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育するミクロフローラの中に何らかの抗カビ性因子を分泌している微生物がいるのではのではないかと考えたのである さらに パネットーネ が食品であるゆえに もし抗カビ性因子が微生物によって分泌されているとしたら その因子は次のような特性を持つことが予測された (1) 人体に対して無害であること (2) 加工の際に加熱操作が入るので 耐熱性であること そこでわれわれは ミラノ大学農学部応用微生物学研究室の協力を得て イタリアで入手した家伝のパン種から分離した酵母菌と乳酸菌を得 抗カビ性因子が分泌されていないかどうかのスクリーニングを行った その結果 強い抗カビ活性を示す酵母菌と乳酸菌の分離に成功した なかでも パネットーネ乳酸菌 Lactobacillus sanfranciscensis#2 は 強い抗カビ活性を示したことから この菌が分泌するする抗カビ性因子に関する解析を行ってきた 2. 研究の目的われわれは これまでの研究から 北部イタリアの天然酵母パン パネットーネ の母生地から分離した乳酸菌 (Lactobacillus sanfranciscensis) の培養上清に グラム陰性 陽性の双方の細菌およびカビの生育抑制能があることを発見した この因子の作用点を調べたところ DNA 合成阻害活性があることが見出された これまで細菌類全般と真菌類に対して生育抑制能があり DNA 合成阻害を作用点とする抗生物質はニューキノロン系の薬剤のみであったが 今回発見した因子の分子量は 500 以下と小さいことから ニューキノロン系以外の新規な抗生剤であることが期待される 本研究は この DNA 合成阻害因子の分離精製および化学構造の決定を目指すとともに 本因子の医薬品としての諸性状を調べることを目的とする 3. 研究の方法列挙すると以下のような事柄である (1) 抗カビ性因子を分泌している乳酸菌の同定を行った (2) 抗カビ性因子を分泌する乳酸菌株から得た抗カビ性因子の精製標品について 作用点を明らかにすることによって 既存の抗菌剤と同じ薬効を示すのか それとも新規な作用機作を有する物質であるのかを調べた (3) 抗カビ性因子の高活性画分と低活性画分をさまざまな条件下で LCMS による差異分析を行うことに 抗カビ性因子の同定とその化学構造解析を試みた 4. 研究成果 (1) リボソーム RNA の解析イタリアで採取したパネットーネ母種から分離した乳酸菌 8 株の rrna スペ - サー配列の塩基配列を分析し 同定解析を行った 比較株として Lactobacillus casei Shirota 株を用いた PCR 増幅の結果は図 1 の通りである 増幅産物について rrna スペ - サー配列の塩基配列を分析した結果 今回分析したすべての株の DNA 配列が 100% 一致した このことより 分離した乳酸菌株の全てが パネットーネ乳酸菌として最もよく分離されてきている Lactobacillus safrancisensis であることが判った (2) 抗カビ活性因子の作用点の解析 これまで得た抗カビ活性因子の特性から いくつかの作用点を推察し検討を重ねてきた結果 DNA 合成阻害活性が見いだされたので その実験経過の概要をここに報告する DNA 合成阻害活性の解析には Inspiralis 社の検査キットを用いて DNA Gyrase Super Coiling Assay TOPOISOMERASE Ⅳ Relaxation Assay TOPOISOMERASE Ⅳ Decantenation Assay の 3 つの解析を行なって DNA 合成のどのステップを阻害しているのかを調べた コントロールには ニューキノロン系の norfloxacin を用いた 参考までに この Assay の原理図 ( 図 2) を次に示す

図 2.DNA 合成阻害活性解析の原理 Gyrase Assay の電気泳動の結果は 次の図 3 の通りである 通常 DNA は Gyrase の働きによりねじれを形成し 超らせん構造をとるため 移動距離が大きい しかし 抗カビ性因子を含むレーンではバンドの移動距離が小さいことが確認できた これは Gyrase の働きが阻害されていることを示す 従って 抗カビ性因子は Gyrase による超らせん構造の形成を阻害している TOPOISOMERASE Ⅳ Decantenation Assay の電気泳動の結果は 次のページの図 5 の通りである kdna は 小型環状 DNA が連環状の高分子ネットワークを形成している高分子であるため アガロース電気泳動ではゲルに侵入できない kdna は TOPOISOMERASE Ⅳ との特異的な反応で これを遊離し容易にゲル中を移動することにより移動距離は大きくなると考えられる しかし 抗カビ性因子を含むレーンではバンドの移動距離が小さいことが確認された これは TOPOISOMERASE Ⅳ が連結した小型環状を遊離させる働きを阻害していることを示す 従って 抗カビ性因子は TOPOISOMERASE Ⅳ の連結した小型環状二本鎖の DNA 分子を遊離する働きを阻害し DNA の複製を阻害しているということが言える TOPOISOMERASE Ⅳ Relaxation Assay の電気泳動の結果は 図 4 の通りである 通常 DNA は TOPOISOMERASE Ⅳ の働きにより超らせん構造を緩和させ 弛緩構造をとるため移動距離が小さい しかし 抗カビ性因子を含むレーンでは バンドの移動距離が大きいことが確認された これは TOPOISOMERASE Ⅳ の Relaxation の働きが阻害されていることを示す 従って 抗カビ性因子は TOPOISOMERASE Ⅳ の Relaxation の働きを阻害し DNA の複製を阻害しているということが言える 目的としている抗カビ性因子は 細菌が増殖するために欠かすことのできない DNA 合成関連酵素を阻害しているということが 3 つの Assay によって示唆された 3 つの結果に共通していることは 抗カビ性因子の希釈倍率が原液の 16 倍希釈と最も高いレーンにおいて 抗カビ性因子の効果が薄れ DNA 合成関

