韓国:政権交代とエネルギー政策 ~需給、国営石油企業の対外投資~

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2007年12月10日 初稿

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(3) インドネシアインドネシアの電力供給は 石炭が 5 割 コンバインドサイクル 2 割 ディーゼル 1 割 水力 1 割 その他 1 割となっている 2015 年の総発電設備容量は PLN 3 が約 8 割 IPP が 2 割弱を 残り数 % を自家発電事業者 (PPU) が占めている 同国で


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MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

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( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

目次 1. 経営成績営業利益分析 / 海外売上高 / 貸借対照表 2. 業績予想 ( 修正 : 有 ) 3. 研究開発費 / 減価償却費 / 設備投資 4. 株価の状況 5. トピックス P.2 P.10 P.14 P.16 P

銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ

銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ

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第4章 日系家電メーカーにおけるグローバル化の進展と分業再編成

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< 顧客配布資料 > ベトナムレポート 作成 :2014 年 7 月 7 日 ( 月 ) ベトナム Weekly レポート お問い合わせ フリータ イアル : ホームヘ ーシ アト レス : ベトナム最大の国営企業 ペトロベト

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

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銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ

銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ


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本調査の概要 背景 インドは豊富な石炭資源を保有していることから石炭への依存度が高い しかし 近年の大気汚染等の環境問題 今後の地球温暖化対策から 石炭の役割は縮小へ グリーンエネルギー 特に再生可能エネルギーの導入に注力 しかし 一次エネルギー需要の増加から 石炭シェアは減少するものの需要は増加

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TOPICs 世界の原油需給 by OPEC Oil Market Rerort 214 年 3 月号より 世界の原油需要 世界の原油需要 28 年 29 年 21 年 211 年前年比 212 年前年比 213 年 OPEC Oil Market Report 214 年 3 月号 前年比 28

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参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

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第1章

図 1 AEO2008 及び前回発表における1980~2030 年の米国液体燃料供給 消費及び純輸入 ( 百万バレル / 日 ) 前回発表 消費 純輸入 前回発表 生産 3.AEO2008 基準ケースの統計及び分析 (1) 石油価格 EIAの世界的石油価格は前年より高い数値となっているが 現在の記録

北米からの原油供給量は 2011 年は前年比日量 +21 万バレル増であったが 2012 年は前年比 +158 万バレル増となり 2013 年は +130 万バレル増 2014 年は +92 万バレル増と見込まれている 北米を含めた OECD 先進諸国からの供給は 2011 年は +1 万バレル増

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Transcription:

韓国 : 政権交代とエネルギー政策 ~ 需給 国営石油企業の対外投資 ~ 更新日 :2017/5/30 調査部 : 竹原美佳 近年 韓国のエネルギー政策は大統領が変わる毎に大きく変動してきた 2017 年 5 月に就任したムンジェイン大統領は環境問題 ( 大気汚染改善 ) を重視しており 2029 年までの中長期電力需給計画 ( 石炭火力増設 ) が見直され ガスへのシフトが進み LNG の輸入が増加する可能性がある 石油 天然ガス国外探鉱開発投資については国営石油会社 (KNOC) の負債圧縮および資産整理 民間投資奨励路線が続く模様 KNOC は同国の久々の大型 M&A 案件である GS Energy の ADCO 権益取得においてテクニカルサポートを行い 財務が改善した場合 GS から権益の一部を取得するオプションを有している また KNOC は 2016 年にクルド地域ならびにカザフスタン上流からの撤退を進めており 2017 年以降カナダ Harvest Energy Trust 英 Dana Petroleum 関連資産の売却を進める可能性がある 1. エネルギー政策の変化 (1) エネルギー需給 ~ 石炭からガスへのシフトが進み LNG 輸入増加の可能性 ~ 2016 年 12 月の朴槿恵大統領に対する弾劾訴追案の国会可決を受け 17 年 12 月に予定されていた 大統領選挙は 5 月 9 日に前倒しとなり 最大野党の 共に民主党 ムンジェイン ( 文在寅 ) 氏が翌 10 日に 大統領に就任した 近年 韓国のエネルギー政策は大統領が変わる毎に大きく変動してきた 今回ムン大統領はまず大 気汚染問題改善に注力する模様である ムン大統領は選挙期間中に煤塵排出を 30% 抑制する そのた めに石炭火力発電所の建設計画の見直しや老朽化したディーゼル車を削減することなどを表明してい た そして就任から 5 日後には老朽化 ( 運転期間が 30 年を超えた ) した石炭火力発電所 10 基について 6 月から運転を停止することを決めた i 韓国では現在 59 基の石炭火力プラントが運転中で 同国の発電電力量の 40% を占めている 運転を 停止する 10 基は同国の発電設備容量の 3.1% に満たず 運転停止による 6 月からの電力供給に支障は ないとされる しかし今回の決定はムン大統領の大気汚染改善に向けた強い意志の表れであり 石炭火 力発電新増設計画が見直され 石炭からガスへのシフトが進み LNG の輸入が増加する可能性も考え 1

