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スライド 1

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Transcription:

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) ( 事業評価の目的 ) 1. JICA は 主に 1PDCA(Plan; 事前 Do; 実施 Check; 事後 Action; フィードバック ) サイクルを通じた事業のさらなる改善 及び 2 日本国民及び相手国を含むその他ステークホルダーへの説明責任 ( アカウンタビリティ ) の確保という 2 つの目的のため事業評価を実施する 2. なお 本ガイドライン上で事業評価の対象となる 事業 とは 独立行政法人国際協力機構法に基づき JICA が実施する技術協力 有償資金協力 無償資金協力の個々の協力案件等 ( プロジェクトないし協力プログラムなど ; 以下 事業 ) とする 3. JICA は これら事業を事業実施主体等 ( 事業実施主体等 とは 事業実施主体 相手国政府 ( 地方政府含む ) 借入人をいう ) のオーナーシップの下 その他の必要な関係者との協働により実施し 当初計画された開発効果 ( 開発目標 ) を一定期間内に実現し また その効果が事業完了後も持続するよう努めることにより 関係するより上位の経済及び社会開発上の課題 ( 開発課題 ) の解決を目指す 4. そのため JICA は 計画から実施 完了後に至るまでの各段階において 一貫した事業マネジメントを行なう 事業評価は この事業マネジメントのツールとして事業がより適切に実施 または 実施監理されるように 改善のための情報を提供するものである ( 事業評価の基本原則 ) (1) 評価の質の確保 5. 事業評価における最大の関心事は 開発効果の実現 の度合にあり これを適切に検証 ( 評価 ) するためには 1 事業自体の評価可能性の確保 2 客観的かつ一貫性のある評価基準の設定と適用が重要である 5-1 対象事業の評価可能性の確保に必要な要素には 事業目的や範囲 投入など事業計画の具体化 モニタリング等を通じた開発効果の把握に繋がる 2

客観的なエビデンスの入手可能性 関係するステークホルダーの特定などが含まれる 5-2 事業評価の過程において認識された個々の事象は 可能な限り客観的かつ一貫性のある基準に基づいて 適切に解釈されなければならない また 個々の事象の解釈は 事業目的に照らして十分に合理的かつ論理的であるよう 総合的に判断されなければならない (2) 中立性と倫理意識 6. 事業評価の 2 つの目的を適切に達成する上で最も重要な要素は 評価に携わる者の偏りのない中立的な姿勢と倫理意識であることを JICA は認識し これらが確保されるよう事業評価を実施する (3) オーナーシップとコミュニケーション 7. 事業によって計画された開発効果が速やかに実現し それが長期にわたって持続可能となるためには 事業実施主体等のオーナーシップが不可欠である この観点から 事業評価の過程において JICA は 事業実施主体等に評価結果を遅滞なく伝えるのみならず 必要に応じ これら関係者と当該国の体制や政策上の取り組みとの整合性を確認する 8. このように JICA が事業実施主体等とコミュニケーションを図りつつ事業評価を実施することは これら関係者のオーナーシップを高め ひいては完了後の開発効果の持続性を向上させるためにも重要である (4) 説明責任 ( アカウンタビリティ ) 9. JICA は 事業の実施に係る透明性を確保し 開発効果の実現に関し 日本国民及び相手国を含むその他ステークホルダーに対する説明責任を果たすため 事業評価の結果をわかりやすい形式で かつ速やかに公表 発信する (5) 事業マネジメントへの効果的なフィードバック 10. JICA は 事業評価の中で得られた教訓や提言が 評価対象事業及び他の事業を含めた事業マネジメントに適切に反映されるよう 必要な組織体制の確保と全ての事業に関わる関係者の意識向上に努める責任を負う 3

