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〔問 1〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか

平成 27 年度 特定行政書士法定研修 考査問題 解答と解説 本解答と解説は 正式に公表されたものではなく 作成者が独自に作成したものであり 内容の信頼性については保証しない 以下の事項に全て該当 遵守する場合にのみ 利用を許可する 東京都行政書士会葛飾支部会員であること 営利目的でないこと 内容を

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( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

〔問 1〕 A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され,移転登記も完了している

市町村合併の推進状況について

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た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

共通到達目標 ( 民事訴訟法 ) 案 目次 第 1 章 総論 第 1 節 民事訴訟の意義 目的 第 2 節 民事紛争解決のための手続 第 3 節 訴訟と非訟 第 4 節 民事訴訟に関する法規 第 2 章訴訟の主体第 1 節裁判所第 1 款裁判所の意義と構成第 2 款裁判権第 3 款管轄 ( 1) 管

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

関西大学法学部・栗田隆/民事訴訟法/訴訟参加

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

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ある 2 請求の趣旨 被告は, 原告に対し, 金 1800 万円及びこれに対する平成 18 年 9 月 1 日から 支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 請求原因 訴訟費用は被告の負担とする 仮執行の宣言 原被告間の売買契約の成立 原告の被告に対する所有権移転登記 引渡し債務について弁

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

第1章(1-1) 包括的基本権

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

第1章(1-1) 包括的基本権

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

日税研メールマガジン vol.111 ( 平成 28 年 6 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 取締役に対する報酬の追認株主総会決議の効力日本大学法学部教授大久保拓也 一中小会社における取締役の報酬規制の不遵守とその対策取締役の報酬は ( 指名委員会等設置会社以

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

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(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

平成  年(行ツ)第  号

審決取消判決の拘束力

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

[ 民法 ] 次の文章を読んで, 後記の 設問 1 及び 設問 2 に答えなさい 事実 1.Aは, 年来の友人であるBから,B 所有の甲建物の購入を持ち掛けられた Aは, 甲建物を気に入り, 平成 23 年 7 月 14 日,Bとの間で, 甲建物を1000 万円で購入する旨の契約を締結し, 同日,B

借地権及び法定地上権の評価 ( 競売編 ) 出典 : 株式会社判例タイムズ出版 別冊判例タイムズ第 30 号 借地権の評価 第 1 意義 借地権とは 建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう ( 借地法 1 条 借地 借家法 2 条 1 号 ) 第 2 評価方法 借地権の評価は 建付地価格に

改訂簡易裁判所の民事実務目次

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

平成  年(オ)第  号

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に含まれるノウハウ コンセプト アイディアその他の知的財産権は すべて乙に帰属するに同意する 2 乙は 本契約第 5 条の秘密保持契約および第 6 条の競業避止義務に違反しない限度で 本件成果物 自他およびこれに含まれるノウハウ コンセプトまたはアイディア等を 甲以外の第三者に対する本件業務と同一ま

問 2 次のアからオまでの各記述について 正しいときは を 誤っているときは を選び 所定の解答欄に記入しなさい ( 各 1 点 ) ア会社法の規定により登記すべき事項について 過失で不実の事項を登記した者は その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない イ株式を1 株未満に

きる ( 改正前民法 436 条 ) 1 改正法と同じ 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる 本条は 負担部分の限度で 他の連帯債務者が債権者に対して債務の履行を拒むことができると規定したものであり 判

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競走馬の馬名に「パブリシティ権」を認めた事例

〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

日弁連事務職員能力認定制度に基づく応用研修会講義要項(2015年度改訂版)

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

実務家の条文の読み方=六法の使い方の基礎

上告理由書・構成案

当法 22 条 2 項,3 項により本件滞納社会保険料等の徴収に関する権限を承継した被告に対し, 本件滞納社会保険料等のうち平成 17 年 5 月分以前のもの ( 以下 本件請求対象社会保険料等 という ) についての納付義務は時効等により消滅しているとして, 本件交付要求のうち本件請求対象社会保険

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

第 5 無効及び取消し 1 法律行為が無効である場合又は取り消された場合の効果法律行為が無効である場合又は取り消された場合の効果について 次のような規律を設けるものとする (1) 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は 相手方を原状に復させる義務を負う (2) (1) の規定にかかわらず

