第73回宇宙政策委員会

Similar documents
資料26-2 国際宇宙探査の方針に係るJAXAにおける検討状況について

構成 1. ISECG 国際宇宙探査ロードマップの概要と現状認識 2. 国際宇宙探査に向けた準備シナリオ ( 案 ) 3. シナリオを達成するための主要課題 2

回収機能付加型宇宙ステーション補給機 (HTV-R) 検討状況 1. 計画の位置付け 2. ミッションの概要 3. 期待される成果 4. 研究の進捗状況 5. 今後の計画 平成 22 年 8 月 11 日宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 有人宇宙環境利用ミッション本部 委 29-4

資料12-1-1_国際宇宙探査協働グループ(ISECG)での調整状況

資料 2 国際宇宙ステーション (ISS) 計画概要 平成 26 年 4 月 23 日 ( 水 ) 文部科学省研究開発局 1

【資料20-1-1】 宇宙探査技術の分析案_ b_set72

資料 科学技術 学術審議会研究計画 評価分科会宇宙開発利用部会 ( 第 29 回 H ) HTV X の開発状況について 平成 28(2016) 年 7 月 14 日 ( 木 ) 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 HTV Xプリプロジェクトチーム長伊藤

フロンティアビジネス研究会公開シンポジウム 宇宙開発の未来共創 2018 ~ 民間主導の月資源ビジネスエコシステム ~ 宇宙探査資源ビジネスに向けた当社の取組み 2018 年 11 月 1 日有人宇宙システム株式会社宇宙事業革新グループ峰松拓毅

資料10-3 国際宇宙探査の長期ビジョンについて

資料21-4 小型探査機による高精度月面着陸の技術実証(SLIM)について

10-11 平成26年度 予算(案)の概要

【資料20-1-2】 宇宙探査の科学的意義と国際宇宙探査との関係A_set

資料1-3 宙を拓くタスクフォースにおける検討の進め方

PowerPoint プレゼンテーション

「きぼう」組立第3便ミッション(2J/A)の結果及び若田宇宙飛行士の長期滞在任務完了について

国際宇宙ステーションへ,そして月へ -HTV-Xの開発-,三菱重工技報 Vol.56 No.1(2019)

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

巻末付録(その2)

将来有人宇宙活動に向けた宇宙医学 / 健康管理技術 研究開発に係る意見募集 ( 情報提供要請 ) 2018 年 12 月 10 日国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構有人宇宙技術部門宇宙探査イノベーションハブ 1. はじめに JAXA 有人宇宙技術部門 ( 部門長 : 若田光一 ) では 将来有人探

目次 1. 宇宙科学 宇宙探査の現状 課題及び今後の検討の方向 2. 国際宇宙ステーション (ISS) の現状 課題及び今後の検討の方向 3. 宇宙太陽光発電システム (SSPS) の現状 課題及び今後の検討の方向 ( 参考 ) 我が国の主要な宇宙科学 宇宙探査計画の概要 宇宙科学 1. 宇宙物理学

付録4 各国の将来宇宙探査計画の動向

資料2  SJAC提出資料

2 目次 世界は動いている 日本発の宇宙資源ビジネスを目指して 未来共創

世界の将来宇宙輸送システムに関する動向 ( 米国 1/4) 米国において 民間企業により 再使用型ロケットや再使用型有人宇宙往還機の開発が進められている また 軍では再使用型無人宇宙往還機が運用されている Falcon9-R 2011 年 米 SpaceX 社は Falcon9 を再使用化する構想を

将来宇宙輸送システムの性能諸元 各国において使用目的に応じたシステム構想が検討され 実用化に向けた研究が進められている Launcher One ( 米国 ) Dream Chaser ( 米国 ) Reusable Falcon ( 米国 ) Lynx Mk III ( 米国 ) SKYLON (

4-(1)-ウ①

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F F696E74202D E9197BF A8F B AF C982C282A282C42E B8CDD8AB B83685D>

新たな宇宙状況監視 (SSA) システム構築に向けた事前調査平成 26 年度予算案額 11 百万円 ( 新規 ) 文部科学省研究開発局宇宙開発利用課 事業概要 目的 必要性 事業イメージ 具体例 スペースデブリの増加が世界的な課題として認識される中 宇宙状況監視 ( SSA : Space Situ

