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解剖生理学と血液のはたらき ( 器 ) P.109-141 器と運動 気道の機能 ( 防御機能 ) P.122 : 気道の第三の役割で 吸気中には塵埃や細菌 様々な物質が含まれている : 気道はこれらの物質を途中で除去し 有害物質が肺胞に到達しない様にしている : 比較的大型の物質は 鼻腔の鼻毛によって濾過される : 鼻毛の間を通過した小型の細菌や塵埃などの物質は 鼻腔や気道表面にある杯細胞から分泌される粘液に吸着される : 気道粘膜の細胞には無数の線毛があり 線毛は口の方向に波状の運動をして 粘液と線毛に捕らえられた異物は 咽頭に送致され嚥下される 器と運動 気道の機能 ( 防御機能 ) : 分泌された粘液には リゾチームや IgA などの殺菌作用のある物質も含まれている : 気道の異物除去機能は 通常は意識されないが粘液の分泌が増加すると痰として排出され気づかされる : 鼻腔が異物に刺激されると くしゃみが出る : くしゃみ時の吸息は 鼻腔内の異物を吸い込まない様に口で行われ 続いて激しい呼息が惹起され鼻腔内の異物が排出される : 気管以下の気道が刺激された場合は 咳が出る : 咳も吸入した異物を体外に除去する為の反射である P.122 器と運動 肺胞の機能 P.123 : 肺胞と周囲を取り囲む毛細血管の壁の厚さは両者とも薄く 両者を合わせて 0.5μm 程度である : 薄い膜を介して 肺胞内の空気と毛細血管内の血液との間でガス交換が行われる : ガスの移動は 濃度勾配によって拡散する : 肺胞は Ⅰ 型肺胞上皮細胞という単層扁平上皮の薄い壁による袋の為 表面張力が袋を押しつぶす方向に作用する : つぶれない様に対抗する Ⅱ 型肺胞上皮細胞は表面活性物質であるサーファクタントを放出して表面張力を下げ肺胞の虚脱を防いでいる : 未熟児などでは 出産時にサーファクタントを十分に産生する事が出来ずに 肺胞がつぶれて障害を起こす事がある : これが新生児促迫症候群 (IRDS)

器と運動 のメカニズム : 肺の中に空気が吸気や呼気される換気は 肺が能動的に膨張 収縮するのではなく 胸骨 肋骨 脊柱そして横隔膜に構成される胸郭の拡大と復元とにより 肺が能動的に膨縮することである : 肺弾性収縮力は 膨らんだ肺は単独でも収縮力を持っている : 底の抜けたガラス瓶の底面には ゴム膜が張られている : ビンの口を塞いだゴム栓を通してガラス管がビンの中に挿入され 先端に風船が付けられている : ビンは胸郭 ゴム膜は横隔膜 ビン内部の風船を囲む空間は胸膜腔に相当する P.123 器と運動 のメカニズム P.124 ( 吸息相 ) : ビン底面のゴム膜を下方に引くと 胸膜腔 ( ビン内 ) の容積が増加する為 ビン内部が大気圧に比べて陰圧になり 増加した容積に見合うだけの空気が風船内に流入する : 人体ではゴム膜に相当する横隔膜が下がり ビンの内部に相当する胸膜腔内の胸膜腔内圧が陰圧となり 風船に相当する肺に空気が流入するこれが吸息である : 安静吸息時の胸膜腔内圧は -7~-6 cm H 2 O である 器と運動 のメカニズム ( 呼息相 ) : 安静時の呼息は ビン底のゴム膜を引っぱり 手を離した場合と同様に 筋が弛緩する事で生じる胸郭の弾性および肺弾性収縮力により 受動的におこる : 吸息に要する時間と比べて 呼息に要する時間はやや長く 呼息相の 1.2~1.5 倍である : 安静呼息時の胸膜腔内圧は -4~-2cmH 2 O である P.124 器と運動 のメカニズム P.124 ( 気道の狭窄 ) : 胸郭内の気道に狭窄があると 呼息時に気道が圧迫されるため 呼息が妨げられ呼息相が延長する a : 逆に胸郭外の気道に狭窄があった場合は 呼息時に気道内が陰圧になり 気道が大気圧によって圧迫され 吸息相が延長する b

