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. 既箇所での軟弱地盤対策工法の実施.1 工法の選定について前述した地盤条件下に計画盛土を施工した場合 建設段階時 ( 中 ) の安定確保 と 供用後の過大な残留沈下の発生 が問題となった この問題に対し 以下のように対策工法を実施することとした 建設段階時の安定確保は 緩速載荷工法で対処する 残留

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別紙 2 平成 28 年度 ボックスカルバートの基礎地盤対策について カルバート基礎補強工法の施工 釧路開発建設部釧路道路事務所第 3 工務課釧路開発建設部釧路道路事務所第 3 工務課釧路開発建設部釧路道路事務所計画課 富田直樹谷野淳片井浩太 北海道横断自動車道阿寒釧路間 (L=17km) は, 全区間の約 75% が泥炭性軟弱地盤上の盛土区間で, そこに 39 基のボックスカルバートが計画されている. しかし, 指針改訂に伴い, 従来のプレロード工法では支持力不足となることが課題となり, 解決策として プレロード + カルバート基礎補強工法 ( ジオシンセティックス使用 ) を 26 基のカルバートで計画した. 本論文では, ここに至るまでの新工法のフィールド試験と本施工 ( 試験施工 ) での計測結果を報告する. 1. はじめに キーワード : 軟弱地盤, 沈下, 支持力, ジオシンセティックス 北海道横断自動車道 阿寒 IC から釧路西 IC 間 (L= 17km) は, 釧路市阿寒町下舌辛から釧路市市街地近郊を結ぶ高速自動車国道で, 全区間の約 75% が平野部の盛土区間となり, 盛土部には道路 29 基 水路 10 基のボックスカルバートが計画されている ( 図 -1). 当該平野部の地盤は, 表層部に泥炭層 ( 層厚 1~3m 程度 ) が分布し, 砂層 ( 層厚 5~10m 程度 ) を挟在し, 下層部にはシルト質粘性土層 ( 層厚 10~25m 程度 ) が分布し, 層厚 15~40m 弱の泥炭性軟弱地盤が形成されている. 当該地盤を形成する泥炭は, 道央地域に分布する石狩低地帯と比較して, 層厚が薄く (t=1~3m), 間隙比と含水比が小さい (e=3~15,w=100~500%) 傾向にあり, さらに少雪低温地域のため未分解の繊維質を呈している. このため, 載荷盛土による圧密沈下速度が速く, 比較的迅速な地盤の強度増加が期待できる載荷重工法 ( プレロード工法 サーチャージ工法 ) に適した地盤であるのが特徴である. しかしながら, 平成 21 年度の 道路土工 - カルバート工指針 改訂により, 地盤の許容鉛直支持力度は, カルバート底面地盤の極限支持力の 1/3( 常時安全率 3) を満足させることが明記され, 従来のプレロード工法による対策では支持力を確保できなくなった. これにより, ボックスカルバートの基礎地盤対策として, 従来のプレロード工法よりも大幅にコストが高い, 固結工法などによる地盤改良が必要となることが懸念された. そこで, 建設コスト縮減を念頭にした基礎地盤対策工として, 従来の プレロード工法 ( 不同沈下 基礎地盤の強度増加対策 ) に カルバート基礎補強工法 ( 支持力対策 ) を組み合わせた基礎地盤対策について, 有識者会議による協議を交え検討することとなった. ここで, カルバート基礎補強工法 とは, 中詰材の砕石をジオシンセティックスで巻上げ盤状構造としたもので, 平成 27 年度の報告では マットレス工法 と呼んでいたものである. しかしながら, 従来技術の マットレス工法 と本工法では基礎補強体の張出幅やジオシンセティックスの強度設定等の考え方が異なるため, 新たな工法名としている. 従来の マットレス工法 は, 理論の検証を行った文献 1) や実証試験の報告 2) が非常に少なく, 国道 高速自動車国道での実績も無いのが実情である. そこで, カルバート基礎補強工法 としてフィールド試験を行い, 上載荷重を低減させる効果が確認できたため, 当該本線で本施工 ( 試験施工 ) 採用に至った. 本論文は, このフィールド試験により得られた結果を基に, 本線への適用判定について報告するものである. 北海道横断自動車道 阿寒 IC~ 釧路西 IC 間 フィールド試験箇所 図 -1 フィールド試験箇所図 ( 阿寒釧路間 )

