技術資料 3次元写真計測に使用する写真の簡易的な歪補正方法について 山﨑 貴志 国島 英樹 堀田 歩 1 はじめに を基に写真を変形することにより写真の歪み補正を行 岩盤斜面災害などが発生した場合 ラジコンヘリコ う プターを用いた上空からの計測は 計測対象地に立ち 入らずに計測を行えることや 上空より計測すること により計測の死角が生じにくいなどの理由で有用な計 測方法と考えられる1 さらに 近年 小型で従来に 比べ手軽に飛行 空撮を行うことができるラジコンヘ リコプター2 が登場してきており 災害時の写真撮影 等にも利用されていくと考えられる ここで 災害箇所の斜面形状を3次元的に把握する ことは 被災量の算出や災害対策に有用と考えられる が このための計測方法の1つに 通常のデジタルカ メラの写真を用いて行うことができる3次元形状計測 方法である3次元写真計測がある この3次元写真計 測を精度良く行うには 計測に使用する写真の歪みを 補正する必要がある そして 写真の歪みはカメラ固 有のレンズ特性により生じるため 補正には撮影した 図 1 カメラの校正データが必要である しかし 過去に撮 影された写真など 写真データだけしか入手できない 場合には校正データを得ることができない そこで 本稿では 撮影カメラの校正データが不明 2 2 写真歪み補正作業フロー 写真の歪み 表 1 に示すデジタルカメラ6機種 カメラ A F について 撮影した写真の歪み計測を行った である写真について ノンプリズム型のトータルステ 写真 1 に示すテストパターンを各デジタルカメ ーションで現地計測を行うことにより簡易に歪みを補 ラの最大画素 最大広角で撮影し 撮影した写真に写 正する方法を検討した また 本方法で歪みを補正し ったテストパターンについて テストパターン最内円 た写真を用いてテスト計測を行い 計測精度について 半径を基準長として 最内円半径の整数倍で描かれた の確認を行った 各円の半径の写真上での歪み量を計測した 表 1 2 写真歪みの補正 使用デジタルカメラ一覧 メーカー 機種名 最大画素数(W H) カメラ A Canon IXY DIGITAL600 3072 2304 本稿で行う写真歪み補正作業のフローを 図 1 に カメラ B OLYMPUS μ 1030SW 3648 2736 示す 計測対象を撮影した写真上の特徴点 岩の角な カメラ C OLYMPUS FE 250 3264 2448 ど 位置を確定しやすい地点 の写真上の位置座標を カメラ D CASIO EXILIM EX F1 2816 2112 ピクセル数として計測するとともに その特徴点に対 カメラ E Panasonic LUMIX GF1 4000 3000 2 1 歪み補正の概要 応する現地の地点の3次元位置座標をトータルステー ションにより現地計測を行い これらの計測値から写 真の歪み度合い等を算出する この写真の歪み度合い 30 (レンズ)LUMIX G 20mm カメラ F 3872 2592 Nikon D200 (レンズ)AF S NIKKOR 18 70mm
W H 1 テストパターン 2 み (カメラA) 3 み (カメラA) 4 み (カメラF) 5 み (カメラF) カメラ A についての計測結果を 図 2 図 3 に 図 5に示す カメラ F についての計測結果を 図 4 図 2 図 4 は写真中心からの距離 r に対する 半径方向の歪み量Δ r 外向きを正とする を写真中 心からの方向別に表しており 縦軸横軸ともに写真横 幅 W により割り戻している 図 2 図 4 より 歪 み量はどの方向においても写真中心からの距離の3乗 にほぼ比例していることがわかる 図 3 図 5 は写真中心からの距離 r に対する 円周方向の歪み量Δ s を写真中心からの方向別に表し ており 縦軸横軸ともに写真横幅 W により割り戻し ている Δ s はテストパターン内側より3点目を基準 とした方向からの円周方向のずれ量を表している 図 2 5 より 円周方向の歪みは半径方向の歪 みと比較して小さいことがわかる なお 本計測は写真の歪みの傾向を調べることを主 眼に簡易的な位置合わせにより行ったものであるた め 本計測値は各カメラの性能を表すような厳密な意 味でのレンズ歪みということではない 他の4機種のカメラでも同様の傾向が見られるた め 写真の歪みを 円周方向歪みを無視し式 1 で示 す半径方向歪みのみにより近似した 各カメラについ て 写真中心からの各方向における半径方向歪み量の 平均値と これらを式 1 で近似した曲線を 図 6 に示す Δr = a r3 1 Δ r 歪み量 半径方向 a 歪み係数 r 写真中心からの距離 2 3 歪み係数の算出 写真の歪みを式 1 により表現したときの比例係数 である歪み係数 a を算出する 2 3 1 歪み係数の算出方法 図 7 にカメラが撮影対象を撮影するときのイメ ージを示す 受像面に受けた信号が写真となるため 6 み と 31
