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問題 2 下図は, よく発達した森林の構造図と森林内の相対照度の変化のグラフである 次の問いに答えよ 問 1 図のような構造を何というか [ ] 問 2 図の A,B,C,D の各層の名称を答えよ A[ ]B[ ] C[ ]D[ ] 問 3 この森林ではブナ, ミズナラなどが多く, 占有面積も広い

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イ繁殖キョンのメスは早ければ生後半年前後で妊娠し 生後 1 年 ~1 年 2ヶ月程度で初出産し 1 産 1 子です 千葉県においては 出産は年間を通して行われており 5~10 月の出産が多い状況です また 妊娠期間は約 210 日であり 交尾の多くは10~3 月に行われていると推定されます ウ寿命と

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OECD 国際共同プログラム後援 生物多様性条約 COP10 記念シンポジウム 農林水産業に寄与する生態系サービスの持続的利用に果たす森林の生物多様性の役割 ポスターセッション講演要旨集 ポスターセッション場所 : 早稲田大学小野記念講堂 第 1 日目第 2 日目 4 月 26 日 ( 月 ) 11:00~13:00 4 月 27 日 ( 火 ) 11:00~13:00

ボード番号 P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P8 発表者 宮本麻子 佐野真琴 田中浩 井上大成 牧野俊一 ( 森林総研 ) 中静透( 東北大 ) 題名 冷温帯ブナ林地域における林野利用と生物多様性の変化 - 生物多様性地図の試行 -(Changes in land use and biodiversity in cool temperate beech forests: A trial of biodiversity map) 長谷川元洋 ( 森林総研木曽 ) 橋本みのり( 神奈川県立生命の星地球博物館 ) 福山研落葉広葉樹林からスギ人工林への転換が土壌動物群集に与える二 牧野俊一 大河内勇 ( 森林影響 (Soil animal community in broad-leaved forests and in conifer 総研 ) 後藤秀章( 森林総研九 stands of Cryptomeria japonica in Central Japan -The effect of tree 州 ) 岡部貴美子( 森林総研 ) conversion-) 溝口岳男 ( 森林総研関西 ) 阪田匡司 ( 森林総研北海道 ) 田中浩 ( 森林総研九州 ) 佐藤重穂 ( 森林総研四国支日本の針葉樹林人工林における鳥類の多様性 (Bird species 所 ) diversity of conifer plantation in Japan.) 香川理威 ( 神戸大学 農 現フマキラー ) 前藤薫 ( 神戸大学 農 ) 里山景観における地表性天敵昆虫群集の構造と保全的利用 (Structure and conservation of carabid assemblages in a Japanese satoyama landscape) 徳岡良則 ( 農環研, 広大院国地上部植生, 動物の侵入頻度, リターの被覆が耕作放棄地に播種際協力 ), 大東健太郎 ( 農環された自生木本の定着に与える影響 (Effects of dwarf bamboo 研 ), 中越信和 ( 広大院国際協 (Pleioblastus chino), animal intrusion and litter on the establishment of 力 ) direct seeded native trees in an abandoned field) 滝久智 岡部貴美子 ( 森林総森林などの自然植生がソバの送粉サービスに与える影響 (Effects 研 ) 山浦悠一( 北大 ) 松浦俊 of landscape factors at different spatial scales on buckwheat pollination 也 末吉昌宏 牧野俊一 ( 森林総研 ) 前藤薫( 神戸大 ) service) 小川みふゆ, 