225 09商学論纂 56-1_2★研究ノート【高橋】.indd

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ファンドの目的 わが国の株式で積極的な運用を行い 日経平均株価 ( 日経 225) の動きに連動する投資成果を目指します ファンドの特色 日経平均株価 ( 日経 225) の動きに連動する投資成果を目指します 日経平均株価に採用されている銘柄の中から 200~225 銘柄に 原則として等株数投資を行

有価証券オプション取引における建玉制限数量 (2017 年 5 月 12 日から適用 ) コード オプション対象証券 新制限数量 現行制限数量 1306 TOPIX 連動型上場投資信託 2,998,900 単位 2,033,700 単位 1309 上海株式指数 上証 50 連動型上場投資信託 1,7

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002 日経平均株価 ( 日経 225) 採用銘柄における定款の英訳状況 2016 年 7 月 4 日 注 : 本レポートは 客観的調査に基づき作成したものであり 特定の開 法や記載 法を推奨するものではありません 本レポートは 慎重な調査に基づき作成 集計しておりますが その正確性が保証されている

第2回格付検討会資料1                 2009年7月23日

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217/7/14 17/3 通期 為替 原油相場の実勢 ( 期中平均 ) 18/3 Q1 Q2 Q3 Q4 通期会社想定 Q1 経常利益 ( 前年同期比 %) ( 前年同

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過去のリターンが将来も続くとはかぎりません 各資産の年間リターンランキング 第 1 位 % 31.9% 45.2% 40.9% 10.7% 3.4% % 34.1% 1.9%

平成 28 年 4 月 20 日 各位 会社名 代表者名 問合せ先 大和証券投資信託委託株式会社 ( 管理会社コード :13054) 代表取締役社長岩本信之経営企画部近藤龍一郎 (TEL ) 上場 ETF( 管理会社 : 大和証券投資信託委託 ) に関する日々の開示事項 1

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第1章

平成 27 年 11 月 13 日 各位 会社名 代表者名 問合せ先 大和証券投資信託委託株式会社 ( 管理会社コード :13054) 代表取締役社長 白 川 真 経営企画部 近藤 龍一郎 (TEL ) 上場 ETF( 管理会社 : 大和証券投資信託委託 ) に関する日々の

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6/23 6/30 日野 A 5 11:00 12:30 14:00 15:30 17:00 3C 3C 3C 2B 2B 大和総研ホールテ ィンク ス三菱 UFJ パンダース RALLY 京王電鉄東村山クラブ 日野 B 5 3C 3A 3E 3E 3E ビスディアバブルス K ALPHA 女 1

2/ UFJ HD / / % 2/ / % 2/ / % 2/ / % 2/ /

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e ワラント満期決済金額一覧 (2016/3/9) EW_Code 種類 ワラントタイプ コード 対象原資産 回号 権利行使価格 1ワラント当り原資産数 適用為替 1ワラント当りの決済金額 参照原資産価格 J150056M eワラント コール 101 日経平均 , 円 0.0

東 1 鉄鋼 神戸製鋼所 , 東 1 電気 富士通 , 東 1 電気 東芝 , 東 1 医薬品 田辺三菱製薬 , 東 1 空運 日本航空 0


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けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

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e ワラントホームページ e ワラント証券株式会社投資情報室 Copyright 2019, ewarrant Japan Securities K.K. All rights reserved. 本資料は情報の提供を目的としており 本資料による何らかの行動を勧

16 アイシン エイ ダブリュ 株 式 会 社 1(1) 1 17 旭 硝 子 ( 株 ) 1(1) 1 18 カワサキプラントシステムズ 株 式 会 社 1(1) 1 19 キヤノン 株 式 会 社 1(1) 1 20 九 州 電 力 株 式 会 社 1(1) 1 21 近 畿 日 本 鉄 道 株

[ 掲載番号 1] ( 銘柄コード :2031) NEXT NOTES 香港ハンセン ダブル ブル ETN に関する日々の開示事項 260,000 口 4,164,680,000 円 16,018 円 4. ETN の一証券あたりの償還価額と円換算したハンセン指数 レバレッジインデックスの終値の変動

第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

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1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

 

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1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

