資料 3 IFRS に関する最近の動向と ASBJ の対応 企業会計基準委員会副委員長小賀坂敦 2013 年 6 月 17 日 ( 本資料中の意見に係る部分は 発表者の個人的見解であり 企業会計基準委員会の公式見解ではありません )
目次 会計基準アドバイザリー フォーラム (ASAF) の設置 現在の IASB のアジェンダ 概念フレームワークの見直し 2
会計基準アドバイザリー フォーラムの設置 (ASAF) 3
ASAF の趣旨 目的 IASB と基準設定主体との関係の公式化 二国間協議 (FASB ASBJ EFRAG) から多国間協議へ ASAF の目的 公益に資するよう 高品質で理解可能な 執行可能な国際的に認められた財務報告基準の単一のセットの開発に貢献すること 基準設定プロセスにおける各国会計基準設定主体及び地域団体とIASBの関係を公式なものにするとともに効率化すること それにより IASBの基準設定に関する主要な技術的論点に関する広範囲の各国及び各地域のインプットが議論され考慮されることを確保すること 基準設定上の論点に関する効果的な専門的議論を促進すること それは 十分な深度をもって 高水準の専門的能力と自国 ( 自地域 ) について十分な知識を有する代表者により行われる 4
ASAF の概要 ASAF のメンバー 各国基準設定主体 9カ国 ( 欧州 3 AO3 米 2 アフリカ1) 地域団体(3 団体 ) 個人ではなく組織としての資格 各国 各地域での意見の集約が期待されている 2 年おきに見直し 判断基準 : 技術的な専門性 当該法域の資本市場の規模 IASBの基準設定プロセスへの当該組織の貢献 当該組織が利用できる人的資源の規模と程度 ASAF 議長 =IASB 議長 年 4 回開催 アジェンダ =IASB と ASAF メンバーが協議の上 ASAF 議長が決定する 5
第 1 回 ASAF の概要 2013 年 4 月 8 日 9 日ロンドンIASBオフィスで開催第 1 回 ASAF 参加メンバー 組織名 出席メンバー 南アフリカ財務報告基準評議会 Kim Bromfield 欧州財務報告諮問グループ (EFRAG) Franҫoise Flores 英国財務報告評議会 Roger Marshall ドイツ会計基準委員会 Liesel Knorr スペイン会計監査協会 Ana Martínez-Pina アジア オセアニア会計基準設定主体グループ (AOSSG) Clement Chan オーストラリア会計基準審議会 Kevin Stevenson 企業会計基準委員会 (ASBJ) 西川郁生 中国会計基準委員会 Liu Guangzhong ラテンアメリカ会計基準設定主体グループ (GLASS) Alexsandro Broedel Lopes 米国財務会計基準審議会 (FASB) Leslie Seidman カナダ会計基準審議会 Gord Fowler IASB 参加メンバーハンス議長 (ASAF 議長 ) 他 IASB 理事 5 名アジェンダ : 概念フレームワーク (8H) 金融資産の減損(2H) 6
ASAF の今後の予定 2013 年 7 月 3 日金融資産の減損に関する電話会議 第 2 回 ASAF=2013 年 9 月 25 日 26 日 以後 3 か月おきに開催 今後予想される主な議題 概念フレームワーク (7 月ディスカッション ペーパー公表予定 コメント期間 180 日 ) 金融資産の減損 (3 月公開草案公表済 ) リース (5 月改訂公開草案公表済 ) 保険 ( 間もなく改訂公開草案公表 ) 7
ASAF への対応 各論点に対する我が国としての統一的な意見の形成 第 1 回 ASAF 対応 アジェンダ コンサルテーションに関する協議会 ( 注 ) におけるハイレベルな意見の聴取 ( 注 ) 財務会計基準機構及び金融庁を事務局とし 企業会計基準委員会 日本経済団体連合会 日本公認会計士協会 日本証券アナリスト協会 東京証券取引所 経済産業省 法務省をメンバーとする ASBJ における ASAF 対応専門委員会の設置 8
現在の IASB のアジェンダ 9
現在の IASB のアジェンダ 2011 年から 2012 年にかけてアジェンダ コンサルテーションの結果を踏まえて 以下が現在のアジェンダとされている 概念フレームワークの見直し 金融商品 ( 分類と測定 減損 ヘッジ ) リース 保険 その他 ( 農業 料金規制事業等 ) 10
参考 : 我が国のアジェンダ コンサルテーションに対する意見 既存のIFRSの維持管理の優先概念フレームワークと開示フレームワークの優先的取組み以下の会計基準への取組み 当期純利益とOCI 公正価値測定の適用範囲 開発費の資産計上 のれんの非償却 機能通貨 減損の戻入 開示フレームワーク 11
概念フレームワークの見直し 12
