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CiRA ニュースリリース News Release 2014 年 11 月 20 日京都大学 ips 細胞研究所 (CiRA) 京都大学細胞 物質システム統合拠点 (icems) 科学技術振興機構 (JST) ips 細胞を使った遺伝子修復に成功 デュシェンヌ型筋ジストロフィーの変異遺伝子を修復

研究成果の概要 ( 背景 ) 従来の遺伝子工学は, 実質的に外来遺伝子の導入に限られ, 標的部位への導入は極めて困難でした ZFN, TALEN, CRISPR/Cas 1) 等のゲノム編集は, 微生物起源の人工酵素による遺伝子改変技術の総称で, 外来遺伝子の標的部位への導入のほか, 内在遺伝子の破

ポイント 急性リンパ性白血病の免疫療法が更に進展! -CAR-T 細胞療法の安全性評価のための新システム開発と名大発の CAR-T 細胞療法の安全性評価 - 〇 CAR-T 細胞の安全性を評価する新たな方法として これまでの方法よりも短時間で正確に解 析ができる tagmentation-assis

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本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

た遺伝子を切断し修復時に微小なエラーを生じさせて機能を破壊するノックアウトと 外部か ら任意の配列を挿入して事前設計した通りの機能を与えるノックインに大別される 外来遺伝 子をもった動物の作成や遺伝子治療には後者の技術が必要である しかし 動物胚への遺伝子ノックインには マイクロインジェクション法

( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

Alt-R CRISPR-Cas9 System sgrna( シングルガイドRNA) はこれまで その長さのために一度に合成することが出来ませんでした Alt-R CRISPR-Cas9 Systemは sgrnaを元来のcrrna( シーアールRNA) とtracrRNA( トレイサー RNA)

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平成14年度研究報告

ゲノム編集 ターゲティングゲノム編集システムの分類 すべてのゲノム編集システムは エンドヌクレアーゼによる特異的配列切断に依存しています 特異的配列ターゲティングのメカニズムには DNA ガイドと RNA ガイドの 2 種類があります 最も一般的に使用される DNA 誘導系は メガヌクレアーゼ (M

資料 1-1 ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療 製品等のリスク評価や品質評価の考え方 第 29 回科学委員会

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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資料2 ゲノム医療をめぐる現状と課題(確定版)

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ん細胞の標的分子の遺伝子に高い頻度で変異が起きています その結果 標的分子の特定のアミノ酸が別のアミノ酸へと置き換わることで分子標的療法剤の標的分子への結合が阻害されて がん細胞が薬剤耐性を獲得します この病態を克服するためには 標的分子に遺伝子変異を持つモデル細胞を樹立して そのモデル細胞系を用い

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大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

解禁日時 :2018 年 8 月 24 日 ( 金 ) 午前 0 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2018 年 8 月 17 日国立大学法人東京医科歯科大学学校法人日本医科大学国立研究開発法人産業技術総合研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 軟骨遺伝子疾患

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

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研究から医療へ より医療への実利用が近いもの ゲノム医療研究推進ワーキンググループ報告書 (AMED) 臨床ゲノム情報統合データベース公募 対象疾患の考え方の方向性 第 1 グループ ( 主に を目指す ) 医療への実利用が近い疾患 領域の着実な推進 単一遺伝子疾患 希少疾患 難病 ( 生殖細胞系列

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

免疫リンパ球療法とは はじめに あなたは免疫細胞 ( 以下免疫と言います ) の役割を知っていますか 免疫という言葉はよく耳にしますね では 身体で免疫は何をしているのでしょう? 免疫の大きな役割は 外から身体に侵入してくる病原菌や異物からあなたの身体を守る ことです あなたの身体には自分を守る 病

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

平成24年7月x日

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

核内受容体遺伝子の分子生物学

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

ゲノム編集技術を用いて 拒絶反応のリスクが少ない ips 細胞を作製 ポイント 細胞移植の際 レシピエントとドナー注 1) 注 2) の HLA 型が一致しないと 移植したドナー細胞はレシピエントのキラー T 細胞注 3) からの攻撃を受ける また ドナー細胞の HLA が消失していると ドナー細胞