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2018 年度第 3 四半期運用状況 ( 速報 ) 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に判断することが必要ですが 国民の皆様に対して適時適切な情報提供を行う観点から 作成 公表が義務付けられている事業年度ごとの業務概況書のほか 四半期ごとに運用状況の速報として公表を行うも

グラフからは 過去 17 年間において日本株は 1997 年の金融危機 2000 年の IT バブル崩壊 2007 年のサブプライムとそれに続くリーマンショックによって3 回の下落相場に見舞われたことが分かる 他方 TOPIX の上昇 / 下落の局面別に分類 集計した表からは 当該 204 ヵ月間に

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つみたて NISA や一般 NISA で積み立てする場合の投資対象は多岐にわたる 債券ファンドや REIT ファンドに投資した場合など多様な資産で検証した結果も見てみたい さらに 積み立て投資では 終了時期の市場環境がリターンに影響する為 終了時が約 21 年ぶりの高の今だけでなく 多様な市場環境で

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第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

[ 掲載番号 1] ( 銘柄コード :2031) NEXT NOTES 香港ハンセン ダブル ブル ETN に関する日々の開示事項 160,000 口 2,150,080,000 円 13,438 円 4. ETN の一証券あたりの償還価額と円換算したハンセン指数 レバレッジインデックスの終値の変動

社員のボランティア支援制度別企業リスト

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個人応募インターンシップ募集一覧 学務部学生支援課に 開催案内のあったものを掲載しています 新着順 参加希望者は 各企業等の案内に従って 各自手続きを行ってください 詳細は各企業のWebサイトを参照してください 2017/9/28 企業 団体名等 対象学生学部指定 募集期間応募締切 実施期間応募方法

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定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

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2003年1月23日

 


輸送量 (kg) 海上分担率 図 1 に 07~14 年の日本発米国向けトランジスタ輸送の海上 航空輸送量と海上分担 率の推移を示す 800, , , , , , , ,


[ 掲載番号 1] ( 銘柄コード :2031) NEXT NOTES 香港ハンセン ダブル ブル ETN に関する日々の開示事項 260,000 口 3,350,880,000 円 12,888 円 4. ETN の一証券あたりの償還価額と円換算したハンセン指数 レバレッジインデックスの終値の変動


長期金利の上昇と商業用不動産価格の関連性

 

225 インデックスファンド 第 31 期運用報告書 ( 全体版 ) ( 決算日 2017 年 10 月 30 日 ) お客様へ 毎々格別のお引立てにあずかり厚く御礼申し上げます さて 225インデックスファンド は 2017 年 10 月 30 日に第 31 期決算を行いましたので 期中の運用状況

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1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

主成分分析 -因子分析との比較-

Transcription:

商学論纂 ( 中央大学 ) 第 56 巻第 1 2 号 (214 年 7 月 ) 225 研究ノート 金融危機時の株価変動要因 長期的な変動とアジア金融危機時の比較 高橋豊治 目次 1. はじめに 2. アジア金融危機時の株価変動 3. 長期変動 4. おわりに 1. はじめに 本稿は, 長期的な株価変動との対比でアジア金融危機時の日経平均株価指数 ( 以下, 日経 225 と略称する) と, そこに採用されている銘柄の株価変動を取り上げ, その変動要因を分析することを目的としている 1) いわゆるアジア金融危機当時において, 日経 225は, 図 1 の通り,1997 年 7 月から大幅な下落を経験し, その後上昇に転じ2 年 3 月には1997 年 7 月の水準を回復している その後,2 年 8 月にかけて再び大幅な下落を経験した この期間の株価変動の特徴とその要因をより長期の期間, 具体的には, 全体の分析対象期間として1994 年以降 3 年間をとり, 長期的な株価の推移の中で, 日経 225と個別株価との関係から分析する 本稿の構成は, 以下の通りである まず, 2 節において, アジア金融危機時の株価変動を対象にする 2.1では, 日経 225の収益率と各銘柄の収益率の相関から株価の推移を確認し,2.2では, 主成分分析により株価変動要因となる主成分を計測するとともに, それを活用した銘柄の特徴を明らかにする 2) 次に 3 節において, 1) データは, 日経 Needs Financial Quest のものを利用した 銘柄の名称は日本経済新聞社の相場名でカッコ内の数字は銘柄コードである

