24 66 1 2012 Xanthomonas arboricola 2008 6 A G Xanthomonas Vitis viniferax. campestrispv. viticola bacterial canker NAYUDU, 1972 Xanthomonas arboricola Xanthomonas PARKINSON 2009 Table 1 I 3 A B C D 3 10 mm E 3 5mm Occurrence of Bacterial Spot of Grapevine Caused by Xanthomonas arboricola. By Hiroyuki SAWADA, Yukihiro KUNUGI and Kyoko WATAUCHI Xanthomonas arboricola F G mm II 2008 4 2 5 5 6 5 7 8 6 III Xanthomonas Xanthomonas 24
Xanthomonas arboricola によるブドウ斑点細菌病の発生 1 25 DNA DNA 相同性試験の結果を基準として構築されて 表現形質 ブドウ菌はグラム陰性 好気性で 1 本の極べん毛を有 いる 一方 Xanthomonas 属においては DNA DNA する桿菌であり 菌体の大きさは 1.8 ± 0.2μm 0.8 ± 相同性試験の結果と gyrb に基づく分子系統解析や 0.07μm であった 図 1 標準寒天培地上で黄色集落 rep PCR に基づくクラスター分析の結果との間に高い 口絵 H を形成し カタラーゼ活性 サッカロース培 相関が認められている RADEMAKER et al., 2005 ; PARKINSON 地上における粘質集落の形成 硫化水素の産生が陽性で et al., 2009 そこで ブドウ菌の種レベルの位置づけ あった これら以外の表現形質についても 既報の を明らかにするために gyrb と rep PCR に基づく解析 Xanthomonas 属細菌の記載や対照とした Xanthomonas を実施した 属の参考菌株の結果とほぼ一致していた 澤田ら gyrb 分子系統解析の結果 ブドウ菌は X. arboricola に属する既知 pathovar とともに一つの明瞭な単系統群 2011 a なお ブドウ菌を標準寒天培地と普通寒天培地で培養 X. arboricola クレード を形成し 他の菌種から独立 し それらの菌体を用いて Kovacs のオキシダーゼテス することが明らかとなった 図 3 4 同様な傾向は トを実施したところ 前者ではほとんど反応が認められ rep PCR 解析においても確認できた すなわち 4 組 なかったが 後者では強い陽性反応が迅速に現れること の rep PCR 用プライマーセット BOX ERIC REP が明らかとなった Xanthomonas 属の参考菌株におい および GTG 5 を用いて増幅を行い 得られたフラグ てもこれと同様な傾向が認められた したがって メントパターンのデータをすべて連結したうえでクラス Xanthomonas 属細菌のオキシダーゼ活性が陰性と記載 ター分析を行った結果 ブドウ菌は X. arboricola クレー されることが多いのは 標準寒天培地のような糖 グル ドに含まれることが認められた コース を豊富に含む培地で得られた結果が採用されて 以上のように gyrb 分子系統解析と rep PCR 解析と きた可能性が考えられる いう原理の異なる手法 澤田 2008 によって同様な結 分子系統解析 果が得られること 16S rdna 分子系統解析や表現形質 2 16S rdna に基づいて分子系統解析を行ったところ に関してもそれと矛盾する結果は認められないことか ブドウ菌は Xanthomonas 属内の単系統群 X. campestris ら ブドウ菌を Xanthomonas arboricola Vauterin, Hoste, core に入ることが確認できた 図 2 に〇で示した Kersters and Swings 1995 と同定した 澤田ら 2011 a ただし Xanthomonas 属細菌は 16S rdna に関して変異 3 が少なく このデータのみでブドウ菌の種レベルの所属 ブドウ科植物から今までにどのような Xanthomonas 病名の提案 属関連細菌が分離されてきたのかについて 国内外の文 について判定を下すことは不可能であった 一般に細菌の分類における種レベルの枠組みは 献を対象として調査を行った その結果 ブドウ科ブド ウ属植物から分離された Xanthomonas 属関連細菌とし ては X. campestris pv. viticola X. campestris pv. vitiscarnosae X. campestris pv. vitistrifoliae X. campestris pv. vitiswoodrowii および Xylophilus ampelinus basonym : Xanthomonas ampelina が記載されて いた また ブドウ科ヤブカラシ属に属するヤブカラシ ビンボウカズラ の斑点細菌病に関しては Xanthomonas cissicola が病原として報告されている ブドウ科ウドノキ属に属する Leea edgeworthii について は bacterial blight の病原として X. campestris pv. leeana が記載されている 以上のようなブドウ科植物由来の Xanthomonas 属関 0.5 μm 連細菌も含めたうえで分子系統解析を行ったところ い ずれの関連細菌もわれわれが分離したブドウ菌とは系統 図 1 ブドウ斑点細菌病菌 Xanthomonas arboricola の 形態 菌体をネガティブ染色し 透過型電子顕微鏡で観察 した 的位置づけが大きく離れており 種以上のレベルで異な る分類群であることが確認できた なお これら関連細 菌の系統的位置づけについては 図 2 および 3 に矢印 25