第40回宇宙産業・科学技術基盤部会

H-ⅡA ロケット 第 1 段 第 2 段とも液体酸素と液体水素を推進薬に使用している 2 段式ロケット H-Ⅱ ロケットの開発により得られた技術を基に 信頼性を確保しつつ 低コスト化を実現 並びに固体補助ロケットや固体ロケットブースタを標準型に追加することで ラインアップ化を実現 打上げペイロード

<4D F736F F F696E74202D F B8817A93648AC E096BE8E9197BF E >

第42回宇宙産業・科学技術基盤部会

平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

宇宙開発委員会 推進部会 GXロケット評価小委員会(第8回)議事録・配付資料 [資料8-1]

経営理念 宇宙と空を活かし 安全で豊かな社会を実現します 私たちは 先導的な技術開発を行い 幅広い英知と共に生み出した成果を 人類社会に展開します 宇宙航空研究開発を通して社会への新たな価値提供のために JAXAは 2003年10月の発足以来 宇宙航空分野の基礎研究から開発 利用に至るまで一貫して行

目 次 I. 政策体系における JAXAの位置付け及び役割 宇宙政策の目標達成に向けた政策体系 ( 宇宙基本計画における役割 ) 宇宙安全保障の確保 民生分野における宇宙利用の推進 宇宙産業及び科学技術の基盤の維持 強化...

我が国の宇宙技術の世界展開

第20回宇宙科学・探査小委員会

JAXA提出資料

資料4-7 宇宙×ICTに関する懇談会 議論の要約

untitled

資料9-5 イプシロンロケットの開発及び打上げ準備状況(その1)

文部科学省における宇宙分野の推進方策について

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

新興国市場開拓事業平成 27 年度概算要求額 15.0 億円 (15.0 億円 ) うち優先課題推進枠 15.0 億円 通商政策局国際経済課 商務情報政策局生活文化創造産業課 /1750 事業の内容 事業の概要 目的 急速に拡大する世界市場を獲得するためには 対象となる国 地

JAXA/NASA 1 2

付録1 宇宙ステーション補給機技術実証機(HTV1)プロジェクトの評価票の集計及び意見

資料 2-4 新型基幹ロケット開発の進め方 ( 案 ) 平成 26 年 4 月 3 日 宇宙政策委員会 宇宙輸送システム部会 1. 新型基幹ロケット開発の進め方の位置づけ本書は 宇宙政策委員会第 15 回会合 ( 平成 25 年 5 月 30 日 ) の資料 1-1 宇宙輸送システム部会の中間とりま

手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

2-工業会活動.indd

したがって今回は 一昨年と昨年の続編として 宇宙の歴史 3 と題し 内容は継続発展させて ほぼ 同規模のオーガナイズドセッションを企画することで 宇宙の歴史に関する研究蓄積とともに情報交換 提供に貢献したいと考えている 内容 : 一昨年の 宇宙の歴史 では 総論や通史に関する講演が多く パネルディス

新たな宇宙基本計画における宇宙科学・宇宙探査の位置付け及び主な関連事業の概要

小惑星探査機 はやぶさ 2 記者説明会 2019 年 5 月 22 日 JAXA はやぶさ 2 プロジェクト

Microsoft Word - ハンドブック本文A改訂11_26.doc

2. 新体制における文部科学省の役割 16

小惑星探査機 はやぶさ 2 の 運用状況 2018 年 10 月 23 日 JAXA はやぶさ 2 プロジェクト

Microsoft Word - 㕒朕絇㕂ㅪㅪㅼㇹ�稿.docx

道経連 宇宙産業ビジョン 宇宙で変わる北海道の未来 日本の未来 Ⅴ 2040 年の宇宙利用 2040 年に期待される宇宙産業の変化 微小重力下での最先端研究開発の活発化 地球外での鉱物資源開発の開始 宇宙における食料 資機材の地産地消の進展 民間ロケットの往来は小惑星などにも拡大 衛星測位の精度の更

ソユーズ宇宙船の飛行概要

新たな宇宙基本計画における宇宙科学・宇宙探査の位置付け及び主な関連事業の概要

目次 I. 中期目標の期間 1 II. 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項 1 1. 宇宙安全保障の確保 1 (1) 衛星測位 1 (2) 衛星リモートセンシング 1 (3) 衛星通信 衛星放送 2 (4) 宇宙輸送システム 2 (5) その他の取組 3 2. 民生分野に

