天文学概論 Ⅰ の構成 第 1 回宇宙を構成する天体 第 2 回宇宙を見る目 第 3 回宇宙観の変遷 (1) 古代から中世まで 第 4 回宇宙観の変遷 (2) 近代から現代へ 第 5 回課題演習 (1) および中間試験 (1) 第 6 回宇宙が誕生した頃 第 7 回銀河の誕生と進化 第 8 回銀河系を作る天体と構造 第 9 回星の誕生 第 10 回星のいろいろとその進化 第 11 回課題演習 (2) および中間試験 (2) 第 12 回太陽系の姿 第 13 回惑星のいろいろ 第 14 回地球とその運動 第 15 回課題演習 (3) および中間試験 (3) 第 16 回最終評価試験
第 3 回 : 宇宙観の変遷 (1) 古代から中世まで
目 次 1. 古代天文学の誕生 2. 古代ギリシャの天文学 哲学 - 機械的宇宙観の誕生 3. 古代エジプトの天文学 - 機械的宇宙観の完成
太陽 日の出 = 日周運動
2012.5.14. 金環食 NTTF 加藤
星 23 時間 56 分周期 星の出は 1 日につき 4 分ずつ早くなる!
北極星とその高さ 北極星は北ほど高く 南半球では見えない オーストラリアでは家を北向きに作るワケ
北極星北斗七星カシオペヤ
2012 年 3 月中旬
地球から太陽の動きを見ると
2003 年 火星の逆行 ( 大接近 みずがめ座 天王星と共に )
説明すべき現象 1. 太陽 月 星の見え方 ( 高度 運動の向き ) が場所によって異なること 2. 太陽 月 星の 24 時間周期の回転運動 ( 日周運動 ) 3. それらの微妙な違い ( ずれ ) 4. 月の満ち欠け現象 日食 月食 5. 太陽 月の季節変化 ( 年周運動 ) 6. 惑星の運動 明るさの変化 7. 水星 金星グループと火星 木星 土星グループの運動の違い
惑星の視運動の種明かし
ジグラッド
ムルアピン = 天文書 星座名が列挙 ムルムル = すばる
金星は 8 年 40 年周期だ
古代エジプト
エジプトの母 = ナイル川 365.25 日周期だ
ナイルの星 = シリウス イシス神 太陽暦
太陽 月の運行 - 日月食 天文学上の遺産 太陽暦 太陰太陽暦 1 日 =24 時間 黄道星座 星座
目 次 1. 古代天文学の誕生 2. 古代ギリシャの天文学 哲学 - 機械的宇宙観の誕生 3. 古代エジプトの天文学 - 機械的宇宙観の完成
ヨーロッパ 中近東 アフリカ
エーゲ海に面したアナトリア半島 ( 現 トルコ ) 南西部に古代に存在した地方北はヘルムス川 ( 現 ゲディズ川 ) から 南はメアンデル川 ( 現 メンデレス川 ) の河口近くのミレトスまで + キオス島 サモス島
近くのメンデレス川 ミレトスの遺跡
トロイ
クレタ島
タレス (BC624 年 - 546 年頃 ) イオニア自然学の開祖 測量術 天文学 BC585 年 5 月 28 日日食を予言 ( ヘロドトスによる ) ピラミッドの高さ測定 ( 影と自分の身長とを比較 ) バビロニアの惑星位置記録 ( 占星術用 ) から天文学へ 例 : 日食予言 天文学に昇華 占星術に興味なし
タレス (BC624 年 - 546 年頃 ) 幾何学の創設 エジプトの影響 - ナイル川氾濫 長方形の面積計算法から 例 : タレスの定理 ( たくさんあるらしいが ) 1 半円の弧に対する円周角は直角 宇宙生成論 この世界の起源について 合理的説明をはじめて試みた 万物の根源 ( アルケー ) を水と考え 存在する全てのものがそれから生成し それへと消滅していくものだと考えた そして大地は水の上に浮かんでいるとした 世界は水からなり そして水に帰るとした
ピタゴラス (BC582 年 - 496 年 ) 三平方の定理 のピタゴラス まさに幾何学 同心球宇宙 - 真円 球 物事の根源 即ち アルケーは数である エウドクソスの同心天球へ アポロニウスの周転円へ
OUS 天文学史 加藤賢一 33 ソクラテス (BC469 年頃 - BC399 年 ) (1) 哲学 の創始者 ギリシャ アテネ philein ( 愛する ) + sophia( 知恵 知識 ) = philosophia
OUS 天文学史 加藤賢一 34 (1) 西洋哲学の源流 現代欧米の思考法にまで大きな影響を及ぼしている プラトン ( 紀元前 427 年 - 347 年 ) キリスト教 特にプロテスタントの思想的背景 近代科学の背景にも ソクラテスの弟子でアリストテレスの師
OUS 天文学史 加藤賢一 35 学園アカデメイア 紀元前 387 年 ~AD529 年 天文学 生物学 数学 政治学 哲学など 対話 学校の場所であるアテナイ郊外のアカデモスの聖林にちなむ アカデメイアとは 快楽
36 アリストテレス ( 前 384 年 - 前 322 年 ) 万学の祖 - たる自然研究 多岐にわ イスラーム哲学や中世スコラ学に影響 キリスト教 特にローマ カトリックの思想的背景 アレクサンドロス大王の家庭教師