226 22, 21, 2, 19, 18, 17, 16, 15, 14, 13, 12, 図 1 日経 225 の推移 ( アジア金融危機時 ) 1997/1 1997/3 1997/5 1997/7 1997/9 1997/11 1998/1 1998/3 1998/5 1998/7 1998/9 1998/11 1999/1 1999/3 1999/5 1999/7 1999/9 1999/11 2/1 2/3 2/5 2/7 2/9 2/11 1984 年から 3 年間の期間の株価変動を対象に, 2 節と同様 3.1 で日経 225 の収益率と 各銘柄の収益率の相関から株価の推移を確認,3.2 で主成分分析により株価変動要 因の特徴を明らかにする 最後に, 4 節でポイントと今後の展開を述べる 3) 2. アジア金融危機時の株価変動 2. 1. 相関係数に基づく分析 日経 225 と比較して, 日経 225 採用銘柄であっても, 変動パターンが異なる株式が いくつかある 全体的な相場の下落局面においても, 下落の程度が異なるような株 式にはどのような共通要因があるのかを検討することができる これらの株式の変 動パターンについて分析することで, 相場の下げに強い株式運用を行うことも可能 になるのではないかと考えられる ここでは, アジア金融危機の期間として,1997 年 1 月から 2 年 12 月までの 48 か 月の月次株価 ( 終値 ) をもとに分析を行った 28 年 1 月 1 日現在の日経 225 採用 企業のうち, この 48 か月のデータが利用できる 193 銘柄を対象にした 4) 株価に加え, t 期の株価 P t の対数変化率 r t =log ( P t P t-1 ) による月次収益率をもとに分析を加える 2) これらの分析は,SAS 9.3により行った 3) 本節の内容は, 高橋 (214) をもとに修正したものである 4) データが利用できないのは, 当時未上場の企業や合併などにより連続性が確保できない企業などである

16 15 14 13 12 11 1 9 8 7 6 金融危機時の株価変動要因 ( 高橋 ) 227 図 2 相関係数が低い銘柄の株価推移 ( アジア金融危機時 ) 1997/7 1997/8 1997/9 1997/1 1997/11 1997/12 1998/1 1998/2 1998/3 1998/4 1998/5 1998/6 1998/7 1998/8 1998/9 1998/1 1998/11 1998/12 1999/1 1999/2 1999/3 1999/4 1999/5 1999/6 1999/7 1999/8 1999/9 1999/1 1999/11 1999/12 2/1 2/2 2/3 日経 225 2282 日ハム 951 東電 952 中部電 953 関西電 相関係数行列をチェックすると, 日経 225の収益率との相関係数がマイナスの銘柄が1 銘柄あった 日ハム (2282), アサヒ (252), テルモ (4543), 静岡銀 (8355), JR 東日本 (92),JR 西日本 (921), 東電 (951), 中部電 (952), 関西電 (953), 大ガス (9532) である このうち特に相関係数の低い中部電 (952), 東電 (951), 日ハム (2282), 関西電 (953) の 4 社の株価の推移を日経 225の推移とともに描いたものが図 2 である 図 2 は,1997 年 7 月のアジア金融危機勃発時から, その後の下落と回復を経て, 日経 225が元の水準まで回復する2 年 3 月末までの期間を描いたものである 株式への投資収益率は変動が大きく, 累積結果がどのようになっているかイメージしづらいので, 株価での表示とした もちろん, 銘柄ごとの水準が大きく異なるので, スタート時の株価を1とする指数として表示している このグラフを見ると, 日経平均の株価水準と逆の動きを示していることが確認できる 次いで, 日経 225との相関が高い銘柄の株価推移についても確認しておこう 相関係数が.625 以上の銘柄はこの1 社について株価の推移を確認しよう 対象としたのは, 信越化 (463), 東邦鉛 (577), 東芝 (652),NEC(671),OKI(673),

