院内感染対策マニュアル

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2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

インフルエンザ(成人)

両面印刷推奨 <4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる 全く確認できない D または E のどちらかを選ぶ D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけ

<4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる全く確認できない D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけて さらに 1 回ワクチン接種を受ける 抗体検査を

Vol. 32 Suppl.II,2017 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ( ムンプス ) に関する Q&A の公開にあたって 日本環境感染学会では 平成 21 年 5 月に 院内感染対策としてのワクチンガイドライン第 1 版 を 平成 26 年 9 月に 医療関係者のためのワクチンガイドライン

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

水痘(プラクティス)

平成 30 年度栄養サポートチーム専門療法士臨床実地修練研修プログラム 大阪国際がんセンター 栄養サポートチーム

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

針刺し切創発生時の対応

Ⅰ. ウイルス感染症の持込防止 1. ウイルス感染症の持込防止 感染症で緊急入院する場合は この限りではない 1) 入院時の問診 診察 (1) 入院時 ウイルス感染の罹患歴 ワクチン歴 ウイルス感染症患者との 1 ヶ月以内の接触歴について問診するとともに 発疹の有無など診察を行う インフルエンザ ノ

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

検査項目情報 水痘. 帯状ヘルペスウイルス抗体 IgG [EIA] [ 髄液 ] varicella-zoster virus, viral antibody IgG 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F

症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

ハイリスク患者 免疫抑制者における播種性水痘 悪性腫瘍患者の死亡率は 7-17% 成人 妊婦 新生児 肺臓炎 年齢による水痘の頻度と死亡率 0~4 5~14 15~44 45~64 >65 頻度 ( 対人口

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

4) アウトブレイクに介入している 5) 検査室データが疫学的に集積され, 介入の目安が定められている 4. 抗菌薬適正使用 1) 抗菌薬の適正使用に関する監視 指導を行っている 2) 抗 MRSA 薬の使用に関する監視 指導を行っている 3) 抗菌薬の適正使用に関して病棟のラウンドを定期的に行って

( 別記報告様式 1 ) 記載例 2 感染症等 ( 疑 ) 発生報告票 1 報告年月日 平成 1 9 年 4 月 1 日 ( 日 ) 1 5 時 0 0 分現在 2 施設等の名称 学校法人 函館学院 函館保健所幼稚園 ( 種 別 ) ( 私立幼稚園 ) 4 報 告 者 職 氏 名 園 長 名 函 館

外来部門

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

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名称未設定-1

医療機関での麻疹対応ガイドライン第七版 国立感染症研究所感染症疫学センター 平成 30 年 5 月

B型肝炎ウイルス検査

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

2009年8月17日

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Microsoft PowerPoint - 感染対策予防リーダー養成研修NO4 インフルエンザ++通所

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ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

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はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

外来トリアージ

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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B型肝炎ウイルス検査

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

妊婦の推定感染経路 2 番目は 妊婦さんの推定感染経路です 2011 年は中国 ベトナムなど海外で感染した夫や本人です 海外からの感染に注意が必要でした ところが 2012 年は夫 同僚から妊婦さんへの感染が認められたので 同居家族 同僚のワクチン接種を勧めるよう喚起しました さらに 2013 年に

健康た?よりNo107_健康た?より

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

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日本医師会作成版を元に北上医師会会員向けに一部修正を加えました ( 以下赤文字及び下線部は 各医療機関の実情に応じて記載 変更する ) 新型インフルエンザ等発生時における診療継続計画 ( 案 ) 医院 本計画は当院 新型インフルエンザ等に関する院内対策会議 により平成 年 月 日作成され たものであ

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

認知症医療従事者等向け研修事業要領

02別添:日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A[H28.3月版]

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

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日産婦誌58巻9号研修コーナー

34 片渕美和子他 表 1 各年度の B 型肝炎, 麻疹, 風疹およびムンプスに対する抗体陽性率 検査年度 HBs 麻疹 風疹 ムンプス 2003 年 3/231(1.3)* 131/217(60.4) 200/217(92.2) 114/217(52.5) 2004 年 0/231( 0) 134