器と運動 のメカニズム ( 困難時の体位 ) : 困難により が十分に出来ず苦しい時 胸郭の拡大を容易にさせる姿勢をとらせる P.124 器と運動 筋 : 仰向けに寝ている仰臥位では 横隔膜の動きが腹部内臓によって妨げられる為 困難感が増強する : 座位または立位にさせると 腹部内臓が重力により下方移動する為 横隔膜の動きが容易となり 困難感が軽減される : 肩の高さ程度の棚に両腕を組んで乗せると 肋骨が上方へ引き上げ易くなる為 胸郭の拡大が容易となり 困難感はより軽くなる P.125 : は様々な筋群によって行われる : 安静時の吸息の為に働く筋は 横隔膜と外肋間筋である : 胸腔と腹腔を隔てている横隔膜は 頸髄 (C 4 ) から出る左右の横隔神経に支配され 収縮すると下方に移動して胸腔を拡大される : 外肋間筋は肋骨と肋骨の間にはる筋で 胸髄からの肋間神経に支配される筋の収縮により肋骨を外上方に引き上げ 胸郭の前後 左右の幅を増大して 肺の容積を増加させる : 横隔膜の収縮によって行われるを腹式 肋間筋の収縮によって行われるを胸式 両者をともに使うを胸腹式とよぶ : 胸腹式が一般的であるが 妊娠時には増大した子宮によって横隔膜の動きが制限され 胸式が主体となる 筋 : 肺が膨らむ時 胸腔が拡張し陰圧になり 受動的に膨らむ : 吸息時に働く吸息筋には 横隔膜と外肋間筋があり 横隔膜は胸郭を下方に広げ 外肋問筋は肋骨を引き上げることで胸郭を前方に拡大する : 通常の吸息において, 横隔膜の働きがメインであるが さらに深い吸息を行う際には 外肋間筋も働く : 通常の呼息において 吸息筋が弛緩したことで 胸腔が元の形に戻り 陰圧状態でなくなる : 肺自体が元の形に戻る力で収縮して空気を吐き出す : さらに呼息を行う際には 内肋問筋が収縮して肋骨を引き下げることで胸腔は前後に押し潰され 同時に腹筋を収縮させることで腹壁がしぼられ, 腹部内臓を胸側に押し上げることで胸腔を狭めて肺を通常より縮小させる : 腹筋 内肋間筋の様に胸腔と肺を縮小する筋を呼息筋というが 腹筋は安静時には基本的に活動しない P.126 器と運動 筋 ( 補助筋 ) : 安静時の呼息は胸郭および肺の弾性による受動的な現象であるが 深や意識的 無意識的に大きなや速いをする努力では 筋以外もに関係してくる : この様な筋以外の筋が補助筋 : 吸息に働く補助筋は 斜角筋 胸鎖乳突筋 肩甲挙筋 大胸筋等がある : 深や努力では 呼息も筋の収縮による能動的である : 呼息には 内肋間筋 腹直筋等の腹筋群が機能する

気量 : 肺内に含まれる空気の量を気量 ( 肺気量 ) といわれる : により 全器量が交換はしない P.127 気量 : 気量の内 に伴って吸入されたり 吐き出されたりする空気量は スパイロメータ ( 肺活量計 ) を用いて測定が可能である : スパイロメータは 上端の閉鎖された金属製の筒を水に浮かせ 筒内の空気をにより筒が上下した動きをペンで記録した物 : 正常値は年齢 性 身長で異なり 臨床的には予測値で除した % 予測値で表示 : 最近では流量を測定し コンピュータで気量を算出する方法が用いられている P.127 数 :1 分間に行われるの回数であり スパイロメータでも測定できるが に伴う胸郭の動きを目視でも簡便に測定できる : 成人では約 12~15/ 分であり 男性よりも女性のほうがやや多い : 新生児 : 約 40~50/ 分 1 歳児 : 約 30~35/ 分 5 歳児 : 約 20~25/ 分と成長とともに減少 : 成人後 老齢となっても数は殆ど変化ない : 妊娠時も数は 1 分間に 1 回程度増加する : 数増加の原因として 酸素消費の増加 : 運動 発熱 甲状腺機能亢進 酸素摂取の低下 : 不全 酸素輸送の低下 : 貧血 心不全 ストレスやその他の精神的影響を受けた場合の疼痛 困難感等がある 気量 1 回換気量 死腔 肺胞換気量 : 1 回換気量は 1 