228 図 3 相関係数が高い銘柄の株価推移 ( アジア金融危機時 ) 19 18 17 16 15 14 13 12 11 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 1997/7 1997/8 1997/9 1997/1 1997/11 1997/12 1998/1 1998/2 1998/3 1998/4 1998/5 1998/6 1998/7 1998/8 1998/9 1998/1 1998/11 1998/12 1999/1 1999/2 1999/3 1999/4 1999/5 1999/6 1999/7 1999/8 1999/9 1999/1 1999/11 1999/12 2/1 2/2 2/3 日経 225 577 東邦鉛 671NEC 82 丸紅 853 住友商 丸紅 (82), 住友商 (853), 大和 (861), 野村 (864),NTT(9432) の1 銘柄である このうち上位 4 銘柄について相関係数がマイナスの銘柄と同様にグラフを描いたものが図 3 である 最終的には, 住友商 (853),NEC(671) は日経 225を上回るような推移を見せている こうした株価の推移を見る限り, 全般的に相関の高い銘柄は日経平均の下落時にはより大きな価格下落を, 上昇時にはより大きな価格上昇を経験しているように見える このようにして見ると, 相関係数は, おおむね日経 225の推移と個々の銘柄の株価の推移を比較すると, より大きな形で反映する面が見受けられる 2. 2. 株価の変動要因次に株価の変動要因を測定するため, 月次データによる主成分分析を行うことで, その変動パターンを分析しよう 株価変化率の相関は, 前述の相関係数行列に示されているものを利用する 相関行列の固有値と主成分の寄与率 累積寄与率等の推計結果を, 累積寄与率が 1% となる第 46 主成分までについて表 1 に示しておいた

金融危機時の株価変動要因 ( 高橋 ) 229 表 1 相関行列の固有値 ( アジア金融危機時 ) 主成分 固有値 固有値の差 寄与率 累積寄与率 1 56.18-29. 29. 2 17.41 38.77 9. 37.9 3 11.38 6.3 5.9 43.8 4 9.48 1.9 4.9 48.7 5 7.8 2.4 3.7 52.3 6 6.33.75 3.3 55.6 7 5.89.44 3. 58.6 8 5.3.59 2.7 61.4 9 5.3.27 2.6 64. 1 4.4.63 2.3 66.2 11 4.17.23 2.2 68.4 12 3.85.33 2. 7.4 13 3.61.23 1.9 72.2 14 3.4.22 1.8 74. 15 3.27.13 1.7 75.7 16 3.15.12 1.6 77.3 17 3.1.15 1.5 78.8 18 2.78.22 1.4 8.3 19 2.63.15 1.4 81.6 2 2.57.6 1.3 83. 21 2.43.14 1.3 84.2 22 2.27.16 1.2 85.4 23 2.14.13 1.1 86.5 24 2.4.1 1.1 87.5 25 1.98.6 1. 88.6 26 1.83.15.9 89.5 27 1.78.5.9 9.4 28 1.64.14.8 91.3 29 1.56.8.8 92.1 3 1.43.13.7 92.8 31 1.28.15.7 93.5

23 32 1.24.4.6 94.1 33 1.17.7.6 94.7 34 1.1.8.6 95.3 35 1.9.1.6 95.8 36 1.3.6.5 96.4 37.97.6.5 96.9 38.91.6.5 97.3 39.86.5.4 97.8 4.77.9.4 98.2 41.75.2.4 98.6 42.67.8.3 98.9 43.62.5.3 99.2 44.55.7.3 99.5 45.52.3.3 99.8 46.43.9.2 1. 表 1 を見ると, 第 1 主成分は全体の投資収益率の変動の29.% を説明するものである 第 2 主成分以下の寄与率は, 第 2 主成分が9.%, 第 3 主成分が5.9% と1% を下回っている 第 5 主成分までで累積寄与率 52.3% と全体の変動の半分強, 第 12 主成分まで採ると変動の7.4% を説明することができ, 第 13 主成分以降は寄与率が 2.% を下回る ここでは, 全体の説明力は 3 割弱であるものの, 他の主成分に比べ説明力の高い第 1 主成分に絞って, 各銘柄に対する因子負荷量を求め, そのうち特徴的なものを取り上げ, 株価の推移はどのようになっていたかを確認することにしよう 変動パターンをイメージしやすくするためにグラフにしたものが図 4 である 図 4 では, 第 1 主成分の因子負荷量を求め, 大きい企業から順に並べ替えて表示した F1とあるのが因子負荷量,median は因子負荷量の中央値,average は平均値, center は中位値 ( 最大値と最小値の平均 ) を示したものである 因子負荷量の median は.5429で, その定義からこの値より因子負荷量の高い企業も低い企業も97 社ずつである 因子負荷量の average は.4923で, 因子負荷量が

