも沿った初年次教育を各大学が実施することが求められている 2. 各大学のカリキュラム ポリシーの中で初年次教育はどのように位置づけられたのかそれでは本年 3 月末までに公表された個別大学の3つのポリシーの中で 実際に初年次教育はどのように位置づけられているのであろうか すべての大学のポリシーを対象に分析することは容易ではない そこで本報告では カリキュラム ポリシーに注目し 初年次教育 と カリキュラム ポリシー の 2 つの用語をキーワードにして google で検索し ヒットした上位大学のポリシーを材料にして 初年次教育の位置づけの現状を質的に分析した カリキュラム ポリシーにおける初年次教育の記載のパターンは 1 目標と内容の併記型 ( 初年次教育を何のために行うのかと教育内容の両方を記載 )2 目標記載型 ( 内容として2-1 学習ス 2

キル型 2-2 適応型 2-3 入門講座型 2-4 教養教育型 2-5 専門教育導入型などに分かれる )3 1 年次 という学年を示すのみ 4 誤用型 ( 初年次教育という用語を用いているが意味内容を理解していない ) と多岐にわたっている 他方 アドミッション ポリシーでの初年次教育に論及している例はほとんど見られない 当日 公表された各大学の WEB 事例分析の結果を報告する 3. 今後についての提言それでは 大学入学選抜も大きく展開しつつある状況と 学修成果の可視化や質保証がさらに求められつつある現在の状況に中で 1) 初年次教育を教育課程の中でどのように位置づけ ( カリキュラム ポリシーへの位置づけ ) 2) 初年次教育の学修成果をどのように可視化していく必要があるのか 当日はこれらの点についても提言していく 3

2017 年度初年次教育学会会員調査結果から 3 つのポリシーと初年次教育の関係を中心とした分析 山田礼子 ( 同志社大学 ) 1. はじめに 2016 年 3 月の学校教育法施行規則に伴い 学位プログラムを単位として 学位授与 卒業認定に関する方針 ( ディプロマ ポリシー DP) 教育課程編成の方針 ( カリキュラム ポリシー CP) 入学者選抜の方針 ( アドミッション ポリシー AP) の3つのポリシーを見直し 本年 3 月末までに公表することが各大学に求められた 今年度の課題研究 3つのポリシーと初年次教育 においては こうした3つのポリシーの中で初年次教育はどのように取り扱われているのか 高大接続改革の中で初年次教育を位置づけていけばいいのかについて議論することを意図している 筆者はそのなかで 2017 年に初年次教育学会の会員を対象にした調査結果を分析することにより 3つのポリシーと初年次教育の関係を明らかにし 初年次教育を担当する教員が3つのポリシーを意識して 教育を実施しているのか 大学の中で初年次がどう位置付けられ 初年次教育担当者がそこにいかに関わっているのかといった視点から分析をしていく 2. 先行調査としての文部科学省平成 26 年度大学改革調査と初年次学会 2014 年調査結果文部科学省は 国民への情報提供に努め 各大学のより積極的な教育内容等の改善に関する取組を促す目的で 大学における教育内容 方法の改善等の実施状況について定期的な調査を実施している 平成 27 年 10 月から平成 28 年 2 月にかけて全国の国公私立 775 大学を対象に調査を実施し 764 大学 ( 回答率 99%) が回答した調査結果の初年次教育に関する部分を紹介する 初年次教育の内容に関して 論理的思考や問題発見 解決能力の向上のためのプログラムを実施している大学数はH21 年の314 大学 (43%) からH26 年では466 大学 (63%) へと増加し 将来の職業生活や進路選択に対する動機付け 方向付けのためのプログラムを実施している大学数もH21 年の379 大学 (52%) からH26 年は550 大学 (74%) へと増加していることが判明した 高校から大学への移行を支援するという初年次教育の機能に加えて 大学としてどのような学習成果につなげるかというディプロマ ポリシーおよびカリキュラム ポリシーとの関連から初年次から論理的思考や問題発見 解決能力の向上を目指したプログラムが構築されつつあることが読み取れる 一方で 本調査からの課題として 文科省は 大学において育成すべき力を学生が確実に身に付けるためには 三つの方針 ( 卒業認定 学位授与の方針 教育課程編成 実施の方針 入学者受入れの方針 ) に基づいて個々の授業科目等を越えた大学教育全体としてのカリキュラム マネジメントを確立し 教育課程の体系化 構造化を行い 学生等へわかりやすく示すこと 各種データに基づいたIRによって教学マネジメントのPDCAサイクルを確立することが重要である と解説し 具体的な課題を提示している 4

初年次教育学会では平成 27 年 (2015 年 ) の5 月から6 月にかけて会員 524 名を対象にWEB 調査を実施し 142 名から回答を得た 本調査は 初年次教育内容 大学が直面する課題 初年次教育としての課題等様々な質問から構成されているが そのなかで初年次教育に関する全学的な方針についての結果を紹介する 初年次教育への取組みについて初年次教育に関する全学的な方針が ある と答えた会員は30 名 ( 全体の22.4%) と少数であり 検討中という回答が70 名 (52.2%) ない と答えた会員も25 名 ( 18.7%) であった 設置別では公立に所属する会員 10 名中 4 名が ない と回答 検討中 と答えた5 名と合わせて 9 割が全学的な取り組みの遅れを認識していることが判明した 2 年前の時点では公立大学における初年次教育が大学全体としてよりも個別の教員主体で実施されていることが傾向として確認された それでは 3つのポリシーの見直しと公表が義務付けられている現在では 会員が所属する大学での初年次教育の位置づけに変化がみられるのだろうか また3つのポリシーとの関連性はどうなのだろうか 3.2017 年度初年次教育学会会員調査の目的と質問概要課題研究グループは 2017 年 5 月から 6 月にかけて 上記の問題意識にもとづいて初年次教育学会員を対象に WEB 調査を実施した 現時点では まだ回答を締め切り 現在集計中のためデータの概要と分析結果については当日の発表で明らかにしたい 調査の目的は 3 つのポリシーと初年次教育の関係はどのようなものなのか そして 初年次を担当する教員がそうした 3 つのポリシーと関連して初年次教育を教えているか いないか を明らかにすることである 質問項目内容は 1. 自大学の3つのポリシーについての知識の有無 2. カリキュラム ポリシーと初年次教育との関連性 3.3つのポリシーを評価する仕組みや取り組みの有無 4. 担当する初年次教育の位置づけ等から構成されている こうした質問群をまず全体集計から傾向を明らかにし 次に 所属する教育機関のタイプ 所属する学内組織 設置者別 職階等により 詳細分析を行う 5