2. カルバート基礎補強工法の原理 カルバート基礎補強工法とは, 軟弱な基礎地盤上に, 中詰材 ( 砂利 砕石 ) と高強度の補強材 ( ジオシンセティックス ) を用いて立体的かつ盤状に形成した合成材料 ( 基礎補強体 ) を敷設することで, 中詰材の せん断抵抗効果, 補強材の 引き上げ効果 および上載構造物の 荷重分散効果 による構造物基礎地盤対策の新たな工法である. ジオシンセティックスとは, ジオテキスタイルやジオグリッド等の補強材の総称であり, 以下 補強材 と呼ぶ. 3. 工法採用までの流れ 図 -2 カルバート基礎補強工法の概念図 張出幅 図 -3 カルバート基礎補強工法の補強効果 また, 本工法は ジオグリッド工法 ガイドライン 3) および 地盤補強技術の新しい適用 - 他工法との併用技術 - 4) に示されている マットレス工法 を応用したもので, その補強効果としては, 下式に示すように,1 中詰材のせん断抵抗効果 ( 中詰材のせん断抵抗力 S),2 基礎補強体による引き上げ効果 ( 補強材の引張力 T), 3 上載荷重の荷重分散効果 ( 分散荷重 p) が期待できるものである ( 図 -2, 図 -3). 本工法をボックスカルバートの基礎地盤対策に採用するに当たり, フィールド試験を実施した. 図 -4 に工法採用までのフロー図を示す. フィールド試験は, 本工法の特徴である 基礎補強体による引き上げ効果 や 上載荷重の荷重分散効果 が発揮される条件を検証することを目的としている. なお, 試験の詳細については次章以降で述べることとする. フィールド試験において上載荷重の低減を確認した上で, カルバート底面地盤の許容支持力を満足する基礎補強体の条件を確認する. その後, 本線での本施工を試験施工として実施し, 動態観測を行う. その結果に問題がなければ, 釧路地域限定でボックスカルバートの基礎地盤対策工の 1 つとして採用する. 1 3 2 1S 1D f H+ 2H K ptan 2 ただし,K p はランキン受動動圧係数で, K tan 2 45+ 2 である. p 2 2T 2T D sin 3 qb-s-t H B+2 Htan + p 2 図 -4 工法採用までのフロー

4. フィールド試験 4.1 フィールド試験の概要フィールド試験は, プレロードによる沈下収束が完了した箇所で実施した. 表 -1 にその地盤特性, 表 -2 に試験ケース, 図 -5 にカルバート基礎補強工法の断面モデル図を示す. 試験はケース毎に基礎補強体の張出し幅を変化させ, 上載荷重はボックスカルバートの代わりに大型土のうを使用した. フィールド試験状況写真を写真 -1 に示す. 過年度に従来の マットレス工法 の考え方を基に荷重分散角 ψ を 45 ( 張出幅は載荷幅 B に対し B/2 の 1.3 倍となる ) として基礎補強体の幅を決定し試験を行ったが, 荷重分散効果がほとんど確認できなかった. そこで今回の試験では, 張出幅を B/2 の 2 倍 ( ケース 1), B/2 の 3 倍 ( ケース 2) の 2 ケースとした. 試験計測項目は, 図 -6, 図 -7 に示すように, 土圧計による基礎補強体の上面と下面に作用する鉛直土圧の計測, 基礎補強体の下面に貼付したひずみ計によるひずみ発生状況の計測, 沈下板による上載荷重による荷重直下および周辺地盤の沈下量の計測である. 平面図 断面図 大型土のう 14 袋 表 -1 試験施工箇所の地盤特性 ( プレロード前後 ) 基礎補強体 (t=400) 図 -6 試験施工の平面図 断面図 ( ケース 1 の場合 ) ケース 2 も上記と同様の計測機器を配置 表 -2 試験ケースケース奥行き基礎補強体厚張出幅ケース1 B/2の2.0 倍 2.0m 0.4m ケース2 B/2の3.0 倍 図 -5 カルバート基礎補強工法の断面モデル図 図 -7 土圧計設置断面図 4.2 フィールド試験結果 (1) 土圧 ( 上載荷重低減効果と荷重分散角の検証 ) 基礎補強体上面および下面に設置した土圧計の各ケースにおける, 上載荷重載荷後の計測結果を図 -8に示す. ケース1( 張出幅 2 倍 ) では, 上面土圧 82.5(kN/m 2 ) に対して下面土圧は40.9(kN/m 2 ) となり荷重低減率は約 50% となった. ケース2( 張出幅 3 倍 ) では, 上面土圧 100.7(kN/m 2 ) に対して, 下面土圧は 42.1(kN/m 2 ) となり, 荷重低減率は約 60% となった. 写真 -1 フィールド試験状況写真

