今後検討すべき課題について 日本経済団体連合会社会保障委員会年金改革部会長代理小林由紀子 2019 年 3 月 19 日 1

Similar documents
PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

1. 指定運用方法の規定整備 今般の改正により 商品選択の失念等により運用商品を選択しない者への対応として あらかじめ定められた指定運用方法 に係る規定が整備されます 指定運用方法とは 施行日(2018 年 5 月 1 日 ) 以降 新たに確定拠出年金制度に加入された方が 最初の掛金納付日から確定拠

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

確定拠出年金制度に関する改善要望について

確定拠出年金制度に関する改善要望について

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

確定拠出年金制度に関する改善要望について

<303682BB82CC91BC964089FC90B EA94CA8BA492CA E786C73>

年金制度の体系 現状 ( 平成 26 年 3 月末現在 ) 加入員数 48 万人 加入者数 18 万人 加入者数 464 万人 加入者数 788 万人 加入員数 408 万人 国民年金基金 確定拠出年金 ( 個人型 D C ) 確定拠出年金 ( 企業型 DC) 厚生年金保険 被保険者数 3,527

将来返上認可 過去返上認可 6 基金 解散認可 1 基金 一括納付による解散である 3 指定基金制度ア概要年金給付等に要する積立金の積立水準が著しく低い基金を 厚生労働大臣が指定します この指定された基金に対して 5 年間の財政健全化計画を作成させ これに基づき事業運営を行うよう重点的に指導すること

平成29年度企業年金税制改正に関する要望.pdf

平成30年度企業年金税制改正に関する要望.pdf

年金制度のポイント

平成 31 年 3 月 19 日 公益社団法人日本年金数理人会 企業年金制度の普及および改善に関する提言 1. はじめに 我が国では 平均寿命 健康寿命が延伸を続け高齢期の長期化が見込まれており 定年延長や雇用延長による高齢者の就労が進みつつあるが 少子高齢化による労働人口の減少に伴い高齢者の就労は

確定拠出年金制度に関する改善要望について

2013(平成25年度) 確定拠出年金実態調査 調査結果について.PDF

柔軟で弾力的な給付設計について

平成31年度企業年金税制改正に関する要望.pdf

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

企業年金のポータビリティ制度 ホ ータヒ リティ制度を活用しない場合 定年後 : 企業年金なし A 社 :9 年 B 社 :9 年 C 社 :9 年 定年 ホ ータヒ リティ制度を活用する場合 ホ ータヒ リティ制度活用 ホ ータヒ リティ制度活用 定年後 :27 年分を通算した企業年金を受給 A

中小企業の退職金制度への ご提案について

中小企業退職金共済制度加入企業の実態に関する調査結果の概要

確定拠出年金小委員会とりまとめについて.PDF

みずほインサイト 政策 2018 年 10 月 18 日 ideco 加入者数が 100 万人超え加入率引き上げへさらなる制度見直しを 政策調査部上席主任研究員堀江奈保子 naoko. ideco( 個人型確定拠出年金 ) の加入

<4D F736F F D208AE98BC6944E8BE090A FC90B382C98AD682B782E D8E968D802E646F63>

今後の企業年金制度のあり方

厚生年金基金に関する要望.PDF

スライド 1

確定給付企業年金 DBパッケージプランのご提案

確定拠出年金法の改正内容と意義 年金確保支援法の概要 国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律案 1 国民年金法の一部改正 1 保険料の納付可能期間の延長 (2 年 10 年 ) し 本人の希望により保険料を納付し年金受給につなげる 2 第

企業年金制度を考える視点 公的年金制度 加入者 受給者 企業会計制度 金融制度 金融市場 企業年金 母体企業 税 制 -1- 出典 : 厚生労働省資料

確定給付企業年金 DBパッケージプランのご提案

個人型確定拠出年金の加入対象者の拡大

iDeCoの加入者数、対象者拡大前の3倍に

日本再興戦略 改訂 2015 平成 27 年 6 月 30 日に閣議決定された 日本再興戦略 改訂 2015 においては 企業が確定給付企業年金を実施しやすい環境を整備するため 確定給付企業年金の制度改善について検討することとされている - 日本再興戦略 改訂 2015( 平成 27 年 6 月 3

