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小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小川瑞己 1 佐藤文佳 1 村山伸子 1 * 目的 小学生のカルシウム摂取の実態を把握し 平日と休日のカルシウム摂取量に寄与する食品を検討する 方法 2013 年に新潟県内 3 小学校の小学 5 年生全数 3

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

放射線専門医認定試験(2009・20回)/HOHS‐05(基礎二次)

プログラム



( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

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ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

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厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

日本内科学会雑誌第98巻第4号

日本内科学会雑誌第97巻第7号

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

⑴ ⑵ ⑶

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厚生労働科学研究費補助金 (地域健康危機管理研究事業)



⑴ ⑵ ⑶ ⑷ 1

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

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⑵ ⑶ ⑷ ⑸ ⑴ ⑵

日本内科学会雑誌第101巻第12号

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

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日本内科学会雑誌第97巻第3号



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標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導


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P1〜14/稲 〃

旗影会H29年度研究報告概要集.indb

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(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

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第2章マウスを用いた動物モデルに関する研究

Ł\”ƒ-2005

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 商品名 : イチョウ葉脳内 α( アルファ ) 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績による食経験の評価 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) 弊社では当該製品 イチョウ葉脳内 α( アルファ ) と同一処方の製品を 200

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

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平成20年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

第90回日本感染症学会学術講演会抄録(I)

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本文/扉1

プログラム


Program


平成20年5月 協会創立50年の歩み 海の安全と環境保全を目指して 友國八郎 海上保安庁 長官 岩崎貞二 日本船主協会 会長 前川弘幸 JF全国漁業協同組合連合会 代表理事会長 服部郁弘 日本船長協会 会長 森本靖之 日本船舶機関士協会 会長 大内博文 航海訓練所 練習船船長 竹本孝弘 第二管区海上保安本部長 梅田宜弘

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日本内科学会雑誌第96巻第11号

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日本内科学会雑誌第102巻第4号

Microsoft Word - 【140821差し替え】日本人の食事摂取基準(2015年版)概要


関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

プログラム 3日目:11月16日(日曜日)

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平成 18 年度厚生労働科学研究費補助金 ( 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業 ) 日本人の食事摂取基準 ( 栄養所要量 ) の策定に関する研究 主任研究者柴田克己滋賀県立大学教授 Ⅲ. 分担研究者の報告書 11. 高 α- トコフェロールあるいは高 γ- トコフェロール摂取に伴うビタミン E の 血中濃度変化と運動トレーニングの影響 分担研究者森口覚 山口県立大学教授 研究要旨ビタミン E は日本人の食事摂取基準 25 年版から α-トコフェロール (α-t) としての摂取でその栄養摂取状況を考えることとなり 人体への生理作用に対する影響について興味が持たれる. 我々はすでに食物アレルギーの発症 進展とビタミン E との関連や高齢者の細胞性免疫能の低下とビタミン E に関する研究を実施し 何れも高いビタミン E 摂取がアレルギー発症を抑制したり 高齢者の低下した免疫能を改善することを見出し 報告している その際 必要なビタミン E 摂取量は通常の約 2 倍であり この量を毎日の食事から取ることはまず無理であることからサプリメントの使用が考えられる また 米国などでは摂取エネルギーの約 4% を脂質から摂取しており その結果として γ-トコフェロール (γ-t) の摂取が高いことが知られている そこで 本研究では α-t や γ-t の高い摂取がビタミン E の血中濃度にどのように影響するのかを検討した さらに 運動トレーニング (6 km/ 時で 3 分 / 日 5 日 / 週 4 週間 ) に伴う血中ビタミン E 濃度の変化について若年女性を被験者として検討した

