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整形外科と災害外科 66:(2)289~293, 2017. 289 伊東孝浩 上田幸輝 水城安尋 溝口孝 佐々木大 田中宏毅 内村大輝 萩原博嗣 はじめに 当院における大腿骨転子部骨折後のカットアウト症例についてその詳細を検討した. 方法 2012 年 1 月 ~2015 年 12 月までに当院で髄内釘による治療を行った大腿骨転子部骨折は 343 例で, 追跡しえた症例のうち, ラグスクリューがカットアウトした 4 例, および他院で手術されカットアウトし当院で手術を行った 1 例の計 5 例について検討した. 結果 諸家の報告ではカットアウトの危険因子として骨折型が不安定なものや複雑なもの, 解剖学的整復が得られていないもの, ラグスクリューの刺入位置など様々挙げられ,5 例中 3 例はその危険因子は重複していたが 2 例はいずれも当てはまらなかった. 全例とも術前の骨折型は回旋不安定性を認めた. 考察 カットアウトの原因は上記のような術者側の要因の他, 患者側の要因も挙げられ, 回旋不安定例や骨癒合遅延例はカットアウトの危険因子の可能性があることが示唆された. Key words: femoral intertrochanteric fracture( 大腿骨転子部骨折 ), intramedullary nailing( 髄内釘 ), cut-out( カットアウト ) Ⅰ. 背景大腿骨転子部骨折術後のカットアウトの頻度は short femoral nail( 以下 SFN) で 1.6~5.3% と報告されており 3), その原因としては諸家の報告では整復不良や tip-apex distance( 以下 TAD)20 mm 以上やラグスクリューの骨頭内の挿入不良や不安定型骨折などが挙げられる 3)4). 今回, 当院で治療した大腿骨転子部骨折 343 例のうちカットアウトした 4 例と他院で手術されカットアウトした 1 例の計 5 例を対象にカットアウトの原因を検討した. Ⅱ. 対象および方法 2012 年 1 月 ~2015 年 12 月までに当院で SFN を用いて治療した大腿骨転子部骨折 343 例 ( 大腿骨頚基部骨折を除く ) のうちカットアウトした 4 例 (1.2%) と他院で SFN を用いて治療されカットアウトした 1 例の計 5 例を対象に検討した.5 例の内訳は全例女性で, 平均年齢 83.2 歳 (65~92 歳 ) であった. 使用インプラントは Stryker 社製の Gamma 3 が 2 例,Stryker 社製の Gamma 3 long nail が 1 例,Depuy-Synthes 社製の AFFIXUS が 1 例,MIZUHO 社製の CHY ⅡNail が 1 例であった.1 受傷時の骨折型 (Jensen 分類 ),2 受傷時の近位骨片の位置 ( 正面像, 側面像 ), 3 回旋不安定性,4 TAD,5 術後 2 週時スライディング量 ( 平中法 ),6 術後の整復位 ( 生田分類, 宇都宮分類 ),7ラグスクリュー先端の位置(9 分割法 ), 8カットアウトまでの期間,9 術後の活動性について各症例ごとに検討した. 回旋不安定については主骨折線が靭帯性関節包付着部である転子間線と転子間稜, 小転子より近位に存在する骨折と定義した 6). Ⅲ. 結果受傷時の骨折型は Jensen 分類で安定型が 1 例, 不安定型が 4 例であった. また 5 例すべて近位骨片はいずれも外方型 髄内型で回旋不安定性を認めた. TAD は 11.3~27.7 mm( 平均 18.9 mm), スライディング量は 1.7%~10.2%( 平均 5.4%) であった. 術後の整復位 ( 正面 / 側面 ) は外方型 / 髄内型が 1 例, 解剖系 / 髄内型が 2 例, 内方型 / 髄外型が 2 例であった. ラグスクリュー先端位置 ( 正面 / 側面 ) は上 / 中が 2 例, 中 / 後が 1 例, 中 / 中が 2 例であった. カットアウトまでの期間は術後 1 か月 ~8.5 か月 ( 平均 2.8 か月 ) で術後の活動性はシルバーカーが 1 例, 杖歩行が 1 例, 独歩が 2 例で 1 例は不明であった. 症例ごとの詳細は表 1 に示した. 佐世保共済病院 87