PowerPoint プレゼンテーション

Ⅰ. 厚生年金基金の取扱について 1. 残余財産の分配について (1) 分配の有無 Q1: 代行部分返納後に残余財産があれば 基金の上乗せ部分に係る 分配金 として 加入者 受給待期者 受給者に分配することになりますが 現時点および最終時点で残余財産はいくらになりますか? A1: 仮に平成 27 年

<4D F736F F D20819C906C8E96984A96B1835A837E B C8E3693FA816A8E518D6C8E9197BF E646F63>

スライド 1

Slide 1

5. 退職一時金に係る就業規則のとりまとめ 退職一時金に係る就業規則の提供があった企業について 退職一時金制度の状況をとりまとめた なお 提供された就業規則を分析し 単純に集計したものであり 母集団に復元するなどの統計的な処理は行っていない 退職一時金の支給要件における勤続年数 退職一時金を支給する

iDeco-配置.indd

女性が働きやすい制度等への見直しについて

はじめに (1) 確定拠出年金は その制度にラインナップされたいくつかの運用商品のなかから 加入者が自分で運用商品を選んで運用し 老後に一時金や年金でその資産を受け取る制度です ここでは確定拠出年金制度のことをDC 制度 (Defined Contribution) 確定拠出年金法のことをDC 法と

b. 通算加入者等期間に算入する期間及び移換申出の手続きア. 移換元制度の算定基礎期間を ( 重複しない範囲で ) 全部合算することイ. 移換申出の手続きは 本人が移換元事業主に対して行うこと c. 手数料移換に関する手数料はかからないこと d. 課税関係確定給付企業年金の本人拠出相当額は拠出時にも

2014(平成26)年度決算 確定拠出年金実態調査 調査結果について.PDF

PowerPoint プレゼンテーション

労働市場の流動化を促すために退職給付制度の見直しを

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

問題 2A 1 一〇五 % 2 いずれにも該当しない 3 〇 九 4 一五〇 % 5 一〇五 % 6 解散計画等 以下の同意が必要である 交付の申出に係る残余財産を分配すべき解散基金加入員等が使用される設立事業所の 事業主の全部 当該設立事業所に使用される厚生年金基金の加入員の二分の一以上の者 (

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

金普及 推進協議会によって ideco( イデコ ) という愛称がつけられ 各種メディアで取り上げられる機会も大きく増えました 新たに個人型 DC の取扱いを開始する金融機関がいくつも現れるなど 金融機関側の取組姿勢も様変わりしています その結果 2017 年 1 月以降 個人型 DC の加入者は急

Microsoft PowerPoint - 【資料6】生命保険協会提出資料

社会人として生活していくうえで必要な知識には様々なものがありますが 年金 健康保険 税金に関する知識や その支払いなどの金融に関する知識はその一つといえます また 充実した人生を送るためには ライフプラン マネープランについて学ぶことが重要であり セカンドライフに向けては 国民年金 厚生年金といった

確定拠出年金とは 確定拠出年金は 公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金のひとつです 基礎年金 厚生年金保険と組み合わせることで より豊かな老後生活を実現することが可能となります 確定拠出年金には 個人型 と 企業型 のつのタイプがあります 個人型確定拠出年金の加入者は これまで企業年金のない企業

年金・社会保険セミナー

移換手続きの手引き (60 歳前に企業型 DC のある企業をご退職されたお客さまへ ) この資料では 確定拠出年金を DC (Defined Contribution) と記載しています 北陸銀行 平成 30 年 4 月現在

