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金融資本市場 214 年 24 日全 1 頁 先進国 新興国向けともに国際与信は増加 BIS 報告銀行による国際与信残高統計 金融調査部兼経済調査部研究員神尾篤史 [ 要約 ] 214 年 6 月末の国際与信残高は 26 兆 3,991 億ドルと前期差 +2,471 億ドル ( 前期比 +.9%) で 2 四半期連続の増加となった 与信側 ( 銀行側 ) から見ると 前期と比べて欧州の銀行 邦銀は与信残高を増加させた 欧州の銀行 米銀の現時点の貸出基準は 歴史的に見て緩和された状態にある 与信受入側では先進国 新興国向けともに与信残高は増加した アジア GIIPS 向け与信は増加したが ウクライナ ロシア向けは減少した ロシア向けは前期に比べ 減少幅は縮小したものの 欧米からの経済制裁が解除されていないことを考慮すれば 先行きも与信は減少すると思われる 留意が必要なのは与信のうち 短期与信の割合が高まること 外貨建ての通貨の割合が高まることである この点について 新興国向け与信をみると アジア向けの短期与信割合 外貨建て割合が水準としては高くなっている 特に 外貨建て割合は上昇基調にあり 注視が必要だろう 株式会社大和総研丸の内オフィス 1-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが その正確性 完全性を保証するものではありません また 記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 無断での複製 転載 転送等はご遠慮ください

2 / 1 国際与信残高 ~2 四半期連続の増加 BIS( 国際決済銀行 Bank for International Settlements) が BIS 報告銀行による 214 年 6 月末時点の国際与信残高 1 を公表した 214 年 6 月末の国際与信残高は 26 兆 3,991 億ドルと前期差 +2,471 億ドル ( 前期比 +.9%) と 僅かながら増加し 2 四半期連続の増加となった ( 図表 1) 214 年 ~6 月 ( 第 2 四半期 ) は 引き続きウクライナの混乱など投資家のリスク許容度を押し下げる出来事があった しかし 欧米の株式市場が上昇基調を維持し 長期国債の利回りは低下した 同様に 新興国の株価も上昇し 長期国債の利回りが低下しており 全般的に金融資本市場は比較的安定していたことから与信の増加につながったと思われる なお 与信残高の水準は 過去最高だった 28 年第 1 四半期 (3 兆 4,76 億ドル ) の 87% の水準にある 図表 1 国際与信残高とその前期差 3 与信残高前期差 ( 右軸 ) 3, 28, 26, 24, - 2 2, 与信残高 ( 左軸 ) - - 18, -4, 6Q1 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 ( 出所 )BIS Haver Analytics より大和総研作成 与信側 ( 銀行側 ) の動向 与信側 ( 銀行側 ) から与信残高を見ると 欧州の銀行 2 は前期差 +864 億ドル ( 前期比 +.5% ) 米国の銀行 ( 以下 米銀 ) は同 128 億ドル ( 同.4%) 邦銀は同 +359 億ドル ( 同 +1.1%) となった ( 図表 2) 1 本レポートでは 断りのない限り最終リスクベースの数値を扱う これは 与信対象の直接的な所在地ではなく 与信の最終的なリスクがどこに所在するのか を基準に 国 地域別の分類を行ったもの なお この値は 国境を越える与信 外国銀行の支店 現地法人による外貨建て国内与信 外国銀行の支店 現地法人による地場通貨建て与信 で構成される 2 欧州の銀行は オーストリア ベルギー フランス ドイツ ギリシャ アイルランド イタリア オランダポルトガル スペイン スイス トルコ 英国などの 16 ヶ国の銀行で構成される