山浦悠一, 阿部真 ( 森林総研 ), 星野大介 ( 森林総研東北 ), 星崎和彦 ( 秋田県立大 ), 飯田滋生 ( 森大スケールでの生物多様性の変化を2 つの測定項目で明らかにす林総研北海道 ), 勝木俊雄, 正る- 日本の成熟した天然林を例に-(Use of two population metrics 木隆 ( 森林総研 ), 新山馨 ( 森 clarifies biodiversity dynamics in large-scale monitoring: the case of 林総研東北 ), 齊藤哲, 酒井武 ( 森林総研 ), 杉田久志 ( 森林 trees in Japanese old-growth forests) 総研東北 ), 田内裕之 ( 森林総研 ), 天野達也 ( 農環研 ) 滝久智, 岡部貴美子 ( 森林総研 ) 佐藤利幸 ( 信州大理 ) 児玉祐二 ( 北大低温研 ) 古川昭雄 ( 故人 ) 第 1 日目 (4 月 26 日 11:00~13:00) 局所生物多様性を支える温帯林 (High phyto-diversity at micro-scale in temperate forest edge and elevations) P9 P10 P11 P12 尾鼻陽介 ( 信大院 地球生物圏 ) 佐藤利幸 ( 信州大理 ) 大浦由貴 ( 富山市 ) 中野国光 ( 塩尻市 ) 佐藤利幸( 信州大 理 ) 極東ユーラシアの植物生物多様性を支える中部山岳地域 (High phyto-diversity at micro-scale in temperate forest edge and elevations) 生命系再創出のための林野の理業管理への試み (Scientific managements of forest edge and floor for nature life-links restoration ) 松本和馬 ( 森林総研 ) 近藤慶一 ( 名城大学 ) 日野輝明( 森里山林管理とゴミムシ類群集 (Management of coppice and 林総研関西 ) 新妻靖章( 名城 assemblages of ground beetles.) 大学 ) 伊東宏樹 ( 森林総研多摩森里山林管理と林床に出現する植物との関係 (Species abundance in 林科学園 ) floor vegetation of managed coppices and abandoned forests)

第 2 日目 (4 月 27 日 11:00~13:00) ボード発表者題名番号 山浦悠一 ( 森林総研 ) 天野土地利用の変化は森林性鳥類 哺乳類の分布を国土スケールで変達也 ( 農環研 ) 1 化させるか?(Does land-use change affect distributions of forest birds 小泉透 光田靖 滝久智 岡部 and mammals at nation-wide scale?) 貴美子 ( 森林総研 ) 牧野俊一 ( 森林総研 ) 後藤秀章 ( 森林総研九州 ) 井上大成 ( 森林総研多摩 ) 末吉昌弘広葉樹林の更新や人工林化に伴う生物多様性変化 (Responses of ( 森林総研九州 ) 岡部貴美子 2 species richness and assemblages to regeneration and conversion of ( 森林総研 ) 長谷川元洋 ( 森林総研木曽 ) 濱口京子( 森林総 broad-leaved forests in different taxa) 研関西 ) 田中浩( 森林総研九州 ) 大河内勇( 森林総研 ) 佐野真琴 宮本麻子 岡部貴北茨城地域の生物多様性予測マップの作成と評価 (Developing the 3 美子 ( 森林総研 ) 古家直行( 国 biodiversity distribution map in the northarn part of Ibaraki prefecture) 際農研センター ) ニホンジカ高密度生息地域抽出のための地理学的アプローチ 近藤洋史 ( 森林総研九州 ) - 森林生態系へ及ぼすインパクト評価のために -(A geographic 4 小泉透 ( 森林総研 ) 池田浩一 approach for localizing deer overabundant areas: