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調査研究報告書 マンションの給排水設備改修工事 平成 30 年 11 月 1

はじめに一般的に築 30 年を超えたマンションの給水管は 亜鉛メッキ鋼管又は塩化ビニルライニング鋼管で配管されていることが多く 亜鉛メッキ鋼管の寿命は約 15 年 塩化ビニルライニング鋼管の寿命は約 20 年といわれています 仮に築 15 年で更生工事 ( 配管内の錆びを研磨の上 エポキシ樹脂塗装を施す工事 ) を実施し配管の延命措置をしたとしても 築 30 年を超える頃には給水管の取替え工事を考えなくてはなりません 一方 排水管の寿命は 鋳鉄管 排水用塩化ビニルライニング鋼管 耐火二層管を使用している場合で 約 40 年といわれています 定期的に排水管洗浄を行っているならば 更生工事で 20 年ぐらいの延命は可能であると考えられています 今後 築 20 年を超えるマンションの長期修繕計画の見直しで 管理組合の計画修繕として実施しなければならない給排水改修工事について纏めてみました Ⅰ. マンションの給水設備 (1) 給水設備の分類 専用水道 受水槽がある 簡易専用水道 貯水槽水道 小規模貯水槽水道 直結給水水道 受水槽がない (2) マンションの給水設備の構成マンションの給水設備は 直結給水水道 ( 東京都においては 5 階建てまでは可能な場合がある ) 以外は 次の 3 つから構成されている 1 貯水槽 ( 受水槽 高置水槽 ) 2 給水ポンプ ( 揚水ポンプ 加圧ポンプ 増圧ポンプ等 ) 3 配管 ( バルブ等を含む ) (3) マンションの配管経路と工事区分マンションの給水経路は 配水管 ( 水道本管 ) から敷地内に引き込まれ 共用の給水管を通り専有部分へと給水される その場合の工事区分は 一般的に次のように区分される 2

水道局工事範囲 管理組合工事範囲 ( 共用部分 ) 管理組合工事範囲 ( 共用部分 ) 区分所有者工事範囲 ( 専有部分 ) M M 配水管 ( 水管本管 ) 親メーター 水道メーター 第一制水弁 給水縦管 (4) マンションの給水方式マンションの給水方式は 概ね下記のような方式があり 建物の用途 規模 環境などにより 次のように設定されます 給水方式水の流れ方受水槽ポンプ 受水槽方式 直結方式 重力給水方式 加圧給水方式 直結増圧 給水方式 増圧高置 水槽給水 方式 配水管 受水槽 揚水ポンプ 高置水槽 各戸 有 有 配水管 受水槽 加圧ポンプ 各戸 有 有 配水管 増圧ポンプ 各戸 無 有 配水管 増圧ポンプ 高架水槽 各戸 無 有 直結直圧方式 配水管 各戸 無 無 3

(5) 給水設備 A. 重力給水方式 ( 高置く水槽方式 ) B. 加圧給水方式 高置水槽 受水槽 P 受水槽 P 揚水ポンプ 加圧ポンプ 配水管 配水管 *1985 年以前は一般的な給水方式 *1985 年以降 現在まで採用されている給水方式 C. 直結増圧給水方式 D. 直結直圧給水方式 P 配水管 増圧ポンプ * 近年では多く採用されている給水方式 配水管 * 小規模マンションで採用されている給水方式採用規模は行政によって異なる 4