金融危機時の株価変動要因 ( 高橋 ) 231 1..8.6.4.2. -.2 図 4 因子負荷量 ( アジア金融危機時 ) F1 median average Center 883 平和不 251 サッポロHD 8815 東急不 315 日清紡 531 東海カ 5715 古河機金 313 ユニチカ 44 昭電工 546 神戸鋼 2871 ニチレイ 461 電化 Niki225 725 日野自 713 IHI 521 旭硝子 6471 日精工 5714 DOWA 5631 日製鋼 712 川重 456 大日本住友 45 住友化 222 明菓 51 新日石 541 新日鉄 914 商船三井 831 三井物 342 東レ 1812 鹿島 583 フジクラ 635 日立建機 881 三井不 3861 王子紙 931 三菱倉 441 日曹達 311 日東紡 6366 千代建 962 日通 5711 三菱マ 6473 ジェイテクト 5233 太平洋セメ 442 東ソー 591 洋カン 3865 北越紙 5713 住友鉱 95 東急 8755 損保ジャパン 576 三井金 8267 イオン 6841 横河電 727 富士重 882 菱地所 4519 中外薬 721 日産自 652 東芝 861 大和 692 デンソー 457 塩野義 827 ユニー 492 コニカミノル 1928 積ハウス 6796 クラリオン 345 クラレ 671 NEC 654 富士電 HD 2531 宝 HLD 864 野村 962 東宝 7911 凸版 421 日産化 7269 スズキ 7731 ニコン 651 日立 8252 丸井 G 911 郵船 6952 カシオ 6976 太陽電 8253 クレセゾン 8331 千葉銀 9613 NTTデータ 5232 住友大阪 7733 オリンパス 9532 大ガス 452 武田 672 富士通 7752 リコー 921 JR 西日本 6752 パナソニック 6479 ミネベア 6762 TDK 252 アサヒ 723 トヨタ 92 JR 東日本 6954 ファナック 4543 テルモ 9737 CSKHD 964 ヤマトHD 9766 コナミ

232 平均以上の企業は112 社, 平均以下の企業は82 社であった 因子負荷量の最大値は.835 平和不 (883), 最小値は-.1585 東電 (951) で center は.336であった 因子負荷量が center 以上の企業は15 社, これ以下の企業は44 社であった 第 1 主成分の因子負荷量をもとに, 特徴的な銘柄の株価の推移を確認する 日経 225の因子負荷量は.727であるが, これと因子負荷量の近い銘柄を, 日経 225より大きい 2 銘柄 ( 電化 (461), 住金 (545)), 小さい 2 銘柄 ( キッコマン (281), 日野自 (725)) の計 4 銘柄を選び, 図 5 にその株価の推移を示してある 5) 最終的には,2 年 3 月時点で日経 225を上回ったのは,2 年 2 月を除きおおむね日経 225を上回る推移を示したキッコマン (281),1999 年 5 月までは日経平均と同様の推移をし, その後大きく上昇した電化 (461) の 2 銘柄のみであった このほかの銘柄では, 日野自 (725) が1999 年 4 月 ~ 6 月の期間についてのみ, 日経 225を上回るにとどまっている 図 6 は, 第 1 主成分の因子負荷量の大きい企業 4 社の株価の推移を, 日経 225と 図 5 因子負荷量が日経 225と近い銘柄の株価推移 ( アジア金融危機時 ) 18 16 14 12 1 8 6 4 2 1997/2 1997/4 1997/6 1997/8 1997/1 1997/12 1998/2 1998/4 1998/6 1998/8 1998/1 1998/12 1999/2 1999/4 1999/6 1999/8 1999/1 1999/12 2/2 2/4 2/6 2/8 2/1 2/12 461 電化 545 住金日経 225 281 キッコマン 725 日野自 5) 高橋 (213) には因子負荷量の近い銘柄を, 日経平均株価より大きい 5 銘柄 ( いすゞ (722), ニチレイ (2871), 日軽金 (571), 電化 (461), 住金 (545)), 小さい 5 銘柄 ( キッコマン (281), 日野自 (725), 昭和シェル (52),IHI(713), 日立造 (74)) の計 1 銘柄の株価の推移を掲載している