for assessment of deer ( 福岡県筑後農林事務所 ) impacts on forest ecosystem) 柴田銃江 ( 森林総研東北 ) 森林景観における野生生物への食物資源供給機能の定量化 (An 田中浩 ( 森林総研九州 ) 新 approach to the quantitative estimation of ecosystem function(service?): 5 山馨 ( 森林総研東北 ) 長池卓男 quantitative estimation of nuts and berry supply to wildlives from forest ( 山梨県森林総研 ) 石田敏 中静透 ( 東北大 ) stands of different ages and types) 井上真紀 ( 国立環境研究所 ) 横山潤( 山形大 理 ) 土マルハナバチ類の野生巣における繁殖スケジュールと性比 6 田浩治 ( 岐阜大 応用生物 ) 五 (Reproductive schedules and sex ratios in wild bumblebee colonies) 箇公一 ( 国立環境研究所 松浦俊也 杉村乾 ( 森林総研 ) 田中伸彦( 森林総研 / 東海大 ) 宮本麻子( 森林総研 ) 7 田中浩 ( 森林総研九州 ) 勝木俊雄 滝久智 平田泰雅 ( 森林総研 ) 東北地方の多雪集落における山菜 キノコ採りの供給サービス (Provisioning services of edible-wild-plants/mushrooms in snowy villages of northeastern Japan) Hon Jason Shung Sun (Kyoto University), 2) Wong Ing Yung, Anap 持続的発展地区 : 持続的森林管理における地域社会との関わ Zedtee Sendirian Berhad 8 り (Anap Sustainable Development Unit: Engaging Community in (Malaysia), 3) Morimoto Sustainable Forest Management Bintulu, Sarawak, Malaysia) Yukihiro, Natsuhara Yoshihiro (Kyoto University) 9 飯沼佐代子 ( 地球 人間環境フォーラム ) 松本和馬 ( 森林総研 ) Woro A. Noerdjito (LIPI) 高橋正義 10 ( 森林総研北海道 ) 福山研二 ( 森林総研 ) 11 岡本卓 五箇公一 ( 国立環境研究所 ) 12 尾碕研一 ( 森林総研北海道 ) 原材料の調達を通じた生産地の森林と生物多様性への配慮 (Reconsidering the procurement process and the supply chain to conserve the biodiversity and forest of the producing countries) CDM 植林とチョウ類の多様性 (Forecast for effects of CDM/AR on diversity of butterflies in East Kalimantan, Indonesia) 国立環境研究所侵入生物データベースの機能強化とその応用への展望 (Invasive species data base of National Institute of Environmental Studies:Perspectives on its improvement and application) 外来樹種人工林の蛾類多様性 - 自生地と移入先の比較 -(Moth diversity in non-native larch plantation -comparison between indigenous and introduced area-)