インフルエンザ院内感染対策

あり 一人の感染者が周囲の免疫のないヒトに感染させる数である基本再生産数は 10 流行を抑制するための集団免疫率は 90% 以上です 水痘の潜伏期間は通常 14~16 日間です 水痘ワクチンの定期接種が行われている米国では 1 回定期接種を行っていた 1996 年から 2004 年までの間に 水痘患

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

様式 1 食物アレルギーを持つ児童の保護者との面談調査票 ( 保護者 保育園記入用 ) 面談実施日 : 平成年月日 面談出席者 : 保護者側 保育園側 児童の情報 ( 保護者記入欄 ) クラス : 組 児童氏名 : 性別 : 男子 女子 生年月日 : 平成 年 月 日 年齢 : 歳 住 所 : 保護

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1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

微生物学的検査 >> 6B. 培養同定検査 >> 6B615. 検体採取 患者の検査前準備検体採取のタイミング記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料採取量測定材料リグアニジン塩酸塩尿 5 ml 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 ク

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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2. 予防 1) 予防接種 入院している多くの免疫不全患者への感染源にならないためにも 病院で勤務するすべての 職員に対してインフルエンザワクチンの接種を推奨する ただし過去にインフルエンザワクチンで 重症なアレルギー反応があった者は禁忌である 接種可能かどうかの相談は感染管理担当課で 行う 患者へ

第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs

PowerPoint プレゼンテーション

(案の2)

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やまぐち子育て福祉総合センター実績報告 専門研修 子どもを感染症から守ろう ~ 登園の感染症 10 年戦争!!~ 日時 11 月 17 日 ( 木 )14:00~15:40 場所 山口市立山口保育園 2 階遊戯室講師 社会福祉法人光善会理事長 大内すこやか保育園野瀬橘子先生参加人数 70 名 内容

17★ 訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて(平成十二年三月三十日 老企 厚生労働省老人保健福祉局企画課長通知)

事務連絡 令和元年 6 月 21 日 ( 公社 ) 岡山県医師会 ( 一社 ) 岡山県病院協会 御中 岡山県保健福祉部健康推進課 手足口病に関する注意喚起について このことについて 厚生労働省健康局結核感染症課から別添のとおり事務連絡が ありましたので 御了知いただくとともに 貴会員への周知をお願い

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豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

医師等の確保対策に関する行政評価・監視結果報告書 第4-1

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血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 に関する説明書 一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター 所属長衞藤義勝 この説明書は 血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 の内容について説明したものです この研究についてご理解 ご賛同いただける場合は, 被

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危機管理論 リスクとクライシスのマネジメント

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27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

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免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時

検査項目情報 EBウイルスVCA 抗体 IgM [EIA] Epstein-Barr virus. viral capsid antigen, viral antibody IgM 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLA

Transcription:

7-6. ムンプス ( 流行性耳下腺炎, おたふく ) Ⅰ. 診断 1) 通常, 唾液腺, 主として耳下腺の有痛性腫脹をもって発症する 両側又は片側の耳下腺が腫脹し, ものを噛むときに顎に痛みを訴えることが多い 唾液腺炎は耳下腺両側が多いが, 片側耳下腺は25%,10~15% は顎下腺である 2) 一般検査 : 血清, 尿アミラーゼ上昇 ( リンパ節腫大との鑑別に有効 ) 3) 抗体検査は急性期にEIA-IgG/IgMで行ない, 感染の確認はペア血清をCF, HI,NTで再確認する (HI:EIAより感度が低い パラインフルエンザウイルスと交差反応する可能性がある ) 4) 一側性の時は, 他のウイルスによる耳下腺炎, リンパ節炎, 化膿性耳下腺炎, 反復性耳下腺炎などの鑑別診断が重要である Ⅱ. 感染 1) 飛沫感染 2) 潜伏期は14~21 日 3)30-40% は不顕性感染で (2 歳未満は特に多い ), 不顕性感染者からもウイルスの排泄がみられる 4) ウイルス排泄期間は通常発生 3 日前 ~ 発生後 4 日がピークで, 発症 ( 耳下腺腫脹 ) の約 7 日前から9 日後頃までウイルス排泄が認められる III. 再感染近年, ムンプスの再感染が多いことが知られてきた 明らかなムンプスの既往があるにもかかわらず, 両側性の耳下腺腫脹が5-7 日間程度持続する場合には再感染を疑う この場合には急性期にEIA-IgG 陽性となる場合があるので注意が必要である Ⅳ. 患者隔離 ( 各部署対応 ) 1) 患者は, 耳下腺の腫脹が消失するまで隔離 ( 経路別予防策 隔離策 : 飛沫感染予防策参照 ) する 2) 抗体陰性者が入室する時は, サージカルマスクを着用する Ⅴ. 患者に接する医療従事者 1) 十分なムンプス抗体がある 職員が対応することを原則とする 2) それ以外の者が患者と接する場合には, サージカルマスクを着用する ムンプス (H28.5 改訂 )-1