金融危機時の株価変動要因 ( 高橋 ) 233 図 6 因子負荷量が大きい企業の株価推移 ( アジア金融危機時 ) 14 12 1 8 6 4 2 1997/2 1997/4 1997/6 1997/8 1997/1 1997/12 1998/2 1998/4 1998/6 1998/8 1998/1 1998/12 1999/2 1999/4 1999/6 1999/8 1999/1 1999/12 2/2 2/4 2/6 2/8 2/1 2/12 日経 225 883 平和不 577 東邦鉛 251 サッポロ HD 73 三井造 図 7 因子負荷量の小さい銘柄の株価推移 ( アジア金融危機時 ) 45 4 35 3 25 2 15 1 5 1997/2 1997/4 1997/6 1997/8 1997/1 1997/12 1998/2 1998/4 1998/6 1998/8 1998/1 1998/12 1999/2 1999/4 1999/6 1999/8 1999/1 1999/12 2/2 2/4 2/6 2/8 2/1 2/12 日経 225 951 東電 9766 コナミ 6758 ソニー 964 ヤマト HD の比較で示したものである 全般的な傾向として,1999 年下落局面から1999 年 5 月ごろまでは, 比較的日経 225と似たような株価の推移を見せていたが, 6 月以降の回復時期に, 日経 225の動きに追随できていないことがわかる 6) 因子負荷量の小さい銘柄について日経 225とともに株価の推移をグラフにしたも 6) 高橋 (213) には, 因子負荷量が近い銘柄を対象に, 日経平均より大きくて近い 5 銘柄, 小さくて近い 5 銘柄の計 1 銘柄を対象にしたグラフを掲載している

234 のが図 7 である 対象は, ヤマト HD(964), ソニー (6758), コナミ (9766), 東電 (951) の 4 銘柄である 7) 第 1 主成分は, 日経 225に代表されるような株式市場全体の動きの説明要因であると考えられる この第 1 主成分の因子負荷量の小さい銘柄を組み入れることで, 株式市場での相場の全体的な下降局面に対する対応を探ることができると考えられる 3. 長期変動 さて, 今回は銘柄相互の関係よりも個別銘柄と日経 225 との関係に注目し, まずは, 市場と負の相関を持つ銘柄, 強い正の相関を持つ銘柄をチェックすることにしよう 37, 32, 27, 22, 17, 12, 7, 図 8 日経 225 の推移 ( 全期間 ) 1984/3 1985/3 1986/3 1987/3 1988/3 1989/3 199/3 1991/3 1992/3 1993/3 1994/3 1995/3 1996/3 1997/3 1998/3 1999/3 2/3 21/3 22/3 23/3 24/3 25/3 26/3 27/3 28/3 29/3 21/3 211/3 212/3 213/3 3. 1. 相関係数に基づく分析相関係数行列をチェックすると, 日経 225の収益率との相関係数がマイナスの銘柄が14 銘柄あった マイナスの程度が大きい順に,NEC(671),ANAHD(922), 日産自 (721), 大ガス (9532), 大林組 (182), コマツ (631), 日本軽金 HD(573), 日東電 (6988), 清水建 (183), 東ガス (9531), 明電舎 (658), 鹿島 (1812), 三井化学 (4183), りそな HD(838) である これらのうち, 4 社の相関係数が 7) 高橋 (213) にはより多くの銘柄 (44 銘柄と,17 銘柄のケース ) を対象にしたグラフを掲載している

