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44 4 I (1) ( ) (10 15 ) ( 17 ) ( 3 1 ) (2)


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I II III 28 29

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8 章橋梁補修工 8.1 橋梁地覆補修工 ( 撤去 復旧 ) 8.2 支承取替工 8.3 沓座拡幅工 8.4 桁連結工 8.5 現場溶接鋼桁補強工 8.6 ひび割れ補修工 ( 充てん工法 ) 8.7 ひび割れ補修工 ( 低圧注入工法 ) 8.8 断面修復工 ( 左官工法 ) 8.9 表面被覆工 (

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本日の主な内容 1. はじめに 2. 塩害 中性化補修の基本的な考え方 塩害 中性化の劣化メカニズム 塩害 中性化の補修工法選定潜伏期 進展期 加速期 劣化期 3. 亜硝酸リチウムを用いた補修技術 4. 建築分野での補修事例紹介 5. 劣化機構に応じた補修工法の選定の考え方 2

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河川コンクリート構造物の 劣化診断の要点 国立研究開発法人土木研究所先端材料資源研究センター古賀裕久

2 内容 1. 河川コンクリート構造物の維持管理に関する技術情報 2. 河川コンクリート構造物の変状の事例 3. 樋門 樋管に見られるひび割れ

3 河川コンクリート構造物の 維持管理に関する技術情報

4 維持管理に関する技術情報 河川法の改正 (H25.4) 河川管理施設等を良好な状態に保つよう維持 修繕すべきことを明確化 点検 堤防等河川管理施設及び河道の点検要領 (H28.3) 中小河川の堤防等河川管理施設及び河道の点検要領 (H28.3) 樋門等構造物周辺堤防詳細点検要領 (H24.5) 点検結果の評価 堤防等河川管理施設の点検結果評価要領 ( 案 ) (H28.3) 堤防等河川管理施設の点検結果評価要領 ( 案 ) 参考資料 (H28.3) 樋門 樋管のコンクリート部材における点検結果評価のポイント ( 案 )( H28.3 ) http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/tenkenhyouka/index.html

5 評価の手順 目視点検の結果から, 変状箇所毎に評価 a: 異常なし b: 要監視段階 c: 予防保全段階 d: 措置段階

変状箇所の分類 ( 樋門 樋管 ) 着眼点 6 1 周辺堤防のクラック 緩み 取付護岸のクラック 2 函体底版下等の空洞化 3 函体等の破損 4 継手の変形 破断 5 門柱等の変形 破損 6 函体内の土砂堆積 7 函体の過大な沈下 赤色はコン部材 1 堤防のクラック等 2 空洞化 3 函体のひび割れ, 鉄筋腐食等 4 継手の破断 5 門柱の変形等

7 評価の区分 評価区分 3 函体等の破損 5 門柱等の変形, 破損 a: 異常なし 変状無し ( 左記 ) b: 要監視段階 クラック 浮き 剥離 さび汁等 c: 予防保全段階 耐久性に影響を与える恐れのあるクラック 断面の欠損 鉄筋の腐食 d: 措置段階 構造耐力に影響する断面欠損 ( 左記 ) ( 左記に加え, 門柱の傾き ) ( 左記に加え, ゲートの開閉不全 )

変状事例 ( 参考資料から ) 8 b: 要監視段階クラックがあるが, 進行性のものには見えない事例 c: 予防保全段階腐食した鉄筋が連続して露出 ( 何らかの劣化要因が疑われる ) d: 措置段階断面欠損の事例

9 評価の流れ 変状箇所ごとに着眼 機能低下の状態や進行性を評価 b: 要監視段階 c: 予防保全段階 d: 措置段階

10 よくある質問 定量的に判断できないか ひび割れ幅等による一律な評価は, 必ずしも適切ではない 様々な原因がある 技術者の知識と経験が求められている 試験装置等で判断できないか 緊急性は大きくないものの, 変状事例は少なくない 原因によって調査すべき項目は異なる 必要に応じて詳細な調査を実施

11 河川コンクリート構造物の 変状の事例 土木研究所等で評価したもので, 各構造物管理者によるものではありません

12 構造物は老朽化する? 老朽化は便利な言葉だが 適切に施工されたコンクリートの強度的性質は数十年では低下しない 想定される変状の原因 1. 予期せぬ外力 ( 地震力, 不同沈下,etc.) 2. 材料の劣化 ( 鉄筋, コンクリート ) 3. 建設時からあった 本当に老朽化ですか? 損傷の実態を知る

コンクリート構造物の 13 代表的な劣化メカニズム 1. 鋼材腐食 中性化 塩害 2. コンクリートの劣化 アルカリ骨材反応 (ASR) 凍害 化学的侵食 コンクリート中に塩化物イオンが多量に含まれると, 内部の鋼材 ( 鉄筋等 ) が腐食 中性化より腐食速度が大 骨材 ( 砂利や砂など ) 中のシリカが高アルカリ環境下で膨張性の ASR ゲル コンクリート凍結時の水分の膨張により, 組織が破壊