られる (2015 年 7 月に発表された 2029 年までの第 7 次長期電力需給計画によると石炭火力発電設備は 2014 年から 2020 年にかけて 1,136 万 kw さらに 2020 年から 2029 年までに 638 万 kw 合計 1,774 万 kw 能力が増強される計画 < 図 1> であった ) 水力, 5% 石油, 4% 再生可能, 7% 2014 年 ( 計 9,322 万 kw) CHP, 5% 原子力, 22% 再生可能 20% 水力 3% 2029 年 ( 計 1 億 6387 万 kw) CHP 6% 原子力 23% ガス (LNG), 29% 輸入炭, 27% 石油 1% ガス (LNG) 21% 輸入炭 26% 無煙炭, 1% 無煙炭 0% 図 1: 韓国の第 7 次長期電力需給基本計画に基づく発電設備容量対比 (2014 年 2029 年 ) 出所 :JOGMEC 平成 27 年度海外炭開発支援事業海外炭開発高度化調査 韓国 台湾及び東南アジア諸国の一般炭需要動向と輸入動向調査 ( 平成 28 年 2 月 )p201 表 5.1.11 韓国の電力需要見通しと電力供給計画 ( 第 7 次計画 ) に基づき作成 (2) 国外石油 天然ガス探鉱開発 ~ 国営石油会社は負債圧縮 資産整理 民間投資奨励路線継続の模様 ~ 選挙期間中にムン大統領を含む候補者はエネルギー対外投資について見解を示さなかった 北朝鮮の脅威を踏まえ防衛に重点が置かれたこと 国営石油会社 2 社 (KNOC KOGAS) が高油価時の対外投資により重い債務負担を抱えており余裕が無いことが主な理由である イ ミョンバク ( 李明博 ) 政権 ( 任期 2008 年 2 月 ~2013 年 2 月 ) はエネルギー自給率向上を最優先し KNOC や KOGAS などの国営石油 ガス企業の対外投資を奨励した 国外石油 天然ガス探鉱開発を強化する方針を打ち出し その中核を担う KNOC の規模拡大や油ガス自給率の引き上げを進めてきた MOTIE 前身の知識経済部 (MKE) は 2012 年 2 月の非常経済対策会議で 資源開発の成果と今後の推進計画 を発表し 自主開発比率を 2020 年までに 35% 以上に拡大する方針を打ち出した KNOC の大型 2

