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MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.30 No.1 January 2012 11 特集論文 / 皮膚科学における画像処理技術 赤外レーザーのメラニンに対する高吸収波長 A High Absorption Coefficient Wavelength of a Infrared Laser to a Melanin 河本敬子 *1 桑島史欣 *2 Keiko KOHMOTO Fumiyoshi KUWASHIMA 要 旨 赤外のレーザー光は, 皮下に存在するメラニンに対して選択的に吸収されやすいため, 良性の色素性疾患治療に有効であり, レーザー脱毛にも応用できる. しかし, 同じ用途に対してさまざまな波長のレーザーが用いられており, 最適な波長が明らかとなっていない. また, これまでのレーザー装置は巨大, 高価かつ使用に専門的知識を必要とする. 一方, 個人向けに売られている商品は, 波長, 出力, 照射範囲などが曖昧となっている. 本研究では, 脱毛や色素性疾患治療に利用可能な近赤外半導体レーザーを模索すべく, 細かく刻んだ人毛をサンプルとして, サンプル温度の上昇におけるレーザー波長依存性を調査した. その結果, 波長が 784.74nm のときに温度変化が大きいことがわかった. キーワード : メラニン, 半導体レーザー, 赤外線レーザー Infrared lasers for medical applications especially for removal of hair and some pigmented lesions are investigated. It is preferred that the lasers with the wavelength of about 700nm are used considering the absorption coefficients of water, oxyhemoglobin, deoxyhemoglobin and melanin. We used infrared diode lasers using laser diodes and discussed the laser intensity is enough to examine the laser effect to the melanin. The melanin in this research used a hair. The purpose of this paper is to consider a dependence of wavelength on a temperature rise in a melanin. Key words: Melanin, Semiconductor laser, Infrared laser Med Imag Tech 30(1): 11-16, 2012 1. はじめに 1960 年にルビーレーザーが Maiman によって開発された [1]. 医療分野においても応用が考えられてきた [2~4]. 皮膚のレーザー治療分野における応用の試みも古くからなされ, 血管腫に対するアルゴンレーザー [5], 皮膚の色素異常に対するルビーレーザーによる治療から始まっている. 色素異常症の治療においては太田母斑に対し,Q スイッチルビーレーザー,Q スイッチアレキサンドライトレーザー [6, 7],Q スイッチ Nd: YAG レーザーの使用で劇的な効果を見せたのはよく知られている [8]. *1 近畿大学生物理工学部システム生命科学科 649-6493 和歌山県紀の川市西三谷 930 :Department of Computational Systems Biology, Faculty of Biology- Oriented Science and Technology, Kinki University. e-mail: kohmoto@waka.kindai.ac.jp *2 福井工業大学工学部電子情報工学科論文受付 :2011 年 11 月 29 日最終稿受付 :2012 年 2 月 1 日 最近は比較的波長の長いルビーレーザー, アレキサンドライトレーザー, さらには半導体レーザーを長パルスとして使用することで毛嚢を破壊し脱毛治療に用いようという試みでも大きな発展があったが, これらの機器は表在性の皮膚の色素異常症の治療に適している. 今後はさらに安全性や治療効果を大きく代える可能性のある機器が開発導入される可能性も高く, この分野に大きな期待が集まっている [9]. このように, これまでにさまざまなレーザーが医療分野において使用されてきたが, それぞれの最適な波長は明らかになっていない. 半導体レーザーは安価であり, 波長を 0.1nm のオーダーで変えることができる. そこで, もっとも効率のよい最適波長をそのオーダーで見つけることを目標としている. インコヒーレント光では, スペクトル幅が広いため, 緩やかな波長依存性のみが観測されていた [10]. コヒーレント光源を用いることで効果的に温度が上昇する波長

