資料 2 ISDA におけるフォールバックの検討状況 対象通貨と金利指標 (4 つの WG で検討 ) 参加者 USD: USD LIBOR GBP/EUR/CHF: GBP LIBOR Euro LIBOR CHF LIBOR EURIBOR JPY: JPY LIBOR 円 TIBOR ユーロ円 TIBOR AUD/HKD: BBSW ディーラー エンドユーザー 清算機関 IBOR 運営機関 作業の目的 IBOR が恒久的に停止した場合に適用されるフォールバックや フォールバックの仕組みの検討を行い 提案する IBOR のフォールバックを定めている ISDA 2006 年定義集を修正し 決定したフォールバックが IBOR が恒久的に停止した際に適用されるよう 契約書に明記する IBOR を参照する既存取引に 新たなフォールバックを適用するための方法 例えばすべての取引を一括で修正するためのプロトコル を策定する フォールバックのベースとなるレート 代替リスク フリー レート 国 地域特定された RFR 担保有無 WG 名管理者 日本 TONA 無担保リスク フリー レートに関する勉強会日本銀行 アメリカ SOFR 有担保 Alternative Reference Rates Committee (ARRC) ニューヨーク連銀 イギリス SONIA 無担保 Working Group on Sterling Risk-Free Reference Rates イングランド銀行 スイス SARON 有担保 Swiss National Bank National Working Group on Swiss Franc Reference Rates SIX Swiss Exchange オーストラリア RBA Cash Rate 無担保 N/A オーストラリア準備銀行 欧州 ESTER 無担保 European Central Bank Risk-Free Rate Working Group 欧州中央銀行 香港 HONIA 無担保 N/A Treasury Markets Association (TMA) 1
ISDA におけるフォールバックの検討状況 フォールバックのトリガー - 2006 年 ISDA Definitions に以下の事象をトリガーとして導入することを検討中 ( 当該 IBOR の ) 運営機関または代理人により IBOR の公表を恒久的または無期限に停止することが公表され その時点で当該運営機関の後継者が存在しない場合 ( 当該 IBOR の ) 運営機関の監督当局 ( 当該 IBOR の ) 通貨を管轄する中央銀行 運営機関の法域の破産担当官 同破綻処理当局 または運営機関の破産担当官や破綻処理担当当局に類似する裁判所または機関により 当該 IBOR の運営機関が IBOR の公表を恒久的または無期限に停止することが公表され その時点で当該運営機関の後継者が存在しない場合 注 ) 当該 IBOR の停止の公表が 実際の停止より前に行われる場合 フォールバックの適用は実際に停止するまでは適用されない なお IBOR が実際に停止する前に代替レートへの移行を進めるために必要なドキュメンテーションの策定について ISDA メンバーおよび関連当局と検討を行っている 定義の修正 - IBOR の恒久的な停止に対応するため 2006 年版 ISDA 定義集の Section 7.1 で規定される floating rate options の定義を修正する 選定されたフォールバックが発動されるための客観的な事象に関するステートメント トリガーが発生した際に適用されるフォールバックの説明 具体的には IBOR がターム物であるのに対し リスク フリー レートは翌日物であるために必要となるタームの調整 及び IBOR に含まれているプレミアム部分の調整後の RFR がフォールバックとなる また 既存の取引に当該修正 ( フォールバックに関する修正 ) を行うためのプロトコルの策定も行われる予定 2006 年版 ISDA 定義集への修正は 当該修正が適用された日以降に締結された取引にのみ適用されるため それ以前に締結された取引については別途手当てが必要となるため 2
IBOR フォールバック : ターム調整とスプレッド調整に関する市中協議 7 月 12 日 ~10 月 22 日に ISDA はデリバティブ取引のフォールバックに関する市中協議を実施 IBOR のターム構造を ターム構造のない翌日物金利の RFR に対してどのような調整を行うか ( 論点 1) 信用プレミアムやその他の要因 ( 流動性 需要と供給の差による歪み等 ) 部分の調整をどのように行うか ( 論点 2) 対象となる金利指標は GBP LIBOR CHF LIBOR JPY LIBOR TIBOR Euroyen TIBOR 及び BBSW USD LIBOR EURO LIBOR 及び EURIBOR については追加の市中協議を行う 市中協議は ISDA のウェブサイト上に掲載されている https://www.isda.org/2018/07/12/interbank-offered-rate-ibor-fallbacks-for-2006-isda-definitions ISDA は 市中協議への回答を分析し タームとスプレッドの調整方法 ( または次のステップ ) について決定する ISDA は 市中協議の回答を元にどのように最終決定を行ったかについて その理由を公表する 新たなフォールバックの導入はあくまでも自主的に行われるもの したがって 出来る限り多くの市場参加者が導入しやすくなるようなフォールバックを決定する必要があり 多くの市場参加者からの市中協議への積極的な参加が必要 市中協議と平行して RFR に適用されるスプレッドの計算を行う第三者ベンダーへの働きかけも行われる予定 フォールバック レート = ターム調整後 RFR + スプレッド ターム調整 :RFR は翌日物金利である一方 IBOR は 3M 6M といった様々なテナーに対して公表されている そのため 翌日物金利である RFR を ターム金利に調整するための修正を行うことが必要 スプレッド : ターム調整後 RFR は無リスク ( ないし 無リスクに近い ) 金利だが IBOR は銀行の信用リスクやその他の要因 ( 流動性 需給の差による歪み等 ) を含む金利である そのため 当該信用リスクを何らかの手法で計算し ターム調整後 RFR に加算する必要がある 3