回ので吸気と呼気の空気量であり 通常は成人で 500mL(0.5L) 程度である : 妊娠末期には非妊娠時の 1.5 倍ほどに増加する : 全吸気量の 500mL の一部は 肺胞まで達する事無く 鼻腔 気管 気管支等にとどまり 血液との間のガス交換に関与しない : この様な空気を死腔といい 空気量は約 150mL である : 肺胞まで到達してガス交換の関係する空気量は 500-150=350mL で 肺胞換気量という : 肺胞換気量に数をかけた物が毎分肺胞換気量である ( 肺胞換気量 =1 回換気量 - 死腔 ) ( 毎分肺胞換気量 = 肺胞換気量 数 ) P.128 気量 P.128 予備吸気量と予備呼気量 : 予備吸気量 j は 通常の吸息位よりも肺内に吸入可能な空気の量であり 予備呼気量が 通常の吸息位かよりも肺内から呼出可能な空気の量である : 個人差が大きく標準的な成人では 予備吸気量は約 2L 予備呼気量は約 1L といわれる : 気管支喘息など 閉塞性換気障害により 気道の狭窄があると呼息が難しくなり 肺内に空気が留まり 予備呼気量が増大する

気量 肺活量 : 最大限の吸息から最大限の呼息を行った時に呼出される空気量 : 1 回換気量 予備吸気量 予備呼気量の合計で肺活量 = 予備吸気量 + 一回換気量 + 予備呼気量と表される : 肺活量は胸郭の大きさや肺野胸郭の伸展性で決まり 個人差が大きい : 通常 女性で 2~3L 男性で 3~4L である : 運動 とくに水泳を継続して行うと増大する : 肺線維症の様に肺の伸展性が減少したり 重症筋無力症の様に筋の筋力低下により胸郭の伸展性が減少する拘束性換気障害では 肺活量が減少する : 通常は性 年齢 身長を考慮した計算式から予測値を求め 計測された個人の肺活量が予測値の何 % で表す (% 肺活量 ) :% 肺活量は 80 以上が正常とされる P.129 気量 残気量 P.129 : 肺活量を測定した時 最大限の呼息を行っても 肺内には空気が残るこれを残気量という : 標準的な成人で約 1L で 肺活量と残気量の合計が肺内に入る最大の空気量で これが全肺気量 ( 全肺気量 = 肺活量 + 残気量 ) : 残気量と予備呼気量を合した物を機能的残気量といい 呼息時に肺胞を流れる血液も 機能的残気との間でガス交換を行える : 気道の狭窄である閉塞性換気障害 ) があると 残気量は増加する : 閉塞性換気障害では予備呼気量も増大し 機能的残気量も増加する : 残気量はスパイロメータでは測定できず 100% 酸素 (O 2 ) を吸入させた後 呼出されるガス中の窒素 (N 2 ) 濃度を測定して求める 気量 1 秒量と 1 秒率 : 最大限の呼息から最大の速度で最大限の呼息を行う : この時に呼出される空気の量を努力肺活量 : 呼出開始から最初の 1 秒間に呼出される空気量を : 1 秒量の努力肺活量に対する百分率 (%) を 1 秒率という P.130 ガス交換とガスの運搬 : 1 秒率は 正常では 70% 以上であるが 気道に狭窄があると呼息が困難になる為に減少する P.130 肺におけるガス交換 : 肺胞内の空気と肺毛細血管の血液の間でガスの交換が行われ ガス移動時に通過する物として 肺胞側から肺胞内面を覆うサーファクタント層 肺胞上皮細胞 基底膜 毛細血管内皮細胞 赤血球細胞膜の順である : 全層の厚さは 0.5~0.8μm と薄く O 2 や CO 2 等のガスは脂溶性であり 脂質からなる細胞膜を貫通でき 移動を妨げられない : ガスの移動は 分圧差 ( 濃度差 ) による拡散で行われる

