スマート IC 整備による高速道路の渋滞箇所における交通動態の検証方法について 神森 友秀 関東地方整備局道路部道路計画第二課 ( 埼玉県さいたま市中央区新都心 2-1) 本件は 東名高速道路綾瀬スマートICの事業化にあたり 高速本線 ( 横浜町田 IC ~ 厚木 IC 間 ) の

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これらのご要望などを踏まえ 本技術を開発しました 本技術により渋滞予知の精度は大幅に向上し 渋滞があると予測した時間帯において 所要時間の誤差が30 分以上となる時間帯の割合が 従来の渋滞予報カレンダー 7 の8.2% に対して0.8% 20 分以上となる割合が26% に対して6.7% となり また

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3 安全運転のお願い 2 渋滞末尾への追突注意喚起 交通混雑期においては事故が多発します 高速道路をご利用される際は 全席シートベルトの着用 と こまめな 早めの休憩 などを心掛けていただくようお願いします また 高速道路上では渋滞末尾への追突注意喚起を案内しておりますが 前方に注意し ご走行願いま

21m 車両の検証項目 ダブル連結トラック実験 高速道路 3 交通流への影響 4 道路構造への影響 合流部 : 本線 合流部 : ランプ 追越時 車線変更部 検証項目 分析視点 データ等 1 省人化 同一量輸送時のドライバー数 乗務記録表 環境負荷 同一量輸送時のCO2 排出量 2 走行 カーブ (

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資料 2 主要渋滞箇所 ( 案 ) の抽出方針について ( 一般道 ) 平成 24 年 8 月 9 日


8. ピンポイント渋滞対策について 資料 8

別紙 1 ワイヤロープの今後の設置予定について H ワイヤロープの技術的検証結果 ( 第 3 回検討会 ) 土工区間については 技術的に実用化可能 中小橋については 試行設置箇所を拡大し 実用化に向けた取組みを進める 長大橋 トンネル区間については 公募選定技術の性能検証を引き続き進め

目次

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( 様式 -2a 調査概要 ) Ⅰ 調査概要 1 調査名称 : 平成 26 年度神埼市総合都市交通体系調査 2 報告書目次 1. 業務概要 (1) 都市計画道路見直しの必要性 (2) 都市計画道路見直しのスキーム (3) 検討結果の分類 2. 路線の抽出 (1) 都市計画道路の整理 抽出 (2) 検

路面補修 切削オーバーレイ工 施工前 施工後 4車線化工事 白鳥IC 飛騨清見IC 対面通行区間の中央分離帯の改良 施工前 施工後 車線切替を実施しⅠ期線の改良を実施 左 Ⅰ期線 右 Ⅱ期線 左 Ⅱ期線 右 Ⅰ期線

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(仮称)太田PA&SIC周辺開発について

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開通区間の整備効果 1 物流の効率化による生産性向上と地域開発の促進 厚木市では 東名や圏央道などの交通利便性を活かした物流拠点の建設が進むなど 工業団地や物流拠点が集積しており 新東名の開通により 更なる物流の効率化による生産性の向上が期待されます 新東名厚木南 IC 周辺の自治体では 新たな産業

通行止め実施区間 8 能生 IC 名立谷浜 IC SA 上越 JCT 上越 IC 新潟 1 妙高高原 IC 中郷 IC 4 月 17 日 ( 火 )4 月 19 日 ( 木 ) 3 夜間 ( 予備日 )4 月 20 日 ( 金 )4 月 22 日 ( 日 ) 富山 上越高田 IC 新井スマート IC

資料 1 逆走事案のデータ分析結果 1. 逆走事案の発生状況 2. 逆走事案の詳細分析

令和元年 7 月 10 日 東日本高速道路株式会社 北海道支社 お盆期間の高速道路における渋滞予測について 北海道版 ~ ピークは 8 月 12 日 ( 月 ) 13 日 ( 火 ) 分散利用で渋滞緩和にご協力ください ~ NEXCO 東日本北海道支社 ( 札幌市厚別区 ) は お盆期間 (8 月

事故及び渋滞対策の取り組み 福岡都市高速 北九州都市高速 福岡北九州高速道路公社

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6. 高速道路 SA PA 等 への充電設備設置事業の説明と提出書類 高速道路 SA PA 等 への充電設備設置事業の 説明と提出書類 事業名 事業内容 申請できる方 高速道路 SA PA 及び道の駅等への充電設備設置事業 ( 経路充電 ) 高速道路 SA PA 等 ( 注 1) におけ

