n 犬のリンパ腫の概要 講演内容 犬のリンパ腫 n リンパ腫の分類 n High grade リンパ腫と Low grade リンパ腫 n リンパ球のリンパ腫と リンパ球のリンパ腫 n 多中心型リンパ腫 n 消化器型リンパ腫 JAHA 動物看護師腫瘍学アドバンスセミナー n 縦隔型リンパ腫 n 皮膚型リンパ腫 n その他のリンパ腫 n 完治 完治と寛解の違い n 全てのがん細胞が根絶されている事 寛解の種類 (WHO) n 完全寛解 (CR): 測定可能な病変なし n 部分寛解 (PR): 測定可能な病変が 50% 以上縮小 n 維持病変 (SD):50% 未満の縮小から 25% 未満の増大まで n 完全寛解 n 詳細な検査を行っても病変が検出できない状態 n 癌細胞が 1g 以下の状態 (1g=10 億個 ) n 進行性病変 (PD): 病変が 25% 以上増大 ( 進行 ) 25% 以上増大 > 維持病変 > 50% 以上縮小 > 病変なし PD SD PR CR 奏効率 ( 反応率 ) とは リンパ腫 n 奏効率 n 完全緩解と部分寛解を加えたもの n 病変が 50% 以上縮小した症例の割合 n 維持病変は含めない リンパ腫 悪性リンパ腫 リンパ肉腫 LSA 1
概要 n 犬で最も認められる悪性腫瘍 n 腫瘍全体の7~24% n 造血系悪性腫瘍の83% n 年齢中央値 :6~9 歳 n 性差なし 好発犬種とリスクの少ない犬種 ( 欧米 ) n 好発犬種 n ボクサー, ブルマスティフ, バセットハウンド, セントバーナード, スコティッシュテリア, エアデールテリア, ブルドック n リスクの少ない犬種 n ダックスフンド ( 日本以外 ), ポメラニアン 日本では若齢 M. ダックスフンドに消化器型リンパ腫が多い 日本では 埼玉動物医療センター 1999 2007( 多中心型リンパ腫 ) 何故うちの子が?: リンパ腫の原因 N=25 n 除草剤が関与 n 工業地域や化学物質 ( ペンキ等 ) n 強力な磁場の影響 リンパ腫の原因 : 免疫抑制 n リンパ腫の犬に免疫抑制はよく認められる n 免疫系の変化によりリンパ腫発症のリスクが増加 n シクロスポリンの治療後にリンパ腫発症例が報告 n 免疫抑制療法でリンパ腫発症の可能性 リンパ腫の分類 n 解剖学的分類 : 発生部位 n 組織学的悪性度による分類 : 腫瘍細胞の大きさ n 低悪性度 ( 高分化型,Low Grade) n 中間悪性度 (Intermediate Grade) n 高悪性度 ( 低分化型, 未分化型,High Grade) n 免疫学的な分類 n リンパ球の腫瘍 n リンパ球の腫瘍 n どちらにも分類できない腫瘍 (NON-,NON-) 2
解剖学的部位による分類 悪性度分類 n 多中心型 80% n 縦隔型 ( 胸腺型 ) 約 5% n 消化器型 5-7% n 皮膚型 n その他 : 中枢神経系, 骨, 睾丸, 膀胱, 心臓, 鼻腔 Low grade( 低悪性度, 高分化型 ) High grade( 高悪性度, 低分化型 ) Low と High の違い ( 細胞診 ) Low と High の違い 血液中に出現した腫瘍細胞 ( ステージ Ⅴ) Low grade リンパ腫 High grade リンパ腫 Low grade リンパ腫 High grade リンパ腫 腫瘍細胞と赤血球の大きさの違いに注目! 悪性度分類 High grade Low grade 病期進行 急速 緩慢 治療反応 高い 低い 生存期間 短い 長い 多中心型リンパ腫の 悪性度の比率 埼玉 AMC (1999-2007) 欧米の報告 Low grade 16% (4/25) 5~10% Inter mediate grade 4% (1/25) 20~30% High grade 80% (20/25) 60~70% Carter,Can J Vet Res,1986 Appelbaum,Hematol Onco,1984 aske,exp Hematol,1994 K Rimpo VCS Proc 2008 3