調査例 : コンクリート構造物健全度実態調査 14 1999 年実施 年代, 構造物種類, 地域がランダムな2099 件 ( トンネル除くと1843 件 ) 橋梁上部構造, 橋梁下部構造, 擁壁, カルバート類, 河川構造物, トンネル 主に目視による調査 健全度を 5 段階に分類 Ⅰ: 変状無し Ⅱ: ひび割れなどがある ( 耐久性への影響は不明 ) Ⅲ: 追跡調査が必要 Ⅳ: 詳細調査が必要 Ⅴ: 補修必要 変状の原因を推定ひび割れ図写真構造物の周辺環境等から, 劣化メカニズムによっては特定困難

コンクリート構造物健全度実態調査健全度評価結果 15 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ 1386 件 389 件 77 件 18 件 3 件 Ⅰ: 変状無し Ⅱ: ひび割れなどがある ( 影響は不明 ) Ⅲ: 追跡調査が必要 Ⅳ: 詳細調査が必要 Ⅴ: 補修必要 10% 0% ~1964 1965~74 1975~84 1985~ 旧い構造物ほど劣化が進行 継続的な点検が必要なもの ( 劣化度 Ⅲ 以上 ) は, 約 5%

コンクリート構造物健全度実態調査健全度評価結果 コンクリート構造物全体 河川構造物 16 Ⅰ: 変状無し Ⅱ: ひび割れなどがある ( 影響は不明 ) Ⅲ: 追跡調査が必要 Ⅳ: 詳細調査が必要 Ⅴ: 補修必要 軽微な変状はやや多い 深刻な変状はやや少ない

17 劣化度 IV 竣工後 69 年 劣化度 III 竣工後 27 年 局所的? 劣化度 IV 竣工後 37 年 劣化度 III 竣工後 31 年 端部のみ (ASR は温度や水の供給の影響有り ) 劣化度 IV 竣工後 35 年 海岸線から 100m 以内 劣化度 II 竣工後 40 年 ( 建設時のコールドジョイント?)

河川構造物の評価結果 18 劣化度 III 以上は 4%(IV が 3 件,III が 11 件 ) 河川構造物以外に比べるとやや健全 ( 部位によるが第三者影響度の問題が生じにくいのが一因 ) 判定理由 ( 複数選択 ) 劣化度 IV,III 配筋不良 :10 ASR:3 コン低品質 :3 不明 :1 変状があり, 追跡調査が必要 劣化度 II 配筋不良 :42 コン低品質 :38 ASR:4 凍害 :2 不明 :20 ( 耐久性への影響は不明だが ) 変状有り

19 調査例 : まとめ 種々の構造物を調査した結果では, 河川構造物のコンクリート部材としての劣化は, 比較的穏やか 竣工時から損傷の原因が内包されていたと考えられる事例が少なくない (ex. かぶりが小さい ) 変状の特性に合わせた維持管理を行うのが合理的

20 樋門 樋管に見られるひび割れ 樋門 樋管のコンクリート部材における点検結果評価のポイント ( 案 )

21 樋門 樋管に見られるひび割れ 樋門 樋管のコンクリート部材としての損傷に限っても, 様々な原因が想定された 損傷原因 影響を考慮して評価することが望ましい コンクリート部材の致命傷につながりかねない損傷を見逃さないことが重要 樋門 樋管のコンクリート部材における点検結果評価のポイント ( 案 )( H28.3 )

22 維持管理に関する技術情報 よくある変状を整理 点検 堤防等河川管理施設及び河道の点検要領 (H24.5) 中小河川の堤防等河川管理施設及び河道の点検要領 (H28.3) 樋門等構造物周辺堤防詳細点検要領 (H24.5) 点検結果の評価 堤防等河川管理施設の点検結果評価要領 ( 案 ) (H28.3) 堤防等河川管理施設の点検結果評価要領 ( 案 ) 参考資料 (H28.3) 樋門 樋管のコンクリート部材における点検結果評価のポイント ( 案 )( H28.3 ) http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/tenkenhyouka/index.html

3 23 ひび割れの類型化 1 2 1 函軸直角方向輪切り状ひび割れ 2 鉄筋に沿ったひび割れ, コンクリートの剥離 3 函軸方向のひび割れ ( 頂版中央付近 ) 6 4 函軸直角方向 壁面斜め方向のひび割れ 5 側壁函軸方向ひび割れ ( コールドジョイント ) 6 頂版の不規則なひび割れ 7 側壁函軸方向水面付近の変状 ( ひび割れ, 剥離 ) 8 呑口 吐口部の網目状ひび割れ 7 4 5 8

24 ひび割れ 1 ひび割れの特徴 側壁や頂版 函軸直角方向に輪切り状 概ね等間隔 ( ひび割れ間が数 m 以上程度 ) 想定される原因 温度変化または, 乾燥収縮によって函体の寸法変化が生じたことが考えられる 留意点 内部の鉄筋が腐食するまでは性能への影響は大きくない 長期的 ( 約 5 年後 ~) には収束が予想される 3 1 2 設置 1967 年 設置 1968 年

