日血外会誌 5巻4号 606 図1 来院時大腿部CT像 浅大腿動脈 叫 大腿深動脈 左外側大腿回旋動脈 出血 一 リンパ液の貯留 7.2 g/d/. BUN 49mg/d/. クレアチニン3.2 外側大腿回旋動脈瘤の下行枝は直径25 mg/d/と腎 に拡大し 機能不全を認めた 白血球数186X102/mm3であった 内腔全周にわたって壁在血栓を認める 左大腿深動脈 が 貧血はなく 肝機能 電解質も異常を認めなかっ も約9cmにわたって13 た 動脈径は上行4.2 cm, CT検査 図1 :右大腿深動脈は直径60 2.8 3.0cm, に拡大 に拡張している なお,大 弓部4.0 cm, 下行3.0 cm. 腹部 大腿2.0 cmと全体に拡大がみられた し 瘤内に壁在血栓を認める 瘤の後外側壁に一部不 右大腿深動脈瘤破裂に対して緊急手術を行った 明瞭な部分があり 周囲の筋肉内への出血を思わせる 術中血管造影写真(図2):動脈瘤を穿刺して造影し 像を認める 瘤前面内側には液体の貯留を認める 左 た 32 16 の不整紡錘状の大腿深動脈瘤と起始部 の拡大した外側大腿回旋動脈が造影された 瘤周囲へ の造影剤の流出は認められなかった 手術(図3):右大腿部を20 cm 縦切開し 大腿深動 脈瘤を露出した.95 60の大きさの瘤が外側大腿 回旋動脈分岐直後から起始し 後壁で破裂して筋肉内 に血液が浸潤していた 瘤周辺にはリンパ液が貯留し 筋肉間の脂肪 結合組織を膨化させていた 大腿静脈 は瘤前面に薄く張りついたように圧排され 剥離が困 難であった 瘤両端を切断し 8 Gelseal人工血管 で置換した さらに,直径5mmの外側大腿回旋動脈を 人工血管に吻合した 瘤は血栓摘除後 分枝血管を縫 合閉鎖して縫縮閉鎖した 術後血管造影により 左内腸骨動脈起始部の瘤化と 左大腿深動脈の拡張および左外側大腿回旋動脈下行枝 の瘤が認められたが(図4) 術後経過は良好で,ARと ともに経過観察として退院した. 図2術中血管造影写真 1994年9月13日安静時の胸部圧迫感を訴えて来院 4 :右大腿深動脈瘤 右外側大腿回旋動脈の起始部 した 心エコー検査で3度の僧帽弁閉鎖不全(MR)と 78
前田ほか 外側大腿回旋動脈瘤と破裂性大腿深動脈瘤 = =知 607 靫H日日 11永仁4j111 I111441 F肺ム勺FF びtドに 4t --' -- -^ rrs -- * - 旨長 1996年6月 / 図5 左外側大腿回旋動脈瘤手術 総大腿動脈 浅大腿動脈 外側大腿回旋動脈 図3 初回手術所見 瘤 大腿深動脈瘤 大伏在静脈 大腿神経枝 総大腿動脈 浅大腿動脈 外側大腿回旋動脈 大腿深動脈瘤 0 浅大腿静脈 2度のARによる心不全と判明した 3ヵ月後の心臓 カテーテル検査では冠動脈狭窄は認められず ARが 2度存在するも 心不全の改善により MRは消失して いた 血圧167/84(119) Hg,平均肺動脈俣入圧10 Hg,心係数は2.71/分/ であった CT検査 人工血管置換された右大腿動脈の拡大は 認めなかった 左外側大腿回旋動脈下行枝の瘤は直径 28 で 血栓内に8mmの血流路が認められた 左 大腿深動脈は直径17 に拡大していた 手術(図5):翌年1月18日大動脈弁置換術に引き 続いて左外側大腿回旋動脈の血行再建を行った 直径 8mmの外側大腿回旋動脈基始部から数mm末梢で 下行枝が85 28 の瘤を形成していた 瘤壁は動脈 硬化病変が強く脆弱であった 瘤は縫縮閉鎖した 外 側大腿回旋動脈起始部断端は縫合閉鎖後 テフロン meshで被覆した 末梢側は脆弱なために硬い人工血管 は吻合できないと考え 大伏在静脈片を介して浅大腿 動脈に吻合した なお大腿深動脈起始部は直径8 であった 術後下肢血行と心機能は良好であったが 特発I生腎 破裂 カリニ肺炎を生じて半年後に死亡した 考 察 図4 術後血管造影 DSA 末梢動脈瘤は腹部動脈瘤の約5 といわれており 腹部大動脈は伸展 屈曲し 左内腸骨動脈起始部と左大腿 深動脈および左外側大腿回旋動脈の下行枝 4 に瘤を認 その42 が大腿動脈に発生している4) 大腿動脈系に める 右大腿深動脈は良好に修復されている の間 発生する瘤の中でも大腿深動脈瘤は1 にすぎない5) 79