第 1 日目 (4 月 26 日 11:00~13:00) P1 冷温帯ブナ林地域における林野利用と生物多様性の変化 - 生物多様性地図の試行 - 宮本麻子 佐野真琴 田中浩 井上大成 牧野俊一 ( 森林総研 ) 中静透( 東北大 ) 戦後から高度経済成長期にかけた社会経済状況の変化は 伝統的な林野利用により維持されてきた地域景観を変貌させ 地域の生物多様性にも大きな影響を及ぼしたと考えられる ここでは 冷温帯ブナ林地域を対象とした林齢と森林タイプ毎の植物 蝶類の野外調査と空中写真を用いた過去の森林景観の復元作業から 約半世紀にわたる植物 蝶類分布の図化を試みた その結果 地域の伝統的林野利用の変化に伴い生物多様性も大きく変化したことが明らかになった P2 落葉広葉樹林からスギ人工林への転換が土壌動物群集に与える影響 長谷川元洋 ( 森林総研木曽 ) 橋本みのり( 神奈川県立生命の星地球博物館 ) 福山研二 牧野俊一 大河内勇 ( 森林総研 ) 後藤秀章( 森林総研九州 ) 岡部貴美子( 森林総研 ) 溝口岳男( 森林総研関西 ) 阪田匡司( 森林総研北海道 ) 田中浩( 森林総研九州 ) 茨城県北部で 幅広い林齢を含むスギ人工林と落葉広葉樹林の土壌動物群集の構造を比較した ミミズ ヒメフナムシの個体数はスギ人工林で多く イシムカデ 甲虫目成虫 ( ハネカクシ以外 ) は広葉樹林で多かった また ササラダニ ケダニ コナダニの種数がスギ人工林で少なかった トビムシ ササラダニ ケダニ トゲダニ群集では スギ人工林化が種組成の変化を引き起こすことが示唆された スギ人工林化は 土壌動物の多様性の点ではマイナスに働いている可能性があるが ある分類群の総個体数には現れにくいので注意が必要である P3 日本の針葉樹林人工林における鳥類の多様性 佐藤重穂 ( 森林総研四国支所 ) 日本の低山地帯では森林利用のため人工林率が極めて高い 四国では森林面積の 70% 以上がスギ ヒノキの人工林である 天然林のみならず針葉樹人工林においても生物多様性保全のための森林管理が必要となっている 針葉樹人工林における森林性鳥類を評価するため 四国の低山地帯における鳥類の種構成を調べた 調査地は若齢 壮齢 老齢の人工林で 森林の成熟によって鳥類群集がどのような影響を受けるかを見た またこれら人工林と比べるため老齢の天然林でも調べた 鳥の種数と個体数は若齢人工林では少なかった 種数は若齢林や壮齢林より成熟林でおおかった 鳥の多様度指数 ( シャノンのH ) は林齢や樹冠の高さと相関を示した このように鳥類の種数や種構成は針葉樹人工林の発育段階の影響を受けることが伺われる

P4 里山景観における地表性天敵昆虫群集の構造と保全的利用 香川理威 ( 神戸大学 農 現フマキラー ) 前藤薫( 神戸大学 農 ) 土着天敵昆虫を保全的に利用する害虫防除は 生物多様性がもたらす生態系サービスを享受する主要技術のひとつである 農耕地と半自然植生がモザイク状に配置される里山景観において オサムシ科の捕食性天敵の分布と環境選好性を調査したところ それらの個体数と種組成は 植生 土壌水分 草高 森林からの距離といった局所的な環境要因によって大きく変化することが分かった 土着的天敵の保全的利用には 天敵の各発育段階の環境要求に配慮した生息地管理に加えて 主たる生息地と農地をむすぶ植生帯の維持が重要と考えられる P5 地上部植生, 動物の侵入頻度, リターの被覆が耕作放棄地に播種された自生木本の定着に与える影響 徳岡良則 ( 農環研, 広大院国際協力 ), 大東健太郎 ( 農環研 ), 中越信和 ( 広大院国際協力 ) 国内では農業不振を背景に耕作放棄地が増加している しかし耕作放棄の長期化が生物相に与える影響に関する研究は少ない そこで本研究では 15 年間放棄されたアズマネザサの優占した放棄地を対象に 地上部植生の有無 動物の侵入頻度 リターの被覆が播種された自生木本の初期定着に与える影響を試験検証した その結果群落内では 発芽後の陽樹実生の生残が制限され, また陽樹 陰樹ともに複数種で発芽前後の動物影響により生残割合が著しく低下していた このため対象植生では 管理放棄の継続のみによる森林再生は困難と考えられる P6 森林などの自然植生がソバの送粉サービスに与える影響 滝久智 岡部貴美子 ( 森林総研 ) 山浦悠一( 北大 ) 松浦俊也 末吉昌宏 牧野俊一 ( 森林総研 ) 前藤薫( 神戸大 ) ソバの花が実になるには 雄しべから雌しべへの花粉の媒介が必要とされる その花粉媒介には 森林など自然植生などに生息する昆虫が貢献している可能性がある そこで 茨城県のソバ栽培地にて 花粉媒介昆虫とソバの実り度合い ( 結実率 ) を調査した その結果 近くに森林など自然植生が多い畑では 昆虫数が多く ソバの結実率が上昇した このことは 森林など自然植生の存在が作物生産に貢献していることを示す

