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透過型電子顕微鏡 走査型電子顕微鏡による塗料 塗膜中の粒子成分の観察 3.3 塗膜中の隠蔽性赤顔料の分布状態のTEM観察 ぞれの粒子の分散状態によるものではなく 粒径の大きなエ 顔料 及び分散条件を変動させた場合の乾燥塗膜の観察 マルション粒子に粒径の小さなディスパージョン粒子が吸着 像を写真5に示す 分散前の顔料は長さ約1μm 幅約2 し 構造を形成することで発現したものであることが判明し nmの棒状結晶であった 分散条件①では顔料が1次粒子 た に近い状態で分散しており 適正な分散条件であったが さ らに分散を強めた分散条件②では顔料の1次粒子が破壊さ 3.2 エマルション粒子の造膜状態のTEM観察 れ 細かい状態で分布していることがわかった 本顔料で エマルションAとエマルションBの混合比を変えた乾燥塗 は分散条件により色差が生じたが これは過分散により顔料 膜の観察像を写真4に示す 黒い粒子像と白い連続相像の が1次粒子より小さく破壊されて表面が活性化し 凝集する 2つのドメインに分かれている 薄切前に四酸化ルテニウム ことが原因であることがわかった で固定処理をしたが 固定と同時に電子染色処理もできる エマルションB粒子は電子染色されやすいスチレンを有して 3.4 塗膜中の軟質粒子成分のSEM観察 いるため 黒い粒子像がエマルションB 白い連続相像はエ ヘキサンによるエッチング前後の塗膜断面の観察結果を マルションAが融着して形成されたものと判断できる 造膜 写真6に示す エッチング後の写真にはエッチング前には存 性は混合比が7 /3 6 /4 5 /5 の順で良好であり 在しなかった空隙が観察された これは ヘキサンにより溶 良好なものは高Tgエマルション粒子を低Tgエマルション粒 解した軟質粒子成分の脱離跡である この写真からこの軟 子が取り囲み 融着して 造膜していることがわかった 質粒子成分は塗膜の表層部に分布する傾向があることが明 確になった 70/30 60/40 50/50 4 結 論 本検討により塗料 塗膜中の粒子成分の 分散状態の観察から 他の分析手法では明 確化が 困難であった 物性変化や塗膜性状 の解析を可能とした 写真4 エマルション粒子の造膜状態 エマルションA 低T /エマルションB 高T 観察用試料の作製手法には標準化や規 定化された手順はなく 試料 目的に応じて 様々な手法をいかに組み合わせて適用して いくかが鍵となる 塗料が高機能化する中 で観察像と その他の物性や性能などを併 隠蔽性赤顔料 分散条件 ① 分散条件 ② せて総合的に判断することにより 塗料の開 発に有用な情報が得られると考える 参考文献 1 朝倉健太郎 広畑泰久共編: 電子顕微 鏡研究者のためのウルトラミクロトーム 写真5 分散前の顔料及び塗膜中の顔料分布 技法Q A アグネ承風社 2 平野寛 宮澤七郎 : よくわかる電子顕微 鏡技術 エッチング前 写真6 エッチング後 3 社団法人日本電子顕微鏡学会編 :電顕 入門ガイドブック 塗膜中の軟質粒子成分の分布 11 塗料の研究 No.147 Mar. 2007 報 文 アン粒子径が増加した 以上の結果より粘度の上昇はそれ