Microsoft Word - "ç´ıå¿œçfl¨ docx

PowerPoint プレゼンテーション

確定給付企業年金制度のご案内 ━ 大阪府電設工業企業年金基金のご案内 ━

年の家族 2-1 世帯モデル設定本章では 3 つの社会変化をもとに世帯モデルを以下のように設定する 1 専業主婦世帯 ( 標準モデル世帯 ) 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加入した夫と 45 年間専業主婦の夫婦 2 生涯単身男性世帯 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加

ることにより 例えば 掛金の年払いや半年払いが可能になるほか 賞与の支給月に通常月より多く拠出することも可能になる (2) ライフコースの多様化への対応働き方の多様化が進むなか 生涯にわたり継続的に老後に向けた自助努力を行う環境を整備するため 以下の改正が行われる a. 個人型 DCの加入対象者の拡

国民年金法関連 国民年金保険料の追納 ( 改正法附則第 2 条 ) 施行日から 3 年以内の間 国民年金保険料の納付可能期間を延長 (2 年 10 年 ) し 本人の希望により保険料を納付することで その後の年金受給につなげることができるようにする ただし 2 年経過後の保険料は国債利率を基礎として

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

リスク分担型企業年金の導入事例

PowerPoint プレゼンテーション

今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

スライド 1

自動的に反映させないのは133 社 ( 支払原資を社内で準備している189 社の70.4%) で そのうち算定基礎は賃金改定とは連動しないのが123 社 (133 社の92.5%) となっている 製造業では 改定結果を算定基礎に自動的に反映させるのは26 社 ( 支払原資を社内で準備している103

スライド 0

SBI証券、個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)についての個人投資家向けアンケート調査

住友信託銀行

<4D F736F F D208A6D92E88B928F6F944E8BE E682AD82A082E982B28EBF96E2816A E646F6378>

ideco 2 ideco , % 0 0 ideco SMAR T FOLIO DC

PowerPoint プレゼンテーション

ご自身の加入限度額は? 加入条件 お さまの 性 自 者 年金 者種 1 者 に確定 年金や 確定拠出年金 ( 型 ) がない 確定拠出年金 ( 型 ) に加入している 2 者 加入できる 確定 年金がある 者 基本的には 60 歳未満のすべての方 にご加入いただけます 国民年金を免除されている方等

【資料6】生保協会資料からの提言

2006年度日本経団連規制改革要望

報酬改定(処遇改善加算・処遇改善特別加算)

野村資本市場研究所|確定拠出年金の拠出限度額引き上げは十分か (PDF)

財政再計算に向けて.indd

PowerPoint プレゼンテーション

被用者年金一元化パンフ.indd

社会人として生活していくうえで必要な知識には様々なものがありますが 年金 健康保険 税金に関する知識や その支払いなどの金融に関する知識はその一つといえます また 充実した人生を送るためには ライフプラン マネープランについて学ぶことが重要であり セカンドライフに向けては 国民年金 厚生年金といった

税調第19回総会 資料3-1

Microsoft PowerPoint - 020_改正高齢法リーフレット<240914_雇用指導・

なるほどNISA 第9回 財形貯蓄・確定拠出年金などとの違い

企業年金体系の変貌と法制上の課題

PowerPoint プレゼンテーション

( 参考 ) 平成 29 年度予算編成にあたっての財務大臣 厚生労働大臣の合意事項 ( 平成 29 年 12 月 19 日大臣折衝事項の別紙 ) < 医療制度改革 > 別紙 (1) 高額療養費制度の見直し 1 現役並み所得者 - 外来上限特例の上限額を 44,400 円から 57,600 円に引き上

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

税金読本(11-1)年金と税金

2006年度日本経団連規制改革要望

Microsoft PowerPoint - 加入員向けDVD0124+(経緯追加).pptx

1

GSS1705_P indd

Transcription:

今後検討すべき課題について 日本経済団体連合会社会保障委員会年金改革部会長代理小林由紀子 2019 年 3 月 19 日 1

1. 企業年金を取り巻く環境変化 ~ 雇用の変容 ~ 日本の労働市場においては 近年 女性 高齢者 外国人など人材の多様化が進むとともに 労働移動が活発化している 特に高齢者については 雇用安定法改正や人手不足感の高まりなどを背景として就業率が大幅に伸長し 継続雇用制度 ( 経団連調査では 79.3% の企業が導入 ) を中心に65 歳までの雇用確保が図られている 企業においては 多様な人材が 多様な働き方をする ことを前提とした対応が必要不可欠であり 所謂 メンバーシップ型 の雇用枠組み ( ) については 今後さらに見直しが進むものと推測される 主として 日本人男性正社員 を前提とした 新卒一括採用 定年制 長期勤続 ( 年功的賃金 ) による人材マネジメント 年代別就業率の推移 外国人労働者数の推移 転職率の推移 (%) ( 万人 ) (%) 25~44 歳 45~54 歳 55~59 歳 60~64 歳 65~69 歳 70~74 歳 ( 年 ) ( 年 ) ( 年 ) ( 出所 ) 総務省 労働力調査 ( 出所 ) 厚生労働省 外国人雇用状況の届出状況まとめ ( 出所 ) 総務省 労働力調査 2

2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 8 2 0 0 9 2 0 1 0 2 0 1 1 2 0 1 2 2 0 1 3 2 0 1 4 2 0 1 5 2. 企業年金を取り巻く環境変化 ~ 企業活動の潮流 ~ グローバルベースで競争が激化する中 企業の枠組み自体が変化する機会も増大している 国内企業が 持続的成長や中長期的付加価値向上をめざす上で 機動的に事業形態を見直し 経営資源の効率的活用を図ることは極めて重要であり 企業規模の大小を問わず M&A 等による事業再編が活発化している 1985 年以降の M&A 件数の推移買収主体の企業規模別に見た関連会社数の推移 ( 件 ) 中小企業に買収された子会社 関連会社数大企業に買収された子会社 関連会社数 2006 年を100とした場合 180 168.5 160 140 120 100 116.6 100 107.2 100.6 97.8 118.2 115.5 122.7 132 80 60 100 96.2 81.1 94 70.9 66.2 91.4 82.7 69.2 86.1 40 20 ( 年 ) 0 ( 年度 ) ( 出所 )( 株 ) レコフデータ調べ ( 出所 ) 中小企業白書 3

3. 企業年金制度運営の基本的なスタンス 企業における年金制度の位置づけと基本的考え方 自社の従業員福祉の向上のために実施する 報酬 / 福利厚生制度の一部 従業員の退職後生活支援を目的とした退職給付制度において 退職一時金とともに基幹的な役割機能を果たしており 従業員個人にとっては 公的年金に上乗せして支給される給付として 老後生活を支える柱の一つとなるもの どのような給付形態 水準であるべきなのかは 各社の従業員特性や報酬ポリシーといった人事戦略上の観点を踏まえ 労使合意に基づいて決定 運営されるべき 一方で 2000 年の退職給付会計導入以降は 財務戦略上の観点も併せて考慮することが必要不可欠となっており 特に確定給付型制度の実施 継続に伴う企業経営上の負担感は増している 今後の見直しの方向性 取り巻く環境変化を踏まえ 以下の 3 点から制度の見直しを検討すべき 1 人材の多様性や働き方 キャリアパスの多様化への対応 2 グローバルな競争環境を踏まえた制度の持続可能性向上 3 個人の自助努力支援を強化する観点での シンプルで利便性が高い確定拠出型年金制度の実現 4