12 Med Imag Tech Vol.30 No.1 January 2012 がみつかったので, 今回の報告を行う. 赤外のレーザー光は, 皮下に存在するメラニンに対して選択的に吸収されやすいため, 良性の色素性疾患治療に有効であり, レーザー脱毛にも応用できる. しかし, 同じ用途に対してさまざまな波長のレーザーが用いられており, 最適な波長が明らかとなっていない. また, これまでのレーザー装置は巨大, 高価かつ使用に専門的知識を必要とする. 一方, 個人向けに売られている商品は, 波長, 出力, 照射範囲などが曖昧となっている. 本研究では, 脱毛や色素性疾患治療に利用可能な近赤外半導体レーザーを模索すべく, メラニンをサンプルとして, サンプル温度の上昇におけるレーザー波長依存性を調査した. 今回は, メラニンを多く含んでいる人毛を対象とした. 近年は, レーザーが脱毛などに応用される場合が非常に多く, 社会的需要があると考えたからである. 2. 装置設計指針本研究の概念図を Fig. 1 に示す.Fig. 2 に示した実験系において, 半導体レーザーは Sharp: GH0781JA2C(784nm,120mW), Thorlabs: L808P200 Fig. 1 Conceptual diagram. Fig. 2 Experimental setup. (808nm, 200mW), 試料は人毛 ( 人種 : 日本人, 年齢 :20 歳位, 長さ :1mm, 色 : 黒色, 形状 : 細かく切った状態を隙間なく直径 1.5cm の丸状に盛っている ) を用いた. なお, 被験者には実験内容, 目的, 調査対象を十分に説明し, 実験協力に対する同意を確認した. 試料の設置状態は, 使用したレーザーのスポット径は 2mm 程度, 試料は熱電対に密集して盛ってあり, 熱電対は十分に試料に隠れた状態であるため, 十分に広い範囲である. 集光用レンズは Thorlabs: C-230TM-B (f:4.5mm, AR Coated 600 ~ 1050nm, 開口比 =0.55, 開口部 :4.95mm 径, 有効焦点距離 :4.51mm), 試料台のサイズは直径 3.4cm 高さ 2.8cm を用いた. また, 集光レンズ位置は連続可変とし, スポット径を連続的に変化できるようにした. 今回は半導体レーザーを定電流回路を用いて電流を一定 (CW), 発振波長領域は赤外とした. 実験方法は, レーザー光をレンズで集光させたものをミラーで真下に反射させ, 熱電対上の人毛 ( 細かく切って盛っている ) にレーザーを照射する. 熱電対上の人毛の温度変化を温度計 ( デジタルマルチメータ ) で測定し, パソコンに取り込む. 電流によって波長を変化させ測定を繰り返す. このとき, 出力が変化するので減衰器 (ND フィルター ) を用いて試料に当たる光出力が一定になるようにした. 熱電対や試料台 ( 白色 ), 人間の皮膚に当てても温度上昇はみられなかった. また, 室温は 23 一定とした. 半導体レーザーは, 接合面に垂直方向は回折により大きなビーム拡がり角を与えるため, 出力はレンズによって集光しエネルギー密度を高めた上で, 患部に照射することで, 赤外光に対し吸収係数の高いメラニン色素に集中的にエネルギーを加え, シミや体毛の除去に応用できる. 3. 波長による吸収係数の変化メラニンにおける波長による吸収係数の変化について, 水 [10, 11], 酸化ヘモグロビン [11, 12], メラニン色素 [11, 12], 還元ヘモグロビン [13] に関して文献調査した.Fig. 3( 水, 文献 [10] から転載 ) では, 水における吸収係数の変化が示されている. 水に対しては, 波長が 300 ~ 1000nm の範囲において,500nm でもっとも吸収が小さく, その後, 長波長および短波長側にい

Med Imag Tech Vol.30 No.1 January 2012 13 Nd : YAG Ho : YAG Er : YAG CO CO 2 10 4 Absorption coefficient(cm -1 ) 10 3 10 2 10 1 10 0 10-1 10-2 10-3 10-4 0.3 0.5 1 2 3 5 10 Fig. 3 The absorption coefficient by a wavelength (Water). 