今後の進め方について

休日割引適用日の変更について お盆期間の高速道路の交通量の平準化を図るため 休日割引の対象日を 8 月 11 日 ( 土 ) と 12 日 ( 日 ) から 8 月 9 日 ( 木 ) と 1 日 ( 金 ) に変更いたします 分散利用にご協力をお願いいたします 11 日 ( 土 ) 12 日 (

齋藤辰哉 調査第二部次長 研究の背景と目的 日本の高速道路は現在約 7,400km が供用しており 国内の輸送量に占める分担率は人 キロベースで 9% ト ン キロベースで 44% を占め まさに大動脈として活躍 している しかし 高速道路の利用に欠かせないインター チェンジ ( 以下 IC という

第 2 章横断面の構成 2-1 総則 道路の横断面の基本的な考え方 必要とされる交通機能や空間機能に応じて, 構成要素の組合せ と 総幅員 総幅員 双方の観点から検討 必要とされる道路の機能の設定 通行機能 交通機能アクセス機能 滞留機能 環境空間 防災空間 空間機能 収容空間 市街地形成 横断面構

整備効果 1( 一般道路の渋滞緩和 ) 区間に並行する高尾街道の大型車交通量が約 18% 減少し 町田街道入口交差点のピーク時の渋滞が緩和 区間に並行する高尾街道 ( 都道八王子あきる野線 ) の大型車交通量が減少した結果 町田街道入口交差点北側の渋滞長が朝方のピーク時 (7:~1 :) では約 2

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第一回(仮称)綾瀬スマートインターチェンジ会議録

状7号線東京区部南西部 川崎市域の状況 立川広域防災拠点 東京外かく環状道路 ( 関越 ~ 東名 ) 事業中 東京都環大橋 JCT 中央環状品川線 H 開通 基幹的広域防災拠点 N 東京外かく環状道路 ( 東名高速 ~ 湾岸道路間 ) 神奈川県 川崎市第三京浜道路1 15 大師 JCT

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1 基本的な整備内容 道路標識 専用通行帯 (327 の 4) の設置 ( 架空標識の場合の例 ) 自 転 車 ピクトグラム ( 自転車マーク等 ) の設置 始点部および中間部 道路標示 専用通行帯 (109 の 6) の設置 ( 過度な表示は行わない ) 専 用 道路標示 車両通行帯 (109)

4-3 交通量推計結果と考察 (1) 交通量推計結果 現況の交通量推計結果を見ると 一般国道 196 号では今治市内全区間において 100 を超え 旧市付近では 288 を超える交通が流れており 幹線的機能を果たしている 中心部から南北状に伸びる一般国道 317 号や でも 100 百台 / 日を超

圏央道沿線で企業立地が促進 圏央道沿線では 平成 25 年から平成 28 年の 4 年間で 79 件の企業が立地茨城県は 4 年連続で工場立地面積が全国 1 位 茨城県内の圏央道沿線市町村 1 における立地企業 (H25 年度 ~H28 年度 ) 栃木県 茨城県 凡例 立地企業件数(H25~H28)

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通行止め区間および迂回路 7 至村上 E7 日本海東北自動車道 新潟中央 IC 8 新潟西 IC 至長岡 北陸自動車道 8 新潟中央 JCT 49 新潟 PA 新津西新津 IC IC スマート新津西スマート五泉 PA 安田 IC 阿賀野川 SA 1 1 新潟中央 JCT 安田 IC( 上下線 ) 8

(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

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NITAS の基本機能 1. 経路探索条件の設定 (1) 交通モードの設定 交通モードの設定 とは どのような交通手段のネットワークを用いて経路探索を行うかを設定するものです NITASの交通モードは 大きく 人流 ( 旅客移動 ) 物流( 貨物移動 ) に分かれ それぞれのネットワークを用いた経路

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交通ミクロシミュレーションを用いた長岡まつり花火大会の交通渋滞緩和施策評価 環境システム工学課程 4 年 都市交通研究室杉本有基 指導教員佐野可寸志 1. 研究背景と目的長岡まつり大花火大会は長岡市の夏の最大イベントである 長岡まつり大花火大会は 昭和 20 年 8 月 1 日の長

参考資料あり (A4 両面 3 枚 ) 平成 30 年 11 月 14 日 市政記者クラブ様 守山スマート IC 地区協議会 照会先 住宅都市局都市計画部街路計画課担当桑添 宮田電話 ( 中日本高速道路株式会社と同時発表 ) 利用台数が累計 100 万台を突破 もりやま東名

