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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

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2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

1. 背景生殖細胞は 哺乳類の体を構成する細胞の中で 次世代へと受け継がれ 新たな個体をつくり出すことが可能な唯一の細胞です 生殖細胞系列の分化過程や 生殖細胞に特徴的なDNAのメチル化を含むエピゲノム情報 8 の再構成注メカニズムを解明することは 不妊の原因究明や世代を経たエピゲノム情報の伝達メカ

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

論文の内容の要旨

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

< 用語解説 > 注 1 ゲノムの安定性ゲノムの持つ情報に変化が起こらない安定な状態 つまり ゲノムを担う DNA が切れて一部が失われたり 組み換わり場所が変化たり コピー数が変動したり 変異が入ったりしない状態 注 2 リボソーム RNA 遺伝子 タンパク質の製造工場であるリボソームの構成成分の

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

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報道機関各位 平成 27 年 8 月 18 日 東京工業大学広報センター長大谷清 鰭から四肢への進化はどうして起ったか サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす 要点 四肢への進化過程で 位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定 サメ鰭の前

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

情報解禁日時の設定はありません 情報はすぐにご利用いただけます 基礎生物学研究所配信先 : 岡崎市政記者会東京工業大学配信先 : 文部科学記者会 科学記者会 報道機関各位 2017 年 7 月 25 日 自然科学研究機構基礎生物学研究所国立大学法人東京工業大学 遺伝子撹拌装置をタイミング良く染色体か

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

平成18年3月17日

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かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

「ゲノムインプリント消去には能動的脱メチル化が必要である」【石野史敏教授】

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報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

スライド 1

研究成果報告書

背景 歯はエナメル質 象牙質 セメント質の3つの硬い組織から構成されます この中でエナメル質は 生体内で最も硬い組織であり 人が食生活を営む上できわめて重要な役割を持ちます これまでエナメル質は 一旦齲蝕 ( むし歯 ) などで破壊されると 再生させることは不可能であり 人工物による修復しかできませ

平成14年度研究報告

平成16年6月  日

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

生物時計の安定性の秘密を解明

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

胞運命が背側に運命変換することを見いだしました ( 図 1-1) この成果は IP3-Ca 2+ シグナルが腹側のシグナルとして働くことを示すもので 研究チームの粂昭苑研究員によって米国の科学雑誌 サイエンス に発表されました (Kume et al., 1997) この結果によって 初期胚には背腹

長期/島本1

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4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が


統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

報道関係者各位 平成 26 年 5 月 29 日 国立大学法人筑波大学 サッカーワールドカップブラジル大会公式球 ブラズーカ の秘密を科学的に解明 ~ ボールのパネル構成が空力特性や飛翔軌道を左右する ~ 研究成果のポイント 1. 現代サッカーボールのパネルの枚数 形状 向きと空力特性や飛翔軌道との

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化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

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icems ニュースリリース News Release 2009 年 12 月 11 日 京都大学物質 - 細胞統合システム拠点 ips 細胞研究を進めるための社会的課題と展望 - 国際幹細胞学会でのワークショップの議論を基に - 加藤和人京都大学物質 - 細胞統合システム拠点 (icems=アイセ

生物の発生 分化 再生 平成 12 年度採択研究代表者 小林悟 ( 岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター教授 ) 生殖細胞の形成機構の解明とその哺乳動物への応用 1. 研究実施の概要本研究は ショウジョウバエおよびマウスの生殖細胞に関わる分子の同定および機能解析を行い 無脊椎 脊椎動物に

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

<1. 新手法のポイント > -2 -

資料 4 生命倫理専門調査会における主な議論 平成 25 年 12 月 20 日 1 海外における規制の状況 内閣府は平成 24 年度 ES 細胞 ips 細胞から作成した生殖細胞によるヒト胚作成に関する法規制の状況を確認するため 米国 英国 ドイツ フランス スペイン オーストラリア及び韓国を対象

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

図 : と の花粉管の先端 の花粉管は伸長途中で破裂してしまう 研究の背景 被子植物は花粉を介した有性生殖を行います めしべの柱頭に受粉した花粉は 柱頭から水や養分を吸収し 花粉管という細長い管状の構造を発芽 伸長させます 花粉管は花柱を通過し 伝達組織内を伸長し 胚珠からの誘導を受けて胚珠へ到達し

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

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研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

れていない 遺伝子改変動物の作製が容易になるなどの面からキメラ形成できる多能性幹細胞 へのニーズは高く ヒトを含むげっ歯類以外の動物におけるナイーブ型多能性幹細胞の開発に 関して世界的に激しい競争が行われている 本共同研究チームは 着床後の多能性状態にある EpiSC を着床前胚に移植し 移植細胞が

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

植物が花粉管の誘引を停止するメカニズムを発見

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2. 研究の背景関節軟骨は 骨の端を覆い 腕や膝を曲げた時などにかかる衝撃を吸収する組織です 正常な関節軟骨は硝子軟骨と呼ばれます 私達の日常動作のひとつひとつを なめらかに行うためにも大切な組織ですが 加齢に伴ってすり減ったり スポーツや交通事故などの怪我により損傷をうけると 硝子軟骨が線維軟骨注