(6) 給水方式の比較 ( メリット デメリット ) 重力給水方式加圧給水方式直結増圧給水方式 1 断水時や停電時でも高置水槽の貯水部の水が確保される 1 断水時や停電時でも高置水槽の貯水部の水が確保される 2 各住戸に減圧弁を設置することで各住戸同等の給水圧力を得られる 1 水槽のメンテナンスコスト 修繕費用が不要である 2 停電時でも水道本管分の水は供給される メリット 3 水道本管の給水圧力が利用できるため電気料金が軽減される 4 各住戸に減圧弁を設置することで各住戸同等の給水圧力を得られる 5 貯水しないため新鮮な水が供給される 6 受水槽の跡地が駐車場等に用できる デメリット 1 水槽のメンテナンスコスト 修繕費用が掛かる 2 上階と下階の給水圧力に差がある 3 水槽に不備があった場合 雨水等の混入があり不衛生である 1 停電時ポンプが動かないため住戸に水を供給できない 2 受水槽のメンテナンスコスト 修繕費用が掛かる 3 受水槽に不良があった場合 雨水等の混入があり不衛生である 1 緊急時などに水の確保ができない 2 ポンプの交換費用が高い 5

(7) 給水管の材料 1990 年代後半頃までに使用されてきた主な給水管 1 亜鉛めっき鋼管 1970 年代前半頃まで使用されていた鋼管に亜鉛メッキを施した (SGPW) ものである 白ガス管とも呼ばれている 耐用年数 :15 年程度 2 塩化ビニルライニング鋼管 1970 年代前半ごろから近年まで使用されていた鋼管 (VLP) に硬質塩化ビニルを被覆したもので 内面 外面の両方を被覆したものもあるが 一般的には内面だけ被覆した物が多く使用されている 耐用年数 :20 年程度 3ステンレス鋼管 1995 年頃から使用されている 高価ではあるが耐用年数が長い (SUS) 耐用年数 :60 年程度 6

2000 年頃以降は樹脂管の使用が増加 近年は 鋼管から樹脂管の使用に変遷してきました マンションで使用されるおもな樹脂管は次のとおりです 1 水道用ポリエチレン管 屋外埋設配管に使用 耐用年数 :40 年 2 架橋ポリエチレン管 専有部分の屋内配管に使用 耐用年数 ::40 年その他に ポリブリテン管や水道用耐衝撃性塩化ビニル管等があります 水道用ポリエチレン管 架橋ポリエチレン管 (8) 給水管改修工法の分類給水管の改修工法には 次のように大きくは 3 つの工法があり 更新工事は材料により 延命工法は方法によりそれぞれ 3 つに分かれます ステンレス鋼管 給水管改修工事 更新工法 更生工法 延命工法 ポリエチレン管硬質塩化ビニルライニング鋼管エポキシ樹脂ライニング工法脱気工法防錆剤注入工法 磁気工法 7

(9) 給水管改修工事の比較 工法名 原理 工事費係数 維持費 赤水解消期間 防錆効果 工期 徐錆効果 備考 更新工法 ステンレス鋼管 塩ビライニンク 鋼管 (VLP) ステンレス配管材で 新たに配管する 共用部分の配管に適している 1.0 既存同様の配管材で 新たに配管する 1.1 〇 物理的には最良の工法で 長期的に見た場合 最も経済的である 改修工事後 20 年 ~30 年目に再度改修工事が必要 更生工法 樹脂ライニング工法 ( シングル ) 樹脂ライニング工法 ( ダブル ) 錆コブを除去配管内部を研磨し エポキシ系塗料で片側よりライニングする 錆コブを除去配管内部を研磨し エポキシ系塗料で両側よりライニングする 0.6 0.7 改修工事後 10 年 ~15 年目に再度改修工事が必要 シングル工法より信頼性 耐久性は高い 延命工法 脱気工法 カルシウム防錆工法 水中に溶け込んでいる溶存酸素を取り除く装置を設置し 錆を抑制する カルシウムを水に注入し 管内に炭酸カルシウムの防錆被膜を形成し 錆を抑制する 0.6 〇 0.6 約 10 年毎に中空被膜の取替が必要 綿密な保守管理が必要 磁気工法 配管に磁石を取付け 水を磁気化し 管内にマグネタイトによる防錆被膜を形成し 錆を抑制する 0.6 理論的根拠が判然としない 上記比較表により総合的に判断すると ステンレス鋼管と樹脂管の組み合わせた材料での更新工法が最良の工法であると考えられます また 維持費に関しては 給水方法の変更により 更にメリットを広げることができます 8