張出幅 2 倍 張出幅 3 倍 5. 本線への適用判定 82.5 低減率 50% 40.9 100.7 図 -8 土圧の低減率 低減率 60% さらに, 土圧計測結果を基に, 前出の 2 式により, 各ケースにおける荷重分散角 ψ の検証 ( 土圧計測で確認された上面土圧と下面土圧に合致する荷重分散角 ψ の算出 ) を行った. その結果, ケース 1( 張出幅 2 倍 ) では, 荷重分散角 ψ=60, ケース 2( 張出幅 3 倍 ) では, 荷重分散角 ψ=70 となった. これより, カルバート基礎補強工法は, 補強材 + 中詰材が一体化した合成部材 ( 基礎補強体 ) となっていることから, 通常の土の荷重分散角 ψ=30~45 よりも大きな荷重分散効果が期待できるものと判断できる. (2) 沈下 補強材のひずみ ( 引き上げ効果の確認 ) 図 -9 に各ケースにおける断面方向の沈下 補強材のひずみ計測結果を示した. 張出幅 2 倍と 3 倍を比較すると, 両者の沈下量に大差はないものの, 張出幅 2 倍では, 張出部に若干の沈下が認められた. これは, 補強材による引き上げ効果が張出幅 3 倍のときよりも発揮されず, 載荷荷重と基礎補強体が一緒に若干沈下したためと考えられる. また, ひずみ量は, 両者とも載荷直下部で引張側, 張出部で圧縮側と, ぶら下がり形状を示すひずみ状態にあることが確認できる. 張出幅 3 倍でのひずみ量が大きいことから, 張出幅を広くすることで, 引き上げ効果がより発揮されるものといえる. 42.1 フィールド試験結果により, カルバート基礎補強工法は, 載荷端部からの張出幅を載荷幅 B/2 の 2 倍,3 倍とした基礎補強体を構築することで, 引き上げ効果が発揮され, 支持地盤に作用する荷重の低減効果が得られることを確認できた. そこで, そのフィールド試験結果を踏まえ, 本線ボックスカルバートへの適用の可否について検討した. 本線への適用判定は, 今年度施工を行う 2 基のボックスカルバート (No.2,No.4 ) を対象に実施した. 位置図を図 -10 に示す. 検討は, 支持地盤に作用する荷重を 張出幅 2 倍ではボックスカルバートの設計荷重を 50% に低減した値 ( 荷重分散角 ψ=60 ), 張出幅 3 倍では設計荷重の 40% に低減した値 ( 荷重分散角 ψ=70 ) とし, その荷重が, 平板載荷試験で確認された許容支持力 ( 極限支持力の 1/3) を満足するか否かで適用の可否を判定した. カルバート基礎補強工法の適用判定フローを, 図 -11 に示す. 本施工箇所における地盤の許容支持力と基礎補強体によって低減された荷重を表 -3 に示す.No.2 ボックスは許容支持力 74.8(kN/m 2 ) に対して基礎補強体の張出幅を載荷幅 B/2 の 2 倍にすると低減荷重が 98.2(kN/m 2 ),3 倍で 72.9(kN/m 2 ) となったため, 張出幅を 3 倍とした. 同様に,No.4 ボックスは許容支持力 92.0(kN/m 2 ) に対して基礎補強体の張出幅を載荷幅 B/2 の 2 倍にすると低減荷重が 90.1(kN/m 2 ),3 倍で 72.1(kN/m 2 ) となったため, 張出幅を 2 倍とした. これらの結果から, カルバート基礎補強工法が支持地盤に作用する荷重の低減効果をもたらし, 許容支持力を満足すると判断できたことから, 有識者会議を経て本線での本施工を試験施工として実施するに至った. カルバート基礎補強工法の平面図と断面図を図 -12~ 図 15 に, カルバート基礎補強工の施工状況を写真 -2, 写真 -3 に示す. 図 -9 沈下 ひずみ計測結果 ( 張出幅 2 倍 3 倍 ) 図 -10 No.2 No.4 ボックスカルバート位置図

図 -13 カルバート基礎補強工断面図 (No.2 ボックスカルバート ) 図 -14 カルバート基礎補強工平面図 (No.4 ボックスカルバート ) 図 -11 カルバート基礎補強工法の適用判定フロー 表 -3 本施工における許容支持力と基礎補強体下面土圧 許容支持力 ( 極限支持率 / 安全率 3) 基礎補強体下面分布圧 ( 張出幅 2 倍 ) 基礎補強体下面分布圧 ( 張出幅 3 倍 ) No.2 74.8(kN/m 2 ) 98.2(kN/m 2 ) 72.9 (kn/m 2 ) No.4 92.0 (kn/m 2 ) 90.1(kN/m 2 ) 72.1(kN/m 2 ) 図 -15 カルバート基礎補強工断面図 (No.4 ボックスカルバート ) 図 -12 カルバート基礎補強工平面図 (No.2 ボックスカルバート ) 写真 -2 カルバート基礎補強工の施工状況 (No.2 ボックスカルバート )