連酵素の働きを阻害していないという結果が確認された また Gyrase と TOPOISOMERASE Ⅳ を特異的に阻害するとされるポジティブコントロールの norfloxacin を反応させたレーンは 3 つの結果ともに DNA 合成関連酵素の阻害を確認することができたので きちんとコントロールがとれていることが示された norfloxacin の溶媒である酢酸は 結果に影響を及ぼさなかった 従って 3 つの結果とも 阻害作用を示していないことが確認でき norfloxacin の特異的反応を確認できたことになる これらの結果から 抗カビ性因子は DNA 増殖を抑制する効果があり カビや細菌類の増殖を抑制するのであろうことが示唆された (3) 抗カビ性因子の同定 Lactobacillus sanfrancisensis#2 の培養液から抗カビ活性の高い画分と低い画分を得て LCMS を用いた差異分析によって抗カビ活性成分の同定を試みた 当初 候補成分と考えられたのは 274 と 358 の分子量を示す成分であるが その後 別条件で解析した結果 そのマスクロマトグラムからは有意差が認められなかった 274 については ある分析条件下で 9.6 分に出現したが 不活性成分の強度が 10 倍近い強度で出現した また 358 については強度が弱く断定することができなかった 負イオン検出を行ったところ 当初の解析条件と同様に硫酸成分 (97) については有意差が検出されたが 乳酸 (89) については有意差が認められなかった 有意差のある 1.8 分の UV ピークについて評価したところ乳酸に相当する成分が重なり 特定できなかった 個々の LCMS による解析結果は 今後 特許出願 および 学術論文への投稿予定があるので ここでは参考データのみを次の図 6 に示す 有力な候補物質として上がった硫酸については 前出の DNA 合成阻害活性を調べた結果 その阻害パターンが精製品と異なることから 追い求めている抗カビ性因子ではないことが推察された 274 前後のピークに有意差のある 230 と 318 が観察された 318 はエチレングリコールに相当する その未知成分の組成式も求めることが出来た アミノ酸の Leu(132) と Phe (166) に有意差が認められた 以上の結果をまとめると 抗カビ活性画分に特異的に検出された成分は 1 エチレングリコール 2 未知の成分 3 硫酸 4 ロイソン 5 フェニルアラニンの 5 つである このうち 145 については 抗カビ性が認められない物質であるので 活性成分の候補物質から除外される 3 については 乳酸菌が分泌することが考えにくいことと さらに エーテル抽出の操作において脱水剤として硫酸マグネシウムを使用していることから これが 昨年と今年の両実験において残留物として検出された要因とも考えられるので 目的因子の候補からは除外した 目的としている抗カビ性因子は グラム陰性 陽性菌の双方 および カビに対して抗菌性を示しているが このような抗菌スペクトルを示す薬剤は発見されておらず その抗菌スペクトルの特性と分子量から推定すれば 未同定の本因子は 新しいタイプのニューキノロン系化学療法剤の類縁物質ではないかと期待される 求めている抗カビ性を示す活性成分は 2 の未知成分が候補として残された 組成式が判明しているので 現在 推定される化学構造式を割り出しており その結果をもとに 目的物質を絞り出して 個々の物質について検討を重ね 最終的には 目的物質であることの確認と その化学構造を割り出したい 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 1 件 ) 1 甲斐達男 古川加織 最近のイタリアンパネットーネの製パン法 査読有 16 巻 2012 103-112 図 6.LCMS の解析データの例 その他 ホームページ等 http://www.seinan-jo.ac.jp/university/a ccount/kai/

6. 研究組織 (1) 研究代表者甲斐達男 (KAI TATSUO) 西南女学院大学 保健福祉学部栄養学科 教授研究者番号 :60331899 (2) 研究分担者尾上均 (ONOUE HITOSHI) 西南女学院大学 保健福祉学部栄養学科 教授研究者番号 :70221166 水間智哉 (MIZUMA TOMOCHIKA) 西南女学院大学 保健福祉学部栄養学科 準教授研究者番号 :40555504 田代幸寛 (TASHIRO YUKIHIRO) 西南女学院大学 短期大学部 準教授研究者番号 :90448481 ( 平成 22 年度 ~ 平成 23 年度 ) (3) 連携研究者杉元康志 (SUGIMOTO YASUSHI) 鹿児島大学 大学院 先端応用生命科学教授研究者番号 :10100736 以上