化戦略 短期間での規模の競争力確保 探鉱鉱区買収から生産鉱区買収や M&A への切り替え 中東やアフリカなどの未進出地域への資源外交推進などにより石油ガスの自主開発比率は 2007 年の 4.2% から 2012 年に 13.8% に達した 2008 年から 2011 年の 4 年間に確保した自主開発量 (34 万 bbl) は 2007 年以前の 3 倍に増加した しかし高油価の際に行った資産買収により国営石油 ガス企業の負債比率が上昇する結果となった 2013 年 8 月 パク クネ ( 朴槿恵 ) 政権 (2013 年 2 月 ~2017 年 3 月 ) は国外石油 天然ガス探鉱開発方針を転換した KOGAS や KNOC などの海外資源開発企業がイ前政権の 5 年間に大規模な海外資産買収を推進した結果 ExxonMobil やBPなどに比べ負債比率が過大に膨らんだと指摘 MOTIE を通じて資産整理 売却を含む海外資源開発政策見直しの方針を国会に提出した また今後資源開発は民間を中心に推進する その支援策として開発リスクを一定程度負担する融資制度の強化を打ち出した しかし他の企業も経済減速や 2014 年下期以降の低油価により国外投資にあまり積極的ではなかった 2016 年 5 月の GS Energy の ADCO 権益 3% 取得が久々の大型案件である 1GS Energy の ADCO 権益取得 2015 年 5 月 GS Energy Corporation は ADNOC と ADCO 権益取得で合意した 権益比率は 3% で 契約期間は 2015 年 1 月から 40 年間 サインボーナスは 6.76 億ドルとされる KNOC は GS Energy Corporation のテクニカルサポートを実施することになっている また 今後 5 年以内に財務状況が改善した場合 GS Energy Corporation から同社保有権益の 30% を取得するオプションを有している 2 国営石油会社 2 社の損失 負債 KNOC の 2016 年売上は原油価格の低迷により前年比 29% 減の 2 兆 940 億ウォン (21 億ドル ) である 純損失は 9,641 億ウォン (9.6 億ドル ) で前年の純損失 4 兆 5003 億ウォン (40 億ドル ) に比べ改善した しかし負債比率は 2015 年の 82% から 84% に増え 資産 負債比率 (Debt to Equity Ratio) は 2015 年の 453% から 529% と大幅に増加している KOGAS の 2016 年売上はガス販売価格の低下により前年比 19% 減の 21 兆 1081 億ウォン (182 億ドル ) 純損失はイラクのアッカス ガス田 (3,335 億ウォン ) 豪州グラッドストーン LNG(4,204 億ウォン ) などのプロジェクトの減損損失を計上したことにより 2015 年の純利益 3,192 億ウォン (5.8 億ドル ) から 6,736 億ウォン (5.8 億ドル ) の赤字に転落した 負債比率は2015 年と変わらず 76% で 資産 負債比率 (Debt to Equity 3

Ratio) は 2015 年の 321% から 325% に微増している 表 1:KNOC KOGAS の損失 負債 KNOC 百万ドル 2014 年 2015 年 2016 年 売上 4,138 3,034 2,095 純利益 -1,424-3,977-964 負債比率 (%) 69% 82% 84% Debt to Equity Ratio(%) 221% 453% 529% KOGAS 百万ドル 2014 年 2015 年 2016 年 売上 35,404 23,087 18,194 純利益 396 283-581 負債比率 (%) 79% 76% 76% Debt to Equity Ratio(%) 381% 321% 325% 各社年報に基づき作成 3KNOC の主な対外進出国と資産整理 KNOC は国内で原油生産は行っておらず 国外で約 23 万 b/d を生産している 2009 年 2 月にコロンビア Ecopetrol と折半で米 Offshore International Group Inc. (OIG) を 9 億ドルで買収し 傘下の E&P 企業 Petro-Tech Peruana を取得した 同年 10 月にはカナダ Harvest Energy Trust を 40.7 億カナダドル (39.5 億ドル ) 翌 2010 年 8 月に英 Dana Petroleum を24 億 (37 億ドル ) で買収 (2011 年 1 月買収完了 ) した これらの買収により自国を除くアジア ( ベトナム カザフスタン ウズベキスタン ) 米州 ( カナダ ペルー 米国 ベネズエラ ) アフリカ ( リビア ナイジェリア ) 欧州( 英国 ) 中東 ( イラク イエメン UAE) における上流権益を保有している ( 図 3) 4

出所 :KNOC 図 2:KNOC の主な進出国 イラク クルド地域 :Sangaw South 鉱区からの撤退 2008 年 9 月 KNOC はクルド自治政府 (KRG) との間で油田開発 社会資本 (SOC) 連携事業の最終契約に調印 計 8 鉱区の開発を進めるとともに 21 億ドル規模のインフラ整備事業に合意 2014 年に Sangaw South の権益を 60% に倍増 2016 年までに 2.04 億ドルを投じ 3 坑を掘削した 同社はクルド地域を主要生産地域と位置付けたが 探鉱の結果が思わしくなく鉱区を次々と放棄した 2016 年 9 月 最後に保有していたオペレーター鉱区 Sangaw South(PS 契約 KNOC60% オペレーター) から撤退し 同社のクルド地域保有鉱区はノンオペの Hawer 鉱区 (PS 契約 KNOC15% オペレーター Oryx) のみとなった Hawer 油田はプラトー 4 万 b/d と期待されたが現在の生産量は 2016 年 12 月現在 3,000b/d にとどまっている 5

