Clinical ques,on 2014 年 10 月 06 日 JHOSPITALIST Network 高齢者のせん妄 亀田総合病院総合内科 後期研修医安藤尚子 監修佐田竜一 分野 : 精神科テーマ : 予防 診断 治療

Similar documents
幻覚が特徴的であるが 統合失調症と異なる点として 年齢 幻覚がある程度理解可能 幻覚に対して淡々としている等の点が挙げられる 幻視について 自ら話さないこともある ときにパーキンソン様の症状を認めるが tremor がはっきりせず 手首 肘などの固縮が目立つこともある 抑うつ症状を 3~4 割くらい

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F F696E74202D CE899E97CD8CFC8FE395D22882B982F196CF29>

PowerPoint プレゼンテーション

抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

認定看護師教育基準カリキュラム

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

せん妄の基本

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

<4D F736F F F696E74202D EA8E93A1817A FA8DDD96F28A7789EF837C E815B8E9197BF2E707074>

CAM-ICU

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

減量・コース投与期間短縮の基準

スライド 1

医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度


糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

めまい

北4階病棟学習会  2013/6/24 せん妄治療のポイント

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

帝京大学 CVS セミナー スライドの説明 感染性心内膜炎は 心臓の弁膜の感染症である その結果 菌塊が血中を流れ敗血症を引き起こす危険性と 弁膜が破壊され急性の弁膜症による心不全を発症する危険性がある 治療には 内科治療として抗生物質の投与と薬物による心不全コントロールがあり 外科治療として 菌を

PowerPoint プレゼンテーション

「             」  説明および同意書

ICUにおける 鎮痛・鎮静・せん妄管理

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

参考資料 ICD-11 β 版和訳改訂案 和訳の候補 1 候補 2 候補 3 は 採用したい順としています 担当 原文 (4 月 25 日 /8 月 19 日 /2017 年 4 月 7 日現 在 ) 和訳候補 1 和訳候補 2 和訳候補 3 薬物 依存関連 アルコール学会 担当 Disorders

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

心房細動1章[ ].indd

賀茂精神医療センターにおける精神科臨床研修プログラム 1. 研修の理念当院の理念である 共に生きる 社会の実現を目指す に則り 本来あるべき精神医療とは何かを 共に考えて実践していくことを最大の目標とする 将来いずれの診療科に進むことになっても リエゾン精神医学が普及した今日においては 精神疾患 症

パスを活用した臨床指標による慢性心不全診療イノベーション よしだ ひろゆき 福井赤十字病院クリニカルパス部会長循環器科吉田博之 緒言本邦における心不全患者数の正確なデータは存在しないが 100 万人以上と推定されている 心不全はあらゆる心疾患の終末像であり 治療の進步に伴い患者は高齢化し 高齢化社会

Microsoft PowerPoint - 参考資料

非心臓手術後高齢者のせん妄予防にデクスメデトミジンは有効か?

アルコールせん妄の 診断と予防

プラザキサ服用上の注意 1. プラザキサは 1 日 2 回内服を守る 自分の判断で服用を中止し ないこと 2. 飲み忘れた場合は 同日中に出来るだけ早く1 回量を服用する 次の服用までに 6 時間以上あけること 3. 服用し忘れた場合でも 2 回量を一度に服用しないこと 4. 鼻血 歯肉出血 皮下出

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

untitled

助成研究演題 - 平成 27 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 改良型 STOPP を用いた戦略的ポリファーマシー解消法 木村丈司神戸大学医学部附属病院薬剤部主任 スライド 1 スライド 2 スライド1, 2 ポリファーマシーは 言葉の意味だけを捉えると 薬の数が多いというところで注目されがちで

Microsoft Word - 都道府県向け報告書

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

PowerPoint プレゼンテーション

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

PowerPoint プレゼンテーション

頭頚部がん1部[ ].indd

適応病名とレセプト病名とのリンクDB

臨床No208-cs4作成_.indd

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも 甲状腺機能低下症を甲状腺ホル モン薬の補充でしっかりとコントロールしておくのが無難と考えられます 3) 胎児 新生児の甲状腺機能低下症 胎児の甲状腺が生まれながらに ( 先天的に ) 欠損してしまう病気があります 通常 妊娠 8-10 週頃

