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投稿論文 16DAS MSCT を用いた透析内シャント血管 4D-CTA への試み Try of shunt loo vessel 4D-CTA in the ilysis using 16DAS MSCT. 前田 年彦 / 向井 正弘 / 伊藤 宏治 / 山田英之 下埜 嘉之 / 門脇 弘一河内総合病院放射線部 城 聡一 / 米本 俊良河内総合病院腎臓内科 透析内シャント血管をターゲットとして, 三次元情報を経時的に描出するような四次元 CTを試みた 今回, 撮影方法ならびに Angio との狭窄率の比較について考察を加えながら報告する 撮影体位は腹臥位とし, 前腕部を 90 曲げ, ガントリの長軸と平行にポジショニングを行った 血管造影との相関係数は,r=0.955と高い相関を示した shunt 4D-CTAは,Angioと同様の形態 動態情報が得ることができ, また, 石灰化の評価 血管内腔の評価など Angioでは得られない情報も得られた はじめに 当院では, いままで透析内シャント血管の非侵襲的画像診断として, 造影 3 D-MR ngiogrphy(3 D-MRA) を行ってきた 1) しかし,MRI 造影剤による腎性全身性線維症 (Nephrogeni Systemi Firosis:NSF) が, 腎機能低下者に多く発症する可能性があるということが, 近年報告された 2) これにより, 透析患者に MRI 造影剤を使用することが, 禁忌であると考えられた そのため, 他のモダリティによる透析内シャント血管の非侵襲的な検査方法を考えなければならなくなった 現在, マルチスライス CT(MSCT) を用いた 3D-CT ngiogrphy(3d-cta) は, 列数の増加により, 広範囲を高精細に撮影することが可能となっている 3),4) また, 撮影時間の短縮により, 四次元 (4D) 情報を持った3D-CTAの報告も数多くされている 5) そこでわれわれは,4 D-CT ngiogrphy(4d-cta), つまり造影剤の濃染される経時的な変化を 3 D でとらえることができないか考えた 透析内シャント血管トラブルの診断は, 形態情報だけ でなく, 動態情報も必要とされる場合が多くある 6) それゆえに,4 D-CTA の臨床応用部位としては最適であると考えられた 今回, 臨床応用するに当たっての撮影方法, ならびに血管造影 (Angio) との狭窄率の比較について, 考察を加えながら報告する 対象 当院で,2007 年 5 12 月に透析内シャント血管 4D-CTA(shunt 4D-CTA) を用い, シャント血管を評価した症例について Angioとの病変部での狭窄率の比較を行った 対象とした症例は,15 例 ( 男性 7 例 女性 8 例, 平均年齢 67.1 歳, 自己血管症例 12 例, 人工血管症例 3 例 ) で, 評価病変部位は, 自己血管動脈側 12 例, 自己血管静脈側 22 例, 人工血管部 4 例, 自己血管吻合部 12 例の計 50 例とした 方法 1. 使用機器および使用造影剤 使用した機器と造影剤は以下のとおりである CT 装置 :Aquilion 16( 東芝社製 ) 自動注入機 : Dul Shot GX ( 根本杏林堂社製 ) ワークステーション :ZIOSTATION ( ザイオソフト社製 ) Angio 装置 : Integris H5000 ( フィリップス社製 ) 使用造影剤 : イオパミロン 370 ( バイエル薬品社製 ) 2. 撮影方法 経時的な変化をとらえた 3D 撮影, つまり4D 画像のデータを得るためには, ダイナミック撮影が必要となる 7) しかし, 現在市場で稼働している 16DAS MSCT のダイナミック撮影範囲は, が限界である 通常の体軸方向での撮影範囲では, とても透析内シャント血管の範囲をカバーすることができない そこでその発想を変えて, 図 1に示すように体軸方向を 90 回転させることにより, 広い範囲を撮影範囲に入れられるのではないかと考えた 実際の撮影体位を図 2 に示す 腹臥位にて前腕部を 90 曲げ, ガントリの長軸と平行になるようにポジショニングを行った 専用の固定具を握ることにより, 前腕部が外旋しにくくなり, 84 INNERVISION (23 12) 2008 0913-8919/08/ 300/ 論文 /JCLS