金融危機時の株価変動要因 ( 高橋 ) 235 7 図 9 日経 225 と相関の低い銘柄の株価推移 ( 全期間 ) 6 5 4 3 2 1 1984/3 1985/1 1985/11 1986/9 1987/7 1988/5 1989/3 199/1 199/11 1991/9 1992/7 1993/5 1994/3 1995/1 1995/11 1996/9 1997/7 1998/5 1999/3 2/1 2/11 21/9 22/7 23/5 24/3 25/1 25/11 26/9 27/7 28/5 29/3 21/1 21/11 211/9 212/7 213/5 NEC(671) ANAHD(922) 日産自 (721) 大ガス (9532) 日経 225 12 図 1 日経 225 と相関の高い銘柄の株価推移 ( 全期間 ) 1 8 6 4 2 1984/3 1985/2 1986/1 1986/12 1987/11 1988/1 1989/9 199/8 1991/7 1992/6 1993/5 1994/4 1995/3 1996/2 1997/1 1997/12 1998/11 1999/1 2/9 21/8 22/7 23/6 24/5 25/4 26/3 27/2 28/1 28/12 29/11 21/1 211/9 212/8 213/7 商船三井 (914) カシオ (6952) 信越化 (463) 日東紡 (311) 日経 225 -.5 以下と極めて小さな値であったので, この 5 社の株価の推移を, 日経 225の推移とともに描いたものが図 9 である 図 9 では, 変化がわかりやすいように1984 年 3 月の株価水準を1 としてグラフにしてある 日経 225の収益率との相関係数大きい順に14 銘柄リストアップすると商船三井 (914), カシオ (6952), 信越化 (463), 日東紡 (311),T&D(8795), エーザ

236 イ (4523),J フロント (386), 東京ドーム (9681), 三井金 (576), 日立建機 (635), ニチレイ (2871), 凸版 (7911), セコム (9735), アマダ (6113) で, 最も相関係数の低いアマダでも.9845である このうち相関係数.997 以上の 4 社について, 株価の推移をグラフにすると図 1のようになる ここでも,1984 年 3 月の株価水準を 1 としてグラフにしてある 3. 2. 株価の変動要因グラフによる直観的な理解できたところで, ここまで検討してきた内容を踏まえて, 株価の変動要因を測定するため, 月次データによる主成分分析を行うことで, その変動パターンを分析しよう 相関行列の固有値と主成分の寄与率 累積寄与率等の推計結果を, 累積寄与率が 1% となる第 3 主成分までについて表 2 に示しておいた 表 2 を見ると, 第 1 主成分だけで, 全体の投資収益率の変動の62% を説明している 第 2 主成分以下の寄与率は, 第 2 主成分が21%, 第 3 主成分が17% で 3 つの主成分だけで全体の変動を説明できていることは興味深い 表 2 相関係数の固有値 ( 全期間 ) 主成分 固有値 固有値の差 比率 累積 1 14.29 62 62 2 47.52 92.78 21 83 3 38.19 9.33 17 1 そこで, 全体の説明力は 6 割を超える高い説明力を持つ第 1 主成分に絞って, 各銘柄に対する因子負荷量を求め, そのうち特徴的なものを取り上げ, 株価の推移はどのようになっていたかを確認することにしよう 図 11では読み取りづらいが, 第 1 主成分の日経平均収益率への因子負荷量が.9991と非常に高いことから, この主成分は, 日経平均に示されるような, 市場全体の変動要因を示している可能性が高い そこで, アジア金融危機時で確認した, 日経平均と第 1 主成分の因子負荷量が近い銘柄は, 第 1 主成分の因子負荷量の高い銘柄であるから, 両者をまとめて図 12と

金融危機時の株価変動要因 ( 高橋 ) 237 1.8.6.4.2 -.2 -.4 -.6 -.8-1 図 11 因子負荷量 ( 全期間 ) 信越化 (463) T&DHD(8795) 三井金 (576) 日立建機 (635) デンソー (692) 凸版 (7911) NTTドコモ (9437) 第一生命保険 (875) シチズンHD(7762) OKI(673) 東京海上 (8766) 日精工 (6471) イオン (8267) 日清紡 HD(315) 日曹達 (441) あおぞら銀 (834) 三菱 UFJ(836) 三井住友 FG(8316) 千葉銀 (8331) ホンダ (7267) オークマ (613) 大和 (861) いすゞ (722) 静岡銀 (8355) 京セラ (6971) 日新製鋼 (5413) ファナック (6954) 日産化 (421) 東宝 (962) 新日鉄住金 (541) クラレ (345) ニコン (7731) 三井住友トラ (839) サッポロHD(251) JX(52) SUMCO(3436) ソニー FH(8729) 東芝 (652) 東洋紡 (311) 日製鋼 (5631) 安川電 (656) キリンHD(253) 横河電 (6841) 旭化成 (347) 宇部興 (428) ミネベア (6479) 浜ゴム (511) 東電 (951) クレセゾン (8253) 味の素 (282) ユニー GHD(827) 昭和シェル (52) ヤフー (4689) 住友重 (632) テルモ (4543) 東京エレク (835) 住友化 (45) マルハニチロ (1334) JT(2914) オリンパス (7733) NTT(9432) 東邦鉛 (577) 丸紅 (82) 神戸鋼 (546) ユニチカ (313) シャープ (6753) 三井物 (831) 資生堂 (4911) 花王 (4452) トクヤマ (443) りそなHD(838) 鹿島 (1812) 東ガス (9531) 日東電 (6988) 大ガス (9532) NEC(671)