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2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

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2 分散利用のお願い 渋滞発生が予測される時間帯を避けたドライブ計画を! 渋滞が比較的少ない夜間から早朝にかけたドライブ計画を! 渋滞ピーク時間帯の回避効果 例えば 平成 28 年 8 月 13 日 ( 土 ) に東北道の川口 JCT から那須 IC まで利用した場合では 出発時刻をずらすことで渋滞

圏央道開通区間概要 首都圏中央連絡自動車道 ( 圏央道 ) は 首都圏の道路交通の円滑化 沿線都市間の連絡強化等を目的とした都心から半径およそ 40~60km の位置に計画されている総延長約 300km の環状の自動車専用道路です 現在までに約 110km が開通しています 今回開通区間の概要 路

73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

1. 第 2 回検討会の位置付け H H H 第 1 回都市間高速道路料金割引検討会 今後の料金割引会社案の公表 経済対策の策定 H H 新たな料金の基本方針 ( 国土交通省 ) H ~27 新たな料金案の公表 (

1 吾妻町 平成18年3月27日に東村と合併し東吾妻町になりました 2 六合村 平成22年3月28日に中之条町に編入しました 5.2-2

取組みの背景 これまでの流れ 平成 27 年 6 月 日本再興戦略 改訂 2015 の閣議決定 ( 訪日外国人からの 日本の Wi-Fi サービスは使い難い との声を受け ) 戦略市場創造プラン における新たに講ずべき具体的施策として 事業者の垣根を越えた認証手続きの簡素化 が盛り込まれる 平成 2

平成 19 年 8 月 10 日 高速道路で料金割引の社会実験を実施します ~ 平日夕方の時間帯が最大 3 割引等 ~ 昨年末に閣議決定された 道路特定財源の見直しに関する具体策 ( 別紙 1) において 高速道路料金の引下げなどによる既存高速ネットワークの効率的活用 機能強化のための新たな措置を講

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たたら製鉄についてのまとめ

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とした 工事は 週 6 日 8 時 ~18 時の時間帯に実施する計画である 1,600 稼動台数 ( 台 / 月 ) 1, 月目 2 月目 3 月目 4 月目 5 月目 6 月目 7 月目 8 月目 9 月目 10 月目 11 月目 12 月目 13 月目 14 月目

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平成 29 年 8 月 8 日 国道 33 号の渋滞緩和にご協力ください! ~ 経路変更によるお盆の渋滞回避 ~ 愛媛県渋滞対策協議会 ( 議長 : 松山河川国道事務所長 ) では GW 及びお盆期間中において国道 33 号が混雑する事から 昨年よりドライバーの皆様に渋滞の回避及び緩和の為 経路変更

と案 目的地を探したら ルートを設定します ルートが設定されると案内がはじまりますので ルート案内にしたがって走行してください 検索した地点を確認 設定する 52 現在の条件でルートを探索する 52 ルートの確認や設定をする 52 検索した地点の位置を修正する 53 検索した地点をルート上に追加する


効果 1 湘南地区への観光客が増加 湘南地区では 北関東など遠方からの観光客の増加を実感との声 圏央道で湘南地区へ来訪した車が約 4 割増加 観光客の約 2 割増加に貢献 火山活動による影響を受けた箱根町の観光客も回復傾向 開通した圏央道による更なる来訪に期待 湘南地区から東北道まで圏央道がつながっ

 

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昨年9月、IOC総会において、東京が2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市に決定し、日本中が歓喜の渦に包まれた