企画書タイトル - 企画書サブタイトル -

JAXA航空マガジンFlight Path No.4/2014 SPRING

(1) 当該団体が法人格を有しているか 又は法人格のない任意の団体のうち次の1~2の要件を全て満たすもの 1 代表者の定めがあること 2 団体としての意思決定の方法 事務処理及び会計処理の方法 並びに責任者等を明確にした規約その他の規定が定められていること (2) 関係市町村との協議体制を構築してい

政策評価書3-3(4)

PowerPoint Presentation

11

基本的な考え方 羽田空港の機能強化は 首都圏だけでなく日本全体にとって不可欠であり 機能強化の必要性やその実現方策等について 関係自治体の協力も得ながら できる限り多くの方々に知って頂くように努める 基本的な考え方 1 羽田空港の機能強化の必要性やその実現方策等について できる限り多くの方々に知って

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

宇宙のロマン   火星はどんなとこ?   ハヤブサが行く小惑星リューグウとは?

新たな宇宙基本計画に向けた提言

バイオ燃料

学生確保の見通し及び申請者としての取組状況

第5回 国際的動向を踏まえたオープンサイエンスの推進に関する検討会 資料1-1

スライド 1

目次 2 1.JAXAに対する国の監督 (1) 中長期目標 中長期計画 2.JAXAに対する国の監督 (2) 宇宙諸条約の履行 3.JAXAに対する国の監督 (3) 打上げ 射場管理業務 4.JAXAによる安全審査の概要 5.JAXAに対する国の監督 (4) 衛星管理 データ配布 6. 宇宙活動法に

併せて 先進事例を統一的なフォーマットでデータベース化する また 意欲ある地域が先進的な取組みを行った人材に 目的に応じて容易に相談できるよう 内閣官房において 各省の人材システムを再点検し 総合的なコンシェルジュ機能を強化する 各種の既存施策に加え 当面 今通常国会に提出を予定している 都市再生法

タイトル

SpX-12 ミッションの飛行計画 項目飛行計画 ( 実績反映版 ) 打上げ日時 2017 年 8 月 14 日 12 時 31 分 ( 米国東部夏時間 ) 2017 年 8 月 15 日 01 時 31 分 ( 日本時間 ) 射場 ロケット NASA ケネディ宇宙センター (KSC) 39A 射点

取組みの背景 これまでの流れ 平成 27 年 6 月 日本再興戦略 改訂 2015 の閣議決定 ( 訪日外国人からの 日本の Wi-Fi サービスは使い難い との声を受け ) 戦略市場創造プラン における新たに講ずべき具体的施策として 事業者の垣根を越えた認証手続きの簡素化 が盛り込まれる 平成 2

Microsoft Word - 【外務省】インフラ長寿命化(行動計画)

火山防災対策会議の充実と火山活動が活発化した際の協議会の枠組み等の活用について(報告)【参考資料】

Microsoft PowerPoint - 委32-2_IAC(最終).ppt

1 日本再興戦略 2016 改革 2020 隊列走行の実現 隊列走行活用事業モデルの明確化ニーズの明確化 ( 実施場所 事業性等 ) 技術開発 実証 制度 事業環境検討プロジェクト工程表技高齢者等の移動手段の確保 ( ラストワンマイル自動走行 ) 事業モデルの明確化 ( 実施主体 場所 事業性等 )

資料 5 通信 放送衛星の現状 課題及び 今後の検討の方向 ( 案 ) 平成 2 4 年 9 月内閣府宇宙戦略室

宇宙基本法に基づく宇宙開発利用の推進に向けた提言

将来の有人宇宙活動に必要な ロボット・自動化・自律化に関する課題マップ

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF342D315F91E6338FCD323190A28B498ED089EF82C982A882AF82E BD82C889BA908593B982CC >

宇宙開発委員会 宇宙開発に関する重要な研究開発の評価 LNG推進系飛行実証 プロジェクトの中間評価結果 [付録3]

SWG&iSDT検討状況

国立大学法人京都大学と独立行政法人宇宙航空研究開発機構との

本事業の意義 実効性 ( 見直しの必要性 ) 医療情報データベース基盤整備事業 ( 平成 23 年度 ~ 10 協力医療機関 ) 日本再興戦略 ( 平成 25 年 6 月 14 日 ) 医療 介護情報の電子化の促進 医薬品の副作用データベースシステムについて データ収集の拠点となる病院の拡充や地域連

資料 H3ロケットの開発状況について

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

Microsoft Word - PPPPFI手法導入における優先的検討に係る指針

資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF82525F89E482AA8D9182CC8EE C68A438A4F82CC93AE8CFC5F E707074>