290 表 1 結果症例性別年術後 2 w 回旋近位骨片 TAD スライデ整復位刺入位置カットアウト齢術式 Jensen 不安 ( 正面 / 側面 ) (mm) ィング ( 正面 / 側面 )( 正面 / 側面 ) までの期間定性 (%) 1 女 84 CHY Ⅳ 外方 / 髄内あり 18.1 Ⅱ nail 2 女 88 Gamma 3 Ⅴ 外方 / 髄内あり 27.7 3 女 93 Gamma 3 Ⅲ 外方 / 髄内あり 23 4 女 65 Affixus Ⅲ 外方 / 髄内あり 11.3 5 女 86 long γ Ⅱ 外方 / 髄内あり 14.4 66.0 (-9.0) 活動性 外方 / 髄内上 / 中 1 M シルバーカー 63.7 解剖 / 髄内中 / 後 1 M 不明 (-10.2) 69.7 (-3.0) 71.8 (-1.7) 解剖 / 髄内上 / 中 1 M 杖歩行 内方 / 髄外中 / 中 8.5 M 独歩 72.1 内方 / 髄外中 / 中 2.5 M 独歩 (-3.8) 太字 下線は諸家の報告であげられるカットアウトの危険因子 Ⅳ. 症例供覧症例 4:65 歳女性 ( 図 1 a~h) 術前の骨折型は Jensen type Ⅲと不安定型の骨折型であったが, 術後の整復位 ( 正面 / 側面 ) は内方型 / 髄外型で,TAD やラグスクリュー先端の位置も良好であり, いわゆる術者側におけるカットアウトの危険因子は認めなかった. しかし骨密度は健側の大腿骨で 42% と重度骨粗鬆症であったが骨粗鬆症の治療を受けていなかった. 術後経過は術直後より荷重制限なく歩行訓練を開始した. カットアウトの直前の術後 7 か月時点でスライディングは進行し, スクリュー先端の位置も変化しており十分な骨癒合が得られていない可能性があったが荷重制限を設けずに独歩で生活しており, 術後 8.5 か月で整復位は外方型 / 髄内型へ転位を来しカットアウトとなった. 症例 5:86 歳女性 ( 図 2 a~h) 術前の骨折型は Jensen type Ⅱと安定型の骨折型であったが小転子以遠まで骨折線が及んでいたためロングネイルを使用した. 症例 4 同様に術後の整復位 ( 正面 / 側面 ) は内方型 / 髄外型でそのほか術者側のカットアウトの危険因子は認めなかった. 術後経過は 4 週免荷とし, 術後 1 か月時点でスライディングを認めるもその後は明らかな進行は認めなかった. カットアウト直前の術後 2 か月での X 線では十分な骨癒合は確認できず, 術後 2.5 か月でカルカー部の内側の骨が欠損し髄内型となり, 新たに骨頭下骨折を合併しカットアウトとなった. Ⅴ. 考察カットアウトの危険因子としては過去に様々な報告があり,Bojan らはカットアウトの危険因子として1 骨折型が不安定型や複雑なものや頚基部骨折であること,2 解剖学的整復が得られていないこと,3ラグスクリューの先端の位置が不良であることが挙げられ, それらの危険因子が重複するほどそのリスクが高くなると報告している 1). 本研究でも 5 例中 3 例 ( 症例 1 ~ 3) は諸家の報告に挙げられる術後のカットアウトの危険因子が重複していた. 5 例ともすべて回旋不安定を伴う骨折型で, 平中らは骨頭骨片の回旋後に最終的にカットアウトは起こると報告しており 2), また田村らは小転子骨片の欠損や近位寄りの骨折型は回旋しやすいと報告している 5). 症例 4,5 のように手術手技が適切であってもカットアウトすることもあり回旋不安定を有する骨折の場合はカットアウトへの注意が必要である. また,5 例すべてでカットアウト直前の X 線では骨折部は十分な骨癒合は確認できず, 術直後とカットアウト時での 3D-CT では骨折線はほぼ類似していることからカットアウトの原因の一つに骨癒合遅延が考えられる. 以上よりカットアウトへの対策として, 前述の術者側の要因については術中に回避可能だが, その他に骨折型や骨脆弱性や骨癒合遅延などの患者側の要因への配慮が必要である. 骨粗鬆症に対する積極的な治療介入や, 回旋不安定例についてはラグスクリューの 2 本 88

291 a 受傷時 X 線 b 受傷時 3D-CT 前方 d 術直後 e 術後 3 か月 c 受傷時 3D-CT 後方 f 術後 7 か月 h 術直後とカットアウト時 3D-CT 内方型 / 髄外型 外方型 / 髄内型へ転位 g カットアウト時 術後 8.5 か月 図1 症例 4 65 歳女性 打ちなどの回旋に強いインプラント選択や人工骨頭置 Ⅵ ま 換術を考慮したり 骨癒合遅延例については超音波治 療やテリパラチドの導入 患肢に強い外力が加わらな と め ①当院における大腿骨転子部骨折術後のカットアウ トを生じた 5 例についてその原因を検討した いように杖歩行などの活動性の制限を設けるなど個々 の症例に応じた治療が望ましい ②適切な手術手技であっても 回旋不安定例や骨癒 合遅延例はカットアウトの危険性がありその治療には 89

292 b 受傷時 3D-CT 前方 a 受傷時 X 線 d 術直後 e 術後 1 か月 図2 症例 5 86 歳女性 ord., 14 1, 2013. 2 平中崇文ら 大腿骨転子部骨折に対する髄内釘手術の 問題点とその解決 別冊整形外科 52 164-169, 2007. 3 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会 大腿骨頚 部 / 転子部骨折診療ガイドライン 改定第 2 版 pp.146148. 東京 南江堂 2011. 4 大江啓介ら 当院におけるガンマ 3 ネイルのカットア 注意が必要である 考 文 f 術後 2 か月 h 術直後とカットアウト時 3D-CT 内側の骨が欠損し髄内型へ g カットアウト時 術後 2.5 か月 矢印 骨頭下骨折も合併 参 c 受傷時 3D-CT 後方 矢印 骨折線は小転子以遠まで及ぶ 献 1 Bojan, A. J., et al.: Critical factors in cut-out complication after Gamma Nail treatment of proximal femoral fractures BMC Musculoskelet. Dis 90

293 ウト症例の検討. 骨折,36(2):332-335, 2014. 5) 田村竜ら : 大腿骨転子部骨折における回旋不安定性の評価 - CT 再構築画像を用いた回旋角度 回旋方向の 検討 -. 骨折,38(1):6-10, 2016. 6) 山根健太郎ら : 回旋不安定性を有する大腿骨転子部骨折について. 骨折,34(1):85-88, 2012. 91