26 66 1 2012 0.005 2 16S rdna Xanthomonas Stenotrophomonas Xanthomonas Xanthomonas cissicola. 50 Xylophilus ampelinus X. arboricola X. arboricola Bacterial spot of grapevine 2011 a IV 1 5 2011 a2011 b A G 26
Xanthomonas arboricola 27 X. cissicola pathovar X. campestrispv. leeana X. arboricola 0.1 3 gyrb Xanthomonas PARKINSON et al.2009 215 gyrb X. arboricola Xanthomonas 20102011 a2011 b 2 2008 10 gyrb 4 rep PCR pathovar X. arboricola 2011 a2011 b gyrb 2011 b X. arboricola gyrb 6 6 I 2011 b 3 1984 2011 b X. campestrispv. viticolax. campestrispv. vitiscarnosae X. campestrispv. vitistrifoliae X. campestrispv. vitiswoodrowii 27
28 66 1 2012 pv. pruni X. arboricola 0.05 X. c. citri 4 gyrb Xanthomonas arboricola X. citri subsp. citri 90 X. arboricola X. arboricola pv. pruni100 gyrb 6 4 X. arboricola 28
Xanthomonas arboricola 29 90100 8090 7080 6070 5060 4050 3040 2030 1020 010 0 2 4 6 8 5 20 4 3 4 2011 a 10 Y X 10 I II II A B C D 6 A F gyrb I II II 3 E F 3 1 pathovar pathovar pathovar Xanthomonas pathovar BUI THI NGOC et al., 2010 pathovar X. arboricola pv. pruni 4 2011 a2011 b pathovar RADEMAKER et al., 2005 pathovar pathovar pathovar pathovar pathovar 2 2010 29
30 植 物 防 疫 第 66 巻 第 1 号 2012 年 使用しないブドウ農家もある また 新梢が旺盛に伸長 態特性を明らかにすることが重要であると考えている している 5 6 月ころに本病は発生するが 8 月以降に すなわち ブドウ菌の検出 定量技術を開発したうえ なると病勢の進展がほぼ止まることや 接種試験を成功 で 各種植物体上におけるブドウ菌の分布 動態を明ら させるためには ブドウ苗を軟弱に育てるのが必須であ かにすること ブドウ樹体上における本菌の生残能力を ることも明らかとなってきた さらに 本病の発生が最 確認すること 越冬場所 第一次伝染源を解明すること 初に確認された 2008 年の梅雨期は 例年になく降雨量 等が今後の課題であろう また ボルドー液以外の各種 が多くて日照時間が少なかったことや 接種試験におい 薬剤による防除効果についても早急に確認する必要があ ても 菌液を噴霧後のブドウ苗を暗黒下の湿室に置かな る それらの知見を総合し 本病に対する効果的な診 いと発病しないということも 関連する情報として挙げ 断 防除技術を確立したいと考えている ておきたい 引 用 文 献 以上のことから 葉や果房の組織が軟弱な時期に 過度の多雨 日照不足が重なると ボルドー液散布が十 分ではない 甲斐路 において日和見感染が起こりうる という可能性が浮かび上がってくる このような好適な 条件が出揃った 2008 年の梅雨期に ブドウ菌による日 和見感染が多発して被害が顕在化した結果 本病が病害 として初めて認識されるに至ったのであろうか ここで展開した推論 あるいは 本文中に示した様々 1 BUI THI NGOC, L. et al. 2010 : Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 60 : 515 525. 2 後藤正夫 瀧川雄一 1984 : 植物防疫 38 : 339 344 3 刀幸博ら 2010 : 日植病報 76 : 212 講要 4 NAYUDU, M. V. 1972 : Phytopath. Z. 73 : 183 186. 5 PARKINSON, N. et al. 2009 : Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 59 : 264 274. 6 RADEMAKER, J. L. W. et al. 2005 : Phytopathology 95 : 1098 1111. 7 澤田宏之 2008 : 植物防疫 62 : 217 222 8 ら 2011 a : 日植病報 77 : 7 22 9 ら 2011 b : 同上 77 : 265 277 な疑問や推論を解明 検証するためには ブドウ菌の生 30