608 日血外会誌 5巻4号 われわれの検索し得た範囲では 古谷らの本邦統計6) 置ないし切除術で十分で 血行再建の必要はない 太 をも参照すると外傷性 医原性を除き 真性大腿深動 い大伏在静脈が短かったため 浅大腿動脈からバイパ 脈瘤は本邦で71例目であり 両側性としては10例目 スしたが 浅大腿動脈は閉塞性動脈硬化症を生じやす である 他の部位の動脈瘤が併存(31 6))しているこ いので 本例の場合 外側大腿回旋動脈瘤は腔置縫縮 とも多い5 6).本例は両側性で左内腸骨動脈起始部にも し むしろ左大腿深動脈を総大腿動脈から再建すべき 瘤が存在した 男性が圧倒的に多い6) であった 動脈壁が脆弱であったり 分枝状再建が必 外側大腿回旋動脈瘤は文献上4例目であり1 要ならば静脈グラフトが有利である 直状再建では人 3),きわ 工血管の成績も良好である12) めてまれな動脈瘤である 外側大腿回旋動脈と大腿深 動脈は発生が異なるため 総大腿動脈からの分岐形態 おわりに はさまざまで1) 本例は両側とも総大腿動脈から互い に接して起始していた 一般に外側大腿回旋動脈は上 きわめてまれな外側大腿回旋動脈瘤を伴う両側性真 行 横行 下行枝の3枝に分枝する 本例の左外側大 性大腿深動脈瘤の1例に 血行再建を行ったので報告 腿回旋動脈は上行枝がなく 細い横行枝を分枝した末 した 梢で下行枝が瘤を形成していた 真性末梢動脈瘤は大部分動脈硬化に起因する5-7)本 文 献 例の動脈瘤も動脈硬化性病変を呈していた 大動脈拡 1 Feldman, 大のない例もあるが8) 本例は動脈系全体の拡張があ isolated atherosclerotic aneurysm of lateral femo- ral circumflex artery. Surgery, 90 : 914 916, り 動脈壁は弾性に富んでおり 閉塞性動脈硬化症を A. J. and Berguer, R. : Rupture of 1981. 生じる通常の動脈硬化性病変とは異なるように思われ 2) る 本邦報告例の半数以上が70歳を超えた老人で,多 Lancashire, M. J. R. and rysm of lateral circumflex 発病変としてみられることを考慮すると 拡張性病変 Galland, femoral R. B.:Aneuartery in associ- ation with multiple atherosclerotic の基盤の上に 動脈硬化が加わったと考えたい Ann. 大腿深動脈瘤も外側大腿回旋動脈瘤も無症状に経過 3 羽賀将衛 笹嶋唯博 稲葉雅史他 外側大腿回旋 し 深部に存在するため 偶然発見されるか 破裂に 動脈瘤と大腿深動脈瘤の1例 日血外会誌 4: より発見されることが多い1 5 6 9) 瘤の拡大に伴い 大 571-575, 腿神経や大腿静脈を圧迫すると 下肢の疼痛や腫 4) Vase. Surg 6 : 289-29 1 1992. 1995. Crawford, E. S DeBakey, M. E. and A,: Surgical considerations 脹1.6.10.11)ないしは本例のように静脈瘤の発生をみる aneurysms. しかし このような症状を呈する例は小数であり 大 5) 部分が拍動性腫瘤の触知か疼痛を主訴とする 大腿深 Pappas, Arch. Cooley, of peripheral Surg 78 : 226-238, D. arterial 1959. G Janes, J. M Bernatz, P. E. et al.: Femoral 動脈瘤の本邦例の約半数は破裂により発見されてい aneurysms. aneurysms. ment. JAMA, Review of surgical manage- 190 : 489-494, 1964. る6).激痛を主訴とする場合は瘤破裂を疑うべきであ 6 古谷四郎 大守規敬 宇高徹総他 大腿深動脈瘤 る の1例 日臨外医外誌 53 全身状態が許せばすべて手術適応となる 手術は浅 7 荻野敦弘 佐藤伸一 園山輝久他 急速に増大し 大腿動脈に狭窄病変がなければ瘤の結紫ないし切除だ た両側大腿動脈瘤の1例 日臨外医会誌 51: けでもよいが 大腿深動脈は重要な下肢の側副血行を 798-801, なすものであり 血行再建が第1選択である 本例は 8 Ratto, G. B,Sacco, A, Canepa, G. et al.: Athero- sclerotic aneurysm femoral 右大腿深動脈を人工血管を用いて解剖学的に再建し 9) 放置した 左外側大腿回旋動脈は大伏在静脈を用いて Tait, W. of the deep Surg 25 : 574-576, F., Vohra, more 腿骨頚部および大腿骨頭の栄養血管であるが 本例の rysms of ように内側大腿回旋動脈が開存している症例では瘤腔 80 dangerous artery. J. 1984. R. K., Carr, H. M. H. et al.: True profunda femoris aneurysms 浅大腿動脈からバイパスした 外側大腿回旋動脈は大 1992. 1990. Cardiovasc. 左大腿深動脈瘤は手術が長時間になるのを避けるため : 3042-3047, than : Are they other atherosclerotic the femoropopliteal segment? Ann. aneu-