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スマート IC 整備による高速道路の渋滞箇所における交通動態の検証方法について 神森 友秀 関東地方整備局道路部道路計画第二課 ( 33-9724 埼玉県さいたま市中央区新都心 2-1) 本件は 東名高速道路綾瀬スマートICの事業化にあたり 高速本線 ( 横浜町田 IC ~ 厚木 IC 間 ) の渋滞が悪化するのではないかとの問題に対し スマートICでは初めての試みとして 当該区間の渋滞予測モデルを作成し 整備による高速道路本線渋滞への影響についての検証を行ったものである キーワードスマート IC 渋滞予測 Point Queue 法 1. スマートICとは既存の高速道路の有効活用として 高速道路の本線やSA,PAから乗り降りができるように設置されたICであり 利用車両をE TC 車両に限定されたIC 利用車両の限定により 従来のICと比べ 料金施設等がコンパクトとなり 低コストでICの導入が可能となるメリットがある スマートICは地方自治体が主体となり地方公共団体 地方整備局 高速道路会社 関係機関にて構成される地区協議会を設置し 地区協議会にて当該 ICの社会便益等について検討 調整 それらを基に地方自治体が実施計画書を策定し 国土交通大臣より連結許可を受ける事で事業開始となる 地区協議会の設立 ( 地方公共団体 地方整備局 高速道路会社 関係機関で構成 ) スマートインターチェンジ実施計画書の策定 連結申請書を国土交通大臣に提出 連結許可 ( 整備計画変更等 ) 事業開始 図 -1 SAPA 接続型スマート IC 図 -3 スマート IC 事業の流れ 図 -2 本線直結型スマート IC 本件の対象となる 綾瀬スマートIC においてもこの事業スキームに基づき ( 仮称 ) 綾瀬スマートインターチェンジ地区協議会 を設置し スマートICの実施計画の策定に必要な内容について協議をおこなった 関東地方整備局は地区協議会の一員として 綾瀬スマートICの安全かつ円滑な設置

及び管理 運営に協力する立場である 2. 綾瀬スマートICについて神奈川県では 交通の利便性の向上や経済の活性化を図るため 県土の骨格となる自動車専用道路の整備を進め インターチェンジまでの距離が5km 以内となる地域の充実を進めている 横浜町田 ICと厚木 ICは約 15km 離れており その中間に位置する綾瀬市はICへアクセスしにくい状況である 綾瀬スマートIC 事業は両 ICのほぼ中間にスマートICを設置することで県民生活の利便性向上や地域経済の活性化等を図るものである ( 仮称 ) 綾瀬スマートIC 横浜町田 IC 厚木 IC トとして有名な 大和トンネル が存在している 図 -6 大和トンネル付近の渋滞予測 ( ネクスコ中日本 HPより ) ただし 大和トンネル付近は毎日渋滞しているわけではなく 特に休日の上り線に激しい渋滞が発生する特徴を持っている 5 渋滞量日数 4 渋滞 3 量(km 2 時)1 5 4 3 2 1 渋滞日数 図 -4 約 15km IC まで 5km 圏域図 図 -7 月火水木金土休日 東名高速 ( 上り線 ) 曜日別渋滞量と渋滞発生日数 (211 年 ) 図 -5 : 現在の 5km 圏域 : 圏央道等の開通による拡大エリア :( 仮称 ) 綾瀬スマート IC による拡大エリア 圏央道 綾瀬スマートICにより拡大するICまで5km 圏域図 3. スマートIC 設置にあたっての課題 ( 要因 1) 渋滞発生ポイントである 大和トンネル に近接綾瀬スマートICの設置予定箇所から都心側に約 4kmの位置には渋滞発生ポイン ( 要因 2) 供用時点での断面交通量の増加綾瀬スマートIC 供用時 (218 年 ) 及び将来 (23 年 ) における交通量推計結果は下記の通りである 211 年 ( 現況 ) 13,224 ( 台 / 日 ) +12% ( 現況比 ) 図 -8 218 年 ( 供用時 ) スマート IC 有り 145,877 ( 台 / 日 ) -5% ( 現況比 ) 交通量推計結果 23 年 ( 将来 ) スマート IC 有り 123,851 ( 台 / 日 ) 特に綾瀬スマートIC 供用時である 218 年において 現況よりも約 12% 断面交通量が増加する結果となった (13,224 台 / 日 145,877 台 / 日 )