P7 大スケールでの生物多様性の変化を 2 つの測定項目で明らかにする- 日本の成熟した天然林を例に- 小川みふゆ, 山浦悠一, 阿部真 ( 森林総研 ), 星野大介 ( 森林総研東北 ), 星崎和彦 ( 秋田県立大 ), 飯田滋生 ( 森林総研北海道 ), 勝木俊雄, 正木隆 ( 森林総研 ), 新山馨 ( 森林総研東北 ), 齊藤哲, 酒井武 ( 森林総研 ), 杉田久志 ( 森林総研東北 ), 田内裕之 ( 森林総研 ), 天野達也 ( 農環研 ) 滝久智, 岡部貴美子 ( 森林総研 ) これまで全球や大陸といった大スケールでの個体群 生物多様性の変化は 個体数の増減といった 1 つの測定項目から評価されてきた しかし 樹木や動物の一部では個体数とバイオマスに負の相関関係が指摘されており 個体数の増減だけでは結果を誤って評価する恐れがある そこで 日本の成熟した天然林を対象に 種の幹本数と胸高断面積合計を用いて個体群の変化を評価した その結果 幹本数だけでは減少したが 胸高直径だけでは変化していないと評価された しかし 2つの指標を使うことで小径木が間引かれて中大径木が肥大成長したと解釈でき 日本の成熟した天然林は衰退しているとは言えなかった 以上のことから 2 つ以上の測定項目を用いて個体群 生物多様性の変化をより正確に評価できることを示した P8 局所生物多様性を支える温帯林 佐藤利幸 ( 信州大理 ) 児玉祐二( 北大低温研 ) 古川昭雄 ( 故人 ) 熱帯林低地における高木樹種の多種共存はよく知られる マレーシア熱帯の標高別の局所シダ植物種密度 (5mx5mx5mの立法枠) およびキナバル山での積算種数では標高 1500m~2000m 標高で高いシダ植物多様性が確認されている 個人活動スケールの景観 100mx100mx100m 範囲 での植物多様性は 熱帯よりも温帯のほうが高い 広大な範囲では熱帯林の生物多様性が最も高い 1 立法メートルでの植物種密度は 温帯草原 ツンドラ 寒帯で高い それぞれのスケールで 生物種多様度を最大にする生態系管理が望ましい P9 極東ユーラシアの植物生物多様性を支える中部山岳地域 尾鼻陽介 ( 信大院 地球生物圏 ) 佐藤利幸( 信州大理 ) ユーラシア大陸の東端の日本列島には 維管束植物が約 10000 種 (7000 種が在来 ) 確認されている 同緯度の北アメリカやヨーロッパ西部に比べるとほぼ 2 倍の植物種が確認できる シダ植物に限ると おおよそ 3~4 倍の約 1000 種群 ( 変種 雑種を含め ) が知られる 日本列島の植物相は北南西から大陸要素が進入し 東からは太平洋要素が進入したと思われる 温帯モンスーン気候は 植物の共存を可能にする一方で 温暖化により急激すぎる植物組成変化を強いられる場 ( とくに中部山岳 ) と言えよう

P10 生命系再創出のための林野の理業管理への試み 大浦由貴 ( 富山市 ) 中野国光( 塩尻市 ) 佐藤利幸( 信州大 理 ) 農地あるいは森林の再生政策が叫ばれている これまでの農林業は 人為的管理によって特定の有用植物を大量生産する目的として発展し この 100 年間見事な成果を挙げた しかし現在 日本レベルの農産物自給率が 30% と極端に低く 開墾地 里山の放棄など 当初の基盤設備が生かされていない これは 農政の流通システムと経済発展のずれ地球環境 ( 人的 自然 ) の急変の結果であろう 従来の一元的目標の農工業ではなく 綜合的究極目的の理業政策を設ける必然性がある 富山県と長野県から現状報告を行いたい P11 里山林管理とゴミムシ類群集 松本和馬 ( 森林総研 ) 近藤慶一( 名城大学 ) 日野輝明( 森林総研関西 ) 新妻靖章 ( 名城大学 ) 多摩丘陵に多いササが繁茂した放置里山林と植生管理された林のゴミムシを群集の比較調査したところ, 管理されササを刈った林よりも 放置されササが繁茂した林の方がゴミムシの多様度が高く, 安定環境を好む森林性種が生息していた 現在の管理手法は再考の余地がある. 一方, 兵庫県猪名川町の現在も利用されている薪炭林のゴミムシ類群集は, 皆伐更新後数年は草原性種が多く侵入して種数が多く, その後森林性種中心に移行する 里山ではさまざまな林齢の林 草地 畑などがモザイク状に配置され 全体として高い生物多様性が保たれてきたと考えられる P12 里山林管理と林床に出現する植物との関係 伊東宏樹 ( 森林総研多摩森林科学園 ) 大阪府北部から兵庫県南東部にかけての北摂地域では, 特産の池田炭生産のためのクヌギ萌芽林施業が現在も続いている このクヌギ萌芽林と周囲の放置林とで林床に出現するシダ植物および種子植物の種のあり / なしを調査し, 階層ベイズモデルによりどのような種がどのような林分に出現しやすいかを解析した さらに, その結果を利用してシミュレーションモデルを作成し, 萌芽林での管理手法の違いによる林床の出現種数の変化を予測したところ, 異なる林齢の林分が存在することが, 全体の種数を安定的に維持することに寄与していることが示唆された