( 事業評価の具体的な考え方と実施プロセス ) (1) 上記基本原則を踏まえた具体的な考え方 ( 共通事項 ) 11. JICA は 客観的な根拠に基づく評価可能性に配慮しつつ 主として開発効果が実現されうるかどうか 実現されたかどうかという観点から事業評価を実施する 従って JICA は 事業評価において 開発効果の実現に係るリスク要因の理解に努め 事業実施主体等を含めた当該事業の関係者が 必要に応じて適切な対応策を講じることができるよう 常に配慮する 12. JICA は 事業評価における個々の作業を行うに際し OECD 開発援助委員会が推奨する評価体系を参照しつつ 上述した事業評価の基本原則を踏まえて JICA 自身が定める一定の基準 手続きに従って実施する 13. また JICA は PDCA サイクルの計画 事後の段階において 事業評価を実施し 事業計画の適切性 事業完了後の開発効果実現の度合いを重点的に確認する 評価に当たっては 広い視野 リスク要因及びその対策 論理的な繋がり等を十分意識する なお 事業マネジメントの一環として協力案件等のモニタリングが行われていることから JICA は 事後評価に当たってはこの結果を参照し 評価に有益な情報が得られるよう努める (2) 事前評価 14. JICA は 案件の実施に際し その妥当性について案件の内容に応じ適切な事前評価 ( 事前評価 ) を行う 事前評価においては 妥当性の検証及び成果目標の設定を行う 15. 事前評価において最も重要なことは 開発効果の実現 対象社会へのインパクトの見込みを念頭に 1) 事業の計画が適切に構築されているか 2) 最終的に当該国のどういった開発課題の解決を目指しているのか 3) 事業の実施によって 誰が ( 何が ) どのように変わる ことを目指すのか と言った点について JICA と事業実施主体等が明確にし 共有することである 16. 従って JICA は 事業実施主体等とともに当該事業に影響を与えうる外部のリスク要因も含め 開発課題から効果実現に至るまでのフレームワークを論理的な繋がりを踏まえ 広い視野から客観的な根拠に基づき分析する また 事業実施主体等を含むステークホルダーの適切な把握を行い より協力 ( イ 4

ンターベンション ) の効果が高い事業の形成に努める 17. JICA は 事業実施主体等とともに上述の分析の過程で認識されたリスクに対し これを低減させる取組みを可能な範囲で計画段階から検討しておく必要がある また JICA はこの取組みについて事業実施主体等と十分協議し そのオーナーシップの下 関係者によるこれら取組みの実施を促す 18. また JICA は 事業実施主体等とともに事前評価の過程において 事業の実施から開発効果の実現に至る論理的な道筋 ( アウトプットからアウトカム インパクトに繋がる変容 ) について明確に理解し また そのために必要な時間軸を適切に設定することに努める その際には 計画段階において より上位の課題解決に向けた当該事業の付加価値 及び JICA にとっての出口戦略についても 予め整理しておくことが望ましい 19. JICA は 事業計画にかかる事業実施主体等との合意形成後 事前評価の結果を速やかに公表する (3) 事後評価 20. JICA は 事業完了後の一定期間内に 計画段階の事前評価の結果 事業実施時及び完了時のモニタリングの記録等を踏まえて 事後評価を実施する 21. 事後評価においては 計画と実績の比較を基本として 1) 実施段階での投入そのものよりも 開発効果実現に向けた取組みが適切になされたか 2) その結果としてどの程度開発効果が実現したか を重点的に確認する また 事業完了時から一定の期間をおいて事後評価を実施することで 開発効果の実現の達成度合を含めた総合的な評価を行うとともに 事業の改善に繋がる適切な提言 教訓を導き出すことが可能となる 22. JICA は 事後評価の実施に当たり 事前評価や事業実施時のモニタリングと同様 開発効果の実現につながる論理的な繋がりを念頭に置き これらがどのように実現され持続するか等を 可能な限り客観的な根拠を踏まえ 広い視点で検討する また JICA は 事業を取り巻く状況やその他の要素も総合的に勘案して 定量指標のみに偏ることなく 公正かつ適切な評価を行うよう努める 23. JICA は 評価結果に記載された事実関係につき 事業実施主体等と確認した 5

後 事後評価の結果を速やかに公表する (4) フィードバック 24. JICA は 上述した事前評価から事後評価までの一連の手続きや評価結果の中から 有効と考えられる提言 教訓やグッドプラクティスを抽出し これを他の事業を含めた事業マネジメントの中で活用することにより 開発効果実現に向けた組織的な取り組みを進めていく責任を有する 25. また 事後評価において得られた提言 教訓やグッドプラクティスのうち 事業実施主体等と共有すべき内容については 積極的にこれを伝達し 将来の開発事業の検討や実施に活用されるよう働きかける 26. 特に これらは JICA 事業における協力案件の計画策定において直接貢献するのみでなく 我が国 ODA に関連する諸制度 体制の改善にも有用なものが含まれる JICA は これらを引き続き積極的に公表し 多方面の関係者とその内容を共有するよう努める 27. なお JICA が行う事後評価は事業完了後の一定のタイミングで行う分析にすぎず それ自体は開発効果実現を担保するものではない 従って JICA は 事後評価において事業の目標である開発効果の実現が不十分と判断された場合 事後評価の提言 教訓の中に JICA または 事業実施主体等による継続したモニタリングや追加的な対策の必要性について言及する 以上 6