A. 目的抗酸化作用を有するビタミン E の高い摂取が動脈硬化をはじめと種々の疾患の発症 進展を予防することが知られている また 高齢者や食事の脂質エネルギー比の高い欧米諸国では 体内の酸化状態が高く 血中ビタミン E 栄養状態にも影響することが懸念される さらに 一般に油脂中には α タイプよりも γ タイプのビタミン E が大量に含まれていることから 油脂の高い摂取が血中ビタミン E(α および γ-トコフェロール ) 濃度にどのように影響するか興味が持たれる また 有酸素運動によっても血中過酸化脂質の上昇することが知られており その際にはビタミン E が抗酸化作用を示すことも明かとなっている そこで 本研究では女子大学生を対象として 高 α-トコフェロール (α-toc) および高 γ-トコフェロール (γ-toc) 摂取ならびに運動トレーニングに伴う各々の血中濃度変化について検討した B. 方法 ⑴ 対象者とビタミン E の服用本研究は 健康な女子大学生 19 名 ( 年齢 ;19 21 歳 ) を対象として実施された 対象者を placebo 群 (5 名 ) α-toc 群 (7 名 ) および γ-toc 群 (7 名 ) に分類し α-toc 群には mg/ 日の α-toc γ-toc 群には mg/ 日の γ-toc を毎日服用してもらった 3 週間後の早朝空腹時に採血し 血漿を得た また placebo 群にはビタミン E を可溶化した油脂 ( ビタミン E 除去 ) のみを服用させた 尚 本研究は 山口県立大学倫理委員会において審査され 承認後 二重盲検法によって実施された ⑵ 運動トレーニング各ビタミン E を服用後 4 週目から4 週間 ルームランナーを用いて運動トレーニングを開始した 運動トレーニングとして毎日 時速 6 km で 3 分間の歩行運動を行った 運動トレーニング終了日の翌日 早朝空腹時に採血し 血漿を得た ⑶ 血漿 α-toc および γ-toc 濃度の測定血漿 α-toc および γ-toc 濃度の測定は HPLC 法により測定 (Ueda et al, 1987) を行った C. 結果 ⑴ 高 α-toc および γ-toc 摂取に伴う血中濃度変化 3 週間 mg の α-toc または γ-toc 摂取後の血中 α-toc および γ-toc 濃度をそれぞれ図 1に示した α-toc 群では血中 α-toc 濃度が有意に上昇した (p <.1) が γ-toc 群では逆に有意な低下 (p <.1) を認めた 一方 γ-toc 濃度については γ-toc 群において有意な上昇 (p <.1) を認めたが α-toc 群では逆に有意な低下 (p <.1) がみられた ( 図 2) ⑵ 運動トレーニングに伴う α-toc および γ-toc の血中濃度変化 4 週間 毎週 5 日間の歩行運動によっても 血中 α-toc 濃度にはほとんど変化はみられなかった ( 図 3) また 血中 γ-toc 濃度は運動前に比べ運動後に有意な低下 (p <.5) を認めた ( 図 4) D. 考察本研究結果から α-toc および γ-toc の高い摂取は 各々の血中濃度の有意な上昇を

誘導する一方で もう一方の血中濃度を有意に抑制する可能性が示唆された Wu ら (27) も α-toc のサプリメントにより好中球中の γ-toc 濃度の低下することを見出している また Reboul らは γ-toc が α-toc の吸収を阻害することを見出し 報告していることから 高 γ-toc 摂取に伴う血中 α-toc 濃度の低下は γ-toc による α-toc の吸収阻害によるのかもしれない 欧米諸国のように食事からの脂質摂取が高い場合 血中ビタミン E 濃度の動態にも影響があること markers of oxidative stress and inflammation in type 2 disbetes. Clin. Chem,m 27. Feb 1, 27. 3. Reboul, E., et al.:effect of the main dietary antioxidants (carotenoids, gamma-tocopherol, polyphenols, and vitamin C)on alpha-tocopherol absorption. Eur. J. Clin. Nutr., Jan 31, 27. ことが考えられ 特に α-toc 濃度の低下と γ-toc 濃度の上昇が考えられ これが健康状態にどのように影響するかさらに検討が必要である また 4 週間の運動トレーニングに伴い 血中 α-toc 濃度にはほとんど変化はみられなかったが γ-toc 濃度は有意な低下を認めた この結果から 運動トレーニングに伴う過酸化脂質産生の抑制に働くビタミン E としては α-toc よりも γ-toc の方が優れている可能性が考えられるが 今後 さらに検討が必要である E. 文献 1. Ueda, T. and Igarashi, O.:New solvent system for extraction of tocopherols from biological specimens for HPLC determination and the evaluation of 2,2,3,7,8-pentamethyl-6-ehromanol as an internal standard. J. Micronutr. Anat., 3, 185-198, 1987. 2. Wu, J.H.Y., et al.:effects of α-tocopherol and mixed tocopherol supplementation on

3 25 *** **p<.1, ***p<.1 ( vs 摂取前 ) 2 15 ** 5 前後前後前後 placebo 群 α-toc 群 γ-toc 群 図 1 3 週間の高 α-toc および γ-toc 摂取後の血漿 α-toc 濃度の変化

12 ***p<.1 ( vs 摂取前 ) *** 8 6 4 2 *** 前後前後前後 placebo 群 α-toc 群 γ-toc 群 図 2 3 週間の高 α-toc および γ-toc 摂取後の血漿 γ-toc 濃度の変化

3 25 2 15 5 placebo 群 α-toc 群 図 3 高 α-toc 群における運動トレーニングに伴う血中 α-toc 濃度の変化

12 *p<.5 ( vs 運動前 ) 8 * 6 4 2 placebo 群 γ-toc 群 図 4 高 γ-toc 群における運動トレーニングに伴う血中 γ-toc 濃度の変化