第 2 日目 (4 月 27 日 11:00~13:00) P1 土地利用の変化は森林性鳥類 哺乳類の分布を国土スケールで変化させるか? 山浦悠一 ( 森林総研 ) 天野達也( 農環研 ) 小泉透 光田靖 滝久智 岡部貴美子 ( 森林総研 ) 森林性鳥類と中 大型哺乳類の分布の最近 20 年の変化を調査した 鳥類では 若い林に生息する種は分布域が縮小していた 成熟した林に生息する種のうち 日本国内で生活を送る種 ( 留鳥 漂鳥 ) は分布域が拡大していた これらは 日本の森林は近年伐採されなくなり 成熟しているためだと考えられた 一方で 成熟した林に生息する種のうち 主に東南アジアで越冬する夏鳥の分布域は縮小していた これは 東南アジアの森林が減少しているためだと考えられた したがって 土地利用の変化は国土スケールで生物の分布を変化させると考えられるが 哺乳類では異なった傾向も認められた P2 広葉樹林の更新や人工林化に伴う生物多様性変化 牧野俊一 ( 森林総研 ) 後藤秀章( 森林総研九州 ) 井上大成 ( 森林総研多摩 ) 末吉昌弘 ( 森林総研九州 ) 岡部貴美子( 森林総研 ) 長谷川元洋( 森林総研木曽 ) 濱口京子 ( 森林総研関西 ) 田中浩( 森林総研九州 ) 大河内勇( 森林総研 ) 森林には様々な生物が住んでいるが その種数や種構成は森林の状態によって違う 人間が森林に手を加えることで 森林の生物多様性がどのように変化するかを見るため 落葉広葉樹林を皆伐した二次林 および針葉樹林に転換した人工林後で小形節足動物 植物 菌類等のモニタリングを行った その結果 二次林では皆伐後の若齢林で種数が多く次第に減少する生物群が多かった 人工林でも同様の傾向が見られたが 林齢に伴う減少はより激しかった しかし 若齢人工林は若齢二次林と類似した種数や種構成を持っていた一方 老齢広葉樹林を好む種も存在した こうしたことから 人工林化の高齢化によって生物種数は一般に減少するが 人工林の利用 ( 伐採 ) と 多様な林齢の広葉樹林を周囲に配置することによって 景観全体としての生物多様性の劣化を防ぐことが出来る考えられる P3 北茨城地域の生物多様性予測マップの作成と評価 佐野真琴 宮本麻子 岡部貴美子 ( 森林総研 ) 古家直行( 国際農研センター ) 近年 さまざまな場面で生物多様性の重要性が取り上げられ 森林経営においても生物多様性に配慮することが必要となってきている このため 生物多様性を定量化し その分布をマップ化することが一つの経営補助情報となる 本報告では 動物のとる行動範囲によりレベル分けされた種数のデータとGISにより現状の生物多様性マップを作成し 3つの森林経営シナリオに応じた 20~100 年後の生物多様性予測マップを作成した また 予測マップをランドスケープ指数で評価し どのような森林経営をなすべきなのか検討した

P4 ニホンジカ高密度生息地域抽出のための地理学的アプローチ- 森林生態系へ及ぼすインパクト評価のために- 近藤洋史 ( 森林総合研究所九州支所 ) 小泉透( 森林総合研究所 ) 池田浩一( 福岡県筑後農林事務所 ) 日本に生息するニホンジカ (Cervus nippon) は国土の約 40% に生息し 分布域はこの 25 年間に 1.7 倍に拡大した シカが生息する自然公園の約 2/3 で 植物の消失を含む シカの採食影響が報告されているが ほとんどの森林ではシカの採食影響を評価する手法が確立していない 我々は 福岡県内で行われたシカ生息密度調査結果を用いてシカ高密度生息地域を抽出する方法を検討した 調査は 1999~2000 年にかけて 86 点で行われ 生息密度は 糞粒法 により推定された 点在する空間情報を クリギング法 による補間し 福岡県におけるシカ密度分布図を作成した