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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ブロック共重合体ミセル医薬品の開発に関する厚生労働省/欧州医薬品庁の共同リフレクションペーパー

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

背景 これまで遺伝子治療には DNA が用いられてきましたが DNA は生体内 DNA への取り込みによる発がんの危険性や 導入に用いるウイルスベクターによる感染の危険性があり 実用化には至っていません そこで DNA に代わって登場してきたのが mrna( 注 1) です mrna は 遺伝子 D

計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

報道発表資料 2007 年 8 月 1 日 独立行政法人理化学研究所 マイクロ RNA によるタンパク質合成阻害の仕組みを解明 - mrna の翻訳が抑制される過程を試験管内で再現することに成功 - ポイント マイクロ RNA が翻訳の開始段階を阻害 標的 mrna の尻尾 ポリ A テール を短縮

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研


( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

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革新的がん治療薬の実用化を目指した非臨床研究 ( 厚生労働科学研究 ) に採択 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療 再生医学分野の小戝健一郎教授の 難治癌を標的治療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究 が 平成 24 年度の厚生労働科学研究費補助金 ( 難病 がん等の疾患

記載例 : ウイルス マウス ( 感染実験 ) ( 注 )Web システム上で承認された実験計画の変更申請については 様式 A 中央の これまでの変更 申請を選択し 承認番号を入力すると過去の申請内容が反映されます さきに内容を呼び出してから入力を始めてください 加齢医学研究所 分野東北太郎教授 組

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

( 主催者挨拶 ) 開催趣旨と日本生命科学アカデミーの紹介 日本生命科学アカデミーは日本学術会議第二部の活動を多方面から支援する組織として昭和 62 年に設立されました 日本生命科学アカデミーの旧称は日本医歯薬アカデミーでしたが これは日本学術会議が平成 17 年まで七部体制であったことによるもので

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トランスジェニック動物を用いた遺伝子突然変異試験の開発 改良 ( ) トランスジェニック動物遺伝子突然変異試験は, 突然変異検出用のレポーター遺伝子をゲノム中に導入した遺伝子組換えマウスやラットを使用する in vivo 遺伝子突然変異試験である. 小核試験が染色体異常誘発性を検出

スチック その他の化学物質を生産する化学工業ではなく 生命最強のツールである酵素を使って化学反応を触媒し さらには 新しい酵素を設計して作り出すことによって 物質生産を根本的に変えることができると考えていました 当時 世界的なバイオテクノロジーブームが盛り上がる中で アーノルド博士と同様のことを多く

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

生物時計の安定性の秘密を解明

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統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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プロジェクト概要 ー ヒト全遺伝子 データベース(H-InvDB)の概要と進展

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新技術説明会 様式例

みどりの葉緑体で新しいタンパク質合成の分子機構を発見ー遺伝子の中央から合成が始まるー

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

れており 世界的にも重要課題とされています それらの中で 非常に高い完全長 cdna のカバー率を誇るマウスエンサイクロペディア計画は極めて重要です ゲノム科学総合研究センター (GSC) 遺伝子構造 機能研究グループでは これまでマウス完全長 cdna100 万クローン以上の末端塩基配列データを

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 5 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 椎間板ヘルニアの新たな原因遺伝子 THBS2 と MMP9 を発見 - 腰痛 坐骨神経痛の病因解明に向けての新たな一歩 - 骨 関節の疾患の中で最も発症頻度が高く 生涯罹患率が 80% にも達する 椎間板ヘルニア

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

資料110-4-1 核置換(ヒト胚核移植胚)に関する規制の状況について

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ゲノム編集の医学への応 田中光一 東京医科歯科大学 難治疾患研究所

ゲノム編集とは? 遺伝子の配列を自在に改変する技術

A と T C と G がペア ( 相補性 ) 染色体と DNA

遺伝子から形質までの過程

ゲノム編集は 相同組換えを利用する 外来遺伝子 標的遺伝子非標的遺伝子 相同組み換え ランダムな挿入 外来遺伝子の分解 標的遺伝子の改変 非標的遺伝子の改変 遺伝子の改変無し