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

ポイント 先端成長をする植物細胞が 狭くて小さい空間に進入した際の反応を調べる または観察するためのツールはこれまでになかった 微細加工技術によって最小で1マイクロメートルの隙間を持つマイクロ流体デバイスを作製し 3 種類の先端成長をする植物細胞 ( 花粉管細胞 根毛細胞 原糸体細胞 ) に試験した

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC


平成 25 年 10 月 7 日 (3303: 上皮管腔組織形成 ) 菊池章殿 生物系委員会主査 平成 25 年度科学研究費補助金 新学術領域研究 ( 研究領域提案型 ) の 中間評価結果について 平成 25 年 9 月 5 日に実施した生物系委員会における中間評価の結果 あなたを領域代表者とする研

STAP現象の検証の実施について

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60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 7 月 12 日 独立行政法人理化学研究所 生殖細胞の誕生に必須な遺伝子 Prdm14 の発見 - Prdm14 の欠損は 精子 卵子がまったく形成しない成体に - 種の保存 をつかさどる生殖細胞には 幾世代にもわたり遺伝情報を理想な状態で維持し 個体を

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ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

Transcription:

報道機関各位 2017 年 2 月 8 日 大学共同利用機関法人自然科学研究機構基礎生物学研究所国立大学法人筑波大学 精子幹細胞の分化と自己複製を両立する新たなメカニズムの発見 幹細胞は分化シグナルからどのように守られるのか 長期間にわたって多くの精子を作ることは 私たちが子孫を残して命を伝えるための重要な営みで 大もととなる 精子幹細胞 の働きによって支えられています 基礎生物学研究所の徳江萌研究員 ( 元総合研究大学院大学大学院生 ) 吉田松生教授らと 筑波大学 横浜市立大学などの研究グループは マウス精子幹細胞の分化を促すシグナル分子を明らかにし さらに 一部の幹細胞でこのシグナル分子の作用を弱めることで幹細胞を残すという新たなメカニズムを発見しました 生物を構成する組織の細胞を生み出して維持するには 未分化な幹細胞 (*1) と幹細胞から分化に向かった細胞を バランス良く作りだすメカニズムが必要です これまでの多くの研究によって 2つの代表的なメカニズムが明らかにされてきました 1つ目は 幹細胞が分裂する時 必ず1 個の幹細胞と 1 個の分化細胞を作る 非対称分裂による制御 です 2つ目として 幹細胞は 幹細胞ニッチ と呼ばれる特殊な場所にいる限り分化せず ニッチ の外に出ると分化するという 幹細胞ニッチによる制御 です しかし本研究グループは マウスの精子幹細胞は 非対称分裂 によって維持されているのではないこと 精子を作る精細管にはこのような特別な場所はなく 幹細胞は 分化細胞と入り混じって活発に動きまわっていることを 明らかにしてきました そのため 精子幹細胞の分化と未分化のバランスを作るメカニズムは不明でした 本研究では まず マウスの精子幹細胞の分化を誘導するシグナルとして Wnt シグナルを見いだしました さらに 一部の幹細胞だけで発現して Wnt シグナルを抑制する Shisa6 タンパク質を同定しました Shisa6 を発現する幹細胞と発現しない幹細胞では Wnt シグナルの受けやすさに違いが生まれることで 幹細胞と分化細胞が生み出されることがわかりました 本研究成果は 2017 年 2 月 9 日発行の Stem Cell Reports 誌オンライン版に掲載されます 研究の背景 精子幹細胞は未分化な細胞であり 分裂して数を増やしながら精子へと分化していきます 幹細胞が分化しなければ精子は作られません 一方 幹細胞が過剰に分化してしまうと その後の精子産生が維持できなくなってしまいます このバランスのとれた幹細胞の維持と分化は 多くの組織にある幹細胞 1