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

ポプスカイン0.75% 注シリンジ 75mg /10 院 Popscaine 75mg /10 院 / 筒 丸石 薬価 円 / 筒 効 硬膜外麻酔 用 ( 注 )1 回 150mg ( 本剤として20 院 ) までを硬膜外腔に投与 禁 大量出血やショック状態, 注射部位またはその周辺に

2005年 vol.17-2/1     目次・広告

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

PowerPoint プレゼンテーション

函館市認知症ケアパス

高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

PowerPoint プレゼンテーション

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

岸和田徳洲会病院 当院では以下の研究に協力し情報を提供しております この研究は 国が定めた指針に基づき 対象となる患者さまのお一人ずつから直接同意を得るかわりに 研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開しています 研究結果は学会等で発表されることがありますが その際も個人を特定する情報は公表し

ここが知りたい かかりつけ医のための心不全の診かた

認知症治療薬の考え方,使い方

Transcription:

Clinical ques,on 2014 年 10 月 06 日 JHOSPITALIST Network 高齢者のせん妄 亀田総合病院総合内科 後期研修医安藤尚子 監修佐田竜一 分野 : 精神科テーマ : 予防 診断 治療

症例 腎盂腎炎で 4 日前に入院した 84 歳女性血液培養陽性で合計 14 日間の治療予定 入院 2 日目の夜より 大きな声を上げる 噛み付くなど暴れて落ち着かない 既往歴 : 高血圧認知症慢性腎不全 病棟よりコール 先生 さんがせん妄なんです 何とかしてください!

Clinical Ques,on 1. せん妄の診断はどのようにすべきか 2. せん妄はどのように治療するべきか 3. 予防法は?

Lancet 2014; 383: 911 22 せん妄 ; 環境別の頻度 内科 入院環境一般内科老年内科 ICU 脳卒中後 発症率 11-14% 20-29% 19-82% 10-27% 外科 入院環境 発症率 心臓手術後 11-46% 非心臓手術後 13-50% 高齢者入院患者の 20-29% に発症 せん妄の影響 事故 転落数の増加 RR 1.3 発症 <1 年の死亡率上昇 RR 1.9 施設入所率の増加 RR 2.5

せん妄 DSM- 5 基準 A 注意を向け 集中し 維持し 他に転じる能力や 環境認識の障害がある B その障害は短期間のうちに出現し 1 日のうちで重篤さが変動する傾向がある C 新規の認知機能障害の発現がある ( 記憶欠損 見当識障害 言語障害 知覚障害 視空間能力障害など ) D A と C の障害は 既存の 確立された あるいは発症しつつある認知症では十分に説明できず 昏睡など重篤な覚醒水準の低下を背景に生じたものではない E その障害が 別の身体疾患 物質の中毒 離脱 毒物への暴露などの直接的な生理学的結果によるものか 複数の病因により引き起こされたものである A- E をすべて満たすものをせん妄と診断する 1) 身体疾患や中毒 離脱の結果として生じ 2) 急性で変動する新規の意識障害 認知機能障害で 3) 昏睡等 他の意識障害が除外できるもの 精神科治療学 28(8); 978, 2013 一部改変

せん妄の分類 せん妄 離脱せん妄 ( アルコール ベンゾジアゼピン系薬剤 ) 一般身体疾患によるせん妄 過活動性せん妄興奮 幻覚 妄想など 過活動性を認める低活動性せん妄無表情 無気力 傾眠など 低活動になる 混合性せん妄 過活動 / 低活動が混在 離脱せん妄と低活動性せん妄を見逃さない事が重要!! N Engl J Med 2006;354:1157-65 Lancet 2014; 383: 911 22