目次 1: 安全性とソフトウェア 2: 宇宙機ソフトウェアにおける 安全 とは 3:CBCS 安全要求とは 4: 宇宙機ソフトウェアの実装例 5: 安全設計から得た新たな知見 6: 今後 2

Transcription:

資料 2 国際宇宙探査の方針に係る JAXA における検討状況について 2018 年 10 月 30 日 宇宙航空研究開発機構 国際宇宙探査センター

概要及び目次 第 41 回において 月 火星探査並びに月近傍拠点 (Gateway) の国際的な動向をご報告した 今回は その国際動向を踏まえた以下の JAXA の検討状況についてご報告し 今後の日本の方針についてご議論いただきたい 国際宇宙探査に対する JAXA の基本方針 月 火星探査に関わる目標とミッション 月近傍拠点 (Gateway) に対する貢献 (ISS の対応を含む ) 関係機関との協力状況 当面の取り組み方針 ( まとめ ) 2

国際宇宙探査に対する JAXA の基本方針 月面活動に主体を置く 将来に必要となる技術を念頭に 補給 ( 輸送 ) 月面着陸 月面探査を進める ISS に続く有人活動の拠点となる月近傍拠点 (Gateway) 月面上に日本人宇宙飛行士を送るなど 人類の活動領域の拡大に貢献し 宇宙先進国としてのプレゼンスの確保を図る 実行にあたり Gateway を活用する そこへの貢献は 有人宇宙滞在技術 ( 環境制御系 ) を中心に調整する 貢献する割合は ISS 以下を目途とし 経済規模に応じた割合を踏まえつつ 宇宙飛行士の搭乗や Gateway 利用を適切に確保できるレベルとする 月面活動については 国際協力 民間技術の活用により効率化し その探査成果も国際協力における日本の貢献として評価を得るべく調整を行う 国際宇宙探査の機会をとらえて 学術研究にも貢献する

火星他 JAXA の目標とする国際宇宙探査 ピンポイント着陸技術重力天体表面探査技術 小天体資源探査他 サンプルリターン ピンポイント着陸技術 MMX: 2024 年度 重力天体表面探査技術 初期火星探査 火星の生命探査 火星の科学探査 本格探査 火星の利用可能性調査 長期にわたる火星の科学探査 ピンポイント着陸技術 月 地球 かぐや JAXA 小型月着陸実証機 (SLIM) (2021 年度 ) 深宇宙補給技術 JAXA 月移動探査 (2023 年頃 ~) 月極域の水氷利用可能性調査 月面拠点の調査等 月面活動を主体に 有人滞在技術 JAXA JAXA JAXA 月広域 回収探査 (2026 年頃 ~) 月の本格的な探査 利用 南極や裏側探査とサンプルリターン 無人探査機 / 有人能力の協調に 月面本格探査に向けた技術実証等よる効率的資源探査 科学探査 多種多様な主体による月面活動 補給ミッション 月探査支援 (2026 年頃 ~) 小型探査機放出 月面観測他 Gateway 第一段階 (2022 年 -) 月面探査の支援 深宇宙環境を利用した科学 支援 支援 有人滞在技術 Gateway 第二段階 火星探査に向けた技術実証 民営化を推進 国際宇宙ステーション 4