3 / 1 図表 2 与信側 ( 銀行側 ) からみた国際与信残高 ( 前期差 ) - - - -4, ( 欧州の銀行の国際与信残高動向 ) その他米銀邦銀欧州の銀行全体 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 欧州の銀行の与信残高は 2 四半期連続の増加となった 先進国向け与信は前期差 +4 億ドル ( 前期比 +.3%) 新興国向け 3 与信も同 +277 億ドル ( 同 +.9%) と共に増加した 先進国向けの増加の大半は欧州先進国向け 4 であり 同 +391 億ドル ( 同 +.5%) の増加である ( 図表 3) 新興国向けではラテン アメリカ新興国向けが同 +22 億ドル ( 同 +3.%) と増加の大きな割合を占めた ECB の 214 年 のユーロ圏銀行貸出調査 5 (214 年第 2 四半期の結果 ) では 企業への貸出基準 6 は 厳格化 から 緩和 を差し引いたネット割合が 3% となり ( 図表 4) 前回調査 (214 年 調査 :+1%) よりも緩和し 23 年の統計開始以降の平均 (+14%) を大きく下回っている ( 貸出基準は大きく緩和している ) また 企業の資金需要 7 は 増加 から 減少 を差し引いたネット割合が+4% と 214 年 調査 (+2%) から増加した 統計が開始された 23 年以降の平均は 8% であることから 資金需要の強さがうかがえる 現状は 歴史的に見て銀行の貸出基準が緩和の状況に 企業の 3 新興国は アジア大洋州新興国 ( 中国 韓国 インド ASEAN など ) 欧州新興国( チェコ ポーランド ロシア トルコなど ) ラテン アメリカ新興国( アルゼンチン ブラジル メキシコなど ) アフリカ 中東新興国で構成される 4 欧州先進国は 英国 フランス ドイツ イタリア ポルトガル スペイン ギリシャ アイルランド オランダ ベルギー 北欧の国々などで構成される 5 以下のウェブサイトから資料を入手できる http://www.ecb.int/stats/money/surveys/lend/html/index.en.html (ECB The Euro Area Bank Lending Survey ) 6 貸出基準の項目は かなり厳格 やや厳格 基本的に変化なし やや緩和 かなり緩和 の 5 つに分かれる 厳格化 から 緩和 を差し引いたネット割合は かなり厳格 と やや厳格 の二つの回答の合計から やや緩和 と かなり緩和 の二つの回答の合計を差し引いて算出される 7 資金需要の項目は かなり増加 やや増加 基本的に変化なし やや減少 かなり減少 の 5 つに分かれる 増加 から 減少 を差し引いたネット割合は かなり増加 と やや増加 の二つの回答の合計から かなり減少 と やや減少 の二つの回答の合計を差し引いて算出される

4 / 1 資金需要は強い状況にある 図表 3 欧州の銀行 米銀 邦銀の国 地域別国際与信残高 16, 14, 1 1, 欧州の銀行 欧州先進国向け日本向け米国向け新興国向け 3, 25, 2, 18, 16, 14, 12, 米銀 欧州先進国向け日本向け新興国向け 4, 35, 25, 8, 15, 6, 1, 4, 5, 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 邦銀 14, 35, 12, 欧州先進国向け 米国向け 新興国向け 25, 8, 15, 6, 4, 2, 5, 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 8, 6, 4, 2, 15, 5, 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 図表 4 ユーロ圏の銀行貸出調査 ( 左図 ) 資金需要調査 ( 右図 ) 7 6 5 4 3 2 1 (%) 厳格化 銀行による貸出基準 ( 厳格化 - 緩和の値 ) 3 (%) 資金需要増加 2 1-1 -2-3 -4 企業の資金需要 ( 増加 - 減少の値 ) -1-5 7 8 9 1 11 12 13 14 7 8 9 1 11 12 13 14 ( 出所 ) 欧州中央銀行 Haver Analytics より大和総研作成 ( 米銀の国際与信残高動向 ) 米銀の与信残高は 2 四半期ぶりの減少となった 地域別では 先進国向けは前期差 198 億ド