4. 第 1 回部会で提示された検討課題に対する経団連のスタンス 第 1 回企業年金 個人年金部会で提示された検討課題に対する基本的なスタンスは 以下のとおり 検討課題 就労期間の延伸を制度に反映し長期化する高齢期の経済基盤を充実するとともに 高齢期における多様な就労と私的年金 公的年金の組合せを可能とする環境の整備など 従業員の老後資産の形成に向けた事業主の取組みを支援する環境の整備など 働き方や勤務先に左右されない自助努力を支援する環境の整備など 老後資産の形成 取り崩しに関する選択を支える環境の整備など 企業年金 個人年金制度を安定的に運営するための体制の整備など 経団連の基本的なスタンス 高齢期における就労期間の延伸だけでなく 個々人の働き方の多様化に対応できるような制度設計が必要 他方で 多様な働き方への希望 意欲 健康状況等については個人差があることから 年齢によらず 退職時からの受給を可能とする制度の柔軟性も必要 中小事業主掛金納付金制度 (ideco プラス ) の対象拡大や DC の拠出限度額引上げ 年金支給債務の社外移転 ( バイアウト ) など 企業による柔軟な制度設計 運営が可能となるよう見直すとともに 各種事務負担の軽減を図るなど 企業にとって持続可能な制度が実現できるよう検討すべき 個人の自助努力をより一層支援する観点から シンプルで利便性の高い DC 制度への見直しが必要 併せて 近年 増加し続けている外国籍人材に対し 退社 帰国時など 一定の課税等を条件として DC において脱退一時金を支給する仕組みも検討すべき -- 安定的な制度運営に向けた対応は必要であるが 制度の複雑化や事務の煩雑化につながらないよう十分配慮すべき 5

5. 確定給付企業年金 確定給付企業年金については 人材の多様性や働き方 キャリアパスの多様化を踏まえて制度の柔軟性を確保するとともに 企業にとって持続可能な企業年金制度とする観点から 選択肢の多様化を検討する必要がある 支給開始可能年齢の見直しへの対応 高齢期の就労期間延伸に伴い 65 歳を超えて勤務を継続する従業員は今後増加すると考えられる ただし 多様な働き方への希望 意欲 健康状況等については個人差が大きいことから 年齢によらず 退職時からの受給を可能とする制度の柔軟性が必要である 併せて 各社の労使合意に基づく柔軟な制度設計への対応が必要である 公的年金の検討とあわせ 企業年金における支給開始年齢についても見直し ( 引上げ ) が必要 但し 各企業における柔軟な制度設計を可能とし 一律引上げ等の規制強化とならないよう 配慮いただきたい また 支給開始年齢引き上げに伴う給付減額判定基準についても 併せて見直しが必要である リスク分担型企業年金の改善 リスク分担型企業年金の給付減額判定基準には 確定給付企業年金とは異なる基準が設けられている 例えば 制度を実施する事業所が追加される場合に 通常の確定給付企業年金では給付減額とならないケースでも給付減額に該当してしまうケースがあり 制度普及の阻害要因となりかねない リスク分担型企業年金の給付減額判定基準の見直しを検討いただきたい 持続可能な年金制度運営に向けた対応 M&A 等の事業再編において 移行後の企業規模が小さく DB 年金の承継が困難なケースや DC 移行等に伴い DB 年金を閉鎖するケース等に対応する給付の選択肢拡大が必要 英国における閉鎖型 DB のバイアウトなどのように 年金支給義務を社外に移転させる仕組みなど 企業としての制度設計の柔軟性を高めるポータビリティ拡充の方策を検討いただきたい 6