10000 YAG(532) Argon Dye(585) Alexandrite Ruby Diode Nd : YAG Absorption(log scale) 1000 100 10 Melanin Oxyhemoglobin Oxyhemoglobin Melanin 1 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 Fig. 4 The absorption coefficient by a wavelength (Oxyhemoglobin and melanin). くに従って徐々に吸収が大きくなる.Fig. 4( 酸 化ヘモグロビンとメラニン色素, 文献 [12] から転載 ) では, 波長 300 ~ 1000nm の範囲におい 1.2 1.0 て, メラニン色素は可視光 (400 ~ 700nm) から 0.8 赤外にかけて緩やかに吸収係数が小さくなる. 0.6 また, 酸化ヘモグロビンは,650nm を境に急激 に吸収係数が小さくなる. このため, メラニン色素のみに効率的に吸収させるには, 発振波長 700nm 近傍のレーザーを用いることが最適であ 0.4 0.2 0.0 ると考えられる. 520 540 560 580 600 620 640 (nm) しかし, 人間の体には還元ヘモグロビンも含 Fig. 5 The absorption coefficient by a wavelength まれている.Fig. 5( 酸化ヘモグロビンと還元ヘ (Oxyhemoglobin and deoxyhemoglobin). モグロビン, 文献 [13]) によると, 還元ヘモグ ロビンにおいては, 波長が 520 ~ 640nm の範囲で は600nm 付近から急激に吸収係数が小さくなる. 1.4

14 Med Imag Tech Vol.30 No.1 January 2012 Table 1 Compare semiconductor lasers using in this investigation with medical lasers. 市販されている代表的な医療用レーザー本研究で使用したレーザー名称 A B C GH0781JA2C L808P200 レーザータイプ フラッシュランプ励起アレキサンドライト 半導体レーザー Nd:YAG 半導体レーザー 半導体レーザー 波長 [nm] 755 810 ± 20 1064 784 808 スポットサイズ [mm] 8, 10, 12, 15 12, 8, 4 3, 5, 10 連続可変 連続可変 最大エネルギー密度不明 575J/cm 2 5 ~ 200J/cm 2 スポット径で変化 (120mW) スポット径で変化 (200mW) パルス幅 3ms 50 ~ 1000ms 10 ~ 100ms CW CW サイズ 大 中 ( 卓上型 ) 大 小型 小型 価格 高価 高価 高価 安価 安価 推薦用途 皮膚良性色素性疾患, 脱毛 脱毛 脱毛 ------ ------ これらを考慮すれば,800nm 付近の方が効率的にメラニン色素に吸収させることができると考えられる. したがって, 今回は 780nm と 800nm の半導体レーザーを用いた. また, 波長依存性を正確に調べるために, 今回は CW で実験を行った. パルス幅, 時間波形については今後の検討課題としている. 4. これまでの装置との比較 Table 1 は, これまでに市販されている代表的な医療用レーザー (A, B, C) と本研究で使用したレーザー (GH0781JA2C,L808P200) を示す. これまで, フラッシュランプ励起アレキサンドライトや, 半導体レーザー,Nd:YAG レーザーなどが皮膚良性色素性疾患や, レーザー脱毛に用いられてきた. 医療用アレキサンドライトレーザー ( レーザー装置 A),Nd:YAG レーザー ( レーザー装置 C) は, サイズが大きく高価である. 医療用半導体レーザー ( レーザー装置 B) は卓上型まであるが, 高価である. また, 赤外のレーザーが使われるのが一般的であるが, 赤外の中でも同じ用途にさまざまな波長のものが使用されており, 最適な波長も明らかにされていない. たとえば, アレキサンドライトレーザーの発振波長は 755nm, 半導体レーザーは 810 ± 20nm である. 半導体レーザーの発振波長は電流が流れることによる温度上昇で変化するため,810 ± 20 nm と幅を持たせてある. また, 発振波長 1.06μ m の Nd:YAG レーザーを使用したものもあり, 皮下深部に毛根のある脱毛に向くとの報告もある [14]. なお, 今回用いた半導体レーザー素子 (GH0781JA2C, L808P200) は, 数千円程度である. 出力については,Table 1 中の半導体レーザー素子 GH0781JA2C を用いた場合,120mW の CW 出力が得られており, 円形のスポット径を 100μ m とした場合,1 秒あたりのエネルギー密度は, 平均 1500J/cm 2 となる. 半導体レーザー素子 L808P200 を用いた場合,200mW の CW 出力が得られ, スポット径を 100μ m とした場合,1 秒あたりのエネルギー密度は平均 2500 J/cm 2 となる. 