せん妄の危険因子 : 準備因子 患者背景 1 つのせん妄発症には複数の因子が関与! 高齢 慢性期の脳血管障害 認知症 etc 直接因子 単独でせん妄の原因となる 因子 誘発因子 せん妄を助長する因子 中枢神経疾患 : 脳血管障害 腫瘍 髄膜炎 etc. 代謝性疾患 : 高血糖 低血糖 肝 / 腎不全 etc. 内分泌疾患 : 甲状腺 副腎機能不全 etc. 依存薬物の離脱 : アルコール 抗不安薬 etc. 感染症 薬剤 : 抗コリン薬 睡眠薬 抗不安薬 steroid H1/H2blocker opioids etc. 入院による環境変化 睡眠妨害要因 精神的ストレス : 不安 抑うつ etc. 身体的ストレス : 痛み 痒み 頻尿 身体拘束 カテーテル挿入 etc. Delirium: J.Lipowski; Oxford University Press, 1990 改変

直接因子の特定 もし最初の症例が バイタルはどうですか?? 血圧 75/40 脈拍 120 SpO2 測定できません という状況だったら Ø 何らかの原因によるショックを背景とした意識障害かもしれない! Ø せん妄を疑ったら まずは意識障害を起こしうる直接因子の検索と加療を優先!! Ø 漫然と対症療法のみで経過を見てはいけない

CAM での診断アプローチ (Confusion Assessment Method) 1. 精神状態変化の急性発症 or 変動性の経過 2. 注意機能障害がある 3. 混乱した思考がある 4. 意識レベルの変化がある 1と2は必須 さらに3または4があればせん妄と診断 65-98 歳の 2 施設における内科病棟入院患者 56 名の前向き cohort CAM の偽陰性率を 精神科医の DSM- ⅢR に準拠したせん妄診断と Geriatrician の CAM によるせん妄の診断を比較して検証 感度特異度陽性的中率陰性的中率 施設 1 100% 95% 91% 100% 施設 2 94% 90% 94% 90% Ann Intern Med. 1990; 113(12): 941-948

せん妄の治療 Cochrane Database Syst Rev. 2007 18;(2):CD005594 Psychiatry and Clinical Neurosciences 2007;61:67-70 まずは直接因子の治療が最優先 その上で どうしても必要なら薬物治療 日本でせん妄に適応外使用が認められている抗精神病薬 経路一般名 ( 商品名 ) 注意点 経口 静注筋注 リスペリドン ( リスパダール ) 半減期 21h クエチアピン ( セロクエル ) 半減期 3h ペロスピロン ( ルーラン ) 半減期 2h ハロペリドール ( セレネース ) 半減期 24h 腎障害 (<Ccr50) の場合 排泄遅延による過鎮静 急激に耐糖能を悪化させうるため糖尿病では原則禁忌 国産薬で 有効性は小規模の報告のみ腎障害 糖尿病でも使用可能 Parkinsonism が頻発経口不能なときのみ使用 唯一保険適応なのは 脳梗塞後のせん妄 に対するチアプリド ( グラマリール ) のみ

離脱せん妄との区別 Ø 離脱せん妄には抗精神病薬は無効 かつ痙攣の閾値を低下させ有害となる可能性があり 治療の際は一般身体疾患によるせん妄との区別が重要 <せん妄と診断したらこれを確認!> 1) ベンゾジアゼピン系薬剤内服歴 内服量と最終内服日時 2) アルコール依存症を疑う病歴の確認 飲酒歴 最終飲酒日時 過去の離脱症状出現歴 Am Fam Physician 2005; 71: 495-502, 509-10 UpToDate2014; Management of moderate and severe alcohol withdrawal syndromes

症状 アルコール離脱の症状と時間経過 症候臨床所見最終飲酒 発症までの時間 小離脱 振戦 不安 頭痛 発汗 動悸 食思不振 消化器症状 痙攣全般性強直間代性痙攣が一般的 幻覚幻視 幻聴 触覚の異常 振戦せん妄 アルコールとベンゾジアセピン離脱 せん妄 易怒性 頻脈 高血圧 発熱 発汗 ベンゾジアゼピン離脱 振戦 不安 精神病症状 痙攣知覚障害 ( 幻視 幻聴 異常感覚 ) 6-36 時間 6-48 時間 12-48 時間 48-96 時間 24-48 時間以内が多い ( 半減期による ) Am Fam Physician 2005; 71: 495-502, 509-10 UpToDate2014; Management of moderate and severe alcohol withdrawal syndromes UpToDate2014; Benzodiazepine poisoning and withdrawal