DNA の 2 本鎖切断は 相同組換え効率を上げる 外来遺伝子 1 本鎖切断 標的遺伝子 非標的遺伝子 相同組み換え (1000 倍 ) 2 本鎖切断 標的遺伝子の改変 (1983 年 Szostak がモデルを発表, 1994 年 Jasin が証明 )

ゲノム編集を効率化するには 標的遺伝子部位に DNA2 本鎖切断を起こさせる

どうやって標的部位に DNA 二本鎖切断を起こす のか? DNA を切断する酵素 (FokI) 標的部位を決める情報 ( 塩基配列 ) DNA 切断酵素を塩基配列の情報を基に 標的部位に近づける

どうやって標的部位に DNA 二本鎖切断を起こす のか? 特定の塩基配列を認識できる蛋白質がある DNA 切断酵素と標的部位の塩基配列を認識できる蛋白質を融合させた人工蛋白質を作成すればいい

どうやって標的部位に DNA 二本鎖切断を起こす のか? DNA 認識蛋白質 DNA 切断酵素 DNA 切断酵素 DNA 認識蛋白質 ヒトの DNA の長さ : 30 億塩基対 (3 x 10 9 ) 4 20 = 10 12 20 塩基を認識する DNA 認識蛋白質が必要 (5 -AGTGGGCCTAATCGCGGGTA-3 の配列が存在する確率が 1/10 12 )

ZFN や TALEN によるゲノム編集 第一世代 (1996 年 ) DNA 結合ドメイン : ジンクフィンガー 第二世代 (2010 年 ) DNA 結合ドメイン : 植物病原細菌が持つ転写因子様蛋白質 TALE

第 3 世代のゲノム編集技術 CRISPR/Cas9 システム (2012 年 ) 標的部位の認識 : 蛋白質 RNA DNA 切断酵素 :FokI Cas9

CRISPR/Ca s 9 システム 細胞の標的 DNA Cas9 DNA 分解酵素 crrna tracrrna crrna: 標的の塩基配列と相補的な配列を持つ RNA 塩基対合相互作用により標的 DNA と 2 重ラセン形成

クリスパー (CRISPR/Cas システム ) Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats (CRISPR)/CRISPR-associated genes (Cas) ( クラスター化反復短回文配列リピート / クリスパー関連遺伝子 ) クリスパー 中田篤男と石野良純が 1987 年に発見 CRISPR スペーサー リピート数とファージ感染への 抵抗性が相関する 石野良純教授 ( 現 九州大学 ) 細菌の抗ウイルスシステム?

CRISPR-Cas システムは細菌の免疫機構

Emmanuelle Charpentier Jennifer Doudna

CRISPR/Cas システムを用いたゲノム編集技術の誕生経過 CRISPR 研究 ( 細菌の免疫 ) ゲノム編集研究 Cas9 が RNA 依存性 DNA2 本鎖切断酵素であることの発見により 2 つの異なる研究分野が 2012 年に統合された

クリスパーのゲノム編集への応用 Science 2013 より引用 改変 人工一本鎖ガイド RNA (sgrna) ハサミ Cas9 標的に Cas9 を誘導 精密に標的を狙い撃つ分子のハサミ 標的 DNA 標的 DNA の切断遺伝子欠損 1. 非常に簡単 2. 強力な作用 3. どんな細胞や生物もOK

Dr. Feng Zhang (born 1982) is a PI at MIT and the Broad Institute Dr. Virginijus Šikšnys is a Professor at Vilnius University

遺伝子から形質までの過程

CRISPR/Cas9 システムの応用 基礎研究への応用 In vitroのゲノムワイドな遺伝子機能の解析 (CRISPRsgRNA library) In vivoの遺伝子機能の解析 ( 様々な遺伝子改変生物 ) 疾患研究や医療への応用 疾患モデル動物 細胞の作成と創薬への応用 遺伝子治療 安全な移植臓器の作成 マラリア デング熱 ジカ熱などの撲滅 食料生産への応用 品種改良に要する期間の短縮 高い付加価値や新規形質を持つ品種の作出 資源生産への応用 微生物や植物の品種改良による有用物質の生産効率改善 微生物や植物への新機能付加による有用物質の新規生産