想定しているミッション 月移動探査 : 月極域探査ミッション 各国は 2020 年代前半に各国が計画している中 我が国としても各国に遅れることなく 月極域における水の存在量や資源としての利用可能性の確認を主目的とし さらに 比較的穏やかな環境で 持続的な探査が可能かつ拠点構築にも有利な月極域地域の探査を行う インド等との国際協力により実施する (2023 年度打上目標 ) この探査の機会を活用して 重力天体表面探査技術の確立を目指し また 科学的成果創出にも貢献する 国際分担の一例 月周回拠点補給ミッション HTV は国際的な評価が高く 実績ある技術での貢献は 効率的であり かつ交渉での有力材料となる また ISS と同様に補給はクルー滞在や利用を支える重要なミッションであり 最新の統合解析においても追加の補給ミッションが必要となってきており NASA も追加の補給船を必要としている さらに 補給後にも機能を活用することができる HTV-X の一部改修より実施する (2026 年度初号機打上目標 ) 開発 改修を通して 中長期的に必要となる深宇宙補給技術の発展を目指し また 月面探査の支援により科学の成果に貢献する ロケットローバ 観測器 日本主担当 着陸機 インド主担当 月広域 回収探査 : 月離着陸実証ミッション (HERACLES) 月の本格的な探査 利用の実現に向けて 有人月探査機のサブスケール技術実証を行う国際協力による月面無人探査ミッション 月面からサンプルを持ち帰るサンプルリターンミッションで, 着陸地域は有人ミッションの候補となっている SPA( ) 等 ESA,CSA 等との国際協力により実施する (2026 年度打上目標 ) この探査の機会を活用して SLIM で獲得した重力天体着陸技術を発展させ また 科学的成果創出にも貢献する 離陸機 着陸機 HERACLES ローバ : 南極域エイトケン盆地 国際分担案着陸機 : JAXA 離陸機 : ESA ローバ : CSA HTV HTV-X 補給ミッション 火星衛星探査ミッション (MMX) 火星衛星の近傍観測とサンプルリターンにより, 火星衛星の起源 ( 小惑星捕獲か巨大衝突か ) 初期惑星への揮発性物質供給 ( 捕獲 衝突天体の組成, 軌道進化 ), 火星の初期状態と火星圏の進化 ( 捕獲 巨大衝突年代, 初期火星物質組成, 衛星表層進化, 火星大気の動態 ) を解明する. NASA,CNES,DLR 等との国際協力により実施する (2024 年度打上目標 ) 計画 2024 年度打上げ 2025 年度火星圏到着 2025-2028 年度探査 2028 年度火星圏離脱 2029 年度地球帰還 5

月近傍拠点 (Gateway) 参画時の ISS 参加の考え方 ISS については ISS 共通システム運用経費 (CSOC) としての HTV による補給 ( 打上ロケット H-IIB 含む ) 及び きぼう 運用 利用経費を併せて 年間約 400 億円程度での経費が必要となってきた HTV と H-IIB での補給を HTV-X と H3 に切り替えることにより 大幅なコスト削減が見込まれる さらに運用の一部を民間に委託する等により 更なるコスト削減努力を行う ISS の CSOC オフセットとしての HTV-X による補給ミッションの一部を Gateway への補給ミッションに切り替えるべく NASA と交渉する予定 これが実現すれば ISS と国際宇宙探査を合わせた経費を効率化することが可能 JAXA 全体としては H3 ロケット開発資金需要も踏まえつつ ISS と国際宇宙探査を合わせた経費を適切に抑える 6

月近傍拠点 (Gateway) への貢献方針 Gateway での実績が その後の有人拠点での機能分担に大きく影響を与えることから 工程表上で示される 4 つの技術のうち Gateway に関連する 有人宇宙滞在技術 ( 環境制御系 ) を中心に貢献し 将来の可能性の余地を担保する 中長期的に必要となる深宇宙でのランデブ ドッキング技術等の展開に向け HTV-X 技術を発展させ Gateway に ISS と同様に補給することで 貢献度を高めることに寄与する 補給はクルー滞在や利用に重要であり HTV の高い評価から交渉も有利に働く 上記のほか 日本が実績を有し 交渉上有利となる機器 ( バッテリ 映像機器など ) についても 貢献 ( 分担 ) する方向とする Gateway 開発 建設は ISS の参加国 機関中心に行い 総額は 約 3,100~4,200 億円 (NASA 等の情報に基づく JAXA 試算 ( 輸送系を除く )) 居住モジュール等に搭載検討中の以下サブシステムを調整中 生命維持系 熱制御系 電力系 通信映像系 航法系実績のある HTV による物資補給 小型探査機の輸送等による貢献内容を調整中 Gateway 開発 建設段階において 十数名の宇宙飛行士が Gateway に滞在する計画であり 各国 機関とも自国の宇宙飛行士が参加できる程度の貢献を目途にしている 日本としても同等の貢献を想定して調整を行う 7 7

国際協力と貢献の考え方 国際協力の状況 月面探査においては 多くの国が計画を有していることから 幅広く協力を検討し 発言権の確保のために 速やかに月面の着陸し探査活動を開始する必要がある 対等で効率的に協力できる国を中心に協力を行うこととし 具体的には 月極域探査では来年探査機を着陸させる予定のインドと Gateway を活用する広域 回収探査では Gateway に参加予定の ESA CSA を中心に協力することを検討している 火星探査については 当面は NASA 主導の火星サンプルリターンを意識しつつ 科学的な協力を中心に協力を検討する なお 火星衛星探査機においては NASA CNES DLR 等と協力して準備を進めている 一方 Gateway は 既存の ISS の枠組みを中心に協力関係を構築している 貢献の考え方について 月面探査アーキテクチャの構築や成果を通して国際宇宙探査計画に貢献し 米国に対しても貢献分とみなされるよう調整する 加えて 火星衛星探査の成果についても国際宇宙探査の貢献の一部分として相応の評価を受けるように調整する 日本の具体的な貢献としては 月極域探査の成果での水氷の濃度分布や環境を調査した成果等 利用価値判断材料や拠点構築に必要な情報や サンプルリターンにより有人月探査に必要な情報を提供することなどを考えている 8

