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イマー ) とコテ塗用 ( 断面増厚 ) の仕様の異なる 2 種類のポリマーセメントモルタルを交互に施工することによって, 既設床版と補強部材の一体化を強固に図っている さらに施工を下面から行うため, 交通に障害を与えず, 床版振動下にあっても既設床版と増厚部が一体化するものである 位計を設置してた

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22 報告継手部を有する連続繊維補強材により下面増厚補強した RC はりの疲労性状 小田切芳春 *1 辻幸和 *2 岡村雄樹 *3 小林朗 *4 要旨 : 性能が低下した道路橋 RC 床版の補修 補強対策は, 非常に重要な課題である この補強工法としては, 吹付け下面増厚補強工法がある 本研究では, 補強材に炭素繊維の連続繊維補強材 ( 以下 CFRP) を使用し, 継手部を有する CFRP と継手部が無い CFRP の 2 種類を使用して, 静的載荷試験および 万回の定点繰返し載荷試験を行った結果を報告する 実験要因としては,CFRP の継手部の有無,CFRP のかぶりの有無, アンカーの種類とした そして, 試験体の最大荷重, ひび割れ幅,CFRP のひずみ分布等の力学的性状および疲労性状を報告する キーワード : 連続繊維補強材, 補強材の継手, アンカー, 疲労性状, ひび割れ幅 1. はじめに現在, 我が国の RC 構造物には, 高度経済成長期に建設されたものが多く, 性能が低下している構造物も見られる 特に, 大型車交通量の増加, 平成 5 年 11 月の車両制限令による車両総重量規制緩和および道路構造令による設計自動車荷重の増加に伴ない橋梁上部工の RC 部材の劣化が進行しており,RC 構造物の耐震補強, 耐荷力の向上, 耐疲労性の向上を図る必要が生 じている 1 ),2) 本研究では, 道路橋の床版を対象とした下面増厚補強工法として, 格子形状の炭素繊維の連続繊維補強材 ( 以下,CFRP) を使用する場合の基礎研究を報告するものである すなわち,CFRP には分割型で継手部を有する CFRP と一体型で継手部が無い CFRP の 2 種類を使用して, 静的載荷試験および 万回の定点繰返し載荷試験を行った そして, その力学的性状と疲労性状 6@1=9 24 5@1= 6@1=9 1 111 G3 D6 G1 D1 CLCL G2 D13 G1 D1 G2 D13 22 19 155 25 G3 D6 155 25 19 199 21 補強材 増厚部 38 164 38 試験体側面図図 -1 試験体の形状寸法 補強材 4@1=4 15 21 単位 :mm 試験体断面図 * 1 群馬大学大学院工学研究科建設工学専攻 ( 正会員 ) * 2 群馬大学工学部建設工学科教授工博 ( 正会員 ) * 3 前橋工科大学建設工学科助教授工博 ( 正会員 ) * 4 日鉄コンポジット トウシート事業部構造技術部 ( 正会員 )

を, コンクリートの強度,CFRP のかぶりの有無および M-8 式アンカー ( テーパー付ボルト : ねじ径 8mm, 全長 65mm, 埋め込み長 35mm) とリベット式アンカーの違いについて検討した結果を報告する 2.. 実験概要 2.1 試験体の作製試験体の形状寸法を図図 -1 に示す 高さ 199mm, 幅 mm, 長さ 24mm の RC はりを作製し, コンクリートの材齢が 28 日に達した後, 劣化を想定して RC はりに載荷を行った RC はりの引張側に曲げひび割れを発生させ, 引張鉄筋の応力度が 3N/mm 2 となるまで漸増載荷を行った この劣化 RC はりには, ポリマーセメントモルタルと躯体との付着が良好となるように, 躯体底面に表面処理を施した 表面処理には, サンドブラストを用いて粗骨材が見えるまで削り, 凹凸を設けた状態にした CFRP の諸性状を表表 -1 に示す あらかじめひずみゲージを貼付した CFRP を劣化 RC はりの下縁に鋼製アンカーボルトを用いて固定した 図 -2 にひずみゲージの貼付位置, 継手部を有する CFRP の設置位置および M-8 アンカーの定着位置を示す アンカーボルトは, 直径が 8mm