体軸方向を 90 度回転 図 1 撮影範囲の発想の転換体軸方向を 90 回転させることにより, 広い範囲を撮影範囲に入れることができる : 撮影体位 : 撮影範囲の設定 図 2 撮影体位腹臥位にて前腕部を 90 曲げ, ガントリの長軸と平行になるようにポジショニングを行った 撮影範囲の設定については, 前腕部と肘関節の角度を変えることにより, 病変と考えられる部位を優先的に撮影範囲に入れてポジショニングを行っている 32 mm の幅に撮影範囲を入れやすくなった 撮影範囲の設定については, 前腕部と肘関節の角度を変えることにより, 病変と考えられる部位を優先的に撮影範囲に入れてポジショニングを行っている ( 図 2 ) 現在, 当院で行っているshunt 4D-CTAの撮影条件を表 1に示す 撮影管電流については, ビーム幅によるボケの影響 密度分解能の向上を考慮して 200 ma とした スキャン時間は, 時間分解能と view 数のバランスを考慮し, 0. 5 秒とした 造影プロトコールについては, 造影剤量を減らすことを考えて生食後押しにて行っている 得られた画像データをワークステーション (WS) に転送し,4Dアプリケーションにて 3D volume renering(vr) 像を作成して ine 表示させ,4D-CTA を作成した 3. 血管造影との狭窄率比較方法 shunt 4D-CTAとAngioの病変部における狭窄率の比較を行った 評価するshunt 4D-CTAの画像については, Angio 画像と同じ角度となるように画像構築を行った また, 造影位相についても, 病変部が最も造影されている相を比較画像として使用した Angio 画像については,igitl sutrtion ngiogrphy(dsa) 画像ではなく, igitl ine 画像を比較画像として使用している 狭窄率の解析方法としては,length 法を使用した 得られた結果より, 各病変部位 ( 自己血管動脈側, 自己血管静脈側 人工血管部, 自己血管吻合部 ) での平均狭窄率, 相関係数を求めた 結果 評価結果を表 2に示す shunt 4D- CTA の平均狭窄率は 56.8%,Angioの平均狭窄率は48.9% であった shunt 4D-CTAと Angioとの相関係数は,r= 0. 955 と高い相関を示した 図 3に, 評価部位別による狭窄率の変化を示す shunt 4D-CTAの方が, 全体的に狭窄率を高く評価する傾向を示した 評価 部位別による狭窄率の差についても, 特に偏った傾向も見られず, 全体として同様の傾向であると考えられた 考察 shunt 4D-CTAとAngioとの狭窄率に関する相関係数は,r = 0. 955 と高い相関を示しており, 狭窄の評価に関しては Angio と同等であると考えられる shunt 4D-CTAの方が, 狭窄率を高く評価する傾向であるという理由としては, 以下の 3 点の理由が考えられる 1 shunt 4D-CTAの画像表示方法であるVR 法では, 閾値の設定により描出される血管径が異なってしまう 8) 2 shunt 4D-CTAの画像データはコンベンショナルスキャンデータなので, ヘリカルスキャンのようにスライス間を補正するデータはない ゆえにスライス厚による密度分解能に限界があると考えられる 今回は, スライス厚 2 mm で撮影を行っているので, その影響が大きいと考えられる INNERVISION (23 12) 2008 85