P.131 P.131. ガス交換とガスの運搬 ガス交換とガスの運搬 肺におけるガス交換 吸気 呼気のガス組成と血液ガス : O 2 は 肺胞気の100mmHgと静脈血の40mmHg との差であり : 吸気 肺胞気 静脈血 動脈血 呼気それぞれのガス分圧を示したもの 60mmHgの分圧差によって肺胞から毛細血管内へと移動する : 吸気は大気と同じで大気圧は760mmHg ガス成分の割合に応じた分圧がかかる : CO 2 は逆に肺胞気の40mmHgと静脈血の46mmHgとの差 : 空気に酸素が約 21% 含まれていて 分圧は760 0.21 160mmHg である である6mmHgの分圧差によって静脈血から肺胞気へ移動する : CO 2 の分圧差は小さいが ガスの移動のし易さを拡散係数という :CO 2 の方が O 2 の 20~30 倍ほど大きく CO 2 の方が拡散は速い : O 2 分圧 CO 2 分圧はそれぞれ Po 2,Pco 2 と表される ( 動脈血に限定する場合は Artery( 動脈 ) の a をつけて Pao 2 Paco 2 と表す ) : 吸気は気道を通る間に加湿され水蒸気圧が上昇し 肺胞に到達時には 47mmHg に達する : 気体と接している液体にも気体のガス分圧に従い各ガスが溶解し平衡に達する ガス交換とガスの運搬 吸気 呼気のガス組成と血液ガス : 動脈血の O 2 分圧 (96mmHg) が肺胞気の O 2 分圧 (100mmHg) より低く 気管支静脈が肺静脈に合流するなど 生理的シャントが存在するため : 記憶する数値は 動脈血の O 2 分圧 (100mmHg) と CO 2 分圧 (40mmHg) である : 動脈血の O 2 分圧は 若年者では 96mmHg 程度であるが 加齢とともに低下し 60 歳では 88mmHg 80 歳では 83mmHg 程となる P.131 ガス交換とガスの運搬 P.132 酸素の運搬 : 拡散により血漿中に移動した O 2 は 赤血球内に入りヘモグロビン (Hb) に結合する : 動脈血中のヘモグロビンの酸素飽和度は約 97.5% であり 94% 未満の場合は何かしらの異常が考えられる 二酸化炭素の運搬 : 組織の細胞による代謝の結果発生した CO 2 の内 約 5% は CO 2 として血漿に溶解し 約 5% はヘモグロビン等のタンパク質に結合する : 90% は 炭酸水素イオン ( 重炭酸イオン HCO 3- ) となり 2/3 は血漿 1/3 は赤血球内に溶解している

ガス交換とガスの運搬 二酸化炭素の運搬 : 赤血球内に入った CO 2 の内ヘモグロビンと結合しなかった物は 赤血球内の炭酸脱水素酵素の働きにより水 (H 2 O) と反応して炭酸 (H 2 CO 3 ) となる : H 2 CO 3 は H + と HCO 3- に解離して HCO 3- の 2/3 は赤血球から出て血漿に溶解する : 血漿中には炭酸脱酵素は存在しない : 肺では CO 2 濃度が低い為 反応は逆向きに進む : HCO 3 から CO 2 が次々と排出される P.132 肺の循環と血液 : CO 2 は単なる不要な老廃物ではなく 血液 ph の調節上 重要な役割を演じる P.133 肺循環 : 心臓から出た血液の経路は 全身に送られた後に心臓に戻ってくる体循環と肺へと流れて心臓に戻ってくる肺循環に大きく分けられる : 肺への血液は 右心室から肺動脈へと拍出される : 肺動脈には静脈血が流れ 肺静脈には肺で酸素化された動脈血が流れている 肺の循環と血液 肺循環 ( 肺の血流と血圧 ) : 右心拍出量は左心拍出量と等しいが 肺循環抵抗は体循環抵抗の約 1/5 右心室の発生圧は左心室圧の 1/5 程度 : 肺循環は比較的低圧であり 肺血流量は肺動脈圧や肺静脈圧 肺胞内圧の影響を受ける : 立位や座位で 心臓より上にある肺上部に行った肺動脈は重力の影響で内圧が低下し心室拡張期は肺胞に押されて閉塞し血流が途絶する : 肺の下部で血管は常に開口し血流が多い P.133 肺の循環と血液 換気血流比不均等の調節 : 肺循環は この様に肺の部位によって血流量が異なる事が特徴 P.134 : 換気が十分に行われても十分な血流が無ければ 血液の酸素化は不十分になる : 十分な血流が有っても その部分の肺胞の換気が不十分であれば 十分な血液の酸素化は行えない : この様に換気と血流は丁度良く 釣り合って居なくてはならない : この釣り合いが崩れた状態を換気血流比不均等という : 体は局所的な換気血流不均等を是正するメカニズムが備わっている