5 / 1 ル ( 前期比 1.%) 新興国向けは同 +14 億ドル ( 同 +.2%) となった ( 前掲図表 3) 先進国では欧州先進国向けが同 191 億ドル ( 同 1.3%) となった 新興国ではアジア大洋州新興国向けで同 +75 億ドル ( 同 +2.2%) となった一方で ラテン アメリカ新興国向けで同 55 億ドル ( 同 2.2%) となった FRB の 214 年 の米銀貸出態度調査 8 (214 年第 2 四半期の結果 ) によれば 企業への貸出基準 9 ( 大企業向け ) は 厳格化 から 緩和 を差し引いたネット割合が 1.7% となり 214 年 調査 ( 11.1%) よりも若干厳格化した ( 図表 5) もっとも 199 年の統計開始以降の平均は+6.4% であり 現状の貸出基準は緩和基調にあることがわかる 企業の資金需要 1 ( 大企業向け ) は 増加 から 減少 を差し引いたネット割合が+3.7% となり 214 年 調査 (+13.9%) から大きく増加した 統計の開始された 1991 年以降の平均は.6% となっており 資金需要は強さがうかがわれる 図表 5 米国の銀行貸出調査 ( 左図 ) 資金需要調査 ( 右図 ) 1 (%) 8 6 銀行による貸出基準 ( 厳格化 - 緩和の値 ) 厳格化 4 (%) 資金需要増加 2 4 2-2 -2-4 -6 企業の資金需要 ( 増加 - 減少の値 ) -4 7 8 9 1 11 12 13 14-8 7 8 9 1 11 12 13 14 ( 注 ) 両図表とも大企業向けのデータ ( 出所 )FRB Haver Analytics より大和総研作成 ( 邦銀の国際与信残高動向 ) 邦銀の与信残高は 4 四半期連続の増加となった 邦銀の与信残高は 先進国向け与信が前期差 +21 億ドル ( 前期比 +.1%) 新興国向け与信は同 +138 億ドル ( 同 +3.1%) となっている 8 以下のウェブサイトから資料を入手できる http://www.federalreserve.gov/boarddocs/snloansurvey/ (FRB Senior Loan Officer Opinion Survey on Bank Lending Practices ) 9 貸出基準の項目は かなり厳格 やや厳格 基本的に変化なし やや緩和 かなり緩和 の 5 つに分かれる 厳格化 から 緩和 を差し引いたネット割合は かなり厳格 と やや厳格 の二つの回答の合計から やや緩和 と かなり緩和 の二つの回答の合計を差し引いて算出される 1 資金の需要項目は かなり増加 やや増加 同じ やや減少 かなり減少 の 5 つに分かれる 増加 から 減少 を差し引いたネット割合は かなり増加 と やや増加 の二つの回答の合計から かなり減少 と やや減少 の二つの回答の合計を差し引いて算出される

6 / 1 ( 前掲図表 3) 先進国向けでは 欧州先進国向けが同 +244 億ドル ( 同 +3.%) と増加した一方で 米国向け与信が同 26 億ドル ( 同 2.%) であった 新興国ではアジア大洋州向けが同 +96 億ドル ( 同 +3.1%) であった 日本銀行の 214 年 の主要銀行貸出動向アンケート調査 11 によれば 企業への貸出運営スタンス D.I. 12 ( 大企業向け ) は+1 と前回 (+12) から低下した ( 図表 6) 企業の資金需要判断 D.I. 13 は+5 と前回 (+5) と変化はない なお すでに 214 年 調査が公表されており 貸出運営スタンス D.I. は+9 と 調査より低下し 資金需要判断 D.I. は+5 と 調査から横這いとなっている 図表 6 日本の銀行貸出調査 ( 左図 ) 資金需要調査 ( 右図 ) 14 (% ポイント ) 12 5 (% ポイント ) 4 資金需要増加 1 8 3 資金需要判断 D.I. ( 大企業向け ) 6 2 4 2-2 貸出運営スタンス D.I. ( 大企業向け ) 慎重化 1-1 -4-2 7 8 9 1 11 12 13 14 7 8 9 1 11 12 13 14 ( 出所 ) 日本銀行より大和総研作成 与信受入側の動向 与信受入側では 欧州先進国向け与信が前期差 +678 億ドル ( 前期比 +.6%) その他先進国向け与信 ( 欧州先進国以外 ) が同 +611 億ドル ( 同 +.8% ) 新興国向け与信が同 +78 億ドル ( 同 +1.4%) となった ( 図表 7) 以下では ウクライナ ロシア GIIPS アジア向け国際与信動向について言及する 11 以下のウェブサイトから入手できる http://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/loos/ 12 貸出運営スタンスの調査項目は 積極化 やや積極化 ほぼ不変 やや慎重化 慎重化 の 5 つに分かれる 貸出運営スタンス D.I. は上述の項目を以下の方法で計算する 貸出運営スタンス D.I.=( 積極化 とした回答金融機関構成比 +.5 やや積極化 とした回答金融機関構成比 )-( 慎重化 とした回答金融機関構成比 +.5 やや慎重化 とした回答金融機関構成比) 13 資金需要判断の調査項目は 増加 やや増加 横這い やや減少 減少 の 5 つに分かれる 資金需要判断 D.I. は上述の項目を以下の方法で計算する 資金需要判断 D.I.=( 増加 とした回答金融機関構成比 +.5 やや増加 とした回答金融機関構成比)- ( 減少 とした回答金融機関構成比 +.5 やや減少 とした回答金融機関構成比)