リンパ腫の分類 ( 悪性度と, 分類 ) 細胞型 High grade 細胞型 High grade 多中心型リンパ腫 n 犬のリンパ腫の大半 (80%) を占める n 抗がん治療に最も反応する腫瘍 細胞型 Low grade 細胞型 Low grade 体表リンパ節 体表リンパ節腫大の鑑別診断 n 腫瘍性疾患 n リンパ腫 n リンパ性白血病 n 組織球性肉腫 n 様々な悪性腫瘍のリンパ節転移 体表リンパ節腫大の鑑別診断 多中心型リンパ腫の臨床症状 n リンパ節腫大, 通常は痛み伴わない n 非腫瘍性疾患 n 感染症 n 免疫介在性疾患 n 全身性エリテマトーデス, 慢性関節リウマチなど n アレルギー性疾患 n ノミアレルギー ( 特に猫 ) など n その他は, 無症状の事も多い n 20-40% の症例に非特異的な症状 n 体重減少 n 無気力, 元気, 食欲低下 n 発熱 n 多飲多尿 n 腹位膨満 ( 肝脾腫大 ) n 嘔吐, 下痢 n 咳 ( 肺浸潤 ) 4
n 多くは細胞診で診断可能 n 下顎リンパ節は避ける 診断 n Low grade( 低悪性度, 高分化型 ) のリンパ腫は, リンパ節の切除生検 ( 病理組織検査 ) が必要 進行度の把握 : ステージング n 身体検査 n CC, 血液化学検査 n 尿検査 n 胸部, 腹部 X 線検査 n 超音波検査 n 肝臓, 脾臓の細胞診 n 骨髄検査 n, 分類 (PCR) 進行度の把握 : 臨床ステージ (WHO) リンパ腫のサブステージ (WHO) ステージ I : 単独のリンパ節, リンパ器官に限局ステージ II : 局所リンパ節の腫脹ステージ III : 全身のリンパ節腫脹ステージ IV : 肝臓 脾臓にリンパ腫が波及ステージ V : 末梢血や骨髄に腫瘍細胞が出現リンパ腫がリンパ器官以外の臓器に波及 サブステージ a: 臨床徴候なし サブステージ b: 臨床徴候あり 高カルシウム血症がある場合臨床徴候に関わらずサブステージ b, 分類 :PCR( ポリメラーゼ連鎖反応法 ) イメージ図 反応性 細胞性リンパ腫 多中心型リンパ腫の治療 n 悪性腫瘍の治療 n 化学療法 ( 抗がん治療 ) n 外科手術 n 放射線療法 n 免疫療法 n 光線力学療法 n 温熱療法 n 栄養療法 細胞性リンパ腫 5
High Gradeリンパ腫の治療で用いられる代表的な抗がん剤 第 1 選択薬 :CHOPベースプロトコール(L-CHOP) (L) : L-アスパラギナーゼ (C): シクロフォスファミド (H) : ドキソルビシン ( ハイドロキシダウノロビシン ) (O): ビンクリスチン ( オンコビン ) (P) : プレドニゾロン High Grade リンパ腫の治療で用いられる代表的な抗がん剤 第 2 選択薬 アクチノマイシン -D ミトキサントロン, クロラムブシル メトトレキセート ダカルバジン イフォスファミド シトシンアラビノサイト ロムスチン もし治療をしなかったら? n 無治療のリンパ腫の予後 n ほとんどの犬が 4 6 週間後に死亡 UW25 プロトコール 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 15 17 19 21 23 25 L-アスパラギナーゼ ビンクリスチン シクロフォスファミド ドキソルビシン プレドニゾン L- アスパラギナーゼ :400IU/kg SC ビンクリスチン :0.7mg/m 2 IV シクロフォスファミド :250mg/m 2 IV ドキソルビシン :30mg/m 2 プレドニゾン : 2mg/kg PO SID 7 日 1.5mg/kg 7 日 1mg/kg 7 日 0.5mg/kg 7 日 High grade 多中心型リンパ腫 多剤併用プロトコールの治療成績 n 完全寛解率 :80% 以上 n 生存期間の中央値 :1 年 n 2 年生存率 :25% n 完治率 :? n ドキソルビシン単剤 その他の化学療法 n 5 回投与 (30mg/m 2 3 週間毎 ) n 完全寛解率 50-70% n 生存期間の中央値 6 8 カ月 n プレドニゾロン単独 n 経済的な事情などで化学療法が行えない場合の緩和治療 n 生存期間は約 1 2 カ月 ( 延命効果なし ) n プレドニゾロンの単独治療を行うとその後の抗がん剤の効果は低下する可能性あり! 6
