セッション 1: リモートセンシングの利用と展開 北海道衛星 大樹 搭載用ハイパースペクトルセンサの研究開発 超小型衛星利用開拓北海道ワークショップ 2010 年 8 月 24 日 青柳賢英北海道工業大学大学院
北海道の宇宙産業活性化を目指して 北海道衛星 大樹 とは 北海道の宇宙産業活性化 重量 50kg の超小型地球観測衛星 ユーザーニーズに応える性能を持った超小型衛星 ミッション 北海道衛星 大樹 イメージ図 ハイパースペクトルセンサによる農業分野のリモートセンシング
衛星リモートセンシングによる農業ビジネス 現在, 実用化されている 米のタンパクマップ や 小麦の刈り取りマップ 以外で 以下のニーズが高いことが判っている. (1) 畑作農家からのニーズ - 施肥, 防除 ( 害虫, 病害, 雑草 ) に関する時期や場所など, 勘に頼っている部分が多く, 新規就農者にとって敷居が高い. - 担い手不足から, 刈り取りなどで他業種との協業化が進んでおり, 誰もが解かりやすい畑作物の生育情報が必要になっている. (2) 酪農家からのニーズ - 草地にはイネ科, マメ科など複数種の牧草が生えている. 良い飼料にするためには, 生えている牧草の品種判別情報が必要である. - 良質な牛乳, 肉を生産するためにも飼料となる牧草の管理は重要である. (3) 農業普及 管理団体からのニーズ - 農業委員会, 農協, 共済組合などは, 農家の経営安定策のために, 作付けられている農作物の品目や作付面積などの現地調査をそれぞれ行っている. - 農家の経営安定政策が変更になり ( 品目横断的経営安定対策 :H19~), 管理対象面積が拡大し, 簡易に農作物の作付情報が知りたいというニーズが高まっている. ハイパースペクトルセンサのニーズが増えてきている
ハイパースペクトルとは? マルチスペクトルセンサ 地表情報と離散的な分光情報 (4~8band) の取得 高い空間分解能を持つ Compare Hyper to Multi ハイパースペクトルセンサ 連続的な分光情報と地表情報の取得 観測対象の物性値の取得が可能 物質の識別 ( 分類 ) Multispectral Hyperspectral 利用分野 植物, 農作物などの種別分類 植生分布のモニタリング 海水などの水質汚染状況の観測 etc 400 600 800 1000 Wavelength [nm] 400 600 800 1000 Wavelength [nm]
ハイパースペクトル技術へのニーズ 農業分野のニーズ 米のタンパク情報 北海道米は, 品質にムラがなく, 美味しい米に 麦の刈り取り情報 育成状況を把握して, 刈り取る順番を決定することで, 効率的な作業が可能になりコンバイン運行費用が低減 < 新たなニーズ > 畑作物の生育情報 牧草の品種判別情報 農作物の作付情報 衛星データを早く 安価に 分析 加工 配信する仕組みにニーズがある ハイパースペクトルセンサの特性を生かした情報にニーズがある リニモーセズンを技実術現する マルチスペクトルセンサ バンド幅が広く, 作物毎 品種毎の計測には限界 ハイパースペクトルセンサ 計測バンドをピンポイントで設定することで作物毎, 品種毎に計測が可能 - 広大な土地を有し, 降雨の少ない北海道では, 他都府県と比較して早くから衛星リモートセンシングを用いた農業に取り組み, 現在はPhase1を完了し,Phase2に突入している. -つまり, 衛星データから土壌状況を把握し, 土地改良など, 農作物に対して間接的に何か行うというのではなく, より積極的に直接作物の情報を取得し, より良い農作物を育てたいというニーズに変化している. - 農作物には多数の作柄, また作柄毎に複数の品種が存在し, 従来までのマルチスペクトルセンサでは対応できなく, ハイパースペクトルセンサのニーズが高まっているといえる.
