第 4 回日本褥瘡学会実態調査委員会実態調査計画 1. 目的日本褥瘡学会の実態調査委員会では 2006 年 10 月 ~12 月に全国の病院 介護保険施設 在宅 ( 訪問看護ステーション ) を対象に第 1 回の調査を実施し 療養別の褥瘡有病率や有病者の特徴などを明らかにし その内容については日本褥瘡学会誌に報告した 1 ), 2) また第 2 回の調査は 2010 年 5 月に第 3 回は 2013 年 10 月に実施し 褥瘡の実態や経年的な推移について報告した 3-6) なお 第 3 回の医療関連機器圧迫創傷についての調査は学術委員会と合同で実施した 7) 今回は その後の医療関連機器圧迫創傷を含めた褥瘡の実態を明らかにし 医療の質の向上に寄与するための基礎的なデータを得ることを目的とする 2. 方法病院 介護保険施設 訪問看護ステーション ( 在宅 ) において褥瘡保有者の横断調査 (2016 年 10 月中に各施設にて任意に指定した1 日 ) で実施する 調査は原則として 日本褥瘡学会のホームページに掲載された日本褥瘡学会実態調査システムに基づく電子調査を行う なお Web 調査に対応できない施設については印刷した紙を使用する 3. 対象者都道府県で選定した病院 ( 入院のみ ) 介護保険施設 在宅の褥瘡保有者( 医療関連機器圧迫創傷保有者を含む ) ただし 各都道府県における調査施設目標数は予め実態調査委員会にて以下のとおり指定する 1) 標準的な県病院 : 全数調査施設 ( 大学附属病院 分院 国立病院機構 ) 以外に 300 床以上の病院を6 施設 介護保険施設 :100 床以上の施設 12 施設 ( 介護老人福祉施設 6 介護老人保健施設 6) 在宅 :10 施設 ( 訪問看護ステーション 10) 2) 東京都および政令指定都市を含む道府県病院 : 全数調査施設 ( 大学附属病院 分院 国立病院機構 ) 以外に 300 床以上の病院を8 施設 介護保険施設 :100 床以上の 16 施設 ( 介護老人福祉施設 8 介護老人保健施設 8) 在宅 :13 施設 ( 訪問看護ステーション 13) 3) その他 ( 対象施設は下記も含む ) 1 全国の主な小児専門病院 2 国公立の精神病院 4. 調査項目 1) 施設情報 1
病院 : 病院の種類 許可 平均稼働病床数 標榜科目数 平均在院日数 入院患者数 日常生活自立度 B C ランクの入院患者数 皮膚 排泄ケア認定看護師 ET 数 特定行為のできる看護師数 褥瘡関連の加算に関する施設基準の届出状況 褥瘡患者数 医療関連機器圧迫創傷患者数介護保険施設 : 施設の種類 入所定員数 平均入所日数 入所者数 日常生活自立度 B C ランクの入所者数 入所者の各要介護度該当者数 皮膚 排泄ケア認定看護師 ET 数 特定行為のできる看護師数 褥瘡患者数 医療関連機器圧迫創傷患者数訪問看護ステーション : 訪問看護登録者数 訪問看護実登録者数 日常生活自立度 B C ランクの実登録者数 実登録者の各要介護度該当者数 皮膚 排泄ケア認定看護師 ET 数 特定行為のできる看護師数 褥瘡患者数 医療関連機器圧迫創傷患者数 2) 患者情報疾患名 年齢 性別 健康障害のレベル 日常生活自立度 要介護度 褥瘡部位 褥瘡が発生した場所 褥瘡の病変 使用している体圧分散寝具 体位変換時間 栄養状態 局所治療計画 褥瘡対策危険因子 褥瘡ハイリスクのカテゴリー 発生要因 5. 分析方法記述統計を行う 6. 倫理的配慮文部科学省 厚生労働省による 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 ( 平成 26 年 12 月 22 日実施 ) の定めるところに準拠する 1) 施設に対する説明と同意取得 1 病院長 施設長 訪問看護ステーション代表者に文章にて研究の目的 内容に関しての説明を行い 書面で承諾を得る 2 調査参加は任意であり 調査実施に同意しない場合であっても調査施設が今後の日本褥瘡学会における活動において不利益をこうむることはない 3データ送付前であれば 調査施設は随時同意した研究参加を撤回できる 2) 患者に対する研究の同意 1 本調査は下記の理由から 研究対象である褥瘡有病者から必ずしもインフォームド コンセントを受けない 2 褥瘡の実態を既存の資料から調査する観察研究である 3 個表作成による実態調査を実施しなければ 褥瘡有病者特性と要因の特定が不可能であり 今後の褥瘡対策の課題が見出せない 3) 安全性の保障 1 既存資料 ( 診療計画書 看護記録等 ) から情報を収集するため 直接患者に対し危険を加えない 4) プライバシーの保護 1データの匿名化については 調査者がデータを送付する際には 調査施設名及び患者個人名を記載しない 2