の M-8 式アンカーボルトとリベット式アンカーボルトの 2 種類を使用した その後, 劣化 RC はりの底面に噴霧器で水を散布することで湿潤状態にした後, ポリマーセメントモルタルを 2 層に分けて吹き付けた 吹付けの終了後,28 日間の気中養生を行い試験体とした 表表 -2 に試験体の種類を示す 2.2 載荷試験方法載荷試験方法は, スパン mm, 等曲げモーメント区間 mm の二点集中載荷とし, 載荷方法は変位制御とした (1) 静的載荷試験 CFRP の応力度がで N/mm 2 となる荷重 65kN まで漸増載荷した後, 一度除荷した その後,CFRP の応力度がで 3N/mm 2 となる荷重が 98kN まで漸増載荷した後, 再び除荷した その後, 試験体が破壊するまで漸増載荷を行った この間に主鉄筋および補強材の各位置のひずみ, 試験体側面の引張鉄筋位置に生じる曲げひび割れ幅, およびひび割れ発生状況の計測 観察を行った 表 -1 CFRP の諸性状公称断面積引張強度引張弾性率 (mm 2 ) (N/mm 2 ) (N/mm 2 ) 39.2 1794 1.81 1 5 C L 4 24 15@1=1 4 4@1=4 Ⅱ Ⅲ 単位 :mm CFRP:CMR1@1 ひずみゲージ 試験体下面 M-8 アンカーリベットアンカー 図 -2 継手部を有する CFRP の設置位置

表 -2 試験体の種類 試験体 載荷方法 目標強度継手部の増厚量アンカー (N/mm 2 ) 有無 (mm) A-1 静的載荷 2 M-8(12 個 ) 有り 22 A-2 静的載荷 2 M-8(12 個 ) 有り 7 B-1 定点繰返し載荷 2 M-8(12 個 ) 有り 22 B-2 定点繰返し載荷 2 M-8(12 個 ) 無し 22 B-3 定点繰返し載荷 2 リベット式 (24 個 ) 有り 22 B-4 定点繰返し載荷 2 リベット式 (24 個 ) 無し 22 C-1 静的載荷 1 M-8(12 個 ) 無し 22 D-1 定点繰返し載荷 1 M-8(12 個 ) 無し 22 (2) 定点繰返し載荷下側に配置した引張鉄筋の応力度がで 14N/mm 2 となる荷重 51kN まで漸増載荷した後, 上限荷重が 51kN, 下限荷重が 2kN で 万回定点繰返し載荷試験を行い, 再び荷重が 51kN まで漸増載荷を行った その後, 同様に定点繰返し載荷 万回 ( 合計 1 万回 ) を行い, 再び荷重が 51kN まで漸増載荷を行った 定点繰返し載荷が 1 万回 ( 合計 万回 ) 後については, 試験体が破壊するまで漸増載荷を行った 漸増載荷する際には, 主鉄筋および補強材のひずみ, 試験体側面の引張鉄筋位置に生じる曲げひび割れ幅, 試験体中央部のたわみの計測を行った 3.. 実験結果 3.1 最大荷重図 -3 に各試験体の最大荷重を示す すべての試験体において, を下回る荷重で破壊に至った すべての試験体は, コンクリートの圧縮縁が圧壊する以前に変位の増加量が大きくなり荷重が増加しにくくなった時点で, 試験機の安全性を考慮し載荷を終了したためと考えられる また, すべての試験体が, 無補強の場合のを超える荷重で破壊に至った 試験体の種類に関係なく,CFRP の補強効果が得られた 荷重 (kn) 実測値無補強 3 2 1 1 179.1 134.4 164.8 225.1 195. 224.1 17.2 17.3 A-1 A-2 B-1 B-2 B-3 B-4 C-1 D-1 図 -3 最大荷重載荷方法のみが異なる試験体 D-1 と試験体 C-1, 試験体 B-1 と試験体 A-1 をそれぞれ比較すると, 最大荷重はほとんど等しい 万回の繰返し載荷は, その後の最大荷重に, ほとんど影響を及ぼさないことが確認できた CFRP の継手部の有無のみが異なる試験体 B-2 と試験体 B-1 を比較すると, 試験体 B-1 は 試験体 B-2 に対して, 最大荷重が約 3 割小さかった 同様に, 試験体 B-3 は, 試験体 B-4 に対して, 最大荷重が約 2 割小さかった 継手部を有する試験体は, 図 -2 に示した継手部の配置では, 継手部の無い試験体に比べて疲労による損傷を受けやすいと考えられる