CRISPR/Cas9 の疾患基礎研究への応用

緊急に克服すべき疾患 : 癌 糖尿病 認知症 うつ病 ( 多因子疾患 : 遺伝子因子と環境因子の相互作用で発症 ) 遺伝子因子の方が確実な結果を期待できる プレシジョン メディシン ( 精密医療 ) 万人の健康情報 ( ゲノム情報 病歴 生活習慣 ) を収集画期的な新薬開発を目指す 疾患に関与する遺伝子異常を 治療に結びつけるには 遺伝子の機能解析が必要である 疾患の遺伝子異常を再現したモデル動物が重要

CRISPR/Cas システムの開発により 疾患モデル動物の作成が加速した (Science 2012) 従来の作成方法 (1~2 年 ) CRISPR/Cas システム (1 ヶ月 )

従来の遺伝子治療の問題点 従来の遺伝子治療 : 正常な遺伝子を付加 ( 染色体のランダムに位置に遺伝子が挿入 ) 癌遺伝子の活性化により白血病が相次ぎ 中止 治療する細胞 ガン遺伝子の活性化 ガン化 ウイルス 標的部位に正常な遺伝子を挿入することにより 副作用の少ない正確な遺伝子治療が可能

CRISPR/Cas9 の医療への応用 1. 遺伝子治療 2. マラリアなどの感染症の撲滅 3. 移植臓器の作成

HIV-1/AIDS の治療 HIV-1がTリンパ球やマクロファージに感染し これら免疫細胞の機能を障害する HIVウイルス HIVウイルス ゲノム編集で CCR5 を破壊 HIV ウイルスの感染には CCR5 遺伝子が必須 HIV ウイルスは細胞に感染できない

AIDS 患者の遺伝子治療の概略 AIDS 患者 T リンパ球の採取 CCR5 の破壊 CCR5 欠損 T リンパ球を患者に戻す CRISPR/Cas システム

癌の免疫療法の効率化 CAR-T (Chimeric antigen receptor T-cell) 療法

Clinicaltrial.gov に登録されているゲノム編集を用いた臨床試験

ヒト受精卵の遺伝子治療 ( 変異遺伝子を正常に修復 )

遺伝子異常の種類と治療法 置換した塩基を正常に戻す 正常な遺伝子を挿入

ヒト受精卵にゲノム編集を応用した最初の例 ( 中国 2015 年 ) つの精子を受精した受精卵を用い -globin gene を標的にしたゲノム編集

ヒト受精卵における HBB 遺伝子の改変効率 オフターゲットの遺伝子改変

ゲノム編集のオフターゲット オフターゲット : 標的以外の場所を切断 オフターゲット オフターゲット オンターゲット オンターゲット オフターゲット

米国の国際幹細胞研究協会は 潜在的リスクの広範な科学分析が行われ それと並行して社会的 倫理的な影響に関する広範な一般討論を行う間 ヒトの臨床的なゲノム編集を試みることは中止すべき 英国の ヒト受精 発生学委員会 は ヒト受精卵の正常な発達に必要な遺伝子を調べる目的で ヒト受精卵のゲノム編集をすることを認めた 受精後 7 日以内の受精卵に改変を加え その影響を解析し 改変された受精卵は 14 日以内に廃棄する

ヒト 3PN 受精卵にゲノム編集を応用した 2 例目 ( 中国 2016 年 )

正常なヒト受精卵にゲノム編集を応用した最初の例 ( 中国 2017 年 )

正常なヒト受精卵にゲノム編集を応用した 2 番目の例 ( 米国 2017 年 ) ( 肥大型心筋症 )

70

通常の遺伝子挿入 遺伝子ドライブ 抗マラリア遺伝子 Cas9 ガイド RNA ガイド RNA 抗マラリア遺伝子 Cas9 Cas9 ガイド RNA 受精卵に注入 受精卵に注入

通常の遺伝子挿入 雄 雌

遺伝子ドライブ

豚からの臓器移植 問題点 1. ウイルス感染 (porcine endogenous retrovirus) 2. 免疫拒絶

豚からの臓器移植 豚のゲノムにある 62 個のレトロウイルス全てを CRISPR/Cas9 技術で欠損した細胞株を作成 Genome-wide inactivation of porcine endogenous retroviruses Yang L, et al., Science 350:1101, 2015

egenesis

中内啓光教授

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