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ウ譲渡人について倒産手続の開始決定があった場合エ債務者の債務不履行の場合 (3) 譲渡禁止特約付債権の差押え 転付命令による債権の移転 2 債権譲渡の対抗要件 ( 民法第 467 条 ) (1) 総論及び第三者対抗要件の見直し (2) 債務者対抗要件 ( 権利行使要件 ) の見直し (3) 対抗要件

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なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

目次はじめに... 1 民法総則... 5 第 1 法律行為の主体 制限行為能力者の詐術 取消しと無効の二重効 法律行為の解釈... 6 第 2 意思表示 虚偽表示 (94 条 ) 条 2 項類推適用 錯誤無

物品売買契約書

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2 譲渡禁止特約の効力改正前は 譲渡禁止特約を付した場合は債権の譲渡はできない ( ただし 特約の存在を知らない第三者等には対抗できない ) とされていましたが 改正法では このような特約があっても債権の譲渡は効力を妨げられないことを明記しました ( 466Ⅱ 1) ただし 3に記載するとおり 債務

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

(イ係)

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

限され 当事者が商標を使用する能力に直接の影響はありません 異議申し立て手続きと取消手続きで最もよく見られる問題とは 混同のおそれ と 単なる記述 です TTAB は登録の内容のみを評価するため その分析の局面には 想定に基づくものもあります 通常 TTAB では どのように標章が実際の製品において

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日韓比較 国際知的財産法研究⑹ 知的財産権に関する国際裁判管轄の原則 韓国案と日本の修正案の差異を中心に 李 聖 昊* 2009年7月26日に修正提出された日本側の 2 被告の国籍 知的財産権に関する国際私法原則 草案 以下 3 被告の有体財産の所在 日本修正案 という の中 第2部の国際裁判 4

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民事系 第 問 [ 商法 ] 川﨑作成解答例 全員の承認があり, 取締役会の承認があったと評価される余地はある しかしながら, 条 項の重要な事実の開示がない 取締役会の承認を必要とした趣旨からすれば, 利益の衝突を来すか否かを判断するに足りる事実, 本件でいえば, 乙の事業の内容, Bの関与の程度

(1) 家賃債務保証業者に対する損害額の調査結果 調査の概要 調査対象 国土交通省の家賃債務保証業者登録制度に登録している家賃債務保証業者 13 社 対象期間 各事業者が保有する平成 28 年又は平成 29 年のデータのうち直近で集計可能な過去 1 年分又は直近の1,000 件ただし 事業者によって

学識経験を有する者の知見の活用 実績評価書資料の表 2( 審決取消訴訟が提起されなかった審決件数 ) 記載の 審決件数 が, うち審決取消訴訟が提起されなかった審決件数 及び表 3( 審決取消訴訟によって取り消された審決件数 ) 記載の 審決取消訴訟提起件数 の合計件数にならないのはなぜか ( 小西

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

電子記録債権取引における法律上の留意点 (1) 電子記録債権取引全般について (2) 下請法上の取扱いについて (3) 税法上の取扱いについて (4) 法的手続き等について (5) 記録請求等について でんさいネットのコールセンター等に寄せられる照会を参考に解説 1

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

保険給付に関する決定についての審査請求に係る労働者災害補償保険審査官の決定に対して不服のある者は 再審査請求をした日から 3 か月を経過しても裁決がないときであっても 再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経ずに 処分の取消しの訴えを提起することはできない (H23-4B)

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被告は 高年法 9 条 2 項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わ なかったものと認めることはできず 本件就業規則 29 条が高年法附則 5 条 1 項の要件を具 備していないというべきである 本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則 29 条は 手続要件を欠き無効であり 原

平成18年1月13日 最高裁判所は,貸金業者の過払い金の受領は違法と知りつつなされたことを推定するとした判例です

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しかるところ, 一般に, ある議案を否決する株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることはないし, 当該決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから, ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると解するのが相当である 裁判官千葉勝美の補足意見があ

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務の返済が不可能になった状態 と定義されている 商事裁判所法では以下の 3 種類の破産が規定されている 真実の破産 (real bankruptcy): 一般的に健全な経営をしており 正式な帳簿を作成し 浪費をしていなかったが 資産に明白な損失が生じた場合 怠慢による破産 (bankruptcy b