アンカーボルトの種類のみが異なる試験体 B-1 と試験体 B-3, 試験体 B-2 と試験体 B-4 をそれぞれ比較すると, 試験体 B-3 は試験体 B-1 に対して最大荷重が約 2 割大きく, 試験体 B-2 と試験体 B-4 は最大荷重がほぼ同等であった アンカーボルトがリベット式の試験体は,M-8 式の試験体に対して同等以上の耐疲労性状を示すと考えられる さらに継手部が有る試験体は継手部が無い試験体に対して, その現象が顕著である コンクリートの強度のみが異なる試験体 B-2 と試験体 D-1 を比較すると, 強度が低いと, 最大荷重が約 3 割小さかった 増厚量のみが異なる試験体 A-2 と試験体 A-1 を比較すると,CFRP のかぶりが mm の試験体 A-2 は, かぶりが 15mm の試験体 A-1 に対して, 最大荷重が約 3 割小さかった CFRP でもかぶりがないと, 最大荷重が低くなることが確認できた 1 8 6 4 万回後 1 万回後 万回後 B-1 Ⅱ Ⅲ -7 7 図 -4 試験体 B-1 の CFRP のひずみ分布 1 8 6 B-2 4 万回後 1 万回後 万回後 -7 7 図 -5 試験体 B-2 の CFRP のひずみ分布 3.2 CFRP のひずみ分布図 -4~ 図 -7 に 試験体 B シリーズにおける, 引張鉄筋の応力度がで 14N/mm 2 となる荷重が 51kN となる時の CFRP のひずみ分布を示す 図において, ゲージ位置が mm は試験体中央を示し, ゲージ位置が-2mm から 2mm までが等曲げモーメント区間を示している また, 補強材のひずみの値は, ゲージ位置 -6mm からゲージ位置 6mm までにそれぞれ 3 箇所ずつ貼付したひずみゲージの実験値の平均値である 図において, 繰返し載荷がから 万回後にかけて CFRP のひずみの増加が大きな試験体ほど,CFRP が疲労による損傷を受けやすいといえる 図 -7 の試験体 B-4 において, から繰返し載荷が 万回後にかけての CFRP のひずみの増加が最も大きく,CFRP が疲労による損傷を受けやすいといえる しかし, 試験体の種類の違いによる CFRP のひずみの値には, 顕著な差は見られない 1 8 6 4 1 8 6 万回後 1 万回後 万回後 B-3 Ⅱ Ⅲ -7 7 図 -6 試験体 B-3 の CFRP のひずみ分布 B-4 4 万回後 1 万回後 万回後 -7 7 図 -7 試験体 B-4 の CFRP のひずみ分布

継手部の有無のみが異なる試験体をそれぞれアンカーの種類ごとに比較する 図図 -4 の CFRP の継手部が有る M-8 式の試験体 B-1 は, 図 -5 の CFRP の継手部が無い M-8 式の試験体 B-2 に, また図図 -6 の CFRP の継手部が有るリベット式の試験体 B-3 は, 図 -7 の CFRP の継手部が無いリベット式の試験体 B-4 に比較して それぞれゲージ位置 -mm,mm において引張応力の伝達がうまく行われていない さらに アンカーの種類のみが異なる試験体を比較する 図図 -4 の CFRP の継手部が有る M -8 式の試験体 B-1 は, 図 -6 の CFRP の継手部が有るリベット式の試験体 B-3 に比較して, ゲージ位置 -mm,mm において引張応力の伝達がうまく行われていない 以上より, 応力伝達はうまく行われているものから順に, 試験体 B-2,B-4, 次いで試験体 B-3, 最後に試験体 B-1 の順となる また, 最大荷重は大きいものから, ほぼ同等で試験体 B-2 B-4 次いで試験体 B-3 最後に試験体 B-1 の順となった これらより,CFRP により下面増厚補強工法を施した RC はりの最大荷重は,CFRP の応力伝達が良好なほど大きくなるといえる 3.3 曲げひび割れ幅曲げひび割れ幅は, 試験体側面の引張鉄筋位置に貼付した測定基準長が 1mm のコンタクトゲージを用いて計測を行った 図図 -8 には, 試験体 B シリーズにおける 万回後の等曲げモーメント区間内の平均曲げひび割れ幅を示す 1 つの計測区間内に複数の曲げひび割れが発生する場合があったため, ここでは最大曲げひび割れ幅ではなく平均曲げひび割れ幅を示す は, 引張鉄筋のひずみの理論値を土木学会に定められた曲げひび割れ幅の算定式 (1) に代入して求めた なお, 