要望 1 夜勤 交代制勤務の特性に鑑みた適切な規制の実現 夜勤 交代制勤務の特性を踏まえた労働環境の整備が進むよう 適切な規制等を法制度の中で明確に位置づけられたい 看護師等の人材確保の促進等に関する法律 基本指針 を改訂し 夜勤交代制勤務負担の軽減に向けた改善目標を示されたい 労働時間等設定改善指針 改訂にあたり 夜勤 交代制勤務者の勤務実態を踏まえた勤務負担軽減の取組みの必要性および改善目標を明記されたい 看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針 ( 平成 4 年 12 月 25 日 文部省 / 厚生省 / 労働省 / 告示第一号 ) の告示から 20 年余を経て 看護職員の就業実態並びに確保を取り巻く状況が大きく変化している 現状を踏まえた新たな人材確保の基本指針が求められる 図 1 3 交代制勤務では勤務間インターバルが短い 一方 現行法制では夜勤 交代制勤務に関する規制がほとんどないため 看護職員の夜勤 交代制勤務の負担が非常に重くなっている 実効性ある法的規制の導入および指針の策定が不可欠である 労働時間等設定改善法 改正案において 新たに 勤務間インターバルの確保 が事業主の努力義務とされ 勤務間インターバル と 深夜業の回数 が労働時間等設定改善の取組み項目として明記されている 労働時間等設定改善指針 は法令に基づく勤務環境改善の指針であり 事業主への行政指導の根拠となるため 現場の取組みの促進が期待される 盛り込むべき具体的内容は以下のとおり 図 2 2 交代制勤務の夜勤時間 1 勤務間インターバルの確保 勤務間隔 11 時間以上 かつ 勤務拘束時間 13 時間以内 夜勤後の休息時間の確保 2 連続の夜勤後にはおおむね 48 時間以上 1 回の夜勤後についてのおおむね 24 時間以上を確保することが望ましい 2 深夜業の回数 3 交代制勤務で月 8 回以内 3 交代制以外の交代制勤務は労働時間に応じた回数 日本看護協会 2013 年 看護職の夜勤 交代制勤務ガイドライン の普及等に関する実態調査 公益社団法人日本看護協会 1
要望 2 訪問看護提供体制の推進 1) 地域における訪問看護提供体制の推進を後押しする 訪問看護推進総合計画 を策定されたい 増大する訪問看護ニーズに対応するための訪問看護師の倍増を図る具体的な施策の立案 ( 目標値と戦略 ) 地域において訪問看護を安定的に提供するための訪問看護ステーションの大規模化の推進 ( 既存補助金制度の活用推進 財政措置の強化等 ) 2) 厚生労働省において 訪問看護に係る組織体制の明確化をはかられたい 施策を担当する部署を定め 対外的な窓口を一本化 訪問看護施策を推進するための部署横断的な組織体の設置 訪問看護の役割の増大 高齢化等に伴い増大する在宅医療ニーズに加え 病床の機能分化 連携の推進により 2025 年には約 30 万人が医療機関から地域に移行する見込みである 一方で 精神障害者の地域移行施策の強化 医療的ケア児の増加等により 訪問看護の利用者が多様化している また 在宅での看取りも推進されており 訪問看護の役割は量的にも質的も大きくなっている これらに対応するため 地域の訪問看護提供体制の強化 推進は喫緊の課題である 訪問看護提供体制の現状 全国的な訪問看護ステーションの数は年々増加しているが 1 か所あたりの看護職員数でみると小規模なステーションが多く (5 人未満が約半数 ) 地域的な偏在も課題である 訪問看護ステーション開設の意思決定のトリガーとなる訪問看護師数を早期に確保することが必要である 平成 30 年度報酬改定では医療機関による訪問看護も推進されたが 訪問看護に取組む医療機関の数は未だ少数である 施策の強化の必要性 都道府県では 医療計画 ( 地域医療構想 ) および介護保険事業 ( 支援 ) 計画の中で 地域のニーズを踏まえて必要な訪問看護ステーション数等を定めている 計画が実効性あるものとなるためには 国が訪問看護に係る組織体制の明確化をはかるとともに 訪問看護を推進する国としての総合計画を示し 都道府県における訪問看護体制の確保 強化を強力に後押しすることが必要である 従業員規模別の訪問看護ステーション数 ( 割合 ) の推移 訪問看護ステーション 2.8% 助産所 0.1% 就業場所別看護職員数 ( 常勤換算 ) ( 平成 28 年 12 月末値 ) 都道府県 0.1% 保健所 0.6% 社会福祉施設 1.5% 市区町村 2.3% 介護保険施設等 8.7% 事業所 0.6% 診療所 14.9% 病院 66.5% 看護師等学校養成所又は研究機関 1.3% ( 人 ) 160,000 訪問看護ステーション就業看護職員数 ( 常勤換算 ) 140,000 120,000 100,000 80,000 60,000 実測値 *1 試算値 *2 40,000 22,920 20,000 需要数 150,000 人 *3 65,333 2.5~3 人 3~4 人 4~5 人 5~7 人 7~10 人 10~15 人 15~20 人 20 人以上 引用 : 社保審介護給付費分科会第 142 回 (2017.7.5) 参考資料 2 平成 28 年度衛生行政報告例より作成 公益社団法人日本看護協会 0 H18 H20 H22 H24 H26 H28 H29 H30 H31 H32 H33 H34 H35 H36 H37 *1: 平成 18 20 22 24 26 28 年度衛生行政報告例より引用 (2025) *2: 過去 2 回調査実測値より 増加数を固定して計算 *3: 訪問看護アクションプラン2025(( 公社 ) 日本看護協会 ( 公財 ) 日本訪問看護財団 ( 社 ) 全国訪問看護事業協会,2004 2