受像面での映像と写真は相似となる 図 7 の受像 上となることが予想される 面を写真に置き換え レンズに対して撮影対象側に移 2 3 2 動した図が 図 8 である 歪み係数の算出結果 写真 2 に示すように 特徴点としてテストター ゲットを20点設置して計測を行い 歪み係数を算出し た 算出に用いるターゲットの個数や位置を変化させ て算出を行った 写真に対して的にターゲットを 6点選択した場合 10点選択した場合 20点選択した 場合 写真中央付近から10点選択した場合 写真右半 分から10点選択した場合の5条件において算出した結 果を 表 2 に示す 表 2 には 2 2でテストパターン計測により 図 7 カメラ模式図 求めた写真歪みの近似曲線 図 6 における歪み係 数 各算出値についてのテストパターン計測値との差 異 各条件ごとの差異の平均値 標準偏差を表示して いる 図 8 計算に使用する各点の位置関係 図 8 において1" 2" 3" は写真に写った特 徴点 1' 2' 3' はカメラに歪みが無い場合に1" 2" 3" が写る点 1 2 3 は1' 2' 3' に対応する現地箇所である カメラの位置を C とする 写真 2 現地箇所1 2 3 についてはトータルステーシ ョンによる現地計測によりそれぞれの3次元位置座標 xn yn zn を得ることができ 1" 2" 3" につ いては写真上の位置座標 wn hn を得ることができ る 1' 2' 3' は 1" 2" 3" と歪み係数 a を用いて式 1 により表すことができるため 以下の 式を立てることができる 1C2 1'C2' 2C3 2'C3' 2 この式を解くことにより カメラの3次元位置座標 xc yc zc 焦点距離 f 歪み係数 a を算出する 未 知数が x y z f a の5つであるため上記方程式は 5本必要であり 計測が必要な特徴点の数は理論的に は6点となるが 写真の歪みを近似表現したときの誤 差 トータルステーションでの計測誤差 写真上の位 置座標の計測誤差が式に含まれるため 実際には あ 表 2 テストターゲット 歪み係数算出値 10 9 ターゲット 差異平均 カメラ A カメラ B カメラ C カメラ D カメラ E カメラ F 数 標準偏差 6 7.2 7.6 2.7 5.9 11.9 0.1 ( 1.9) (2.6) (1.8) ( 2.1) 1.8 8.6 5.9 0.7 6.4 12.3 0.3 ( 0.5) (0.9) ( 0.2) ( 1.6) 0.8 10.2 6.1 1.0 9.0 15.1 0.9 中央 (0.1) (1.0) (2.0) 0.6 7.9 6.1 0.5 7.2 9.3 0.8 右半分 ( 0.4) ( 3.8) 1.5 20 7.7 6.3 0.1 6.8 1.1 10.2 0.8 ( 1.4) (1.3) (0.4) ( 2.9) 1.3 9.1 5.0 0.9 8.0 0.7 13.1 テストパタ ーン計測 はテストパターン計測値との差異 歪み増大方向を る程度の精度で算出するために必要な特徴点は6点以 32
表 2 より 各条件ともにテストパターン計測で タルステーションで直接計測した値を真値として比較 の値に近い値が算出されているため 本方法により写 した 写真の補正については 2枚の写真の1方から 真の歪みを概ね算出できることがわかる 使用するタ 算出した歪み係数 ターゲット10点 使用値 を用 ーゲット数の違いによる算出結果には明確な差異は見 いて2枚とも補正を行った 計測に用いたソフトウェ られないが ターゲット6点使用の場合には他の場合 アは倉敷紡績株式会社製 Kuraves 3 とした に比べてテストパターン計測値との差異が若干大きい また 比較のため Kuraves 標準の写真補正 5方 傾向がある また 使用するターゲットの位置の違い 向から撮影した専用テストパターンの写真を用いてカ による算出結果の違いについては 写真中央付近から メラ校正データを取得 を行った写真を用いた場合と 選択した場合に 他の場合より歪みが大きく算出され 写真補正を行わない写真を用いた場合についても上記 る傾向があるが テストパターン計測値と大きく異な と同様の計測を行った ることはなかった なお 3次元写真計測ではスケールの設定が必要で あるが 各計測とも 作成された3次元モデル内のタ 2 4 写真歪みの補正 前項で算出した歪み係数 ターゲット10点 使 ーゲット番号1 2間距離にトータルステーション計 測値を与えた 用値 を用いて 2 2で撮影したテストパターンの 計測結果を 図 11 に示す 図 11 は各カメラ 各 写真を補正した 補正後の写真の歪み量を2 2での 計測条件ごとに計測したターゲット番号1 10のター 計測と同様に計測し 補正前の歪み量 図 6 との比 ゲット間距離 ターゲット間の数 45 についての ト 較を 図 9 に示す ータルステーション計測値に対する割合を示してい 図 9 より 写真の歪みが補正前に比べて減少し る ていることがわかる もともと歪みの少ない写真につ いては歪み量の減少はわずかであったが 補正によっ て歪み量が増大することはなかった 図 10 図 9 3次元モデル 写真補正前後の半径方向歪み量 3 テスト計測 2 4の方法で補正した写真を使用して3次元写真 計測を行った 計測対象は 写真 2 に示すテストタ ーゲットとし 撮影角度を変えて撮影した2枚の写真 を使用して3次元モデルを作成した 図 10 この3 次元モデル内の各ターゲット間の距離を計測し トー 図 11 ターゲット間距離計測値分布 33
図 -11 4. おわりに 参考文献