この結果 密度 30 頭 /km 2 を超える 4 つの高密度地域が特定された この推定方法は 個体の行動域面積が小さく 定住性が強く 分散率の低い個体群 特に西日本に生息する個体群 において有効であろう P5 森林景観における野生生物への食物資源供給機能の定量化 柴田銃江 ( 森林総研東北 ) 田中浩 ( 森林総研九州 ) 新山馨( 森林総研東北 ) 長池卓男 ( 山梨県森林総研 ) 石田敏 中静透( 東北大 ) 森林を構成する樹木の生態系機能の一つとして 野生鳥獣にとっての食物資源の供給機能の定量評価を試みた 茨城県北部の落葉広葉樹林帯の森林景観を構成する落葉広葉樹二次林 スギ人工林のそれぞれについて 伐採 ( 植栽 ) 後の林齢の異なる林分の樹木種組成 樹木サイズ構成を調査し 堅果 乾果あるいは液果を生産する樹木種ごとの繁殖開始サイズ 樹木サイズと繁殖量のアロメトリ関係などをもとに カロリーベーズでの食物資源量を定量評価した 広葉樹林では 林齢の変化にともなう果実生産可能な樹木種数および資源量の変化パターンが果実タイプによって異なり 果実資源供給に貢献する果実タイプが入れ替わることが明らかになった 液果類は林齢とともに種数 資源量が増加するが 60-80 年生程度の中齢林でピークを迎え 100 年生以上の老齢林で資源量が低下した 乾果類は若齢林にピークがありその後急速に減少した 堅果類は 林齢とともに増加し ブナ イヌブナを交えた原生的な老齢林で最も資源量が大きかった 他方 スギ人工林では 林齢に関わりなく果実生産可能な樹木種数および果実資源量は乏しく 特に堅果類はほとんどみられなかった 一部の林分で 液果 乾果類が侵入し 資源量としてわずかに貢献した この地域の森林景観を構成する森林タイプのうち 野生鳥獣にとっての食物資源供給機能から見て 落葉広葉樹林が重要なこと 若齢や中齢の広葉樹二次林が乾果や液果の供給からは重要な役割を果たしていること ブナ属の優占する老齢原生林が堅果類の供給源として非常に重要なことが示唆された

P6 マルハナバチ類の野生巣における繁殖スケジュールと性比 井上真紀 ( 国立環境研究所 ) 横山潤( 山形大 理 ) 土田浩治( 岐阜大 応用生物 ) 五箇公一 ( 国立環境研究所外来種セイヨウオオマルハナバチは 温室栽培トマトの授粉昆虫として 1991 年に導入され 北海道で野生化が進行 在来種の減少が報告されている 本種の防除対策には 野外における繁殖生態の情報が必要である そこで本研究では セイヨウおよび在来種の野生巣における繁殖スケジュールと性比を調べた セイヨウでは protandrous 巣はオス生産に protogynous 巣はメス生産に偏り sex split ratio であった 個体群性比は 1.40 ( メス / オス ) であり メスバイアスであった 成熟巣は 繭数平均 376.5 うちメス繭数 90.2(22.1%) を生産していた 一方 在来種も sex split ratio を示したが 個体群性比は 0.34 でありオスバイアスであった P7 東北地方の多雪集落における山菜 キノコ採りの供給サービス 松浦俊也 杉村乾 田中伸彦 宮本麻子 ( 森林総研 ) 田中浩( 森林総研九州 ) 勝木俊雄 滝久智 平田泰雅 ( 森林総研 ) ブナ林や雪崩草地 低木林がモザイク状に広がる東北地方日本海側の多雪山地では 古くから日常的な山菜 キノコ採りが盛んであり 重要な供給サービスとなっている このような山菜 キノコ採りにおける自然資源利用の特徴を定量的に調べるために 福島県南会津郡只見町の2 地区にて 全戸へのアンケートや採取者への聞き取りと調査票記入依頼 GPS などにより 種 採取日数 重量 環境条件などを調べた その結果 沢沿いや雪崩草地 低木林 老齢広葉樹林などを 季節の移ろいに応じて頻繁に山菜 キノコ採りに利用している様子が捉えられた P8 Anap 持続的発展地区 : 持続的森林管理における地域社会との関わり (Anap Sustainable Development Unit: Engaging Community in Sustainable Forest Management Bintulu, Sarawak, Malaysia) Hon Jason Shung Sun (Kyoto University), 2) Wong Ing Yung, Zedtee Sendirian Berhad (Malaysia), 3) Morimoto Yukihiro, Natsuhara Yoshihiro (Kyoto University) 熱帯雨林の伐採が環境に与える影響については とくに生物多様性保全等の観点から多くの関心が寄せられきたが 熱帯に位置する多くの国では 森林伐採は経済基盤として重要で 雇用や国の発展の要となってきたのも事実である 地域社会と係わってどのように持続的な森林管理を行っていくか それをマレーシアサラワク州の Anap 持続的発展地区を例として紹介する ( 事務局要約 )