要望 3 介護施設等で働く看護職員の処遇の改善 介護施設等で働く看護職員の確保にあたり 病院と同等となるよう 賃金について処遇の改善を図られたい 介護施設等の利用者の医療依存度は高く その医療的な対応 診療の補助を担う看護職員なしでは成り立たない さらに 介護施設等で働く看護職員の多くは 看取り 感染管理等に関する業務において施設職員に対し 質にかかわる指導的な役割を果たしている 介護老人福祉施設 ( 特別養護老人ホーム ) で働く看護職員の離職率は 病院の看護職員の2 倍で介護職員よりも高く 定着が難しい 介護施設等 ( 介護老人福祉施設 介護老人保健施設 訪問看護ステーション ) で働く看護師の賃金水準は いずれの年代でも病院で働く看護師より低く 平均年齢が高いにもかかわらず 病院で働く看護師と比べた平均賃金額も低い また 介護施設等では主任相当職や管理職と非管理職との賃金処遇の差が少ない 現状のような処遇差では 病院から介護領域へ労働移動が進みにくい 介護施設等のサービスの質を維持 向上するために 介護施設等で働く看護職員の処遇の改善は必須である 新しい経済政策パッケージ の中で 勤続 10 年以上の介護福祉士について 月額平均 8 万円相当の処遇改善に充てる公費 1,000 億円程度の執行にあたっては 介護施設等で働く勤続 10 年以上の看護師の処遇改善への活用を支援されたい 常勤看護職員および介護職員の離職率 (2014 年度 ) 特別養護老人ホーム病院 常勤看護職員 21.5% 10.8% 新規採用 39.8% 7.5% 常勤介護職員 15.4% 新規採用 29.7% 450,000 400,000 350,000 300,000 250,000 200,000 150,000 看護師の平均賃金 ( フルタイム勤務の正規職員 非管理職 )( 給与総月額と基本給月額 ) 介護施設等で働く看護師と病院で働く看護師の比較 393,883 381,514 (122) 382,309 (118) (118) 357,238 (111) 330,422 322,787 (102) 320,108 323,300 320,177 (100) 309,379 (114) (115) (114) 297,596 300,873 288,960 292,796 (110) 280,496 291,894 296,358 (103) (104) (107) (134) (100) 280,007 (132) 260,465 (127) 237,139 (118) 221,209 (107) (100) 252,479 259,305 255,219 204,146 244,136 (116) 240,221 (113) (114) 223,193 224,559 229,125 (109) (108) (100) (101) (103) 24 歳以下 25~29 歳 30~34 歳 35~39 歳 40~44 歳 45~49 歳 50~54 歳 55~59 歳 60~64 歳介護施設等 / 給与総月額病院 / 給与総月額介護施設等 / 基本給月額病院 / 基本給月額 出典 : 平成 28 年度介護施設等における看護職員に求められる役割とその体制のあり方に関する調査研究事業報告書 2012 年病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書 2015 年病院看護実態調査 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設における看護職員実態調査 ( すべて公益社団法人日本看護協会 ) 公益社団法人日本看護協会 3
要望 4 看護師基礎教育の 4 年制化の実現 1) 患者像の複雑化に対応するため 下記のように看護師基礎教育を拡充されたい 療養の場の変化に応じ 在宅看護領域の教育内容の追加 複数疾患をもつ人の身体状況を的確に把握し 判断し 対応できるよう臨床推論力を養う教育を追加 複雑な状況にある人を全人的に捉え 判断し 対応する基礎となる力を養う統合教育 ( 実習 ) を追加 2) 必要な教育時間を確保するため 看護師基礎教育を 4 年制化されたい 1) 看護師基礎教育の拡充 これからの看護提供においては 高齢化等による患者像の複雑化に対応することが求められる また 短期間での集中的な入院治療のみならず 在宅での予防から看取りまでの支援を視野に入れた活動が不可欠である また 複数の疾患や複雑な社会的背景等を有する患者が増加する状況に対応するためには すべての看護師の臨床実践能力の向上が求められる そのため 看護師に求められる役割を果たすための基盤となる能力を養うことができるよう 看護師基礎教育の見直しが必要である 特に 療養の場の変化に応じた在宅看護領域の教育内容の増加 