7 / 1 図表 7 与信受入側の国際与信残高前期差 - その他 - 新興国向け - その他先進国向け欧州先進国向け -4, 全体 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 ( 出所 )BIS Haver Analytics より大和総研作成 ( ウクライナ ロシア向け国際与信残高動向 ) ウクライナ向け与信は前期差 19 億ドル ( 前期比 8.6%) と前期に引き続き 大きな減少となった ( 図表 8) ウクライナへの与信が大きいのはイタリアの銀行( 全体に占める割合 :25%) であるが 前期差 5 億ドル ( 前期比 1%) と大きな減少となっている なお イタリアに次いで与信割合が大きいのはギリシャの銀行 ( 全体に占める割合 :6%) 米銀( 同 :6%) となっている ロシア向け与信は前期差 14 億ドル ( 前期比.6% ) と 減少額は前期から大幅に縮小した 米銀が引き続き与信を減少させたものの 欧州の銀行が増加させたことが理由である 欧州の銀行ではイタリア フランス ドイツの銀行が与信を増加させている 9 月にウクライナとロシアの間で停戦が合意されたが 欧米からロシアへの経済制裁は解除されていない このことを踏まえれば 今後もロシアからの与信の減少は続くとみられる なお ロシアへの与信が大きいのは仏銀 ( 全体に占める割合 :23%) イタリアの銀行 ( 同 :13%) 米銀 ( 同 :13%) となっている 図表 8 ウクライナ ( 左図 ) とロシア ( 右図 ) 向けの国際与信残高 8 6 7 3 7 5 6 25 6 5 4 3 2 4 3 2 5 イタリアの銀行ギリシャの銀行 4 米銀ドイツの銀行 3 英国の銀行 2 2 15 1 フランスの銀行米銀イタリアの銀行邦銀ドイツの銀行 1 1 1 5 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1

8 / 1 (GIIPS 向け国際与信残高動向 ) GIIPS( ギリシャ :G イタリア:I アイルランド:I ポルトガル:P スペイン:S) 向け与信は前期差 +281 億ドル ( 前期比 +1.5%) となり 5 四半期連続の増加となった 国別ではスペインを除いた全ての国で増加し イタリア向けとアイルランド向けは共に同 +15 億ドル ( イタリア : 同 +1.9% アイルランド: 同 +3.9%) の増加となった その他 ギリシャ ( 同 + 15 億ドル ) ポルトガル( 同 +7 億ドル ) も前期と比べて増加した スペインは同 41 億ドルの減少となった 与信側 ( 銀行側 ) では 米銀からの与信増加 ( 前期差 +144 億ドル 前期比 +7.4%) が大きく 次いで欧州の銀行 ( 同 +99 億ドル 同 +.6%) であった ( 図表 9) GIIPS 向け与信で大きな割合を持つのは仏銀と独銀であるが 28 年第 2 四半期以降 継続的に与信を減少させてきた しかし 足元では仏銀が与信を増加させている一方で 独銀の与信は一時下げ止まり 横這いで推移したが その後 緩やかに低下している なお 仏銀の与信残高はピークの 6% 独銀は 37% の水準となっている 図表 9 GIIPS 向け国際与信残高前期差 ( 左図 ) GIIPS 向け国際与信残高推移 ( 右図 ) 4, 3, 2, その他英国の銀行オランダの銀行フランスの銀行 米銀邦銀ドイツの銀行全体 45, 9, 4, 8, 35, 1, -1, -2, 7, 6, 5, 4, 3, 25, 15, フランスの銀行ドイツの銀行英国の銀行米銀オランダの銀行邦銀 -3, 2, -4, 1, 5, -5, 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 ( アジア向け国際与信残高動向 ) 14 アジア向け与信は 前期差 +629 億ドル ( 前期比 +2.2%) となり 8 四半期連続の増加となった ( 図表 1) 国別の与信では 中国 ( 含む香港 ) 向けが同 +248 億ドル ( 同 +1.7%) ASEAN 主要 6 ヶ国向けが同 +179 億ドル ( 同 +2.%) 韓国向けが同 +159 億ドル ( 同 +5.5%) インド向けが同 +43 億ドル ( 同 +1.6%) となった 14 アジア向け与信は アジア大洋州新興国向け与信のカバレッジとは若干異なり 中国 ( 含む香港 ) インド 韓国 ASEAN 主要 6 ヶ国 ( インドネシア マレーシア シンガポール フィリピン タイ ベトナム ) の合計