6. まとめ 写真 -3 カルバート基礎補強工の施工状況 (No.4 ボックスカルバート ) 7. おわりに今回のフィールド試験の張出部は, 盛土を施工していない無載荷の状態となっているが, 実際の施工では張出部は盛土が載荷された状態となることで, カルバート基礎補強工法への影響が懸念されることになる. これについては, プレロード盛土の単位体積重量よりも軽い材料を選定することで新たな荷重増加を張出部に作用させないことで対応する予定である. 今後は, 本施工 ( 試験施工 ) での動態観測等により張出部に盛土を載荷した状態での土圧 ひずみ 沈下等の挙動を確認し, 室内モデル実験により問題点 課題を整理する計画である. また, カルバート基礎補強工法の 設計 施工の手引き ( 案 ) を有識者会議を経て作成する予定である. 前述までの大型土のうを用いたフィールド試験結果より得られた, カルバート基礎補強工法 に関する知見等は以下に示すとおりである. (1) 載荷端部からの張出幅を載荷幅 B/2 の 2 倍,3 倍を確保した基礎補強体 ( 合成部材 ) を構築することで, 支持地盤に作用する荷重を低減させることが確認できた. (2) 上記 (1) の支持地盤に作用する荷重は, 張出幅 2 倍では約 50% に低減, 張出幅 3 倍では約 60% に低減 となることが確認できた. また, 張出幅を広くすることでその効果が大きくなることが確認できた. (3) 上載荷重低減効果は, 盤状構造を呈する基礎補強体 ( 合成部材 ) のせん断抵抗効果と引き上げ効果による荷重分散効果 ( 張出幅 2 倍での荷重分散角 60, 張出幅 3 倍での荷重分散角 70 ) から得られるものと判断される. (4) 本線への適用の可否は, フィールド試験結果を反映させた設計法 ( 案 ) を立案し, 支持地盤に作用する荷重が, 平板載荷試験で確認された許容支持力 ( 極限支持力の 1/3) を満足するか否かで判定した. このとき, 基礎補強体 ( 合成部材 ) の上面での支持力も確認し安全性を確保した. (5) 上記 (4) の判定により, 今年度施工する No.2 ボックスカルバートでは 張出幅 3 倍,No.4 ボックスカルバートでは 張出幅 2 倍 の基礎補強体 ( 合成部材 ) を構築することで, 許容支持力を満足すると判断できたことから, 有識者会議を経て本線への採用を決定し, 本施工を実施するに至った. (6) 今後は, フィールド試験で確認された上載荷重低減効果等の確認を目的に, 本施工の No.2,No.4 ボックスで試験施工として動態観測を実施する. 謝辞最後に今回のフィールド試験および本施工 ( 試験施工 ) を実施するにあたり, 計器配置等のご指導を頂いた室蘭工業大学大学院木幡行宏教授, 寒地土木研究所林憲裕上席研究員, 橋本聖研究員, ならびに, 設計 施工 計測等にご協力頂いた坂野建設株式会社, 山根土建株式会社, 株式会社ドーコンの関係各位に深く感謝の意を表す. 参考文献 1) 落合 林 塚本 朱 : ジオグリットマットレス基礎の荷重分散効果とその評価, 第 8 回ジオテキスタイルシンポジウム報告,pp.19-28,1993.12. 2) 弘中 平井 谷津 : 載荷実験によるマットレス工法の補強メカニズムの解明, ジオシンセティックス論文集第 20 巻, pp.211-216,2005.12. 3) ジオグリット研究会 : ジオグリット工法 ガイドライン ( 第 1 分冊 ) - 材料試験法, 設計法ガイドライン -,pp.219-228,1990.7. 4) ( 社 ) 地盤工学会 : 地盤補強技術の新しい適用 - 他工法との併用技術 -,pp.60-69,2006.9. 5) 釧路道路事務所小澤 谷野 中野 : ボックスカルバートの基礎地盤対策 - マットレス工法のフィールド試験施工について -, 第 59 回 ( 平成 27 年度 ) 北海道開発技術研究発表会,2016.2.