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本文/02 渡辺        001‐008

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づけられますが 最大の特徴は 緒言の中の 基本姿勢 でも述べられていますように 欧米のガイドラインを踏襲したものでなく 日本の臨床現場に則して 活用しやすい実際的な勧告が行われていることにあります 特に予防抗菌薬の投与期間に関しては 細かい術式に分類し さらに宿主側の感染リスクも考慮した上で きめ細

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学術委員会学術第 7 小委員会報告 Hazardous Drugs( 危険薬 ) 安全取り扱いガイドライン作成委員会 ( 仮称 ) について ~Handling of Hazardous Drugs の観点から ~ 委員長 兵庫県立尼崎病院薬剤部櫻井美由紀 Miyuki SAKURAI 委員 同志社女子大学薬学部阿南節子 Setsuko ANAMI 市立堺病院薬剤部藤井千賀 Chika FUJII 特別委員 大阪府立公衆衛生研究所研究員吉田仁 Jin YOSHIDA 国立病院機構大阪南医療センター薬剤部森本茂文 Shigefumi MORIMOTO 岩見沢市立総合病院看護師照井健太郎 Kentaro TERUI はじめに海外では 1970 年頃から抗がん薬を取扱う医療従事者への薬剤の曝露 ( 尿中からの変異原性物質の検出など ) が報告されており 米国では抗がん薬の取扱いに関して American Society of Health-System Pharmacists ( 以下 ASHP) Occupational Safety & Health Administration ( 以下 OSHA ) Oncology Nursing Society ( 以下 ONS ) The National Institute for Occupational Safety and Health ( 以下 NIOSH) などの機関でガイドラインが作成され 医療現場で運用されている わが国においては 日本病院薬剤師会学術委員会学術第 3 小委員会が 医療従事者への抗がん薬曝露状況を調査 研究し 抗がん薬の無菌調製に関するガイドラインを策定することにより さまざまな対策が講じられるようになった しかし わが国では患者投与における管理場面での曝露状況についての研究は少なく 調製後の抗がん薬の搬送 患者への投与ルートからのスピル 抗がん薬投与時の環境整備 PPE の適切な使用 残液や廃棄物の処理 投与患者の排泄物の処理 患者家族へのケア等 抗がん薬投与における全過程を記述したガイドラインは未だ整備されていない 学術第 7 小委員会 ( 以下 本委員会 ) 特別委員吉田仁氏の調査では 抗がん薬を取り扱う施設の様々な場所で 抗がん薬が検出された また 本委員会特別委員照井健太郎氏のシミュレーション実験により 看護師がおこなう抗がん薬投与では 投与によっては抗がん薬が漏出していることが明らかにされた われわれは チーム医療において 薬剤師は患者および医療従事者全体を Hazardous Drugs( 危険薬 ) の曝露から守る責務があると考え 本委員会の活動を開始した 本委員会では Hazardous Drugs の患者投与における管理場面での安全な取り扱いに関する研究をおこない 抗がん薬を取り扱う医療従事者 治療を受ける患者及びその家族も含めた安全性の担保のための対策を検討する 1 情報収集 Handling of Hazardous Drugs の観点から 医療環境における抗がん薬の取り扱いに関する情報を USP797 ASHP NIOSH OSHA 等から収集し 海外でどのように対策がおこなわれ 30

ているかをまとめる 2 医療環境の曝露調査 ( 抗がん薬の廃棄と排泄物について ) 特に外来化学療法が多く実施されている施設における 外来化学療法室近傍のトイレの汚染状況の調査と評価 外来化学療法室における抗がん薬廃棄状況の調査をおこなう 3 Safe Handling の研究プライミング時 ボトル交換時 輸液終了後のライン抜去 廃棄時 患者ケア時などの曝露を最少にするための対策を検討する 本委員会においては ガイドライン等調査班 医療環境の曝露調査班 Safe Handling 研究班の 3チームを作り活動を開始した ガイドライン等調査班では USP797 ASHP NIOSH OSHA 等における Handling of Hazardous Drugs に関する情報の日本語訳を開始した 医療環境の曝露調査班では トイレの汚染状況の調査を開始し Safe Handling 研究班では 主に看護師が実施するプライミング時 ボトル交換時 輸液終了後のライン抜去 廃棄時 患者ケア時の曝露状況の調査をおこなっている 1) ガイドライン等調査班海外のガイドライン等を参考に 日本においてすぐに実行可能な曝露防止対策を調査し 本委員会の提案をまとめる 2) 医療環境の曝露調査班予備調査の結果から 調査研究のプロトコールを作成して調査を継続する 今後は 廃棄物などによる汚染状況についても調査を拡大する予定である 3)Safe Handling 研究班抗がん薬を安全に取り扱うため 抗がん薬の投与 PPE の使用基準など具体的なについて検討する 31