2 収集したデータは統計的に処理し 発表に際しては個人 施設が特定される表記は一切行わない 3 集約した情報の管理者は紺家千津子とし USB に保存して金沢医科大学看護学部の紺家研究室の鍵付の書庫で厳重に管理する 解析後にはデータを USB に保存して日本褥瘡学会事務局の鍵付の書庫で厳重に保管する 5) 調査に必要な経費 1 日本褥瘡学会の実態調査委員会の委員会活動費より支出される 6) 当該臨床研究終了後の対応 1 情報は研究以外の目的では使用しないことを保障する 2 調査結果は 日本褥瘡学会の学術集会において発表するとともに 日本褥瘡学会誌に 実態調査委員会報告 として公表する 利益相反なし 文献 1) 平成 18 年度日本褥瘡学会実態調査委員会報告 1: 療養場所別褥瘡占有率, 褥瘡の部位, 重症度 ( 深さ ), 日本褥瘡学会誌,10(2):153-161,2008 2) 平成 18 年度日本褥瘡学会実態調査委員会報告 2: 療養場所別褥瘡有病者の特徴およびケアと局所管理, 日本褥瘡学会誌,10(4):573-585,2008 3) 平成 21 年度日本褥瘡学会実態調査委員会報告 1: 療養場所別褥瘡占有率, 褥瘡の部位, 重症度 ( 深さ ), 日本褥瘡学会誌,13 (4):625-632,2011 4) 平成 21 年度日本褥瘡学会実態調査委員会報告 2: 療養場所別褥瘡有病者の特徴およびケアと局所管理, 日本褥瘡学会誌,13(4):633-645,2011 5) 平成 24 年度日本褥瘡学会実態調査委員会報告 1: 療養場所別褥瘡占有率, 褥瘡の部位, 重症度 ( 深さ ), 日本褥瘡学会誌,17 (1):58-68,2015 6) 平成 24 年度日本褥瘡学会実態調査委員会報告 2: 療養場所別褥瘡有病者の特徴およびケアと局所管理, 日本褥瘡学会誌,17 (2):127-140,2015 7) 平成 24 年度日本褥瘡学会実態調査報告 : 療養場所別医療関連機器圧迫創傷の有病率, 部位, 重症度 ( 深さ ), 有病者の特徴, 発生関連機器, 日本褥瘡学会誌,17 (2):141-158,2015 連絡先 一般社団法人日本褥瘡学会事務局 169-0072 東京都新宿区大久保 2-4-12 新宿ラムダックスビル 春恒社内 E-mail:jokusou@shunkosha.com TEL:03-5291-2170 FAX:03-5272-1631 3
調査を始める前に必ずお読みください 医療関連機器圧迫創傷 とは 医療関連機器による圧迫で生じる皮膚ないし下床の組織損傷であり 厳密には従来の褥瘡すなわち自重関連褥瘡 (self load related pressure ulcer) と区別されるが 共に圧迫創傷であり広い意味では褥瘡の範疇に属する なお 尿道 消化管 気道等の粘膜に発生する創傷は含めない 医療機器は医薬品医療機器等法で 人もしくは動物の疾病の診断 治療もしくは予防に使用されること または人もしくは動物の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具などにあって 法令で定めるものをいう と定義されている したがって たとえば手作りの抑制帯などによって生じたものも含まれるよう医療関連機器とした 医療関連機器圧迫創傷の重症度 経過評価は DESIGN-R を用いてもよい 表 1 医療関連機器の例深部静脈血栓症予防用弾性ストッキング非侵襲的陽圧換気療法マスクギプス シーネ ( 点滴固定用含む ) 経鼻経管法用チューブ ( 経鼻胃チューブ等 ) 経ろう管法用チューブ ( 胃ろう等 ) 間歇的空気圧迫法用ポンプ手術用体位固定用具 ( 手台 支持板 等 ) 血管留置用カテーテル ( 動脈ライン 末梢静脈ライン ) 尿道留置用カテーテル経皮的動脈血酸素飽和度モニタ (SpO 2 モニタ ) 抑制帯車椅子のアームレスト フットレスト酸素マスク経鼻酸素カニューレ気管切開カニューレ気管内チューブ ( 経鼻または経口気管挿管専用チューブ バイトブロック ) 酸素マスク 気管切開チューブの固定用ひも気管切開カニューレ固定具上肢装具 ( 指装具 把持装具 肩装具 等 ) 下肢装具 ( 整形靴 短下肢装具 長下肢装具 等 ) 体幹装具 ( 胸腰仙椎装具 頸椎装具 等 ) 介達牽引ベッド柵 4