Ⅱ. 共用部分給水 専有部分給水更新工事例 1980 年代から近年にかけて建築されたマンションでは マンションの標準的な長期修繕計画を見ると給水管更新工事 高置水槽及び受水槽撤去 給水ポンプ交換等が築 30 年程度で計画されています ここでは 実際に行われた更新工事について紹介します (1) 工事概要 1 マンション : SRC 造 11 階建て 400 世帯 1 棟 2 工事時の築年数 : 32 年 3 新規配管材料 : ステンレス鋼管 4 給水方法 : 重力給水方式 ( 高置水槽方式 ) から直結増圧給水方式に変更 5 配管方法 : 露出配管 6 工事期間 : 約 8 ヶ月 ( 原則 日曜 祝日は作業全休 ) 更新工事のイメージ 高置水槽 受水槽 P 揚水ポンプ P 加圧ポンプ 水道本管 水道本管 施工前 施工後 9

(2) 工事の流れ 1 仮設工事 1) 現場事務所開設 2) 資材 廃材置場設置 3) 仮設給水管敷設工事 2 給水管更新工事 1) 新規給水引込み工事 2) 新規増圧給水ポンプ設置 ポンプ廻り配管工事 3) 屋外屋内横引き配管工事 4) 給水縦管新設配管工事 5) メーターボックス内量水器廻り配管工事 3 撤去 雑工事 1) 受水槽 高架水槽 既存不要配管及び不要機器の撤去工事等 2) 更新工事に伴う補修 雑工事 4 専有部分工事 1) 専有部給水 給湯管更新工事 5 撤去廃材 仮設物の撤去搬出工事 (3) 施工写真 屋上高架水槽から新規配管 屋外 ( 共用部分露出配管 共用給水縦管 横引き配管 10

屋内 ( 専有部分 ) 露出配管 (4) 配管方法によるメリット デメリット 配管方法メリットデメリット 露出配管 施工コストの削減 施工後のメンテナンス 住みながらの施工が可能 配管が見える事により外観を損なう 配管分のスペースをとられる 通水時に多少音が出る 隠ぺい配管 居室内の外観を損なう事無く配管 配管によるスペース減少が無い 通水時の音が聞こえない 天井及び床を壊す事によりコストがかかる 施工後のメンテナンス 生活しながらの施工が困難壁内部の配管も隠ぺいとなると 壁を剥がしての作業になる 11

Ⅲ. 排水設備 (1) 排水設備の種類 1 汚水 大小便器及びこれと類似する用途をもつ汚物流し 便器消毒器 ビデなどの器具から排出する水とそれを含む排水をいう ( 建築基準法では雨水以外の排水を総称して汚水と称している ) 2 雑排水 汚水以外の洗面器 浴槽 洗濯 台所 ( 厨房 ) などの器具から排水される排水をいう 3 雨水 屋根や敷地からの降雨水をいう 建物の地下外壁や二重スラブからの湧水も排水系統として雨水として扱う (2) 排水の流れ : 排水縦管 : 汚水桝 : 浸透桝 : 雨水桝 1 屋内に 3 系統の排水縦管がある場合 専有部内横枝管共用部排水縦管等屋外横管汚水桝 トイレ 台所浴室洗面洗濯 公共下水道 降雨水等共用部雨水縦管屋外雨水桝 雨水 12

2 屋内に 2 系統の排水縦管がある場合 専有部内横枝管共用部排水縦管等屋外横管汚水桝 トイレ 台所 点線は合流例 浴室洗面洗濯 公共下水道 降雨水等共用部分雨水縦管屋外雨水桝 雨水 3 屋内に 1 系統の排水縦管がある場合 専有部内横枝管共用部排水縦管等屋外横管汚水桝 トイレ 台所浴室洗面洗濯 公共下水道 降雨水等共用部雨水縦管等屋外雨水桝 雨水 13