以上 2つの要因により 綾瀬スマートICの整備により 東名高速の本線渋滞が更に悪化するのではないか という課題が生じた 関東地整のスマートIC 事業担当者として この課題に対応するため 高速道路の通行実績データ等を基に シンクタンクと調整しながら時間別渋滞モデルを作成し スマートICとしては初めての試みとなる IC 整備による高速道路本線への定量的な影響の検証をおこなった 4. 本線渋滞検証方法の検討大和トンネル付近の渋滞は毎日発生している訳ではなく 特定の曜日や時間に発生する特徴を持っている よって 渋滞予測は 交通量推計結果である平日の1 日単位の交通量から 曜日別 時間帯別の交通状況を再現し 本線渋滞の変化を確認する必要がある そのため 今回の本線渋滞検証では Point Queue 法という渋滞予測モデルを採用した Point Queue 法は 高速道路の単路部ボトルネック ( サグ 上り坂 トンネル等 ) のように一定の交通流率が観測される場合の渋滞予測に適したモデルである 5.Point Queue 法について Point Queue 法による渋滞予測は 道路の交通需要が道路の交通容量を越えた場合に滞留した車の列を把握する方法であり Point Queue 法は滞留した車両の待ち行列 (Queue) の車の物理的な長さを考慮せず 点 (Point) として考えることが特徴である 1) ボトルネック箇所 図 -9 滞留した車 Point Queue 法の概念図 一方 滞留車両の物理的な車長を考慮した方法として physical Queue 法がある 1) Physical Queue 法はボトルネック交差点が連続するような場合や 高速道路の料金所などにおける渋滞予測に適したモデルである 6.Point Queue 法による渋滞の演算方法 Point Queue 法による渋滞演算事例を以下に示す (a) 渋滞時間の計算渋滞時間 4 需 35 超過交通量要渋滞発生時交通容量渋滞発生時交通量渋滞発生後交 3 捌け交通量通 25 量(2 台 / 15 時)1 5 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 22 時 (b) 滞留台数の計算 12 滞 1 留 8 台数(6 台)4 2 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 22 時 図 -1 渋滞予測モデルの演算概念図 捌け交通容量 (1) 渋滞の判定需要時間交通量が 渋滞発生時交通容量 を越えているか否かにより渋滞を判定する 最初に越えた時刻を渋滞開始とし 次の時間帯から 渋滞発生後捌け交通容量 と需要交通量を比較する (2) 渋滞の生成 渋滞発生後捌け交通容量 を超過した需要交通量はボトルネックに滞留するものと考え 逐次累加する 捌け交通容量を需要交通量が下回ったときはその差分を滞留台数から差し引く 滞留台数がゼロとなった時刻を渋滞解消時刻と考える 渋滞長は 滞留台数を渋滞長換算密度で除して算出する

7. 本線渋滞検証の進め方渋滞検証は 下記の作業フローに従い実施した (1) 交通量の特性 ( 図 -12 参照 ) 需要時間交通量のピークは上り線が休日の15 時 下り線が土曜の7 時 (2) 渋滞特性 ( 図 -13 参照 ) 上り線は休日の渋滞が支配的 下り線は土曜日と休日の渋滞が同程度 図 -11 渋滞影響検証の作業フロー また 検証方法と結論については 交通制御工学の専門家である東京大学生産技術研究所の大口敬教授にアドバイス及び確認を頂きながら進めることとした 8. 現況交通量 渋滞特性の整理 211 年の東名高速道路の通行実績データを基に横浜町田 ICから厚木 IC 間の交通分析を行った 図 -13 曜日別渋滞量と渋滞日数以上より 当該区間は レジャー車両による週末渋滞 が主な渋滞発生パターンであると考えられる 9. 交通需要の時間変動パターンの設定の考え方渋滞予測実施に必要となる交通需要の時間変動パターンは 211 年の実績データ及び ETCデータを基に1 年分の15 分単位の時間変動パターンを算出し交通需要として設定している 8 1 5 分間フローレート(台 6 4 需要交通量 2 / 図 -12 年平均需要時間交通量図 時) 7 月 16 17 18 19 2 21 22 日 ( 土 ) ( 日 休 ) ( 月 休 ) ( 火 ) ( 水 ) ( 木 ) ( 金 ) 図 -14 交通需要設定のイメージ図