脱毛用レーザーでは最大 100J/cm 2 程度を照射した治療例が報告されているため [15], レーザー発振波長によるメラニン色素の反応の違いを調査するには十分な出力が得られていることがわかる. これに対して, 本研究で使用した半導体レーザー素子は, 波長が784nmのGH0781JA2C,808nm の L808P200 である. スポット径 1mm の場合の 1 秒当たりのエネルギー密度は,GH0781JA2C では 15.27 J/cm 2,L808P200 では 25.46 J/cm 2 である. また,GH0781JA2C と L808P200 の動作特性を実際に確認した結果, 規格範囲内で動作していることを確認した. 脱毛用レーザーでは最大 100J/cm2 程度を照射した治療例が報告されているため, レーザー発振波長によるメラニン色素の反応の違いを調査するには十分な出力が得られている [15]. 5. 実験結果メラニンに対する温度上昇の変化を調査するために,2 種類の半導体レーザー素子

Med Imag Tech Vol.30 No.1 January 2012 15 (GH0781JA2C, L808P200) を用いて実験を行った.GH0781JA2C と L808P200 に対して, 電流を変化させることによって波長を変化させた. 波長は分光器 ( オーシャンオプティクス :USB2000) を用いて測定した. 実験条件は, スポット径 1.3mm, 総出力 45mW, パワー密度 3.15J/cm 2, TEC8.8kΩ, 動作温度 23.5 ~ 24 である.Fig. 6 は,GH0781JA2C(780nm 帯 ) と L808P200(800nm 帯 ) におけるメラニンの温度変化を示す. GH0781JA2C においては,783.02nm, 784.06nm, 784.74nm, L808P200においては,809.35nm, 809.01 nm, 808.67nm の波長を用いた. 結果から,808nm 帯の L808P200 に比べ,700nm 帯の GH0781JA2C は温度変化が大きいことがわかる. Fig. 7 は, 温度変化の大きい 780nm 帯の GH0781JA2C について, さらに詳しく温度変化を測定した結果である. 波長は,783.02 ~ 784.74nm の 6 種類とした.Table 2 は Fig. 7 における動作電流と波長の関係を示す. 結果から,784.74nm がもっとも温度変化が大きいことがわかる. Fig. 8 は, 波長と温度変化の関係 (787.4nm を基準としたときの比率,90 秒後 ) を示す.784.74nm での温度変化を 1 としたときの, 他の波長での温度変化の比率を表した. 図中の数値は, スポット系, 総出力, 半値幅を示す. スポット径 :d, 総出力 :p, 波長 :δ λ を変化させた結果,784.74nm と同じ温度変化を示す波長もあるが,784.74nm の波長のときに温度変化が 1 番大きいことがわかる. また, 半値幅程度 (0.6nm) ずらすと, 温度変化に大きな変化がみられた. Table 2 A relation between operating current and wavelength (GH0781JA2C). 電流 [ma] 波長 [nm] 85 783.02 110 783.71 125 784.06 141 784.40 158 785.09 144 784.74 [] 40 35 30 GH0781JA2C L808P200 GH0781JA2C 783.02nm 25 GH0781JA2C 784.06nm GH0781JA2C 784.74nm 20 L808P200 809.35nm L808P200 809.01nm L808P200 808.67nm 15 0 20 40 60 80 100 1.05 1 0.95 0.9 0.85 0.8 0.75 0.7 d=1.05nm p=63.20mw =0.6nm d=1.05nm p=50.50mw =0.7nm d=0.89nm p=56.56mw =0.6nm d=0.94nm p=56.56mw =0.6nm 0.6nm 784.74nm 782.5 783 783.5 784 784.5 785 785.5 786 [s] Fig. 6 Temperature rise in melanin. [nm] Fig. 8 A relation between wavelength and temperature rise. 40 35 [] 30 783.02nm 25 783.71nm 784.06nm 20 784.4nm 785.09nm 784.74nm 15 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 [s] Fig. 7 Temperature rise in melanin (780 nm bands).