引張鉄筋のひずみの理論値は, コンクリートの圧縮縁ひずみの各段階ごとに, ひずみ分布の直線性を仮定し, そのひずみ分布から求まるコンクリートと鉄筋の力の釣合条件から算出した 荷重 (kn) 6 4 2 B-1 B-2 B-3 B-4.2.4.6.8.1 平均曲げひび割れ幅 (mm) 図 -8 等曲げモーメント区間内の平均曲げひび割れ幅 { ( ) } σ se ω = k 4c.7 c s φ ε' (1) cs Es ここに,ω: 曲げひび割れ幅 (mm) k: 鋼材の付着性状の影響を表す定数で, 異形鉄筋の場合 1., c: かぶり 12.65mm,c s : 鋼材の中心間隔 1mm, φ: 鋼材径 12.7mm,ε cs : コンクリートの収縮およびクリープ等による曲げひび割れ幅の増加を考慮するための数値で, 通常は 1 1-6 であるが, 本実験では屋外による 28 日間の気中養生であったため, 収縮およびクリープ等の影響はほとんどないものと考え とした σ se /E s : 引張鉄筋ひずみの増加量図 -8 において,CFRP の継手部が有る M-8 式の試験体 B-1 は, 継手部が無い M-8 式の試験体 B-2 に対して, 平均曲げひび割れ幅が大きい 同様に, リベット式の試験体でも継手部が有る B-3 は, 継手部が無い B-4 に対して, 平均曲げひび割れ幅が少し大きい 以上のように, アンカーが等しい試験体において,CFRP の継手部が有る試験体は,CFRP の継手部が無い試験体に対して平均曲げひび割れ幅が大きくなった また,CFRP の継手部が有る M-8 式の試験体 B-1 は, 継手部が有るリベット式の試験体 B-3 に対して, 平均曲げひび割れ幅が大きい 同様に,CFRP の継手部が無い試験体でも M-8 式の B-2 は, リベット式の試験体 B-4 に対して, 平均曲げひび割れ幅が大きい 以上のように, M-8 式の試験体はリベット式の試験体に対し

M-8 式 最大たわみ 14mm リベット式 最大たわみ 33mm 以上 下面 下面 図 -9 アンカーのみが異なる 2 体の破壊状況 て平均曲げひび割れ幅が大きくなった 図図 -9 にアンカーのみが異なる 2 体の破壊状況を示す 破壊後 曲げひび割れ幅が最も大きい部分をはつると M-8 式の試験体では, アンカーと CFRP の格子の角との間に空隙があることが確認できた M-8 式の試験体は, 空隙が弱点となりリベット式に対して曲げひび割れ幅が大きくなったと考えられる しかし, これら 4 体の試験体は土木学会で定められた許容曲げひび割れ幅の観点からも, また 万回の繰返し載荷後においても十分に安全であると言える 4.. まとめ CFRP を下面増厚補強の補強材に用いて, 繰返し載荷実験を行った 本研究により, 以下のことが言える 1) CFRP により下面増厚補強工法を施した RC はりは, 道路橋示方書に示されている RC 床版の鉄筋応力度の許容値が 14N/mm2 となる上限荷重により繰返し載荷を 万回行っても, 十分な耐疲労性状を示している 2) 継手部を有する試験体は, 継手部が無い試験体に対して, 最大荷重が 1 割から 3 割程度低く, 疲労による損傷を受けやすい 3) CFRP により下面増厚補強工法を施した RC はりの最大荷重は, コンクリートの強度が 小さく, また CFRP のかぶりの無いと, その補強効果は小さい 4) CFRP により下面増厚補強工法を施した RC はりの最大荷重は,CFRP の応力伝達が良いほど大きい 5) アンカーがリベット式の試験体は,M-8 式の試験体に対して, 同等以上の耐疲労性状を示す 本研究は,FRP グリット工法研究会の研究開発の一環として実施したものである 試験体の作製および 1 次載荷に際しては, ドーピー建設工業 関東工場に多大なご協力を頂いた 付記して, 厚くお礼申し上げる 参考文献 1) 金田和男, 辻幸和, 杉山隆文 : 連続繊維補強材と圧入モルタルによる RC 床版の下面増厚補強効果, コンクリート工学年次論文報告集,Vol.l21, 2,pp.289-294,1999 2) 中田学, 辻幸和, 杉山隆文, 佐藤元 : 表面に切欠きを有する RC はりの織り方を変えた炭素繊維シートによる補強効果, コンクリート工学年次論文集,Vol.23, 1, pp.445-4,1