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と画面上のテキストの提示よりも学習者のパフォーマンスを上げる すべてのマルチメディア要素が 同等に効果があるわけではない 絵が提示されると テキストに払われる注意が下ってしまう場合があるから 文字テキスト 音声テキスト 動画のようなマルチメディア要素の効果 英単語習得における学習促進または余分な記憶負荷の削減につながるかを調査 RQ1:6 つの方法で単語を提示し 素点 自信度の平均 admissible probability scoring を基に測定した場合 その方法によって点数に差はあるのか RQ2:6 つの単語指導方法を生徒が完了するのにかかった時間に差はあるのか RQ3: 生徒の態度調査スコアを基にした 6 つの指導方法に対する生徒の態度に違いはあるのか Method 生徒の単語力を測るために Admissible Probability Measurement(APM) Procedure に基づいた多肢選択式テストを採用した 素点 : 正解すれば+1 点 間違えれば-1 点 30 項目のテストに全て正解すれば 30 点 全て間違えれば-30 点 自信度 : 解答欄の横に 0~100 の数字を記入して 自分の答えの自信度を表す APM score: 自信度と自分の解答を基にした点数 100% の自信度で正解を記入していたら 1 点 0% の自信度で正解していたら-1 点 0% の自信度で不正解だったら-1 点 単語の 6 つの提示方法 Group A: 文字テキスト Group B: 文字テキスト+ 音声テキスト Group C: 文字テキスト+ 絵 Group D: 文字テキスト+ 絵 + 音声テキスト Group E: 音声テキストのみ ( 文字テキストなし ) Group F: 絵 + 音声テキスト ( 文字テキストなし ) Participants 14 歳の韓国人学生 172 人を対象として行われた 一度もコンピュータを使った語彙学習を受けたことがない A:43 人 B:22 人 C:34 人 D:24 人 E:24 人 F:25 人に分けられた Materials 5 つの基準を基にコンピュータを使った英単語語彙学習を実施した 1. 提示される英単語の難易度は 韓国の中学生のレベルに適したものを使用した 2. 絵は 文字テキストに沿った内容のものを使用した 3. 絵に指示をすれば 静止画または動画のイメージから語の意味を得ることが 可能であった 4. 音声テキストは文字テキストの内容に沿ったナレーションとして使用された 2

5. 画面上の文字テキストが減らされた場合 絵と音声テキストにより多い領域が残された 提示された語は以下の 15 語である 1)tether, 2)wither, 3)tumble, 4)separate, 5)gorge, 6)fetter, 7)beacon, 8)crest, 9)awl, 10)ditch, 11)entice, 12)taut, 13)quench, 14)wizen, 15)waylay それぞれのレッスンは最大で 30 分であり 時間はコンピュータで制御できた Procedures 30 項目の単語の pretest 一週間後 コンピュータによる学習と同様の posttest 一週間後 同様の retention test と 40 項目の態度調査の記入 Results データは分散分割法と一元配置分散分析によって分析された 1.pretest, posttest, retention test の素点 2. の自信度の平均 3. の APM の得点 4. マルチメディア教授を完了するのにかかった時間 5. 生徒の態度調査 Student s Raw Score pretest: 有意差なし posttest:c は B と E よりも有意に高かった retention test: D は B と E よりも有意に高かった C と D は他のグループよりも英単語を効果的に学習していた Student s Mean Degree of Certainty Estimates pretest: 有意差なし posttest:c は E よりも有意に高かった マルチメディア教授を受けた生徒の自信度は増加した 3

Shuford Admissible Probability Scores pretest: 有意差なし posttest: 1C は B と E よりも有意に高かった 2D は E よりも有意に高かった retention test: D は B よりも有意に高かった マルチメディア指導を受けたかどうかで APM スコアに有意に差が出た Time Required to Complete Instruction & Student Attitude Inventory 6 つのグループ間のマルチメディア教授の完了時間と態度において有意な差はなかった Discussion RQ1 pretest と retention test において 6 つの教授法の違いによる生徒の自信度の平均に有意差は無かった しかし スコアの結果として マルチメディア教授を受けたことによって自信度のスコアが上がったと言える 文字テキスト+ 絵 と 文字テキスト+ 絵 + 音声テキスト は 他のグループよりもスコアが高かった 文字テキストは 絵と提示されると 生徒の語彙学習によりよい効果がある RQ2 マルチメディア教授を受けるのに 多くの時間を要するが そこに有意な差はなかった RQ3 6 つのマルチメディア教授における生徒の態度調査に有意差はなかった 文字テキストについて 文字テキストのみが提示された A は 文字テキスト+ 音声テキストの B と音声テキストのみの E よりもスコアが高かった 文字テキストのみが語彙学習に貢献する理由 : 韓国の生徒は新語を学ぶ際に リスト化した文字を見て覚えることが多いから 音声テキストについて 文字テキスト+ 音声テキストの B と音声テキストのみの E は 単語学習能力を減らした 文字テキストは 音声テキストや絵のみのテキストなどと置き換えることはできない 理由 :1 韓国の生徒は 正しい発音を理解せずに新語を文字のみで覚えることが多いから 4