(3) 排水管改修工事に伴う留意点築 30 年程度の建物の場合 建設当時の排水管の配管方法として スラブ配管 を採用している場合が多くあります この場合 管理組合として改修工事事業を進めるにあったて 必ず問題となるのは 共用部 と 専有部 の区切りの問題です 空間としての共用部分 空間としての専有部分 P S 内 排水縦管 壁 スラブ a b 空間として上の階の専有部分 空間としての共用部分 継手 横枝管 空間として下の階の専有部分 階下の天井 e d c 最高裁判例では 上の階がスラブ下の配管を管理するのは実質不可能であることか ら a~b b~c c~e のすべてを共用部分とした (4) 排水管の材料排水管の改修工事が必要となるマンションの排水管の配管材料は主に 1 排水用鋳鉄管 2 耐火二層管が使用されている また 3 排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管 4アルファー鋼管といった鋼管に塩ビ樹脂などをコーティングした管を使用しているところもある 1 排水用鋳鉄管 ねずみ鋳鉄を主体に作られている管で 歴史も古く 腐食しにくい管材であり汚水系統に多く使用されている 耐用年数は 40 年程度である 14

2 耐火二層管 塩ビ管の防火対策として 外面に繊維モルタルを被せた二層構造の管で 内管が塩ビであることから耐久性に優れた管材である 耐用年数は 40 年程度である 3 排水用塩化ビニルライニング鋼管鋼管の内面に塩化ビニルをコーティングすることによって水と接する鋼材部分を腐食しないようにしたもの 耐用年数は 40 年程度である 4 アルファー鋼管 配管の軽量化を図るため薄肉の鋼管を採用 接合はねじ切りではなく 管を差し込むだけの方法とし 工場であらかじめ必要な寸法に加工して 現場に納品する プレハブ加工工法 により現場施工の省力化を実現した 1970 年から 1990 年にかけてマンションで使用されたが 現在 製造されていない 耐用年数は 40 年程度である (5) 改修工事に使用される材料の比較 項目 改修工事における要求品質 断水時間が短縮できる施工スピードが速い 耐火 VP パイプ FS-VP 耐火二層管 TP 硬質塩ビライニング鋼管 DVLP 排水用鋳鉄管 CP 日常生活 環境に悪影響を与えない 排水放射音が小さい GW 巻 耐腐食性に優れている 品質 配管の接続部の信頼性 防災性防火区画が貫通できる 経済性施工コストが安価であること 15

(6) 改修工法の分類 排水管改修工事 更新工法 更生工法 樹脂系パイプ金属系パイプ樹脂ライニング工法チューブ反転工法自立管工法 (FRP 形状記憶塩ビ管) Ⅳ. 共用部分及び専有部分の排水設備更新工事例 1980 年代から近年にかけて建築されたマンションでは マンションの標準的な長期修繕計画を見ると排水管更新工事が築 30 年程度で計画されています 多くのマンションでは給水管と排水管の更新工事を同時に実施していますが ここでは 排水管更新工事を単独で実施した例を紹介します (1) 工事概要 1 マンション : SRC 造 11 階建て 498 世帯 1 棟 2 工事時の築年数 : 35 年 3 新規配管材料 : 耐火二層管 4 配管方法 : 隠ぺい配管 5 工事期間 : 約 8 ヶ月 ( 原則 日曜 祝日は作業全休 ) (2) 工事の流れ 1 仮設工事 1) 現場事務所開設 2) 資材 廃材置場設置 2 排水縦管更新工事 3 専有部分排水管更新工事 1) 専有部分事前調査 2) 浴室系統排水管更新工事 3) 洗面洗濯系統排水管更新工事 4) 台所系統排水管更新工事 5) 上記に伴う建築付帯工事 ( 内装工事含む ) 4 撤去廃材及び仮設物の撤去 搬出工事 16

(3) 施工写真 1) バルコニーの縦管新設 バルコニー縦管開口 2) バルコニーから台所へ 台所へ 3) 既存排水管天井開口 17

4) 既存配管撤去状況 5) 新規配管 6) 天井の復旧状況 18