宇宙探査における民間事業者の参画促進 宇宙探査産業の拡大に向けた取組を進め 官民両輪で持続的な宇宙探査 利用事業の発展を目指す 民間や学術界との連携 科学的成果の創出拡大と人材育成 既存の学術 研究ネットワークの枠組みを生かしながら科学的成果創出を推し進める 産業界プラットフォームの構築 ( 検討中 ) 民間事業者の国際宇宙探査への参画推進のためのコミュニティ形成 活動のため 多様なプレイヤーの参画 非宇宙系企業/ ベンチャーの参画拡大の各種機会 サイエンスコミュニティとのインターフェース 研究/ 投資 / 将来の宇宙探査の絵姿の共有事業着手判 商業宇宙産業 ( 月近傍 ~ 月面 ) の断に資する活性化に向けた論点整理 検討等材料の提供 協働型事業の推進 ( 研究開発 機会共有 ) 宇宙探査イノヘ ーションハフ 事業 ( 研究開発 ) 月面探査技術の共同研究と地上への応用 76 件 126 機関と実施 9 割は非宇宙分野との共同研究 探査事業の拡大 技術協力 機会提供 JAXA ミッションを活用した企業支援 観測機器搭載 協働型事業の推進 将来月面ミッション ( コンステレーション探査等 ) 検討 J-SPARC の活用等 人材育成 効率化 合理化新産業創出 学会 コミュニティの参加喚起 ( 推進中 ) 宇宙科学研究所の大学共同利用システムにより ワークショップを頻繁に開催 幅広く意見交換を行い また 周辺分野の研究者を誘導することで 探査インフラからの科学成果創出を促進する 具体的には 探査地点 機器等のミッション要求構築作業への参加や搭載機器の AO を発行する 将来 小型探査機等の大学等が参加しやすいシステムを構築し さらに幅広い研究活動を促進 JAXA ISAS 理工学委員会 大学 人材育成強化策 ( 検討中 ) コミュニティー学界 宇宙探査の機会を捉え テニュアトラック助教等 宇宙分野の人材確保 育成にも貢献 9

国際宇宙探査の当面の JAXA の取組方針 ( まとめ ) 当面の目標 米国が主導する月近傍軌道の拠点整備に存在感を持って参加しつつ 月面探査に向けた必要な技術を確立し 持続的な月面探査に向けた資源の利用可能性等の見通しを得る その機会を活用して 国際的な科学成果の創出に寄与する 具体的な取組方針 国際的に調整もしくは競争となっているミッションについては早急に着手する 米国主導の月近傍軌道に建設する有人施設 (Gateway) に得意技術を持って 我が国にメリットがある形で参画 なお その際 効率的 効果的に取り組む 持続的な月面探査等に必要で国際的に競争となっている水氷の利用可能性調査 拠点の構築に有効な月極域地域の探査を行う 月極域探査ミッションをインド等との協力で進める Gateway と連携して進めるミッションについては 上記に引き続き着手する 月面からサンプルリターンを行う月離着陸実証ミッション (HERACLES) を国際協力で進める Gateway に補給や小型探査機輸送などを行う月周回拠点補給ミッションを進める 国際的に期待が高い MMX は 2024 年度打上げを目指して確実に進める ISS の機能を活用した技術実証 SLIM HTV-X の開発成果も併せて 4 つの技術 ( 深宇宙補給技術 有人宇宙滞在技術 重力天体離着陸技術 重力天体表面探査技術 ) を確立する 留意する事項 学術界との対話では 探査インフラ整備が成果創出と宇宙関連人材の育成を進めるものであるという理解を獲得することに留意し 成果最大化に寄与する 非宇宙産業からの技術の導入や民間企業の事業構想実現に向けた実証機会の提供などにより 民間企業の参入を喚起する H3 ロケット開発及び ISS などの当面の厳しい予算事情を考慮する 10