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明確認書 を甲に提出する ( かし担保 ) 第 8 条乙は この契約締結後に かくれたかしがあることを発見しても 売買代金の減免若しくは損害賠償の請求又は契約の解除をすることができないものとする ただし 乙が消費者契約法 ( 平成 12 年法律第 61 号 ) 第 2 条第 1 項に規定する消費者

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する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

行為の違法確認訴訟の持つ理論的な意義ないし機能を検討した上で, 具体的な事例におい て当該訴訟を提起したならば訴訟要件を充足するか等について検討する Ⅱ 事例行為の違法確認訴訟を提起する意義がある事例として, 以下の 7 つが挙げられる 比較的最近の事例の中から恣意的に選択したものである そのため,

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

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2011 年度民事訴訟法講義 22 関西大学法学部教授栗田隆 1. 判決の確定 2. 判決の内容的効力 ( 既判力 執行力 形成 力 ) 3. 外国判決の効力 4. 既判力の作用 5. 客観的範囲 (114 条 ) 時的範囲( 民事執行 法 35 条 2 項 ) 判決の形式的確定力 (116 条 ) 判決に対する通常の不服申立方法がなくなった時に 判決は確定したという 判決が通常の方法ではもはや取り消され得ない状態に入り これを判決の効力と見て 形式的確定力という T. Kurita 2 判決の確定を遮断する通常の不服申立方法 (116 条 ) 控訴 上告 上告受理申立て (318 条 1 項 ) 特別上告 (327 条 1 項 ) は含まれない 手形 小切手訴訟における異議申立て (357 条 367 条 2 項 ) その後に控訴が可能 少額訴訟における異議申立て (378 条 1 項 ) その後に控訴の余地がない (380 条 1 項 ) 確定判決に対する訴え 確定判決を取り消しあるいは変更するためには 特別上告 (327 条 ) のような上訴形式の手段を除外すれば 特別な訴えによらなければならない 次の 2 つがある 1. 再審の訴え (338 条 ) 2. 定期金による賠償を命じた確定判決の変更の訴え (117 条 ) T. Kurita 3 T. Kurita 4 覊束力 訴えの提起から判決の確定に至るまでの手続の中で 複数の裁判所が関与する場合に ある裁判所がした裁判が他の裁判所を拘束する効力 1. 移送の裁判は 移送を受けた裁判所を拘束する (22 条 ) 2. 上級審が原判決の破棄 取消理由とした判断は 下級審を拘束する (325 条 3 項 裁判所法 4 条 ) 3. 原判決が適法に確定した事実は 上告審を拘束する (321 条 ) 判決の内容的効力 既判力後の訴訟の裁判所を拘束する効力 執行力 1. 狭義の執行力判決で命じられた義務内容を強制執行によって実現できる効力 2. 広義の執行力裁判に基づき公の機関に対して 強制執行以外の方法で その内容に適合する状態の実現を求めることができること 例 : 登記を命ずる判決 形成力判決で宣言されたとおりに法律関係を変動させる効力 T. Kurita 5 T. Kurita 6 1

仮執行宣言 (259 条 260 条 ) 判決の内容的効力は 判決の確定のときに生ずるのが原則である 判決の内容的効力を判決確定前に発生させ 狭義または広義の執行を可能にするためには 特別の宣言が必要である その宣言を仮執行宣言という 特に重要なのは 狭義の執行力を発生させるための仮執行宣言であり 通常は これである 外国判決の効力 (118 条 民執法 24 条 ) 118 条所定の承認要件を充足する場合には 日本の判決手続において 日本の裁判所の判決と同様の効力が認められる 執行手続においては 外国判決に基づいて執行するためには 承認要件が充足されていることを確認したうえで下される執行判決が必要である ( 民執法 24 条 ) T. Kurita 7 T. Kurita 8 既判力の意義と根拠 意義既判力は 後訴の裁判所に対して 確定判決と矛盾する判断を禁ずる訴訟法上の効果である ( 通説 別の見解もある ) 根拠 1. 必要性紛争解決という制度目的の実現のために既判力を認める必要がある 2. 許容性 ( 正当化根拠 ) 当事者には 自己に有利な判決を得るために 公正な裁判所において公正な手続で弁論をなす地位が認められている ( 手続保障 ) 制度的効力としての既判力 既判力は 紛争解決という制度目的の実現のために 当事者の善意 悪意といった主観的要素を含まない比較単純で明確な要件が充足されると 一律に作用するものである そうでなければ 当事者としては 紛争が解決されたのか否かが不明瞭となり 再訴を誘発することになりやすい T. Kurita 9 T. Kurita 10 既判力の標準時 ( 基準時 ) 判決主文中の判断は 当事者が裁判の基礎資料である事実を提出することができる最終時点 ( 事実審の口頭弁論終結時 ) における法律関係についての判断である 既判力の標準時前に存在した事由でもって 既判力ある判断を争うことは許されない 既判力の標準時後に発生した事由を主張して 既判力ある判断を争うこと ( 現在の法律関係が標準時における法律関係と異なることを主張すること ) は許される 図解 後の訴訟でこれを主張すること弁済は 既判力により禁止される のに対する貸金返還請求訴訟 事実審の口頭弁論終結 弁済 請求認容判決の確定 後の訴訟でこれを主張することは 既判力により禁止されない T. Kurita 11 T. Kurita 12 2