25 判定の留意点 ( 樋門の構造 ) 沈下に対する設計 剛構造 ( 直接基礎 ) 剛構造 ( 杭基礎 ) 柔構造 ( 平成 11 年通達以降 )

26 ひび割れ 1 1 のひび割れを確認 ( 温度変化 乾燥収縮等が原因と想定される ) ひび割れが顕著か No Yes a. 異常なし に区分されるひび割れの例 ひび割れの進行性があるか Yes c. 予防保全段階 に区分されるひび割れの例 No 鉄筋の腐食が顕著か No Yes b. 要監視段階 に区分されるひび割れの例 a: 異常なし b: 要監視段階 c: 予防保全段階 最もよく見られるひび割れ ( 特に古い樋門 樋管 ) 漏水箇所から見られる析出物は, さび汁とは限らない

27 ひび割れ 2 ひび割れの特徴 側壁や頂版 ( 隅角部付近に多い ) 概ね等間隔 ( ひび割れ間が数 10cm 程度 ) 鉄筋のかぶりが小さい 想定される原因 鉄筋の腐食 鉄筋の配置が不適切でかぶりが小 留意点 鉄筋の腐食程度や範囲に留意が必要 鉄筋の配置が不適切な場合, その範囲 腐食の理由 ( 中性化, 塩害 ) を明確にすることが必要 3 1 2 設置 1974 年 設置 1955 年

28 ひび割れ 2 2 のひび割れ等を確認 ( 鉄筋の腐食が原因と想定される ) 腐食の原因は塩害か Yes 極めて限定的 No 鉄筋の腐食が顕著か 極めて限定的 顕著 鉄筋の腐食が顕著か 軽微, 顕著 軽微 a: 異常なし b: 要監視段階 c: 予防保全段階 (d: 措置段階 ) ( 機能が低下し, 補修 更新等が必要 )

29 c: 予防保全段階として紹介されていた事例だが, 単独の腐食のようにも見える 腐食が構造物に与える影響が推察できるような写真 記録が必要 c: 予防保全段階鉄筋の露出が複数見える ( 全部腐食すると安全性に疑問 )

30 ひび割れ 4 ひび割れの特徴 主に側壁 函軸直角方向に輪切り状 一部斜め方向のひび割れ 概ね等間隔 ( ひび割れ間が 1m 以下程度 ) 貫通しやすい 想定される原因 不同沈下が考えられる 留意点 函体周囲の空洞化などにも留意するのがよい 不同沈下によるひび割れは, 背面まで貫通していると考えられる 6 7 4 8 5 設置 1967 年

ひび割れ 1 と 4 の比較 31 約 20m 約 20m

32 ひび割れ 4 4 のひび割れを確認 ( 不同沈下が原因と想定される ) 不同沈下の影響が疑われるか Yes ひび割れに進行性があるか No 1 のひび割れに対する判定を参考にする (1 とは異なるものであることに留意 ) Yes No 個別に検討 ひび割れが顕著か No b: 要監視段階 Yes b. 要監視段階 に区分されるひび割れの例 c. 予防保全段階 に区分されるひび割れの例 c: 予防保全段階 (d: 措置段階 ) ( 機能が低下し, 補修 更新等が必要 )

33 まとめ 樋門 樋管の維持管理では, 変状箇所ごとに点検 評価 目視観察の結果から評価 定型的な評価は望ましくない 典型的なコンクリート構造物の劣化ばかりではない ひび割れの特徴から, 原因も考慮して評価することが望ましい 点検 評価事例の蓄積が求められている

参考資料 2014.10.8 橋梁維持補修研修 34

鋼材の腐食 / 塩害 劣化のメカニズム 鉄筋の周囲に一定以上の塩化物イオンがあると, 鉄筋表面の不動態被膜が破壊され, 容易に腐食するようになる 外部から飛来する塩分によるものとコンクリート内部に建設当初から含まれていた塩分によるものがある 特徴 腐食速度が速い 効果的な補修が困難 主鉄筋 PC 鋼材の腐食は, 耐荷性能に直結 35

コンクリートの劣化 / アルカリ骨材反応 劣化のメカニズム 骨材中のシリカがアルカリ環境下で反応し, アルカリシリカゲルを生成, 水を吸収して膨張し, ひび割れを生じる 特徴 不規則な網状のひび割れ ( 膨脹性 ) 白色の析出物 ( アルカリシリカゲルを含む ) 36

コンクリートの劣化 / 凍害 劣化のメカニズム コンクリート中の水分が凍結する際の膨張圧で, コンクリートや骨材が破壊される 特徴 角かけ 水みちの損傷 凍結と融解が繰り返される場所 新設時の対策 混和剤によるエントレインドエア ( 微細な空気泡 ) フレッシュ時の空気量測定 適切な品質の骨材 吸水率 安定性試験 37