肺の循環と血液 換気血流比不均等の調節 : 換気の悪い肺胞があると 該当肺胞の肺胞気の Po 2 が低下する P.134 運動の調節 : 肺細動脈の Po 2 低下によって 肺胞は収縮する性質があり 換気の悪い肺胞への血流を減少させ 換気の良い肺胞へ血流をふり分ける : この調節メカニズムは非常に合理的だが 高山への登山時等には 吸入する空気自体の Po 2 が低い為 肺全体で細動脈の収縮が起こり 肺高血圧状態となる : 肺高血圧状態から肺水腫が惹起される病態が高山病であり 致命的となる場合もある P.134 の神経性調節 : の為に働く横隔膜や肋間筋等の筋は骨格筋である : 意志での速さや深さを変えられる : 会話や歌唱する時は 自由に呼息相の延長や息を止めたりできる : 同時にしている事を意識せず 睡眠により意識を失っている間もは続いている : 脳にある中枢が周期的に興奮し 中枢からのインパルスが横隔神経や肋間神経を通って筋を周期的に刺激するからである 運動の調節 の神経性調節 ( の中枢 ) : 中枢は延髄の腹側部 ( 腹側性ニューロン群 ) 背側部 ( 背側性ニューロン群 ) に存在する : 延髄より上位の橋にも性ニューロン群があり のパターンを修飾している : 中枢からは 前述の横隔 肋間神経への出力 に関連する喉頭の筋を支配する迷走神経の一部も出力される : 中枢は肺や気道の伸展度を感知する受容器の情報 血液 Po 2 Pco 2 ph 等の情報が求心線維を通って出力され の速さや深さが自動的に調節される P.135 運動の調節 化学受容器 ( 中枢化学受容器 ) P.135 : 延髄の中枢の近傍に存在する : 動脈血の Pco 2 が上昇して脳脊髄液の ph が低下すると 興奮して中枢を刺激し の深さと回数を促進させる ( 末梢化学受容器 ) : 末梢の化学受容器としての機能は 頸動脈小体と大動脈小体である : 頸動脈小体は内頚動脈と外頸動脈の分岐部にあり Po 2 の低下により興奮して舌咽神経を介して 情報を中枢に伝えてを促進させる : 大動脈小体は大動脈弓の内側にあって 頸動脈小体と同様に Po 2 の低下で興奮し 迷走神経を介してインパルスを中枢に送る

運動の調節 化学受容器 ( 末梢化学受容器 ) : 大動脈小体の役割は 頸動脈小体と比べて小さい : 末梢化学受容器の特徴は Po 2 の低下に反応すること : 血液に運ばれる O 2 の大部分は赤血球内のヘモグロビンに結合し 血漿に溶解する O 2 は僅かである : 頸動脈小体と大動脈小体は O 2 の僅かな変化に対応し換気を促進させる : 換気の低下や循環障害で Po 2 が低下した場合は興奮する : 貧血ではヘモグロビン濃度の低下の為に輸送される O 2 の送料は減少するが Po 2 は低下しないので興奮しないので の促進も軽度である P.135 肺の伸展受容器を介する反射 : 気管支や細気管支の壁には 伸展で興奮する伸展受容器が存在する : 吸息により 気管支 細気管支壁が引き伸ばされると伸展受容器が興奮し 迷走神経を通って情報は中枢に伝えられ 吸息が終了して呼息が始まる : これはのパターンを形成する反射で ヘーリング - ブロイエル反射ともいう 非特異的な反射性促進 P.136 : 身体運動を行う酸素消費量が安静時の 10 倍以上に増加し が促進されるが Po2 や酸素飽和度が低下する : 運動に伴う促進のメカニズムは 未だに十分に明らかにされていないが 四肢の屈伸運動に関する情報が中枢にも伝えられる : 大脳皮質の運動野からのインパルスが中枢を刺激する等が考えられる : 発熱等による体温の上昇 