平成 22 年度学術委員会学術第 7 小委員会中間報告 Hazardous Drugs( 危険薬 ) 安全取り扱いガイドライン作成委員会 ( 仮称 ) について ~Handling of Hazardous Drugs の観点から ~ 兵庫県立尼崎病院薬剤部櫻井美由紀 委員会構成 委員長 兵庫県立尼崎病院薬剤部櫻井美由紀 委員同志社女子大学薬学部阿南節子 市立堺病院薬剤部藤井千賀 特別委員 大阪府立公衆衛生研究所研究員吉田仁 国立病院機構大阪南医療センター薬剤部森本茂文 岩見沢市立総合病院看護師照井健太郎 はじめに 海外では 1970 年頃から抗がん薬を取扱う医療従事者への薬剤の曝露 ( 尿中からの変異原性物質の検出など ) が報告されている 米国では抗がん薬の取扱いに関して以下の各機関でガイドラインが作成され 医療現場で運用されている ASHP (American Society of Health System Pharmacists) OSHA (Occupational Safety & Health Administration) NIOSH (The National Institute for Occupational Safety and Health) ONS (Oncology Nursing Society) わが国においては 日本病院薬剤師会学術委員会学術第 3 小委員会が 医療従事者への抗がん薬曝露状況を調査 研究し 抗がん薬の無菌調製に関するガイドラインを策定することにより さまざまな対策が講じられるようになった 日本における問題点 1 患者投与における管理場面での曝露状況についての研究が少ない 2 抗がん薬投与における全過程を記述したガイドラインが整備されていない 調製後の抗がん薬の搬送 患者への投与ルートからのスピル 抗がん薬投与時の環境整備 PPE の適切な使用 残液や廃棄物の処理 投与患者の排泄物の処理 患者家族へのケア等 医療環境における曝露調査 JNIOSH の調査では 抗がん薬を取り扱う施設の様々な場所で 抗がん薬が検出された このことから すべての医療従事者が曝露リスクがあることが明らかとなった 学術第 7 小委員会特別委員吉田仁氏 32

看護師における曝露リスク 看護師が行う抗がん薬投与におけるシミュレーション研究では 投与によっては抗がん薬が漏出していることが明らかとなった ミキシングに使用した注射針 廃棄ボックス 学術第 7 委員会特別委員がん化学療法看護認定看護師照井健太郎氏のシミュレーション実験より ライン末端部及び水滴が落ちた部位投与後 ラインのボトル接続部 抗がん薬 A ボトルゴム栓部 生食洗浄せずにラインの接続を外した場合 日本の現状 1. 抗がん薬を取り扱う施設のさまざまな場所で 抗がん薬が検出される 2. PPE( 個人防護具 ) の使用など健康を守るに個人差がある 3. 医療従事者により 抗がん薬の影響 曝露の機会 曝露しないための具対策などについて知識の差がある 4. 様々な職種のうち 特に看護師は抗がん薬に曝露される機会が多い職種である 活動の目的 Hazardous Drugs( 危険薬 ) の患者投与における管理場面での安全な取り扱いに関する研究をおこない 抗がん薬を取り扱う医療従事者 治療を受ける患者及びその家族も含めた安全性の担保のための対策を検討する チーム医療において 薬剤師は患者および医療従事者全体を Hazardous Drugs の曝露から守る責務がある 1 情報収集 Handling of Hazardous Drugs の観点から 医療環境における抗がん薬の取り扱いに関する情報を USP797, ASHP, NIOSH, OSHA 等から収集しまとめる 33

2 医療環境の曝露調査 ( 抗がん薬の廃棄と排泄物について ) 患者への曝露の可能性を明らかにするため 特に外来化学療法が多く実施されている施設における外来化学療法室近傍のトイレの汚染状況の調査と評価 外来化学療法室における抗がん薬廃棄状況の調査をおこなう 3 Safe Handlingの研究主に看護師が実施するプライミング時 ボトル交換時 輸液終了後のライン抜去 廃棄時 患者ケア時などの曝露を最少にするための対策を検討する 3 つのチームで活動を開始 ガイドライン等調査班医療環境の曝露調査班 Safe Handling 研究班 ガイドライン等調査班 USP797, ASHP, NIOSH, OSHA 等におけるHandling of Hazardous Drugsに関する情報の日本語訳を開始 医療環境の曝露調査班外来化学療法患者が使用するトイレの汚染状況調査を開始 予備調査として トイレの拭き取り調査をおこなった 医療環境の曝露調査 拭き取り箇所男性用小便器 洋式便器等の内側および外側すべての拭き取り箇所から 高濃度の Pt が検出された 患者の尿から排泄された抗がん薬はトイレに残留する可能性があることが示唆された 34

Safe Handling 研究班主に看護師がおこなうプライミング時 ボトル交換時 輸液終了後のライン抜去 廃棄時 患者ケア時の曝露状況の調査を実施 ガイドライン等調査班海外のガイドライン等を参考に 日本においてすぐに実行可能な曝露防止対策を調査し 本委員会の提案をまとめる 医療環境の曝露調査班予備調査の結果から 調査研究のプロトコールを作成して 調査を継続する 今後は 廃棄物などによる汚染状況についても調査を拡大する予定である Safe Handling 研究班抗がん薬を安全に取り扱うため 抗がん薬の投与 PPEの使用基準など具体的なについて検討する 35