9 / 1 与信側 ( 銀行側 ) では 欧州の銀行の与信が前期差 +196 億ドル ( 前期比 +1.4% ) 米銀は同 +117 億ドル ( 同 +2.8% ) 邦銀は同 +82 億ドル ( 同 +2.%) となった ( 図表 11) 欧州の銀 行のうち仏銀 ( 同 +64 億ドル 同 +4.5%) の増加が特に大きな割合を占める 図表 1 アジア向け国際与信残高与信受入側 ( 前期差 ) 2,5 2, 1,5 ASEAN 主要 6 ヶ国韓国向けインド向け中国 ( 含む香港 ) 向け合計 1, 5-5 -1, -1,5-2, 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 図表 11 アジア向け国際与信残高前期差 ( 左図 ) アジア向け国際与信残高推移 ( 右図 ) 2,5 2, 1,5 1, 5-5 -1, その他 米銀 英国の銀行 スイスの銀行 -1,5 邦銀 ドイツの銀行 フランスの銀行 全体 -2, 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 35, 25, 15, 5, 英国の銀行米銀邦銀ドイツの銀行フランスの銀行スイスの銀行 留意が必要なのは流入資金のうち 短期資金の割合が高まること 外貨建ての通貨の割合が高まることだ 外的ショックなどの危機時に流出圧力の高まりが想定されると同時に 市場がリスクとみなし 更なる資金流出をもたらす可能性がある 新興国向け与信を残存期間別 ( 所在地ベース ) 15 に見ると アジア向け短期与信割合 ( 全体与信額に対する 1 年以下の与信割合 ) は リーマン ショック後 上昇基調にあったが直近では低下基調にある ( 図表 12) しかし 15 所在地ベースとは与信対象の直接的な所在地に基づいて 国 地域別の分類を行ったもの

1 / 1 アジア向けの外貨建ての与信割合 16 ( 所在地ベース ) は上昇基調にあり 注視する必要があろ う 図表 12 新興国向け短期与信割合 ( 左図 ) 新興国向け外貨建て通貨の与信割合 ( 右図 ) 65% 6% 55% アジア向けアフリカ 中東新興国向けラテン アメリカ新興国向け欧州新興国向け 7% 65% 6% 55% 5% 45% 5% 45% 4% 4% 35% 35% 3% 25% アフリカ 中東新興国向けアジア向けヨーロッパ新興国向けラテン アメリカ新興国向け 3% 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 2% 7Q1 8Q1 9Q1 1Q1 11Q1 12Q1 13Q1 14Q1 国際与信の先行き 今後 世界経済は緩やかに回復する見込みである また 欧米の銀行の貸出基準は緩和の傾向にあり 企業の資金需要も増加傾向にあることを考えれば 今後 1 年 ~2 年程度は与信は増加していくと思われる ただし 与信の行先には今まで以上にばらつきがでる可能性があろう 新興国については一部で景気回復が見通せない国があったことから 概ねファンダメンタルズが良好な国とそれ以外の国で与信の行先に選別が進んできていたが 先進国においても経済成長率にばらつきが出始めているためである 16 BIS 統計では 国境を越える与信 ( 外貨建てと自国通貨建て ) 外国銀行の支店 現地法人による外貨建て国内与信 外国銀行の支店 現地法人による地場通貨建て与信 のデータが収録されているが 外貨建ての与信は 上記 3 つのデータのうち 前 2 者の合計とした