精神的興奮によるアドレナリン濃度上昇 妊娠等によるプロゲステロン濃度上昇 が促進される : 皮膚の温刺激 冷刺激 痛み刺激も促進効果がある P.137 運動の異常と病的 : は意識をしなくても 中枢の周期的興奮によって規則的に行われる : しかし 中枢の異常や気道の閉塞等により の規則性が失われる事がある 睡眠時無症候群 : 睡眠中にが一時的に止まる状態 : 常人でも一晩の睡眠中に 2~7 回の 10 秒以上の無発作が起こるが 1 時間の睡眠中に 5 回以上出現すると睡眠時無症候群である : 喉頭筋が睡眠中に弛緩し 沈下する事で気道を閉塞してしまう事で惹起される : 時として中枢の異常が起因となってが止まる事もある : 結果 夜間に何度も覚醒し寝不足となる 運動の異常と病的 P.137 チェイン - ストークス ( チェーン - ストークス ) : 無後 1 回換気量が漸増して漸減するの後 再び無となる : 中枢の機能低下や器質的障害で 周期性の失調で出現する : 無中に動脈血の Po 2 低下と Pco 2 上昇が起こり 化学受容器で感知した刺激によって出現する : により Po 2 Pco 2 が回復すると化学受容器からの刺激が消失し 再び無となる : 重篤な中枢神経系の疾患や心不全の末期に出現する クスマウル : 深く 深さのわりには速いである : 糖尿病や尿毒症等の時に代謝性アシドーシス ( 血中 ph の酸性化 ) に対する代償機序として過換気状態 ( 血中 ph のアルカリ化 ) がある

器系の病態生理 P.139 換気障害 : 気道が狭窄 閉塞を起因とする閉塞性換気障害 肺胞の拡張が妨げられておこる拘束性換気障害 と両者の混合型に分けられる : 閉塞性換気障害は 呼息時に気道がより強く圧迫されると 1 秒率の減少で特徴づけられ 拘束性換気障害は 肺活量の減少が特徴である : 閉塞性換気障害の代表的疾患として 慢性閉塞性肺疾患 (COPD: 慢性気管支炎 肺気腫 ) 気管支喘息等があげられる : 拘束性換気障害としては 肺胞の拡張が障害され 肺線維症 胸郭の拡張が障害される重症筋無力症などが代表的である 閉塞性換気障害 P.140 器系の病態生理 拡散障害 : ガスは拡散によって肺胞気と肺毛細血管との間を移動する : 血液が肺毛細血管を通過する時間は約 0.75 秒であり 最初の 0.25 秒で O 2 は肺胞気から毛細血管内に拡散する : 正常時の通過時間は O 2 の移動に必要な時間の 3 倍あり 十分な余裕がある : 肺胞壁が破壊される肺気腫や肺組織の外科的切除などにより ガス交換面積が減少した場合 : 間質性肺炎など肺胞壁が肥厚する場合 : 肺水腫の様に間質に液体が貯留すると 肺胞と毛細血管壁の距離が増大し O 2 の拡散が障害される事で 低酸素血症となる事もある : しかし CO 2 は O 2 と比較して拡散係数が大きく 拡散速度が速いため 拡散障害の影響は皆無である 器系の病態生理 P.140 器系の病態生理 換気血流不均等 : 肺に障害が有っても 全ての肺胞 気道が同程度に障害されず 障害の強い部分と弱い部分の差が出来る : 強く障害された肺胞 気道部分では 肺胞気の Po 2 が低下し 通過する血液は十分に酸素化されない : 酸素化されていない血液が肺静脈に合流することにより 動脈血の Po 2 が低下する P.141 左 - 右短絡 ( シャント ) : 極端な換気血流比不均等になると 全く換気されない肺胞が生じる : この肺胞を通過する血液は 酸素化されずに肺静脈に流入する : 一連の事を右心系 ( 静脈血 ) から肺を経ることなく左心系 ( 動脈血 ) に直接流入する意味で 左 - 右短絡という : 左 - 右短絡の場合 高濃度 O2 を吸入させても動脈血の Po2 は上昇しにくい : 肺胞が破れたり胸膜に孔が出来る事で 胸膜陰圧が保てず肺が虚脱する気胸や様々な事で起こる無気肺の時に生じる