238 12 図 12 因子負荷量が大きい企業の株価推移 ( 全期間 ) 1 8 6 4 2 1984/3 1985/4 1986/5 1987/6 1988/7 1989/8 199/9 1991/1 1992/11 1993/12 1995/1 1996/2 1997/3 1998/4 1999/5 2/6 21/7 22/8 23/9 24/1 25/11 26/12 28/1 29/2 21/3 211/4 212/5 213/6 信越化 (463) 商船三井 (914) カシオ (6952) 日経 225 いう一つのグラフとして示すことにしよう 図 12では, 全体の期間に関して, 第 1 主成分の因子負荷量の大きい企業 3 社の株価の推移を, 日経 225との比較で示したものである 全般的な傾向として, 日経 225と比較的似たような株価の推移を見せて, その変動は日経平均よりも大きい 特に信越化学工業 (463), 商船三井 (914) はその傾向が強い ついで, 第 1 主成分の因子負荷量の小さい銘柄を確認してみよう 因子負荷量の最も小さい 4 銘柄は, 小さい順に, 大ガス (9532), 日産自 (721),ANAHD(922), NEC(671) であった これらの銘柄は, 順序は違うものの日経 225と相関の低い銘柄と同じものである ( 相関係数の低い銘柄は, 低い順に NEC(671),ANAHD (922), 日産自 (721), 大ガス (9532) であった 株価変動の特徴は, 図 9 に示されている ) このことからも, 全期間の株価変動を説明する第 1 主成分は, 日経 225に代表されるような市場変動要因であると考えることが妥当であろう 4. おわりに 高橋 (214) で, アジア金融危機を分析対象時期として取り上げたのは, 短期間

金融危機時の株価変動要因 ( 高橋 ) 239 に相場の下落, 上昇という変動を経験した時期であることに加え, 外的ショックによる相場の下落の経験だからという理由であった 今回, 分析対象を, 危機以外の期間も含め,1984 年以降の3 年間を対象に拡大した 日本のバブルの形成とその崩壊の期間や, その後の長期間にわたる株価の低迷期間も含めて, 長期の株価変動の要因を探るきっかけとした アジア金融危機時の期間を対象とした主成分分析と全期間を対象としたものとは大きく異なっていたことは重要な発見であろう アジア通貨危機の期間を対象にした表 1 を見ると, 第 1 主成分は全体の投資収益率の変動の29.%, 第 12 主成分まで採用しても変動の7.4% を説明するに過ぎないが, 表 2 を見ると, 第 1 主成分だけで, 全体の投資収益率の変動の62% を説明している 第 2 主成分以下の寄与率は, 第 2 主成分が21%, 第 3 主成分が17% で 3 つの主成分だけで全体の変動を説明できているという大きな違いがある このことは金融危機における株価変動要因は, 全期間を通しての変動要因と大きく異なっていて, 様々な要因の影響が及んでいることを示唆するものとして, 非常に興味深い発見である 今後,28 年 9 月のいわゆる リーマン ショック に代表されるような,27 年以降のアメリカ発の金融危機による株価の低迷時期についても分析対象とすることで, 今回の発見が外的な金融危機要因による株価の変動の, 一般的な特徴なのかを明らかにすることができるであろう 参考文献市川伸一 大橋靖雄 (1987) SAS によるデータ解析入門 東京大学出版会日経メディアマーケティング (214)NEEDS-Financial QUEST 高橋豊治 (213) アジア通貨危機時の株価: 商学論纂 第 55 巻第 3 号参考資料 http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~toyohal/research/ronsan55-3/ 高橋豊治 (214) アジア通貨危機時の株価 商学論纂 第 55 巻第 3 4 合併号