37 アリストテレスの地球中心宇宙 構造と運行機構を与えた 構造 - 宇宙の中心に地球 天動説 同心球 (1) 全宇宙は恒星天球の内側 ( 正確には 外面の内側 ) にある (2) 恒星天球の内側にはエーテルが存在していて真空ではない (3) 恒星天球の外側には 何も存在しない (4) 宇宙は有限 無限なら 地球から離れている点は 24 時間で地球の一周できない (5) 宇宙は有限 その形は球であり中心があり その中心は地球でなければならない 地球は球形 - 月食の時の地球の影 北極星の高さ 内側の惑星に 4 5 個の同心球群 合計 56 個の同心球 宇宙構造 + 物理的機構 材料 ピタゴラス的構造 + 物理的機構 天上界 地上界の峻別 ( 上の 2 元論 ) 天上界 : エーテル 永久不滅の一様円運動 地上界 : 火 空気 水 土 中心に対する直線運動
古代ギリシャの天文学者たち
OUS 天文学史 加藤賢一 39 ヒッパルコス BC190:-120:
OUS 天文学史 加藤賢一 40 ヒッパルコス BC190:-120: メソポタミアの天文記録の収集 継承 ( プトレマイオスへ ) メソポタミアの数学の導入 - 60 進法 360 採用 月の運動解析 軌道決定 ( 月食から ) 三角法の工夫 ( 三角関数表 ) 太陽の離心円 周転円モデル 太陽までの距離 - 490 地球半径 ( 視差 7 以下 ) 月までの距離 - 59~67 地球半径
OUS 天文学史 加藤賢一 41 ヒッパルコス BC190:-120: 恒星位置観測 等級の創設 歳差の発見 100 年に 1 48 星座の創設 天動説 = 地球中心説の実質的確立 300 年後 プトレマイオスへ
機械的宇宙観の誕生 周天円説 地球中心 + 円軌道 球殻天球
目 次 1. 古代天文学の誕生 2. 古代ギリシャの天文学 哲学 - 機械的宇宙観の誕生 3. 古代エジプトの天文学 - 機械的宇宙観の完成
OUS 天文学史 加藤賢一 44 エラトステネス BC275-194 ヘレニズム時代のエジプトで活躍したギリシャ人の学者 アレクサンドリア図書館を併設する研究機関ムセイオンの館長 業績は文献学 地理学 特に数学と天文学
OUS 天文学史 加藤賢一 46 クラウディオス プトレマイオス AD83:-168: ギリシャ風 ギリシャ語の時代
OUS 天文学史 加藤賢一 47 アレクサンドリア 332 年成立 - マケドニア王アレクサンドロス アレクサンドロスの死後 - プトレマイオス1 世 ヘレニズム時代の商業 ( 地中海貿易 ) と文化の中心地 学術研究所ムーセイオン アレクサンドリア図書館 - 70 万冊 幾何学原論のエウクレイデス 地球の大きさを正確にはかったエラトステネス アルキメデス ヘロン クラウディオス プトレマイオスなど
OUS 天文学史 加藤賢一 48 クラウディオス プトレマイオス AD83:-168: 1. アルマゲスト ( アラビヤ名 =The-greatest) - 数学全書 ( 球面幾何学など最先端の数学 ) - 古代ギリシャ天文学の集大成 今でも難しい! 2. ゲオグラフィア (Geographia 地理学 ) - 世界地図 1000 年後まで 大航海時代にも影響 コロンブス 3. テトラビブロス (Tetrabiblos 四つの書 ) - 占星術の古典
アルマゲスト OUS 天文学史 加藤賢一 49
OUS 天文学史 加藤賢一 50
OUS 天文学史 加藤賢一 51 地球中心説確立非常に緻密な惑星 月 太陽の運行論
天体の見かけの運動その観測事実から宇宙構造へ 古代ヨーロッパにおける宇宙の最大の課題
観測事実 太陽 月 星は東から出て 西に沈む 太陽の周期は 1 日 月はそれより 50 分長く 星は 4 分短い それらは北極星を中心にめぐる 5 つの惑星は特別な星で 恒星の間を 1 年に毎に西 東 ( 順行 ) 西 ( 逆行 ) 東 ( 順行 ) とループを描きながら進む 太陽と惑星は恒星を間を移動するが その移動量は水星 金星 太陽 火星 木星 土星の順である 水星と金星は太陽を中心に左右に移動し 太陽から大きく離れることはない 地球は球体
天頂 天の北極 西 南 北 東
天球上の太陽の動き ( 秋分の日 ) 天頂 天の北極 西 北極 南 北 南極 東 地平線
惑星の動きはどう説明しようか?
* 2003 年 火星の逆行 ( 大接近 みずがめ座 天王星と共に )
地球中心 + 円軌道 球殻天球 離心円 機械的宇宙観 = 地球中心説の完成
OUS 天文学史 加藤賢一 60 今日の課題 古代ヨーロッパで確立した地球中心説とはどのような考え方か? そこでは天体の日周運動 惑星の複雑な動きはどのように説明されているか? 図を描いて説明せよ