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本研究は 言語発達や学業 生活に影響を与えると思われるきこえ困難に焦点を当て その状態像を明らかにするとともに 困難の背景要因を明らかにし きこえ困難の評価と対応について検討することにした 本論文は 7 章で構成されている 第 1 章 はじめに の第 1 節では 聴性 ( きこえ ) 困難について定義した 第 2 節では 聴覚障害の医学的分類と評価 行政における聴覚障害の定義と対応について概観し きこえ困難が難聴としても診断分類されず 聴覚障害としての対応の対象にもならないことの問題を論じた 第 3 節では きこえ困難に関連する研究動向について概観した 先行研究では具体的な評価と支援の方法やその効果に関する検討の必要性が指摘されているが いまだ明らかにされていないことを論じた 第 4 節では きこえ困難に関連する評価や対応に関する先行研究を概観した その結果として きこえ困難の評価や対応は検討すべき喫緊の課題であることを指摘した 第 5 節では 本研究の意義と目的について述べ 第 6 節では 本論文の構成について述べた 第 2 章 相談事例を通したきこえ困難の特徴と認知的傾向に関する検討 ( 研究 1) の第 1 節では きこえ困難の相談事例からきこえ困難の特徴について明らかにした きこえ困難は騒音下でのきこえの困難が最も多く 次いで 聞き間違いや聞き逃しが多かった しかし きこえ困難の様相が多様であることから きこえ困難の背景には注意 記憶の問題や聴覚の過敏さなどの問題があることを述べた そこで 第 2 節では きこえ困難児の認知的特性について検討した その結果 全検査 IQ は平均であったが 言語性 IQ が動作性 IQ に比べやや低く 群指数および4 指標間の比較から 言語理解 注意記憶脆弱群 注意記憶脆弱群 言語理解脆弱群 処理速度脆弱群 正常群の 5 群に分類されることを示した 第 3 章 きこえ困難児に関する調査研究 の第 1 節では きこえ困難児に関する先行研究を概観した結果 きこえ困難児の実態やきこえに困難をきたす要因などを実証的に調査する必要のあることが分かった そこで 第 2 節では きこえ困難を調査するチェックリストを作成した 第 3 節では 小学校通常学級を対象に調査研究を行った その結果 きこえ困難を有すると思われる児童が 2.8% 在籍することを明らかにした さらに きこえ困難の要因を明らかにするために因子分析的検討を行った その結果 聴覚的注意 聴覚的補完 聴覚的記憶 聴覚的識別 の4 要因を抽出した 第 4 節では 就学前児 特に5 歳児を対象にきこえ困難に関する調査を行った その結果 きこえ困難を有すると思われる 5 歳児が 5.1% 存在することが分かった 第 3 節で示した小学校通常学級の調査結果と比較するとほぼ 2 倍の出現率であった このことについては 今後の検討課題であるとした 第 4 章 事例を通したきこえ困難の要因別背景の分析 では きこえ困難の要因の背景にある問題について検討した 聴覚的注意 の背景には 注意の転動性 ワーキングメモリ 注意の向け方や聴覚過敏があることを指摘した 聴覚的補完 の背景には 音声情報の欠如 言語発達が関与し 聴覚的記憶 には 聴覚的短期記憶 ワーキングメモリ 長期記憶 聴覚的識別 には 音韻意識があると考えられた 2

第 5 章 幼稚園等及び学校職員のきこえ困難に対する認識と対応の現状 では 保育園 幼稚園等および学校職員のきこえ困難に対する認識と対応について調査した 調査の対象となった職員の多くは 担当している幼児 児童 生徒にきこえの問題を有するものがいると認識しており きこえ困難に対する関心が高かった そして 話し方や視覚的支援などの配慮を行っていたが さらに適切な対応について知りたいと希望していることも明らかになった また 学校で日常実施している対応は 発達障害に対する対応として一般に知られているものであり きこえ困難の要因に応じた対応を実施していない現状がうかがわれた 第 6 章 きこえ困難の評価と対応の検討 では きこえ困難の相談事例に対して実施した評価と対応を きこえ困難の4 要因に整理して検討した 第 1 節では きこえ困難の評価方法を要因別に検討した結果から聴覚特別支援学校等においても実施可能な評価バッテリー試案を提案した 第 2 節では きこえ困難の4 要因別に対応方法を提案した 第 3 節では きこえ困難に対する気づきから その評価や対応までの流れのモデルを図として示した 第 7 章 総合考察 の第 1 節では きこえ困難に注目した対応の意義について述べ きこえ困難児の認知特性などから きこえ困難と発達障害や APD との関係を明らかにするために図示した また 今回の調査からきこえ困難を有する児童が 2 5% 存在するということを踏まえて 誰もが容易にきくことのできる環境の整備としての きこえのユニバーサルデザイン を求めていくことが重要であると述べた 第 2 節では きこえ困難の個人要因としての背景要因モデルを図示した 第 3 節では今後の研究の課題として 発達障害児の聴覚情報処理や聴覚認知の特性などとここえ困難の要因との関連 きこえ困難の評価や対応方法の妥当性の検討などについて述べた 論文審査結果の要旨 1. 審査の経過第 7 回大学院研究科会議 (2017 年 11 月 9 日 ) において 小川征利氏から課程博士学位予備審査申請論文が提出された旨の報告が研究科長よりあり 予備審査申請の受理の決定が承認された 予備審査委員については大学院所属教員から宮本 別府の 2 名が副査として選出され 承認された なお指導教員である堅田が主査を務め 予備審査委員会は 3 名で構成することになった 予備審査は 2017 年 11 月 28 日 ( 第 1 回予備審査会 )) 2018 年 11 月 20 日 ( 第 2 回予備審査会 ) の 2 回開催した その結果 博士論文としての完成度を高めるという趣旨が全うされたと委員全員の判断が得られ 博士 ( 学位 ) の授与に値するものとして評価された 2018 年 12 月 20 日に博士学位申請書 < 本審査用 >と博士学位申請論文が提出され 2019 年 1 月 10 日の第 9 回大学院研究科会議では学位申請論文が受理され 本審査開始が決定された 本審査委員は前記の堅田 宮本 別府が選出された 公開審査 ( 最終試験を含む ) は 2019 年 2 月 9 日に実施し 続いて本審査を行った 委員全員による協議が行われた結果 博士相当の論文であるとの結論をえた 本審査後に開会された第 11 回 3