概念フレームワークの見直しの概要 (1/ ) 概念フレームワークの役割 将来のIFRSの開発と現行のIFRSの見直し 個々のIFRSに規定がない事項については 概念フレームワークにおける資産 負債 収益 / 費用に関する定義 認識 測定を参照 これまでの取組み 1989 年に概念フレームワークを設定 2004 年に FASB( 米国財務会計基準審議会 ) と共同プロジェクトを開始 2010 年に総論部分を共同して改正 ( 一般財務報告の目的 有用な財務情報の質的特性 ) ただし 各論部分 ( 認識 測定等 ) は未完のままプロジェクトを中断 13
概念フレームワークの見直しの概要 (2/ ) 今回の見直しプロジェクトの概要 各論部分を 一括して検討する ( 構成要素 認識 測定 表示 開示 報告企業 ) 総論部分は 見直さない FASBとの共同プロジェクトではなく IASB 単独のプロジェクトとする ただし FASBとASBJのスタッフがプロジェクトに参加している 2015 年 9 月を完成目標とする 2013 年 7 月にディスカッション ペーパー 2014 年 8 月に公開草案を公表する計画 14
概念フレームワークの見直しの概要 (3/ ) 我が国に関連する主要な論点 当期純利益 その他の包括利益 (OCI) のリサイクリング 公正価値測定の範囲 保守主義 ( 慎重性 ) の規定 15
当期純利益 /OCI 公正価値測定の範囲 (1/ 現在の概念フレームワークの基本構造のイメージ 財務諸表の構成要素 資産 別途定義 負債 別途定義 資本 = 資産マイナス負債 収益 費用 = 当該会計期間中の資産の増加 ( 減少 ) 負債の減少 ( 増加 )( 出資者からの出資等を除く ) 16
当期純利益 /OCI 公正価値測定の範囲 (2/ ) 当期純利益 包括利益が財務諸表の構成要素とされていない 各基準ごとに OCI のリサイクリングの有無を設定 リサイクリングする OCI の例 = 債券の公正価値評価差額 在外子会社財務諸表の為替換算 ノンリサイクリングの OCI の例 = 株式の公正価値評価差額 年金の評価差額 資産 負債の測定 ( 取得原価 or 公正価値等 ) が規定されていない 各基準ごとに公正価値 / 取得原価を設定 日本基準と異なる評価の例 固定資産の再評価の ( 選択適用 ) 投資不動産の公正価値測定 ( 選択適用 ) 非上場株式の公正価値測定 17
当期純利益 /OCI 公正価値測定の範囲 (3/ ) 今回の見直しプロジェクトにおける当期純利益に関する議論 アプローチ 1A 以下の原則を設ける (2013 年 4 月 IASB 会議資料より ) 原則 1: 純損益 ( 当期純利益 ) に表示する項目は 報告期間についての企業の財務業績 (financial performance) の主要な像 (primary picture) を伝達する 原則 2: ある項目をOCIに表示することが財務業績のより適切な描写となる場合を除いて すべての収益及び費用の項目は純損益に認識すべきである 原則 3: 当該期間の財務業績に関して目的適合性のある情報をもたらす場合には 以前にOCIに表示した項目を純損益に振り替える ( リサイクル ) べきである アプローチ 1A では OCI は 全てリサイクリングされる ただし 当期純利益は定義されていない ~ 続く ~ 18
当期純利益 /OCI 公正価値測定の範囲 (4/ ) アプローチ 1B アプローチ 1A( リサイクリングする OCI) に加え 別途 一定の指標を設け OCI を認める ( リサイクリングするとは限らない ) アプローチ 2 単一の包括利益計算書とし 当期純利益についての小計を規定しない IASB は アプローチ 1( 当期純利益を設ける ) を支持している 19
保守主義 慎重性の原則 (prudence) 2010 年の概念フレームワークの改正において それ以前のフレームワークにおいて信頼性の一つの特性とされていた 慎重性 ( 保守主義 ) は 中立性と矛盾するため 財務諸表の質的特性から削除されている 第 1 回 ASAF における ASBJ の主張 : 慎重性 ( 保守主義 ) は 現行の IFRS でも多く用いられ概念は残っており 再度 見直すべき EFRAG 2013 年 4 月公表の Bulletin (Prudence-Getting Better Framework) 慎重性は概念として広く知れ渡っているが 全ての人が同じように 慎重さ を行使しているわけではないので 様々な見解 ( 支持 反対 ) が生じている これらの様々な見解は 概念フレームワークの改訂作業において 認識 測定等を検討するうえで役に立つものであり 慎重性の役割について明示的に検討すべきである 20
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