6. 確定拠出年金 (Ⅰ) 確定拠出年金については 企業の退職給付制度の基幹的な役割としての制度設計を可能とする観点で さらなる見直しが必要 拠出限度額の制約等が 各企業の実態やニーズに応じた多様な制度設計を困難にしており 拠出限度額の引き上げを図るべきである また 高齢層の継続就労や転職者 外国籍人材の増加など 人材の多様性や働き方の多様化への対応を強化する必要があり 60 歳以降の加入可能要件の緩和 資産の中途引出し要件の緩和等を図ることで より幅広く活用される確定拠出年金制度に改善すべきである 掛金拠出上限の引上げ 加入可能年齢 受給開始年齢 平均的な企業の賃金カーブや退職給付水準を考えると 中高年層や役職の高い者の掛金が 企業型確定拠出年金の拠出限度額を超過する 現在の拠出限度額では 確定拠出年金を主体とした退職 給付制度構築は困難であり 引上げを検討いただきたい 高齢期の就労期間延伸に伴い 60 歳を超えて勤務を継続する従業員は増加しているが グループ会社や関係会社への出向 転籍以外にも 他社への転職などで個人型制度への加入ニーズは拡大している その一方で 高齢になるほど個人の健康状態の差は大きくなると考えられるため 60 歳以降は退職時点から受給開始が可能となるような選択肢の多様化も必要である 中途引出し要件の緩和 外国籍人材の雇用が増加する中 退社 帰国時の中途引出しができないことで 支障が生じるケースが増えている 企業型 個人型の双方において 加入可能年齢の範囲拡大を検討していただきたい 但し 受給開始可能年齢については 現行通り60 歳からとしていただきたい 例えば 引出し時の一定の課税を条件に 中途引出しを可能とする選択肢を検討いただきたい 7

7. 確定拠出年金 (Ⅱ) 個人型 DC の加入範囲拡大に伴って 制度が複雑化している 制度のさらなる普及 拡大に向けて 分かりやすくかつ手続き面の負荷が小さい制度とする必要がある 個人が平等に退職後資産を準備できる環境整備の観点で 企業型 DC の規約に関わらず個人型 DC への加入を可能とするほか 拠出限度額の統一やマッチング拠出額の自由化等を一体的に進めるべきである 個人型 DC 加入資格要件の緩和 中小事業主掛金納付制度 (ideco プラス ) の対象拡大 現行の企業型 DC 加入者が個人型 DC に同時加入ができない制限は 企業型 DC 加入者の自助努力を制限する要因となりかねない 企業型 DC と個人型 DC の加入のあり方について 見直しが必要である 規約に定めがない場合も 個人型への加入資格を与える等 個人型 DC の加入要件の緩和を検討いただきたい もしくは 職域と独立して 企業型または個人型のいずれかへの加入を 従業員が選択できるようにしていただきたい 企業型 個人型における掛金拠出上限の統一 現行 拠出限度額が 従業員の属性により異なるため 制度が複雑化し 企業 個人双方の事務手続きが煩雑化している その結果 制度への理解が進まず 普及促進の妨げとなっていることが懸念される 制度の分かりやすさや 制度間の公平性を確保する観点から 個人型 DC の掛金拠出上限を企業型と合わせることを検討いただきたい 本制度において 企業規模を限定する必要性は乏しい マッチング拠出の導入が困難な事業主には 加入者拠出と事業主拠出を合せた退職後資産形成の支援が必要である 企業規模に関わらず ideco プラスの取扱いを可能とすることを検討いただきたい マッチング拠出の自由化 マッチング拠出を導入する企業は増加傾向にあるが 従業員は 事業主掛金を超える金額を拠出できないため 事業主掛金が少額に留まる場合は 自助努力による積立額の増加が阻害されることとなる マッチング拠出の自由化を図ることで 従業員の制度加入メリットが増大し 自助努力の強化に向けたインセンティブ向上も期待できる 拠出限度額内でのマッチング拠出の完全自由化を実現していただきたい 8

8. 税制 手続き簡素化 (1) 特別法人税 退職年金等の積立金に係る特別法人税については 平成 31 年度末 (2019 年度末 ) まで課税が凍結されているが 企業年金制度をより一層 普及 拡充させる観点で 速やかに廃止すべきである (2) 手続き 企業型 DC を実施する企業の従業員が個人型 DC に加入する場合の事業主証明発行等の手続きを簡素化するなど DC 制度の普及促進の観点から 個人 企業の事務手続きができるだけ簡素なものとなるよう配慮が必要である 9