論点 1:RFR のターム構築に関する検討 公表される RFR は翌日物金利だが IBOR のフォールバックとするためには 12 ヶ月までのターム構造が必要 そのため クレジットスプレッドを加えるベースとなる ターム調整後 RFR を選定する必要がある 当該タームの調整方法について 市中協議では 4 つの方法が提案されている 1. Spot Overnight Rate: IBOR の計算期間開始日の 2 営業日前に公表される RFR 2. Convexity-adjusted Overnight Rate: スポットの翌日物金利にコンベクシティを打ち消す一次的補正を行ったもの 3. Compounded Setting in Arrears Rate: IBOR の計算期間を日次の複利計算を行って得た RFR 4. Compounded Setting in Advance Rate: 3 と似た計算方法だが 実際の金利計算期間が開始する時点から遡った IBOR の計算期間に基づいて算出される 4
論点 2: スプレッドの計算方法の検討 ターム調整後 RFR は無リスク ( ないし 無リスクに近い ) 金利だが IBOR は銀行の信用リスクやその他の要因 ( 流動性や需給の差による歪み等 ) を含む金利である 当該信用リスクを計算するための方法について 3 つの方法が提案されている 1. Forward Rate Approach (FRA): スプレッドは IBOR の恒久的停止が公表される前日の市場で観測される IBOR と RFR の 各将来時点でのフォワード レートのスプレッド ( 差 ) に基づいて計算される 2. Historical Mean/Median Approach: 長期間 ( 例えば 5 年 または 10 年前に遡った時点から現在 ) における過去のスポット IBOR レートとスポット RFR のスプレッド ( 差 ) の平均値 中央値に基づいて計算される 3. Spot-Spread Approach: フォールバックのトリガーが公表される前日のスポットスプレッドをベースに CS が計算される 市場ストレスによる影響を軽減するため 比較的短期間 ( 例えば 5 営業日 10 営業日 または 1 ヶ月 ) の日次のスポットスプレッドの平均値を使用することも検討されている 5
Adjusted RFR ターム調整方法とスプレッドの計算方法の組み合わせ Spread adjustment Forward Approach Historical Mean / Median Approach Spot-Spread Approach Spot Overnight Rate (SOR) Not compatible (3) (7) Convexity-adjusted Overnight Rate (COR) Not compatible (4) (8) Compounded Setting in Arrears Rate (ARR) (1) (5) Not compatible Compounded Setting in Advance Rate (ADR) (2) (6) (9) 出所 : https://www.isda.org/2018/07/12/interbank-offered-rate-ibor-fallbacks-for-2006-isda-definitions 6
市中協議の結果 ISDA は 11 月 27 日に市中協議の速報結果に関するステートメントを公表 12 月 20 日 最終結果を説明した市中協議に対する具体的なフィードバックの概要を公表 152 件の回答 ( 社数は 164 社 ) 各国の多様な業態 ( 銀行 アセマネ 年金 事業法人 取引所 清算機関 金融サービス会社 業界団体 政府系機関 ) 回答の内容 RFR のターム調整 o 圧倒的多数の回答は compounding setting in arrears rate を希望 スプレッド調整 o 大多数の回答は historical mean/median approach を希望 o forward approach を第一希望とした回答の過半数は historical mean/median approach を第二希望としている o historical mean/median approach に反対とした回答はほとんどなかった一方で forward approach が問題であるとの回答はより多かった o forward approach の欠点を指摘する回答が historical mean/median approach の欠点を指摘する回答を上回った 過半数の回答は 4 通貨 (AUD CHF GBP JPY) 共通の調整方法を希望 USD や EUR についても同じ調整方法がよいと考える回答が多数あったが これらの通貨は追加の市中協議で直接的にカバーされる 7
市中協議の結果 市中協議の最終結果を受けて ISDA は compounding setting in arrears rate および historical mean/median approach をベースとしてフォールバック条項策定の作業を進める 今後数ヶ月間で historical mean/median approach に基づくスプレッド調整方法の詳細 ( ルックバック期間の長さ mean か median か等 ) の決定に向けた作業を行う historical mean/median approach に関する市場参加者の理解を深めるため 感応度分析の結果を公表する また スプレッド調整および compounding setting in arrears rate の精緻な計算式の最終化に向け 解決が必要な技術的問題についても ISDA のアドバイザーとともに検討を行っていく ISDA 定義集への導入を行う前に 再度市中協議を行い 最終コメントの募集を行う USD LIBOR の市中協議については今年の早いタイミングで追加の市中協議を行う予定 ISDA は 引続きコンサルタントや監督当局等と相談しながら作業を進める 8