治療開始後の注意点 1 副作用のモニタリング 嚥下機能障害 筋強剛などの錐体外路症状 過鎮静に注意 過剰に Parkinsonism の副作用が出現する場合 レビー小体型認知症 (DLB) である可能性を検討する DLB 患者の 30-50% に抗精神病薬への過敏性 投与により Parkinsonism を過剰に誘発しやすい 誘発リスク : 定型抗精神病薬 > 非定型抗精神病薬 抗精神病薬投与で DLB 患者の死亡率が 2-3 倍 BMJ 1992; 305: 673-8 UpToDate2014; Prognosis and treatment of demen,a with Lewy bodies

治療開始後の注意点 2 不要になったら終了 抗精神病薬の投与は認知症高齢者の 死亡率を上昇させる せん妄が改善したら速やかに減量 終了 認知症高齢者において 非定型抗精神病薬投与群では非投与群と比較して有意に死亡率が上昇 30 日目の死亡率 HR1.31([CI]=1.02-1.70) 180 日目の死亡率 HR1.55([CI]=1.15-2.07) Ann Intern Med. 2007; 136(11): 775-86 Am J Psychiatry 2012; 169: 71-79

せん妄の予防 1: 非薬物的介入 Ø 非薬物的介入が最も重要! <Hospital Elder Life Program (HELP) > 見当識の是正 ( 時計やカレンダーの設置 昼夜を区別 ) 活動性の向上 早期離床 ( リハビリ導入など ) 精神に影響しうる薬剤の中止減量 適切な睡眠 補液 栄養 視聴覚機能の補助 ( 眼鏡 補聴器など ) 家族のケアへの介入 ( 付き添いなどへの協力の依頼 ) Lancet 2014; 383: 911 22 N Engl J Med 1999; 340: 669 76

せん妄の予防 1: 非薬物的介入 HELP 施行によるせん妄発症率の差を検証 73-85 歳の一般内科病棟入院中の患者 852 名 Ø せん妄発症率 : 介入群 9.9%vs 非介入群 15% Odds 比 0.61[(95%CI)0.41-0.93]; P=0.02 Ø せん妄の合計日数 :105 vs 161; P=0.02 Ø せん妄のエピソード数 :62 vs 90; P=0.03 N Engl J Med 1999; 340: 669 76

せん妄の予防 2: 薬物的介入 効果的な薬物介入は無い と言われていたが Lancet 2014; 383: 911 22 ラメルテオン ( ロゼレム ) のせん妄予防効果検証 67 人の多施設プラセボ対照 RCT ICU 24 人 救急病棟 43 人 65-89 歳の入院患者 脳卒中 21 人 感染症 12 人 骨折 14 人 心不全 / 心筋梗塞 8 人 その他 12 人 せん妄発症率介入群 3%vs プラセボ群 32% RR 0.09 [(95%CI)0.01-0.69] NNT 3.44 (P=0.003) 高齢入院患者のせん妄を予防できる可能性がある JAMA Psychiatry. 2014; 71(4): 397-403

この症例の経過 Ø 診断 : 日中は落ち着いており 夕方頃から症状出現 急性発症の意識障害で変動あり せん妄と診断 Ø 関与する因子の把握 : 認知症が準備因子 腎盂腎炎が直接因子 入院が誘発因子腎盂腎炎の治療経過は良好 Ø 治療 : 飲酒歴なし腎機能低下あり 糖尿病なし リスペリドンは避け クエチアピンを選択リハビリなどで離床を図る 第 9 病日より減量し 第 12 病日に投与終了その後も安定し第 16 病日に退院

Take Home Message 意識障害 + 日内変動がせん妄診断のポイント 直接因子をしっかり探し その加療を優先 薬物治療の前に必ず離脱せん妄を除外 薬物治療開始後は副作用を評価 リスク因子を減らし可能な限り予防につとめる