2 今回のテストが語の発音知識を測っていなかったから 韓国では語の意味を説明する時に 音声テキストの追加は避けた方が効果的である 絵について 文字と絵がある C と D 音声テキストと絵の F は 他のグループよりも効果的な語彙学習であった 理由 : 学習者は 文字テキストのみでは理解できなかった語の定義を 絵のイメージで理解できたと考えられる 文字テキストと絵が組み合わされた教授が語彙学習に役立つ 二重符号化理論を指示する結果 音声テキストを文字テキストに置き換えることは 全ての教育現場に一般化できることではない 文字テキストを減らされると 定義が十分に説明できない ( 韓国人に対して ) Conclusion 文字テキストと絵が提示されることは 語の定義をより理解することにつながる 新語を学ぶのに 訳語と対で覚える方法は 現在の視覚的刺激に慣れた生徒達には時代遅れである 語彙学習を発展させる上で どのような要素を取り入れるか慎重に選ぶ必要がある 新語を正確な発音を知らずに覚える生徒にとっては 音声テキストはコンピュータを使った語彙学習には妨げになってしまうかもしれないから 語の定義に沿ったイメージの絵を選択することが重要である 5

考察 1 学期では 動画を使った実験 そしてコミックを使った実験の効果に関する論文を紹介したが この 2 つはテキストの内容理解に視覚情報やマルチメディア情報がもたらす効果について取り扱っていた 今回は コンピュータを使ったマルチメディア学習が語彙習得にどのような効果をもたらすかを扱った論文である 現在 コンピュータ技術の発達に伴って 様々な機器を使って語彙学習やテキスト内容を扱う授業が増えてきている パソコンを使った学習では 絵だけではなく動画 音声 文字テキストなどを同時に提示し 生徒に語やテキストのイメージを掴みやすくすることができると考えられる これらは Paivio(1986) の二重符号化理論に基づいた考えである しかし 情報量が多すぎると認知負荷がかかりすぎてしまい 学習者のパフォーマンスを下げてしまうことも指摘されている (Mayer & Moreno, 2002) 本論文では コンピュータを使った語彙学習において どのような要素の情報が 学習者にとって有益になるのかを検証している 本実験では 韓国人の 14 歳の中学生が対象者となっている 被験者は 6 つのグループに分けられ コンピュータを使った自己語彙学習を行った 一番 点数の低かったグループは E の音声テキストだけ提示されたグループであった 視覚から得られる文字テキスト 絵 動画などの情報がなく 音声だけで語の情報を得ることは 単純に考えて難しいと思われる しかし ここで注目しておきたいのが 文字テキストのみの提示と 文字テキスト+ 音声テキストの提示のグループであると 文字テキストのみの方が 有意ではないがわずかながら成績が高いことである これは 音声テキストが 文字テキストの情報を妨げていると考えられる また 文字テキストがなく 絵と音声テキストが提示されたグループ F も少々得点が低くなっている このことからも 文字テキストに置き換えて 音声テキストや絵などを提示する方法は 学習者にとってはあまり有益ではなく 文字テキストの重要性がうかがえる しかし このような結果が出たことに対して 著者の指摘としては 韓国では新語を学習する際に 新語と訳語が対になったリストを使うことが多く 正確な発音をあまり指導していないため 文字テキストを使った学習の方が韓国の学生は慣れているのではないかと指摘している このことは 日本人学習者にあてはめられるのだろうか 韓国の英語の授業がどのように行われているか詳しくわからないため断言はできないが 日本人学習者もコミュニカティブな能力を育てようとしているとはいえ 文字情報による単語学習に重きが置かれているように思われる そのため 日本人学習者でも同様の結果が得られる可能性が考えられる しかし 語彙学習とは 定義 意味を理解し 実際に使えるようにするには 発音も重要であるため 音声テキストが一概に妨げになるとは言い難い 特に 本実験のテストにおいては 語の意味 定義を答えることにとどまっており 実際に発音させたりアクセントの位置を確かめさせたりするような問題はなかった 語彙を習得したと言うには やはり実際の発音も重要であると考えられるため テスト内容に発音に関する問題も含めるべきだと考える 語の定義 発音を含めたテストの 6

結果においても 様々な情報が提示されることは過負荷にはならないかを検証する必要があると思われる 本実験で 一番良い成績を残したグループは 文字テキスト+ 絵 の C グループと 文字テキスト+ 絵 + 音声テキスト の D グループであった 文字と文字以外の視覚情報を組み合わせて提示することは やはり良い結果を残しており 二重符号化理論に基づいていることがわかる しかし 本論文では 生徒の熟達度によるグループ分けがされていなかった 熟達度の高い生徒 低い生徒にもマルチメディアな情報が有益なものになるのかという議論も必要である 例えば 熟達度の高い生徒にとっては 今回あまりよい結果を出さなかった音声テキストも有益であるかもしれない また 熟達度の低い生徒にとっても 何が学習の役に立つのか どのような情報がよりよいのか検証するべきである 現在 様々なコンピュータ技術による指導が取り入れられており コンピュータを使った語彙学習も広まっている 絵や動画に慣れてきている世代の生徒たちにとっては コンピュータを使った学習は 興味が注がれるものであると思われるため 有効活用していくべきである 本実験では コンピュータ学習をしたことがない生徒が対象であったが そのような生徒にもこのような学習スタイルは態度調査から受け入れられている 特に 現在ではコンピュータを生徒が一人で使える環境が整いつつあることから 生徒の能力 ニーズに合った語彙学習方法を考えていく必要性があると思われる そのため どのような能力を伸ばすために使うのか どのような生徒にはどのような提示方法がよいのかなどを検証し 柔軟な対応が一人一人に対してコンピュータでできるようにしていくことが望まれる 参考文献 Mayer, R. & Moreno, R. (2002). Aids to computer-based multimedia learning. Learning and Instruction, 12, 107-119. 門田修平 (2006). 第二言語理解の認知メカニズム. 東京 : くろしお出版. 7