医療関連機器圧迫創傷の発生要因 日本褥瘡学会学術委員会と用語検討委員会の協働で 医療関連機器圧迫創傷の発生要因に関する文献 エキスパートオピニオン コンセンサスシンポジウム (2014) を経て 医療関連機器圧迫創傷の発生概念を作成した 発生要因を機器要因 個体要因 ケア要因の 3 つに分類した ( 図 1) リスク保有者の同定は 下記の 15 の危険因子に あり なし で判断すると良い その項目の定義を下記に示す 図 1 医療関連機器圧迫創傷発生概念図 機器要因 サイズ 形状の不一致年齢または身体に適合したサイズ 形状の機器が使用されなかったこと あるいは 存在しないことをいう 情報提供不足医療関連機器圧迫創傷を予防するために必要な使用禁忌 機器選択 装着方法 管理方法などの情報が 取扱い説明書または添付文書等で適切に提示されていないことをいう 個体要因 皮膚の菲薄化さまざまな原因により医療関連機器装着部の皮膚が薄くなり 軽微な外力で表皮または真皮が損傷を受け易い状態をいう 循環不全心臓または血管の障害や血液凝固能などの異常により 心臓から各臓器への十分な血流が供給されない状態 または 各臓器から心臓へ還流されない状態をいう 浮腫皮膚 粘膜 皮下組織 内臓などの間質に組織間液が過剰に貯留した状態をいう 皮膚では圧迫す 5
ると指圧痕が残る 炎症 低蛋白血症により血漿が血管外へ移行して組織間液が増加することや リンパ管の閉塞や心不全などによる循環不全などにより組織間液の還流が抑制されて生じる 機器装着部の湿潤機器を装着した部位および近傍皮膚の体温上昇に伴う発汗増や呼気中の水分滞留により 局所の水分が増えることをいう 機器装着部の軟骨 骨 関節等の突出医療関連機器の装着部に局所圧をもたらす要因となる軟骨 骨 関節等の出っぱりをいう 低栄養栄養素の摂取が生体の必要量より少ない時に起こる体の状態である 中でも たんぱく質とエネルギーが十分に摂れていない状態をいう 感覚 知覚 認知の低下医療関連機器を装着した部位および近傍皮膚の痛覚 触覚 温冷覚などの能力が低下 または 感じても訴えることができない状態をいう ケア要因 外力低減ケア医療関連機器装着により皮膚および下床の組織に加わる外力を低減する目的で行われるケアをいう スキンケア皮膚の生理機能を良好に維持する あるいは向上させるために行うケアの総称である 具体的には 皮膚から刺激物 異物 感染源などを取り除く洗浄 皮膚と刺激物 異物 感染源などを遮断したり 皮膚への光熱刺激や物理的刺激を小さくしたりする被覆 角質層の水分を保持する保湿 皮膚の浸軟を防ぐ水分の除去などをいう 自重が負荷される部位や医療関連機器装着部においては 異常の早期発見 または皮膚の形態 機能を維持する目的で行われる 栄養補給低栄養状態を改善もしくは回避し 身体機能を維持 向上するために栄養を適切に摂取させることをいう 外力による組織耐久性を維持 向上するために必要である 患者教育医療関連機器圧迫創傷の予防 悪化防止に向けて患者または家族の協力が必要な内容を機器装着前 中に医療者によって教育することを言う 特に機器装着中の痛みの表出を奨励すること 機器& ケア要因 フィッティング褥瘡予防用の減圧用具や医療関連機器などが良好に効果を発揮し かつこれらの装着や使用による圧迫創傷の発生を予防することを目的に 最適なサイズ 形状 材質のものを選択し 適切に装着もしくは使用することをいう 機器& 個体要因 中止困難たとえば皮膚が菲薄した患者で機器のサイズ 形状も合ってないことが分かっていても やむを得ず治療を優先して使用せざるを得ない状況をさす 6