表 1 撮影条件表 表 2 shunt 4D-CTA と Angio との狭窄率の比較 撮影条件 管電圧 120kV 管電流 200mA 撮影列数 16 列 再構成スライス厚 2mm 再構成間隔 0.5s 撮影範囲 (2mm 16 列の ダイナミックスキャン ) スキャンスピード 0.5s 撮影時間 30s 病変部位 ( 例 ) shunt 4D-CTA の平均狭窄率 Angio の平均狭窄率 自己血管動脈側 5 47.2 41.6 自己血管静脈側 14 54.6 48.1 人工血管部 5 67.6 56 自己血管吻合部 6 61 50.7 全体平均 56.8 48.9 相関係数 0.955(n = 30) 造影プロトコール 使用造影剤 イオパミロン 370 造影剤注入方法 1 相 + 生理食塩水後押し 造影レート 造影剤 :35mL,3.0mL/s 生理食塩水 :30mL,3.0mL/s ely time 10s 100 80 60 40 shunt 4D-CT Angio 20 0 自己血管動脈側 自己血管静脈側 人工血管部 自己血管吻合部 評価部位 図 3 評価部位による狭窄率の変化 3 図 4に示した血管内腔の模式図のように, 流体工学的に考えても, 血管の中心部と外側でのスライス面に対しての流量が異なってしまう そのために CT 値として差が生じてしまい, 描出能として劣ってくるのではないかと考えられる 9) 今後の課題 大きな課題としては, 被ばく線量を低く撮影することが挙げられる 動態情 報を得るためにダイナミック撮影を行っているので, 通常の頭部 3 D-CTA ヘリカルスキャンと比較して約 10 倍の線量が増加している この問題については, 低電圧を用いたスキャン 間歇パルススキャンなどで,1 / 2 以下に線量を低下させることを現在検討している 画像表示方法についても, 画像としてだけの動態情報だけでなく, 頭部パーフュージョンのような機能情報を負荷した画像表示や, 形態情報と機能情報をフュージョンさせた画像表示など, 可 能性としては多くを秘めている 4Dデータを用いた臨床応用が, 今後多く臨床に出てくると考えられるが, 今回の検討を進めることにより, 他の部位でも転用可能な技術を考えていきたいと考える 臨床症例 70 歳代, 女性 静脈高血圧症 透析時には問題なく血流量を確保できているが, 手背部の腫脹と発赤 疼痛を訴 86 INNERVISION (23 12) 2008

スライス厚 CT 値の高い CT 値の低い 図 4 血管内腔模式図流体工学的に, 血管の中心部と外側でのスライス面に対しての流量が異なってしまう そのため,CT 値として差が生じてしまう 図 5 4D 画像 の造影剤のない phseにおいては, 石灰化が多い血管であるのがわかる では, 動脈 ( ) から吻合 静脈側への血流方向が描出されている の手背静脈 ( ) は, 中枢部に向かう静脈よりも早期に造影されているのがわかる 図 6 3D 画像吻合部より中枢側主静脈に完全閉塞を認める ( ) 手背の拡張した静脈の流入 流出血管の形態も明瞭に描出されている ( ) えている 臨床症状より静脈高血圧症が疑われ,shunt 4D-CTA を施行した 静脈圧高血圧症は, シャント血流の静脈還流不全によって生じる病態で, 一般的に吻合部より中枢側主静脈の狭窄や閉塞が原因であると言われている 10) 実際の画像を図 5,6 に提示する 4 D 画像 ( 図 5) では, 動静脈の分離ができ, 手背に行く静脈が, 中枢側に向かう静脈より早期に造影されている 3 D 画像 ( 図 6) では, 吻合部より中枢側主静脈の完全閉塞が認められる これらの画像から, 静脈側主静脈の閉塞により生じた静脈高血圧症であると診断された 完全閉塞症例であるが, 血流量自体に問題はないので, 人工血管置換術より shunt- PTAが治療方法として選択された MSCT の画像データはボリュームデータであるので, 他の画像表示方法により, もっとshunt-PTAの手技に関して有効な情報を提供できるよう図 7,8 のような画像を作成した 図 7は,VR 法での閾値を徐々に低くすることにより, 閉塞部以降の血管壁を描出しようとした画像である 閾値を下げることにより, 閉塞部より中枢側の血管情報が得ることができた 図 8は, 病変部をトレースし, 血管内腔を urve-multiplnr