16 Med Imag Tech Vol.30 No.1 January 2012 6. 考察一般に短波長側の吸収が大きいとされてきたが, 今回の実験では 784.74nm と途中の波長に大きな吸収があることがわかった. 波長を 1nm 程度の変化をさせて実験を行ったところ温度変化が生じた. 色素と光の相互作用で温度変化が大きく変わっていると考えられるが, 現在のところは詳細がわかっていない. 今後は, 色素の濃度, 色素の形状などを変えて, さまざまな実験データを整理して, その原因を究明したいと思う. 今回は, 現在所有している半導体レーザー (GH0781JA2C,L808P200) で変化可能な波長域で実験を行った. さらに効果的な波長があるかもしれないため, 他のレーザーを用いて広範囲な波長域での検索を行いたい. 今後は近赤外のレーザーを用い, 発振波長, パルス幅, 時系列の影響などについて調査を行う. 実際の商品として用いる場合はスポット径を広げるために, より高出力のレーザーが必要となるが, 数万円程度で 2W 程度の半導体レーザーが入手可能である. スポット径 1mm で 250J/cm 2 程度のエネルギー密度が得られる. 7. まとめ本研究では, 脱毛や色素性疾患治療に利用可能な近赤外半導体レーザーを模索すべく, メラニンをサンプルとして, サンプル温度の上昇におけるレーザー波長依存性を調査した. その結果, 波長が 784.74nm のときに温度変化が大きいことがわかった. 今後は, レーザーの最適な強 度,CW とパルスの違いについての実験を行い, 高効率化を図る予定である. 文献 [1] Maiman TH: Stimulated optical radiation in ruby. Nature 4736: 493-494, 1960 [2] Anderson RR, Parrish JA: The optics of human skin. J Invest Dermatol 77: 13-19, 1981 [3] Anderson RR, Parrish JA: Selective photothermolysis: Precise microsurgery by selective absorption of pulsed radiation 220: 324-527, 1983 [4] Goldman MP: Treatmant of Cutaneous Vascular Lesion: Cutaneous Laser Surgery, edited by Goldman MP et al. CV Mosby Co, St. Louis, 1994, pp1-82 [5] Rey BA: Treatmant of port wine stains during childhood with the flashlamp pumped dye laser. J Am Acad Dermatol 8: 61-67, 1991 [6] Bailin PL, Ratz JL, Wheeland RG: Laser therapy of the skin, A review of principles and applications. Derm Clin 5: 259-285, 1987 [7] Goldman L, Blaney DJ, Kindel DJ et al: Effect of the laser beam on the skin, Preliminary report. J Invest Derm 40: 121-122, 1963 [8] 部合学, 内園岳志, 粟津邦男 : 基礎レーザーと生体硬組織の相互作用. 日本レーザー医学会誌 25: 323-331, 2005 [9] 小野一郎 : 皮膚の色素異常症に対するレーザー治療の原理. 波利井清紀監, 谷野隆三郎編 : レーザー治療最近の進歩. 克誠堂出版,2004, pp108-116 [10] Niemz MH: Laser-tissue interactions. Springer-Verlag, Berlin: 3, 1996 [11] Acland KM, Barlow RJ: Lasers for the dermatologist. British Journal of Dermatology 143: 244-255, 2000 [12] Photo GenicaV, ジェイメック株式会社 [13] 福田光洋, 谷藤学 : 内因性信号の光学的イメージング. 生物物理 41: 251-254, 2001 [14] 粟津邦男 : 赤外レーザー光の医療応用最前線. レーザー研究 28: 291-297, 2000 [15] Palomar Superlong Pulse Diode Laser System Clincal Data. Palomar Medical Technologies Inc, PN 1853-0005 REV B, 2000 河本敬子 ( こうもとけいこ ) 2003 年岡山理科大学大学院工学研究科博士課程修了. 工学 ( 博士 ).2003 年広島商船高専助手,2004 年日本文理大学工学部講師,2005 年近畿大学生物理工学部講師, 現在に至る. 進化計算法などの知能情報学の研究に従事. 電子情報通信学会, 情報処理学会, 日本美容皮膚科学会会員. 桒島史欣 ( くわしまふみよし ) 1999 年福井大学大学院工学研究科博士後期課程修了. 工学博士.2001 年広島商船高専助手,2005 年鹿児島高専助教授,2009 年福井工業大学電気電子情報工学科准教授, 現在に至る. レーザーカオスの研究に従事. 物理学会, 応用物理学会, 電子情報通信学会, 電気学会会員. * * *