システムに共通する重要な性質です 研究の進んでいる哺乳類の腸やショウジョウバエの精子や卵などの幹細胞は 幹細胞ニッチ と呼ばれる特殊な場所に存在している様子が観察されています ニッチには 分化を阻害するシグナル分子が局在していて その働きによってニッチの中にいる細胞を幹細胞として維持します ( 図 1 A) また ショウジョウバエの精子や卵の幹細胞では 非対称分裂 と呼ばれる 幹細胞が分裂する際に必ず幹細胞と分化細胞が1つずつ生み出される分裂が観察されています ( 図 1 B) 一方 マウスの精子形成は 精細管と呼ばれる細く長い管で進行します 精細管には明確なニッチ構造は見つかっておらず 幹細胞 (GFRα1 陽性細胞 ) は精細管中に散らばって動き回ります また精子幹細胞が分裂したときの幹細胞と分化細胞のパターンは決まっていないことが明らかになっています ( 本研究グループによる 2014 年 05 月 02 日 2015 年 04 月 28 日付け基礎生物学研究所プレスリリースを参照ください ) したがって マウスの精子幹細胞が どのような合図 ( シグナル ) によって分化細胞に変わるのか さらに 幹細胞として残る細胞がどのように決められるのかは不明でした ( 図 1 C) 研究の成果 本研究では 幹細胞の維持と分化を司る新しいメカニズムを発見しました 1 Wnt シグナルは精子幹細胞の分化を促進する 研究グループは 培養した精子幹細胞で Wnt シグナルの働きを調べました また Wnt シグナルを増強した変異マウスを用いて 精子幹細胞に対する Wnt シグナルの働きの解析を行いました すると Wnt シグナルによって分化を示す遺伝子の発現が上昇し 変異マウスでは幹細胞の数が減少し精巣が小さくなりました ( 図 2 A B 左から3つ目までの図とグラフ ) これらの結果より Wnt シグナルによって幹細胞が分化すると考えられます 2 一部の幹細胞が Shisa6 を発現して Wnt シグナルを抑制する Wnt シグナルにさらされているにもかかわらず 一部の幹細胞は分化せずに残るのはなぜかを明らかにするために 幹細胞で発現している Wnt シグナルを阻害する遺伝子を探しました その結果 Shisa6 遺伝子にこれまで知られていない Wnt を阻害する働きがあることがわかりました また Shisa6 遺伝子を破壊して Wnt シグナルを強くすると 幹細胞の数が減少し 精巣が小さくなることが分かりました ( 図 2 A B) これらの結果から Shisa6 を発現する幹細胞と発現しない幹細胞では Wnt シグナルの受け取りやすさに違いが生まれることで 幹細胞と分化細胞が生み出されることがわかりました 本研究の意義と今後の展開 本研究では これまで不明であった精子幹細胞の分化を誘導するシグナルについて明らかにしました また研究の進んでいない 同じように分化シグナルを受けても 幹細胞と分化細胞が生み出されるメカニズム の解明に挑戦し 一部の幹細胞が分化シグナルを受けにくくなるメカニズムがあることを発見しました ( 図 3) 2

これは 精子幹細胞のみならず 明確な幹細胞ニッチが見られない他の組織でも共通するメカニズム かもしれません 私たちの体が 長期間にわたり機能し続けるためにとっている戦略についての理解を 深める助けになると考えられます 参考図 図 1. マウスの精子幹細胞は特定のニッチ領域を持たない A 幹細胞ニッチによる制御メカニズム 特定の領域に限られた幹細胞ニッチには幹細胞を維持するシグナルがあり ニッチから出た細胞は分化する B 非対称分裂による制御メカニズム 幹細胞が分裂するときには 必ず幹細胞と分化細胞が作られる C マウスの精巣の中に折りたたまれている精細管では 精子幹細胞と分化細胞が特定のニッチ構造を持たない領域で混じり合っていて 動きまわっている 3

図 2. Wnt シグナルと Shisa6 を変化させた時の 精子形成と幹細胞に与える影響 A: 成体のマウス精巣の写真 ( スケールバーは 1 mm) B: 成体マウスの幹細胞 (GFRα1 陽性細胞 ) の精細管断面あたりの数 Wnt シグナルを強く活性化すると精巣が小さくなって幹細胞が減少した Shisa6 量を半分に減らすと Wnt シグナルを弱く活性化しただけで精巣が小さくなって 幹細胞が減少した 図 3. マウスの精子幹細胞が分化から守られるメカニズム 幹細胞のうち Shisa6 を発現していない細胞は Wnt シグナルを強く受けて分化細胞になり Shisa6 を発 現しているものは Wnt シグナルから守られるので分化しない 4

注 *1 幹細胞 : 体の組織を構成する分化細胞を作り出すもととなる未成熟な細胞 分化細胞を生み続けることで組織の新陳代謝を担う ここでは多能性幹細胞 (ips 細胞など ) とは異なり 正常な成体に存在する特定の組織の細胞にしか分化しない細胞を言う 掲載誌情報 Stem Cell Reports doi.org/10.1016/j.stemcr.2017.01.006 論文タイトル SHISA6 confers resistance to differentiation-promoting Wnt/β-catenin signaling in mouse spermatogenic stem cells 著者 : Moe Tokue, Kanako Ikami, Seiya Mizuno, Chiyo Takagi, Asuka Miyagi, Ritsuko Takada, Chiyo Noda, Yu Kitadate, Kenshiro Hara, Hiroko Mizuguchi, Takuya Sato, Makoto Mark Taketo, Fumihiro Sugiyama, Takehiko Ogawa, Satoru Kobayashi, Naoto Ueno, Satoru Takahashi, Shinji Takada, Shosei Yoshida 研究サポート 本研究は 文部科学省科学研究費補助事業 ( 科研費 ) 新学術領域研究 配偶子産生制御 配偶子幹細 胞制御機構 などの支援のもと行われました 本研究に関するお問い合わせ先 基礎生物学研究所生殖細胞研究部門 教授 : 吉田松生 ( ヨシダショウセイ ) 筑波大学医学医療系 ( 生命科学動物資源センター ) 教授高橋智 5