reformtion(cpr) 表示させたものを経時的に変化させて ine 表示した ine-cpr 像である 同画像より, 閉塞部手前の血管壁の石灰化はなく, 狭窄病変よりも 血栓性閉塞であると考えられた 図 7,8 の画像より, 血管走行の把握と病変形態の把握ができ,shunt-PTA 施行前の有力な情報となった 図 9に, 実際の Angio 画像を提示する shunt 4D-CTAと同様の所見を得ることができた shunt-pta 施行中のガイドワイヤ操作も, 図 7の血管壁の部位より内腔があり, 容易に病変部を通過させることができた 図 10に, 術後のAngio とshunt 4D-CTAの画像を提示する 開存した吻合部静脈側の血管は,Angio と同様の形態を示している また, 手背に回る血流 側副血行路の血流も少なくなっており, 形態だけでなく, 動態 ( 流量 ) の情報も描出できていると言える INNERVISION (23 8) 2008 87

図 7 閾値変化画像 へと段階的に閾値を低く設定した画像である 閾値を低下させることにより, では, 完全閉塞部より, 中枢側の血管壁が描出された ( ) 図 8 ine-cpr 像画像の上の方が, 吻合部側である 血管内腔に石灰化はなく, 閉塞部より中枢側への造影剤の流入も認められない は, CPR のトレースした部位を示している ( ) 図 9 Angio(shunt-PTA) 画像 図 5,6 と同一の部位に完全狭窄を認める ( ) ガイドワイヤは, 図 8に示した部位と同様の位置で通過した ( ) :Angio 画像 :shunt 4D-CTA 画像図 10 Angio 画像と shunt 4D-CTA 画像開存した血管は,Angio 画像 () と比較しても同様な形態を示している 手背 狭窄部からの側副血行路 ( ) の血流も少なくなっている 結語 今回われわれが検討した shunt 4 D- CTAは,Angioと同様の形態 動態情報が得ることができ, 侵襲性も低い また, 石灰化の評価 血管内腔の評価などについては,Angio では得ることのできない情報も多く得ることができた 透析内シャントの検査方法としては, 非常に有用であると考えられる 参考文献 1) 前田年彦 他 : 内シャント血管に対する MRA の狭窄度評価の検討. A Monthly Journl of Meil Imging n Informtion, 37 10 (Whole No. 744),1020 ~ 1027, 2005. 2) 対馬義人 他 : 症例報告 Goimie 投与を確認しえた nephrogeni systemi firosis(nsf ; 腎性全身性線維症 ) の 1 例. 日本透析医学会雑誌, 40 9,805 ~ 810, 2007. 3) 小林泰之 他 : 循環器疾患における 64 列マルチスライス CT. R Fun, 4 2, 2006. 4) 藤田稠清 他 : 未破裂脳動脈瘤易破裂部位の検索, 16 列ヘリカルスライス CT による ECG 同期再構成 3D-CT ngio(4d-ct ngio) による検討. CI 研究, Progress in Compute Imging, 26 2, 93 ~ 100, 2004. 5) 橋本直人 他 : 64 列マルチ CT の使用経験. 新医療, 5, 132 ~ 135, 2005. 6) 成松芳明 他 : 透析シャント不全の診断 ; 血管造影. IVR 会誌, 14 2, 1999. 7) 森慎一郎 他 : 256 列 CT が可能とする医療 4 次元診断から 4 次元治療へ. 新医療, 10, 63 65, 2005. 8) 高瀬圭 : 三次元医用画像作成秘法マニュアル, 東京メディカルビュー社, 2004. 9) 辻岡勝美 : CT 検査における血流速度と造影剤濃度. INNERVISION, 22 8(Suppl.), 3 7, 2007. 10) 浅野泰 : 透析医療の現状および今後の展望. 日獨医報, 47 4, 482 ~ 499, 2002. 88 INNERVISION (23 12) 2008