Ⅵ. 2 次感染 ( 感受性者に対する ) 予防の処置ムンプスの既往歴は耳下腺腫脹が片側の場合には, 抗体の検査がされていない限り ( ムンプスの診断が ) 疑わしい事が多いので, 診断時におけるムンプスの流行の状態, 家族内感染なども参考にして判断する 1) 曝露者リスト作成と抗体検査 1 発端患者の発症 7 日前 ~ 発症 9 日後までは感染性があるので, この期間に発端者と接触した入院患者と家族, 医療従事者, 学生, 外注職員などが対象者となる ( 退院した患者と家族を含めるか否かはケースバイケースで判断する ) 2 接触者リスト ( 患者 ) には, 診療科, 病室, 患者氏名, 所属,ID, 既往歴とワクチン接種歴を記載し ( 事前調査情報を活用するとともに, 不足情報は聞き取り調査する ), ムンプスIgG 抗体検査を行う 3 接触者リスト ( 職員 家族など ) には, 氏名, 職種, 患者との続柄, 性別, 年齢, 既往歴とワクチン接種歴を記載し, ムンプスIgG 抗体検査を行う 4 接触者リスト( 患者 ) と 接触者リスト( 職員 家族など ) は,HIS 端末の 共有フォルダ, 01_ 医科診療科別, 00_ アウトブレイク対応 ( 感染制御部 ) のなかの各病棟別フォルダに保存されている原本をコピーして使用すること 5IgG 抗体検査は, 生化学試験管に2ml 採血し, 手書きラベル ( 部署名, 患者 家族 医師 看護師など, 名前を明記 ) を貼付し, 曝露者リストと共に感染制御部へ届ける 6 接触者リスト( 患者 ) と 接触者リスト( 職員 家族など ) にリストアップされた者のなかで, ムンプスIgG 抗体検査で 十分な抗体がある と判定された者以外については 3)2 次感染する可能性のある患者の隔離 ( 経過観察期間 ) と職員への対応 に従って対応する 2) 2 次感染予防 γ-グロブリン, ワクチンなどは無効である 3) 2 次感染する可能性のある患者の隔離 ( 経過観察期間 ) と職員への対応 1ムンプスIgG 抗体で 十分な抗体がある と判定された者以外については, 最初の曝露から7 日後 ~ 最後の曝露から21 日後まで隔離が望ましい (7-1: 病原体別予防策 ( ウイルス ) の概要 ) 2 医療従事者で抗体 陰性 あるいは 十分な抗体なし と判定された場合には, 最後の曝露から21 日後まではサージカルマスクを着用して勤務する Ⅶ. 職員の就業 1) 発症した医療従事者は, 耳下腺腫張後 9 日間は就業禁止とする ムンプス (H28.5 改訂 )-2

感染制御部石黒信久小山田玲子医療支援課中村澄人 (H14.2 作成 H16.3 改訂 H19.3/30 内容確認 H22.3 改訂 H25.5 改訂 H28.5 改訂 ) ムンプス (H28.5 改訂 )-3