1. 綾瀬スマートICの時間変動パターンの設定 (1) 綾瀬スマートICの設定方針渋滞予測実施には 現在 未整備である綾瀬スマートICの時間変動パターンの設定が必要となる 渋滞発生ポイントが進路前方にあるI Cと そうではないICでは 出口交通量の特性に違いがあると考えられるため 立地特性別の出口交通量特性の把握をおこなった上で 綾瀬スマートICの時間変動パターンの設定に最も適切な箇所を選定する事とした 動によるものであると推察できる よって 綾瀬スマートICの時間変動パターンはその立地特性より 海老名 J CT のパターンを適用した ICの進路前方で休日に渋滞発生が見られるIC 所沢 IC ( 関越自動車道 ) 海老名 JCT ( 東名高速 ) 渋滞ポイントを抜けた先にあるIC 横浜町田 IC ( 東名高速 ) 上記 3 箇所の出入交通量特性を比較した 図 -16 調査地点の平休別交通量の変化図 11. 交通容量の設定交通容量は下記の2つの交通容量について 211 年の渋滞発生日の実績データの平均値より設定した 図 -15 対象 ICと渋滞ポイントの位置図 (2) 立地特性による特徴の比較綾瀬スマートICの立地特性と同様に進路前方で休日に渋滞ポイントを有する海老名 JCT 所沢 ICでは 両箇所ともに休日になると上り線の出口交通量が最大となる傾向が見られた 一方 横浜町田 ICではこのような傾向は見られない この傾向は 進路前方に発生した渋滞を回避するために 高速道路を降りる行 (1) 渋滞発生時交通容量 5 分間平均速度が4km/ 時以下に低下した直前 15 分間のフローレート (2) 渋滞発生後捌け交通容量渋滞が発生した後 渋滞解消 ( 速度上昇 ) するまでの全時間の平均フローレート 6 12 渋滞発生時交通容量 55 渋滞発生後裁け交通容量 5 1 45 4 交通量 8 通速量(35 速度度(台 3 6 km / 25 / 5 時)交分)2 4 15 1 2 5 12 13 14 15 16 17 18 19 2 21 22 23 時刻 図 -17 交通容量の設定イメージ 12. 渋滞予測ケースの設定綾瀬スマートICの有無に加え 下記の2

つの本線対策を実施した場合のケースも設定した 1 部分対策 ( 大和トンネル付近の容量拡大 ) 2 全線対策 ( 横浜町田 IC~ 海老名 JCT 間の容量拡大 ) 上り線 下り線 上り線 下り線 図 -18 部分対策 全線対策 大和 TN 付近の容量拡大 綾瀬 IC ( 仮称 ) 大和 TN 海老名 JCT 海老名 SA 横浜町田 IC 3 25 2 綾瀬 IC 容量拡大海老名 JCT 海老名 SA ( 仮称 ) 大和 TN 横浜町田 IC ( 横浜町田 IC~ 綾瀬 SIC) 3 25 2 容量拡大 ( 横浜町田 IC~ 海老名 JCT) 本検討で設定した東名高速の本線対策 13. 渋滞予測結果 Point Queue 法による渋滞量予測結果は図 -19 のとおりである 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 5,662 5,662 (1.) 211 211 年現況 ( 現況 ) 6,45 (14% 増 ) 6,45 6,49 218 年スマート IC 無し対策無し 渋滞量 (km h/ 年 ) 6,49 (15% 増 ) 218 年スマート IC 有り対策無し 4,486 (21% 4,486 減 ) 218 年スマート IC 有り短期対策有り 図 -19 渋滞量予測結果 ( 上り線 ) 14. 渋滞検証結果本検証による検証結果は下記に示す 本区間に綾瀬スマートICを整備した場合 部分対策 ( 大和トンネル付近の容量拡大 ) を同時に実施することで上り線の渋滞は悪化せず 現況より改善される見込み 218 年スマート IC 有り長期対策有り 全線対策の実施により渋滞は解消される見込み この検証結果から スマートIC 整備と合わせて東名本線の部分対策を実施すれば 東名本線渋滞への影響に関する課題は解消されることが判明した また 東名本線の大和トンネル付近の渋滞対策については 従来から必要性が高く 今後 緊急経済対策として実施していく見込みである これらを受け 綾瀬スマートICは 213 年 6 月に連結許可がなされ 事業化が図られた 15. 今後の課題 (1) 渋滞予測実施に関する注意点と課題 今回は 主に休日の高速道路単路部での渋滞パターンであった為 Point Queue 法による予測を行ったが 全ての渋滞予測にこの方法が適用できる訳ではない 渋滞の予測方法について どんな方法があり どんな結果が得られるのかについての知識や経験が事業者側に不足している (2) 今後の課題 1 渋滞予測方法の体系化渋滞には 様々なパターンが存在する ( 単路部での渋滞 料金所渋滞等 ) それぞれのパターンについて どんな渋滞予測モデルが適しているのか アウトプットとして何を得られるのか 予測実施には何が必要なのか等について体系化することが必要である 2 渋滞予測事例の蓄積と共有化上記の体系化と同時に これまでの実施事例や 今後おこなわれる渋滞予測事例について蓄積し データベース化し共有を図ることが事業者側の知識の蓄積の為にも必要であると考える 参考文献 1) 大口敬編著 (25): 交通渋滞 徹底解剖