農地観測実験 定期観測 HSC1701( 北海道衛星 ( 株 )) Item Specification (default) Detector CCD image sensor, 640 x 480 pixels Spectral range 400~800nm Spectrometer Transmitting grating Band 81 bands Spectral resolution 5nm Size(H D W) 57mmx 140mm x 60mm Weight 0.53 kg Data handling PC Power consumption 2.5W(5V, 0.5A) Interface USB, Video capture card データ管理 農場 品種ごとの生育情報の取得 収穫適期の予測 品種分類 データベース化
牧草の品種分類に関する基礎実験 ハロゲンランプ HSC1701 観測対象 代表的な牧草 3 種のデータ採取および画像分類を実施した 基礎実験段階のため, 室内にて牧草を育成し, データ取得も室内で行った チモシー 最大尤度法による分類 アルファルファ RGB 表示 オーチャード 分類結果 ハイパースペクトルセンサは, 品種ごとの作物管理に有効なセンサである
衛星搭載用ハイパースペクトルセンサ HSC Hyper Spectral Camera 農業リモートセンシングへの実用レベルでの応用が可能なセンサ 超小型衛星に搭載可能な小型 (10kg 以下 ) のセンサ ユーザーニーズ ( アプリケーション ) に合わせた運用が可能なセンサ 短納期 即応性の高いセンサ 北海道衛星 のみに限定せず様々な衛星への搭載が可能なセンサ
設計仕様 項目 性能等 観測方式 地表サンプリング間隔 (GSD) プッシュブルーム方式 15m 空間分解能 50m ~ 60m ( 実効値 ) 観測幅 観測波長域 15km 450-1000nm 波長サンプリング間隔 5nm ( 平均 ) フレームレートダイナミックレンジ望遠鏡開口径搭載メモリ容量装置重量想定軌道高度 500Hz 10bit 15cm 32GByte 10 kg 620km
システム構成 HSC Hyper Spectral Camera Optical instrument Optical Telescope Spectrometer Detector Camera control Image data MDHS (Mission Data Handling Subsystem) SSD (Solid State Drive) Hyperspectral data FPGA Space Wire Satellite Bus EPS C&DH
HSC 光学系 - 設計概要 Optical telescope Slit Spectrometer Prism 開口径 15cm F# 3.0 望遠鏡構成 カタディオプトリック型 焦点距離 446.4mm 像側テレセントリック系 補正レンズは球面石英で構成 Detector
検出器 Requirement 2 次元検出器 ( 空間方向 波長分散方向 ) 500Hz 以上のフレームレート 部分読み出し機能 (ROI: Region of Interest) 読み出しバンドの選択が可能 ( 読み出し波長域の選択 ) 裏面照射型 CMOS イメージセンサ INTEVAC, Inc. (USA) 素子サイズ :10.8μm 素子数 :1280 1024pixel フレームレート :30Hz ( フルフレーム ) ROI を用いることにより,1000pixels 75bands, 読み出し速度 500Hz を実現する
Spectral sampling distance [nm/pixel] 分光器 F# 3.0, 倍率 1:1 観測波長範囲 : 450 1000nm 分散素子 : 直視プリズム 近赤外域の波長サンプリング間隔を広げているため, 近赤外域での S/N 比が高い レンズ構成全面球面 分散素子は, 透過型グレーティングへの変更が可能 波長サンプリング間隔をユーザーニーズに合わせて変更できる 20 16 12 8 4 0 450 550 650 750 850 950 Wavelength [nm]
データ処理装置 北海道衛星 のみに限定せず様々な衛星への搭載を可能にするために, 独自にデータ処理装置を持つ 大容量のデータストレージとして,SSD (Solid State Drive) を搭載 衛星バス部との I/F に Space Wire を採用 Hyperspectral sensor optics Detector / driver Camera control data MDHS (Mission Data Handling Subsystem) Image data (10bit) SSD (Solid State Drive) HS image data FPGA (Virtex-V) Satellite Bus Space Wire router Communication Subsystem C&DH Command & Data Handling
主要なデータ処理内容 ハイパースペクトルデータは 1 シーンあたり約 150MByte( ) となるため超小型衛星の通信容量では単独でのダウンリンクが厳しい データ処理装置は, データ量の削減を目的として以下の機能を実装する 1. ダウンリンクするバンドの選択 ( 以下例 ) 1 シーンを 1000pixel 1000pixel 75band 2Byte と定義 RGB + NIR バンド (4 バンド, マルチスペクトルセンサとしての運用 ), NDVI ( 正規化植生指数 ) 算出バンド (2 バンド ) 観測対象ごとの特徴スペクトル (10 バンド程度を抽出する.) 2. 画像の切り出し 1/2 シーン,1/4 シーン
今後の予定 FY2010 FY2011 Design Software Fabrication Ground Test Design Next HSC 2010 年度は,HSC のプロトフライトモデルの開発 試験を実施する 2011 年度には, プロダクト生成用のソフトウェア等の運用ツールの開発を実施する 以降は,HSC の空間分解能の向上, 赤外域への波長範囲の拡大などを目標としてハイパースペクトルセンサの設計を実施し, 様々なアプリケーションに対応可能なセンサシリーズとして開発を進める