おたふくかぜ ( 流行性耳下腺炎 ) の発生に伴うご協力のお願い この度, 病院の中で おたふくかぜ にかかった方がおり, 患者さんを守るために, 皆さま ( 患者さん, 付き添われているご家族, 職員, 学生, 外注職員など ) に調査と採血検査, 予防処置のご協力をお願い申し上げます * おたふくかぜ にかかった方は, 他の方々と接触しないように, 一時的に隔離 ( かくり : 個室での療養や自宅療養 ) させて頂きます * おたふくかぜ にかかったことがある方は, おたふくかぜ ウイルスを攻撃する抗体というものが体内にでき, おたふくかぜ のウイルスが身体に入ってきても病気を発症しません * おたふくかぜ にかかった覚えがなくても症状がないまま抗体ができる場合があります * 幼児期に おたふくかぜ ワクチンを接種した方の 90-95% には おたふくかぜ の抗体が作られますが, 時間の経過とともに抗体がなくなることがあります * おたふくかぜ の抗体をもっていない方は, おたふくかぜ を発症する可能性あります 抗体の有無を明らかにするための採血検査のご協力をお願いします * あごや耳の付け根付ちかくのはれ等の症状があるようでしたら早めにご連絡ください ご協力をお願いする内容 1 これまでに おたふくかぜ にかかったことがありますか? 2 おたふくかぜ ワクチンの接種を行ったことがありますか? 3 おたふくかぜ にかかったことがない方は, おたふくかぜ 抗体の採血検査 (2cc) のご協力をお願いします 4 おたふくかぜ ワクチンを接種していても, 時間の経過とともに抗体がなくなっている場合がありますので, おたふくかぜ 抗体の採血検査 (2cc) のご協力をお願いします * どなたにも検査のための費用はかかりません 北海道大学病院長殿説明者氏名 : 平成 年 月 日 私は, 担当者から十分な説明を受け以下のように回答します 1 おたふくかぜ にかかったことが ある ない 不明 2 おたふくかぜ のワクチン(MMR ワクチン含む ) を接種したことが ある ない 不明 3 抗体検査の採血に協力 する しない ご本人氏名 : 代諾者氏名 : ( ご本人が未成年などの場合 ) ムンプス (H28.5 改訂 )-4

接触者リスト ( 患者 ) 共有フォルダ内に保存 記入日 : 20 年月日北海道大学病院 診療科病室患者氏名 ID 番号罹患歴ワクチン歴抗体検査対処 備考 記入例 科 該当疾患 : 麻疹 水痘 播種性帯状疱疹 風疹 ムンプス 発症者氏名 : 年齢 : 歳 性別 : 男 女 ID 番号 : 発生月日 : 20 年月日 発生場所 : ナースステーション ( 号室 ) 外来 診療 科 : 科 発症者 : 患者 職員 委託業者 その他 ( ) 主治 医 : 接触者調査対象期間 : 月日 ~ 月日まで 507 感染花子 10620700 不明なし 9/25 移植後免疫抑制状態グロブリン投与 ムンプス (H28.5 改訂 )-5

接触者リスト ( 職員 家族など ) 共有フォルダ内に保存 記入日 : 20 年月日北海道大学病院 氏名職種患者との続柄性別年齢罹患歴ワクチン歴抗体検査対処 備考 記入例感染太郎 該当疾患 : 麻疹 水痘 播種性帯状疱疹 風疹 ムンプス 発症者氏名 : 年齢 : 歳 性別 : 男 女 ID 番号 : 発生月日 : 20 年月日 発生場所 : ナースステーション ( 号室 ) 外来 診 療 科 : 科 発症者 : 患者 職員 委託業者 その他 ( ) 主 治 医 : 接触者調査対象期間 : 月日 ~ 月日まで 医師男 34 なしなし 9/25 主治医 : 濃厚曝露 ムンプス (H28.5 改訂 )-6