P9 原材料の調達を通じた生産地の森林と生物多様性への配慮 飯沼佐代子 ( 地球 人間環境フォーラム ) 日本で消費される紙や木材はその 8 割を海外原料に依存している 紙原料の生産地であるタスマニアやスマトラでは生物多様性の宝庫である天然林の伐採が続き 跡地は産業植林地へと転換されている マレーシアでは熱帯林が急速にアブラヤシ農園に転換され 私たちの食生活を支える食用油脂が生産されている 現代の生活様式は 無自覚のうちに海外の森林を破壊し 生物多様性を脅威にさらしている この状態を変えるために 木材 紙の調達を通じての森林と生物多様性への配慮を進める フェアウッド パートナーズの取組を紹介する P10 CDM 植林とチョウ類の多様性 松本和馬 ( 森林総研 ) Woro A. Noerdjito (LIPI) 高橋正義( 森林総研北海道 ) 福山研二 ( 森林総研 ) 熱帯の天然林は人為や火事によって劣化したり草原化しており 生物多様性の減少が世界的に懸念されている 植生回復や産業利用を目的として 草原にアカシアマンギウムのような早成樹を植栽することが行われてきた こうした人工林ではたして森林昆虫も回復するのか それを知るため人工林と 伐採跡地の草原 そして原生林でチョウの群集構造を比べてみた 場所はインドネシアの東カリマンタン バリクパパンの近くである その結果 草原よりも人工林のほうが種数が多いことがわかり 人工林化によって種数は確かに増えることがわかり それはおもに森林性種の増加が原因だった しかし 火事で焼けていない天然林では種数はもっと多く 天然林で見つかるチョウのなかには 人工林では見かけることのない 森林内部に住む種も含まれていた さらに 原生林からアカシア人工林にいたるルートを歩いてチョウを調べたところ 人工林よりも 火事で焼けた森林で種数が多かった つまり焼けた森林は 森林性種によってコリドー ( 回廊 ) もしくはその供給源となって こうした種が人工林に移入定着することが伺えた トランセクト 100m ごとのチョウ種数を見ると 原生林から離れるほど種数が減少したが 火事で焼け残った小さな森林ではやや増加した 一般化線型モデルで解析すると 距離と 100m 単位での種数との間には有意な負の相関があったが 植生そのものがチョウの種数に与える影響は検出されなかった

P11 国立環境研究所侵入生物データベースの機能強化とその応用への展望 岡本卓 五箇公一 ( 国立環境研究所 ) 生物多様性劣化の重要な原因の一つである侵入生物による生態影響は, 多岐に渡ると同時に世界的に共通した問題であり, 様々な侵入生物に関する既知情報を国際的に共有するための情報基盤が必要である. このような情報基盤として, 国立環境研究所では侵入生物データベース (http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive) を公開し, その改良を現在進めている. これまでに, 国際標準を考慮しデータの変換, 英語版の作成, 検索機能の付与, 更新情報の配信機能の付与を行った. これにより, 国内外へのより柔軟かつ効率的な情報発信が可能となる. P12 外来樹種人工林の蛾類多様性 - 自生地と移入先の比較 - 尾碕研一 ( 森林総研北海道 ) 外来樹種の大規模植林により 新たな外来種の侵入や在来種の消失が危惧されている そこで本研究では カラマツ人工林と広葉樹天然林の蛾類群集を カラマツの自生地 ( 山梨県 ) と移入先 ( 北海道 ) で比較することにより 外来樹種植林の影響を調べた その結果 自生地のカラマツ人工林に生息する蛾はすべて在来種であったが 移入先では カラマツ植林によってカラマツ食の外来種の侵入が促進されていた 一方 カラマツ植林が在来種に及ぼす影響は 自生地と移入先で大きな違いはないと考えられた