大学院研究科会議 (2019 年 2 月 9 日 ) において本審査結果を報告し 学位の授与が議決により可と された 2. 論文の評価と最終試験聴覚情報処理障害 (APD) は 純音聴力検査などの通常の聴覚検査では異常が認められないにも関わらず 日常生活でききとり困難を有する障害とされる 自閉スペクトラム症などの発達障害においても類似の症状が生じることは知られているが ききとり困難の病態や発生機序などについては解明されていない しかしこれらの臨床像については明らかにされつつあるが 発生要因の解明や評価 対応方法を求める研究の必要性が高まっている 本論文では こうした日常生活でのききとり困難という状態像に限定する意味で これを 聴性 ( きこえ ) 困難 :Listening Difficulties in Daly Life と定義した 本研究では 下記のような研究成果をえた 1きこえ困難を主訴とする相談事例から 主訴をカテゴリー別に整理し きこえ困難や認知的症状について WISC 検査の結果との関連で分析を行い きこえ困難や認知面の特徴から 5つの類型に分類した 2きこえ困難児の特徴を明らかにするためのチェックリストを作成し 小学校通常学級および 就学前 5 歳児の教育 保育にあたる教師等を対象とした調査を行い 聴覚的注意 聴覚的補完 聴覚的識別 聴覚的記憶 の4 要因を抽出した 3きこえ困難の背景にある問題について 相談事例の養育者に対して実施したチェックリストによる調査結果を4 要因別に整理し 個別事例に支援を行う際に必要となる状態像や課題を明らかにした 4きこえ困難に関しての保育園 幼稚園及び学校職員の認識と対応についての調査から支援に関する課題やニーズがあることを指摘した 5 相談事例に対して実施した評価と対応について 4 要因別に検討を行い きこえ困難に対する気づきから評価 対応までのモデルを作成した 以上の研究は 従来捉えきれなかったきこえ困難の状態像を明らかにするとともに きこえの困難に対する支援の手がかりを掴めなかった人たちに対して有用でかつ実践的意義の高いものである また 必要性が指摘されながらも先行研究では体系的な検討が行われなかったが 本研究は精力的 挑戦的に行なった研究の成果が随所にみられることから 学問的意義は高い 申請者が丹念に収集した多数の相談事例の分析を行い またその分析結果の背景にある問題についても検討するなど研究の質 量としても十分なものである さらに 研究方法や分析の手法についても手法にのっとり 実証性は高いと思われ 7 章で構成される論文は各章間の論理的関連性が明確で 博士論文としての体系性と整合性を有していると判断できる なお 博士論文としての適切性については 前回の予備審査の指摘が消化され 博士論文として完成度の高いものになった その根拠は次の通りである 1 先行研究の検討が深化され 研究課題の抽出が適切に実施されたことによって きこえ困難を研究の主眼とする本研究の位置づけを明確にした そして 章立てが構造化され 論理展開が明瞭になり 論文全体の構成が単純化された 2 事例の記述が生育歴や相談の経過を含め 詳細に記述されたことによって 実証性の一層高い 説得的な結果を導くことになった 3スクーリ 4

ニングのためのチェックリストや保育者 教師などへの質問紙調査の位置づけが論文構成の中でて適切に行われた結果 相談事例への活用などの臨床的な意義が高まり 研究の独創性が強く表出され 今後の実践における効果が期待できる 4 最終段階の章では 本研究の到達点および今後の研究課題を加えて研究展開のモデル化が諮られたことによって 本論文の到達点と今後の研究の展開が明瞭になった 5 研究内容が客観的 論理的に記述され 倫理的配慮についても丁寧に触れられたことによって完成度の高い論文であると評価できる 最終試験である公開審査では 論文の内容について的確に報告し 質問に対しても適切に応じた なお博士学位申請論文の提出要件である提出論文の内容にかかわる学術雑誌掲載論文は3 編が提出され いずれも筆頭執筆審査論文であり 学位申請の要件を満たしている 3. 結論 以上の審査結果から 中部学院大学学位規則第 14 条に基づき 小川征利氏の学位申請論文は 博士学位 ( 社会福祉学 ) 論文として適切であると判断した 5