LOW grade 多中心型リンパ腫の 治療ガイドライン LOW grade 多中心型リンパ腫の治 療 n リンパ節の腫脹によって臨床症状が発現している場合 n 症状の軽いものは無治療 n クロラムブシル プレドニゾロン n メルファラン プレドニゾロン (呼吸困難など) n 著しい臓器腫大が認められる場合 血球減少症が認められる場合 n 単クローン性高ガンマグロブリン血症が認められる場合 n 食欲低下 衰弱 体重減少などの全身症状が存在する時 辻本元(東大) 高分化型リンパ腫治療のガイドライン 2008 口腔粘膜に発した Low gradeリンパ腫 口腔粘膜に発した Low gradeリンパ腫 12歳齢 ゴールデン レトリーバー 去勢雄 主訴 顔が腫れている 下顎リンパ節腫脹 下顎リンパ節切除生検 口唇粘膜切開生検 細胞型Low gradeリンパ腫 下顎リンパ節細胞診 Low gradeリンパ腫を疑う 口腔粘膜に発した Low grade リンパ腫 犬のHigh Grade消化器型リンパ腫 n 慢性消化器症状 n 体重減少 無気力 元気 食欲低下 嘔吐 下痢 n 低タンパク血症 n 細胞性が主体だが 細胞性タイプもある クロラムブシル プレドニゾロンで治療後約1ヵ月後 7
High Grade消化器型リンパ腫 Low grade 消化器型リンパ腫 n 抗がん治療の成績 18頭の犬の研究 n 多剤併用プロトコール VELCAP-SC n 反応率56 CR 9頭 PR 1頭 n データが少ない n 近年 診断される症例が増えてきている n リンパ球性腸炎との鑑別が難しい n 寛解期間の中央値 86日 n 猫ほど治療反応性が良くない n 生存期間の中央値 77日 n 細胞性と細胞性との生存期間に有意差なし Rassnick KM JVIM 2009 M ダックスフンドの消化器型リンパ腫 2歳齢 雌 M ダックス n 若齢で発症するケースが多い 平均約3歳齢 n 数日前に血便で近医を受診 n 原因はよくわかっていないが 長期生存例が多い n 腹腔内腫瘤を指摘 n 抗がん剤の反応比較的良好 n 予後の悪いものもいるが理由は 細胞診 開腹所見 診断 High gradeリンパ腫 細胞型 病理組織検査 8
治療と経過 4歳齢 雄 M ダックス n 術後化学療法を開始 n ビンクリスチンが著効 完全寛解 n 治療開始1年後に抗がん治療中止 n 治療中止後 約6ヵ月で再発 n 治療 ビンクリスチン を再開 n 主訴 n 血便 n しぶり n 肛門周囲のしこり n 2週後には再び完全寛解 n 現在 治療継続中 診断後約4年半 肛門部腫瘤細胞診 治療経過 n 抗がん治療開始 UW25) n 完全寛解には至らないものの部分寛解の状態を維持 n 抗がん治療開始後 約1年半が経過 n 全身状態は 良好 細胞性リンパ腫 mott cellへの分化を伴う 9
縦隔型リンパ腫 X線所見 縦隔型リンパ腫 n 体表リンパ節や肝 脾腫大を伴うものは多中心型に分類 n 高Ca血症を伴うことが多い n リンパ腫で高Ca血症を示した犬37頭中16頭 43 が縦隔型 n 多飲 多尿 n 呼吸困難 n 細胞性が主体 縦隔型リンパ腫 エコー所見 血液化学検査 P(g/dl) Alb(g/dl) Glb(g/dl) AL(U/l) AS(U/l) ALP(U/l) cho(mg/dl) 6.4 Glu(mg/dl) 3.3 UN(mg/dl) 3.1 Cre(mg/dl) 58 Ca(mg/dl) 37 Na(mmol/l) 91 K(mmol/l) 268 Cl(mmol/l) 87.5 18.0 0.8 15.9 144.0 4.83 107.1 皮膚型リンパ腫 抗がん治療後 n 分類 口腔粘膜も含む n 上皮向性 菌状息肉症 細胞性が主体 n 非上皮向性 細胞性が主体 10
肝脾臓型リンパ腫 皮膚型リンパ腫 n 比較的まれ n 肝臓の表面 脾臓 骨髄に浸潤 n 末梢リンパ節腫大無し n 殆どが 細胞性 n 抗がん剤への反応乏しい 脾臓のIndolent リンパ腫 鼻腔内リンパ腫 n Indolent おとなしい 緩慢な n 脾臓に発生するリンパ腫には進行がゆっくりなものがある n 脾臓摘出のみで長期生存が可能 約2年前後 n 化学療法の有効性は不明 Flood-Knapik et al. Vet and Comp Oncol 2012 犬のリンパ腫のまとめ n リンパ腫は抗がん剤に最も反応する腫瘍 n 多中心型リンパ腫の完全寛解率は80%以上 n 生存期間の中央値1年 2年生存率25 n 高分化型リンパ腫は長期生存 無治療の事も n その他の部位に発生するリンパ腫は予後が悪い事 が多い n ミニチュア ダックスフンドの消化器型リンパ腫は 長生きする症例が比較的多い n 脾臓のIndolent リンパ腫は脾摘のみで長期生存 11