複数疾患をもつ人の身体状況を的確に把握し 判断し 対応できるよう臨床推論力を養う教育 や 複雑な状況にある人を全人的に捉え 判断し 対応する基礎となる力を養う統合教育 ( 実習 ) の追加は必要不可欠である 2) 必要な教育時間を確保するための看護師基礎教育の 4 年制化 看護師基礎教育では 30 年もの間 総教育時間数を増やさずに 社会のニーズに応じて教育内容を追加してきたため 1 専門領域あたりの教育時間 ( 特に実習 ) が半減しており 現場の看護管理者へのヒアリングでも新卒看護師の臨床実践能力の低下が指摘されている また 就職後 1 年以内の新卒看護師の離職は年間 4,200 人にも上り 離職理由として 適性 能力への不安 (24%) が最も多く挙げられている 社会のニーズに応えられる看護師を確保し続けるため 看護師基礎教育を 4 年に延長し 必要な教育時間を確保することで 新卒看護師の臨床実践能力の向上を図ることが不可欠である 総教育時間数 3,000 2,000 老人看護学母性看護学小児学総論成人看護学基礎看護学 2,130 2,025 2,130 1,000 510 510 510 0 360 360 360 1 専門領域あたりの 225 実習時間数実習は1/2 150 128 平成元年 在宅看護論精神看護学老年看護学母性看護学小児学総論成人看護学基礎看護学 約 3,000 時間 平成 8 年 看護の統合と実践在宅看護論精神看護学老年看護学母性看護学小児学総論成人看護学基礎看護学 平成 21 年 ~ 専門領域数の増加 出典 : 看護教育の内容と方法に関する検討会資料を改変 新卒の看護職員 ( 病院就業 )55,471 人 1) 離職率 7.6% 2) 1 年以内の離職者は約 4,200 人と推計 新卒看護師の離職理由 3) 第 1 位適性 能力への不安 24% 引用 :1) 日本看護協会出版会編 看護関係統計資料集 における H28 年 3 月の大学 短大 養成所 5 年一貫教育 看護師 2 年課程卒業者のうち保健師 助産師 看護師として病院に就業した者及び准看護師養成所卒業者のうち准看護師として病院に就業した者 2) 日本看護協会 2017 年病院看護実態調査 3) 栃木県看護協会 平成 28 年度離職状況施設調査 公益社団法人日本看護協会 4
要望 5 看護関連事業に係る 地域医療介護総合確保基金 の拡充と適切な活用の推進 地域医療介護総合確保基金 を活用した地域の医療介護提供体制の整備が適切に進むよう 都道府県における基金事業計画の策定と実施を支援されたい 従前は国庫補助事業として実施されていた看護関連の事業が地域のニーズに応じて遜色なく またはそれ以上に実施されるための支援 地域包括ケアシステムに重要な訪問看護体制の確保 特定行為に係る看護師の研修等への積極的な活用の推進 平成 26 年度に消費増税分を活用した新たな財政支援制度として 地域医療介護総合確保基金 が創設される際に 従前は国庫補助事業として 行われてきた看護関連事業が本基金で行われることとなった しかし 基金の対象事業には 制度創設に際し多くの新たな事業が対象として追加されているおり また 病床の機能分化 連携に重点配分するという国の方針が示されていることもあり 年度を追って事業費が減少している まずは 従前からの継続事業について各地域の実情 ニーズに対応して的確に実施されているかという視点からの確認が必要である また 平成 31 年 10 月の消費税引き上げ (8% 10%) に際しては 看護関連事業に係る本基金の拡充を図られたい 国が示している通り 先行的に在宅医療等の整備を進めていかないと 退院後の在宅移行の受け皿ができず かえって病床の機能分化 連携が進まない ( 厚生労働省医政局地域医療計画課資料より引用 ) 在宅療養に不可欠と思われる訪問看護については その開設にあたり本基金を活用できることになっているが 施設 設備の整備等の費用を支弁するものに限定されている 事業が安定化するまでの間の人件費等の運営費用にも活用できるよう見直されたい 同様に 特定行為に係る看護師の研修についても本基金を活用できることになっているが そのことが要綱等に明示されていない 活用が進むように 事業例に追加する あるいは通知等で周知を図られたい 地域医療介護総合確保基金 ( 医療分 ) < 主な看護関係事業への配分額 > 地域医療介護総合確保基金 ( 医療分 ) 配分状況 / 全国値 < 各事業区分の総事業費および看護関係事業費 > 524.0 314.3 454.4 384.5 457.7 ( 億円 ) 399.5 205.6 174.1 220.0 212.6 3.7 7.5 1 2 4 平成 26 年度 0.1 64.7 4.3 46.5 0.4 4.0 1 2 4 1 2 4 平成 27 年度平成 28 年度 1. 病床の機能分化 連携 2. 在宅医療の推進 4. 医療従事者の確保各区分の総事業費その内看護関係事業 自由民主党厚生労働部会看護問題小委員会 (2015~2017 年 ) 厚生労働省提出資料掲載データを用いて日本看護協会が作成 ( 億円 ) 自由民主党厚生労働部会看護問題小委員会 (2015~ 2017 年 ) 厚生労働省提出資料掲載データを用いて日本看護協会が作成 公益社団法人日本看護協会 5