3 つのポリシーと 主体的に考えて書く力 2017 年度初年次教育学会会員調査結果と事例分析をもとに 井下千以子 ( 桜美林大学 ) 1.3つのポリシーと初年次教育 -Writing Across the Curriculum の観点から- 大学入学共通テストの記述式問題例など 高大接続改革の概要が明らかにされた その一連の改革の1つが3つのポリシー すなわち学位授与の方針 ( ディプロマ ポリシー :DP) 教育課程編成の方針 ( カリキュラム ポリシー :CP) 入学者選抜の方針( アドミッション ポリシー :AP) の公表と実践である 改革の大きな柱は高大接続改革である 教育再生実行会議の提言から 3 年余の検討を経て 文部科学省と大学入試センターは 大学入学選抜実施要綱の見直し予告案や 共通テストの記述式モデル問題案などを公表した 記述式問題とは いわゆる小論文や作文の類ではない 自分でしっかり論理を組み立てて表現する力を問う問題である 正答が1つだけでない 自分で考えて書く力 主体的な思考力表現力が求められる 本報告では まず この主体的に考えて書く力を 大学 4 年間を通していかに醸成していくのか Writing Across the Curriculum の観点から捉え そこでの初年次教育の役割を検討する 2. 桜美林大学における初年次教育の取組みとテキストの開発その上で 初年次教育の内容について大所高所から俯瞰することを目的として 桜美林大学での初年次支援科目の立ち上げからテキスト開発までの事例を プログラムを開発し運営してきた筆者の実践をもとに分析する 初年次支援科目 大学での学びと経験 はリベラルアーツ学群 (LA) が開設される 1 年前の 2006 年から始まった LA を支える組織として基盤教育院も設立された 科目のデザインは 認知心理学におけるメタ認知の概念と発達心理学におけるアイデンティティ発達理論が活かされている 15 回の授業は 8 つの取組みで構成されている 1 自己紹介 他己紹介 2 名刺交換会 3 上級生からのメッセージ 4 職員からのメッセージ 5Photo & Interview 6レポートの書き方 7 将来を見つめる 8 学びレポートを書くである 毎回 ワークシートに学びを書かせ ポートフォリオを作成し 振り返りをさせた さらにアンケートを実施し 効果を検証した 質問項目は1 大学生としての自覚を持つ 2 大学で学ぶ目的を明らかにする 3 大学の授業や学習方法を知る 4 桜美林大学が好きになる 5 批判的に考える力を養う 6 表現力を養う 7 仲間の考えや気持ちを理解する 8 仲間とともに協同で創る 9 将来の夢や進路を考える 10 自分に自信を持つ でどの項目においても 4 段階評価の 4( 役立つと思う ) という回答率は 50% を超えており 6

高い効果があることがわかった さらに 11 年間改善を重ねてきた授業内容を 思考を鍛える大学の学び入門 - 論理的な考え方 書き方からキャリアデザインまで ( 井下, 2017; 慶應義塾大学出版会 ) としてテキスト化した 15 回分のワークシートをつけ すべてアクティブラーニングでおこなうことができる ねらいは 高校までの知識中心の学習から 多様な解のある能動的な学びへ転換し 大学での学び方や主体的に考える力を習得させることにある 第 1 章は 入学前教育として AO 入試に合格した高校生を対象に実施したプログラムを再編したものである 第 2 章では 主体的に問いを立て研究するプロセスを体験することで 論理的思考を習得できるよう工夫した 第 3 章では 初心者でも自分で考え 自分の言葉でレポートが無理なく書けるように具体的なワークを段階的に取り入れた 第 4 章では キャリアとは何か アイデンティティ発達論に学びながら 若者がリアルな感覚で自らを見つめ 将来を描くことができるよう 架空の事例を盛り込んだ 第 5 章では これまでの授業を振り返り 学びレポートを書く このテキストの特徴は 初年次で経験すべき内容を総合的に取り込み ディシプリンを軸として深めていくことにある いわゆるスキルだけではない 学問の思考様式を学ぶことを経験するテキストとして体系化したものである 2017 年度大学教育学会大会では このテキストを用いて アクティブラーニングによるアカデミックライティング指導 のワークショップをおこなった 受講者の感想からはテキストの効果を読み取ることができる 3.2017 年度初年次教育学会会員調査結果と事例分析からみた今後の課題当初 大学での学びと経験 は LA 学群の選択必須科目だった しかし 2016 年に基盤教育院が解体し 2017 年度でこの科目は閉じられる 現在 LA 学群では 開発したテキストを用いることも含め 初年次教育のあり方について検討がおこなわれている 2017 年度初年次教育学会会員調査結果を見ると 初年次教育の多様性を読み取ることができる こうした調査結果と事例分析をもとに 3つのポリシーを組織の中でどう具現化し 実践していくのか 今後の初年次教育の課題を議論したい 7