図 3:KNOC のクルド地域保有 撤退鉱区 出所 :KNOC カザフスタンカスピ海 Zhambyl Block 2008 年 5 月 韓国首相の中央アジア歴訪の際 KNOC はSK LGI 三星などの韓国連合により Zhambyl Block(KNOC9.45% オペレーター KMG)27% を取得したが 2016 年 8 月に撤退した KNOC はカザフスタンでなお複数の生産中鉱区 (Ada KNOC Caspian Altius) を保有しており 1.57 万 b/d を生産 Dana Petroleum や Harvest Energy Trust 関連資産売却の可能性 2016 年に KNOC が 2009 年から 10 年にかけて取得した Harvest Energy Trust や Dana Petroleum 関連資産の売却を進める可能性があると報じられたが 低油価により M&A 市場が軟化しており売却は進まなかった模様である 2017 年以降も財務改善努力は続いており資産売却の可能性がある 4その他企業の対外投資の動き イラン入札への参加 (KOGAS/Posco-Daewoo: 検討中 ) 2017 年 2 月 KOGAS と Posco-Daewoo は海外資源開発事業と技術分野の相互協力に関する覚書 (MoU) に署名した イランが計画している巨大油ガス田の国際入札に共同で応札する考えがあるものと見られる ii 6

バングラデッシュガス鉱区 (Posco-Daewoo: 契約締結 ) 2016 年 12 月 Posco-Daewoo はバングラデッシュ国営 Petrobangla と深海 DS-12 鉱区の PS 契約を締結した 同社はバングラデッシュの他ミャンマー ベトナム ナイジェリア カザフスタン ペルー陸上で権益を保有している 2. 韓国のエネルギー基礎情報 (1) エネルギー消費韓国のエネルギー消費 (2015 年 ) は石油換算 2.8 億トンで化石燃料が 86%( 石油 41% 石炭 31% 天然ガス 14%) を占める 天然ガス 14% 水力 0% 原子力 13% その他再生可能 1% 石炭 31% 石油 41% 石炭石油天然ガス原子力水力その他再生可能 出所 :BP 統計 (2) 石油消費 輸出入 2016 年の石油消費量は 252 万 b/d で 全量輸入している 原油輸入量は 295 万 b/d である 地域別に見ると中東からの輸入比率が 86% と高く 残りはアジアが 7% 南米が 5% アフリカが 3% である 軽油 ガソリン ジェット燃料などの石油製品の一部は輸出に回っている 2016 年は石油製品の輸出の伸びが 15 年の 6% から 2% に鈍化した 石油製品の輸出から輸入を除いた純輸出量は前年比 10%(4.5 万 b/d) 減の 42 万 b/d であった 中国の石油製品市場の成長鈍化と精製能力の過剰 独立系精製企業 7

( ティーポット ) の輸出拡大などに伴い メインターゲットを中国からベトナムなどその他のアジア諸国に シフトすることを余儀なくされている模様である iii ナイジェリア 0.1% マレーシア 0.1% アンゴラ 0.3% ブルネイ 0.3% インドネシア 0.6% オマーン 1.5% UAE 8.1% その他 25.5% カタール 8.2% イラン 10.4% サウシ アラヒ ア 30.1% クウェイト 14.8% 図 4: 国別原油輸入 (2016 年 ) 出所 :KNOC 3,000 2,500 千 b/d 2,251 2,346 2,518 2,000 1,500 1,000 500 335 465 420 0 2014 2015 2016 石油製品純輸出 石油消費 図 5: 韓国の石油消費と石油製品純輸出 (2014~2016 年 ) 出所 :KNOC (3) 天然ガス消費 輸出入 IEA によると 2015 年の天然ガス消費は 43.5BCM で 国内生産量は 0.2BCM ほぼ全量を LNG の形で 輸入している 天然ガス生産者協会 (GIIGNL) によると同国の 2016 年の LNG 輸入量は 3419 万トンで 8

カタールからの長期契約による輸入がもっとも多く 35% を占め 豪州 インドネシア オマーン マレーシ アと続く 4 年以内の短期 スポット契約は輸入の 14% を占める 55.0 50.0 BCM 45.0 40.0 35.0 30.0 2010 2011 2012 2013 2014 2015 輸入 生産 図 6: 韓国の天然ガス生産 輸入 (2010~2015 年 ) IEA に基づき作成 ブルネイ 4% ロシア 6% ナイジェリア 2% その他 2% マレーシア 11% カタール 35% オマーン 12% インドネシア 13% 豪州 15% 図 7: 韓国の国別 LNG 輸入 (2016 年 ) GIIGNL に基づき作成 i Korea Times 2017/5/16 ii 東西貿易通信社 East & Report 2017/2/23 iii 東西貿易通信社 East & Report 2017/3/30 9