既判力の作用 積極的作用裁判所は 既判力のある判断を審理 裁判の基礎としなければならない 消極的作用当事者が既判力のある判断を争うために標準時前の事実を主張することは許されず たとえ当事者がしても 不適法な攻撃 防御方法として却下される 前後の訴訟物の関係から見た既判力の作用 基本類型として次の3つがある 1. 同一関係 2. 先決関係 3. 矛盾関係 既判力の作用の仕方の類型であり これに限られるわけではない T. Kurita 13 T. Kurita 14 同一関係 先決関係 第 2 訴訟 所有権確認請求 第 2 訴訟 所有権に基づ く明渡請求 T. Kurita 15 T. Kurita 16 矛盾関係 先決関係と矛盾関係の複合 第 2 訴訟 所有権確認請求 第 2 訴訟 所有権に基づく明渡請求 T. Kurita 17 T. Kurita 18 3

抗弁で主張される権利関係 第 1 訴訟 賃借権確認請求 第 2 訴訟 所有権に基づく 明渡請求 私には賃借権がある T. Kurita 19 既判力ある判断に抵触する判決 前訴判決の既判力に反する判決が下された場合には 当事者は上訴によりその取消しを求めることができる 既判力に抵触する判決が確定した後では 再審の訴えによりその取消しを求めることができるが (338 条 1 項 10 号 ) 取り消されるまでは 後で確定した判決の既判力ある判断が最新の判断として優先する ( 同項 8 号に注意 ) T. Kurita 20 既判力の双面性 請求認容 建物は 自分のものではない 建物の所有権確認請求 建物収去土地明渡請求 土地所有者 既判力は 当事者の有利にも不利にも作用する この主張は 前訴判決の既判力により許されない T. Kurita 21 最判昭和 32.6.7( ダイヤの帯留事件 ) 委託者 ダイヤ入り帯留の売却委任契約 契約解除被告等は原告に対し 45 万円を支払え 受託者 B B 請求認容判決確定 しかし 分割債務 残額支払請求 連帯債務だ ( 商法 511 条 ) 支払なし 22 万 5000 円支払 T. Kurita 22 判旨 債権者が数人の債務者に対して金銭債務の履行を訴求する場合 連帯債務たる事実関係を何ら主張しないときは これを分割債務の主張と解すべきである ある金額の請求を訴訟物 ( 分割債務 ) の全部として訴求して その全部につき勝訴の確定判決を得た後 その請求は訴訟物 ( 連帯債務 ) の一部にすぎなかった旨を主張して残額を訴求することは 許されない 請求の趣旨の書き方 分割債務の場合 被告等は原告に対し 45 万円を支払え 連帯債務の場合 被告等は 各自 原告に対し 45 万円を支払え 全部で 45 万円受領できる 45 万円 45 万円 1 2 T. Kurita 23 T. Kurita 24 4

標準時後の形成権の行使 が にだまされて に不動産を安く売った の に対する所有権確認請求訴訟 口頭弁論終結 請求認容判決確定 取消権発生 が取消権を行使して 判決で認められた の権利を争うことはできるか? 見解の対立 遮断肯定説 - 判例 通説標準時前に存した取消権を標準時後に行使することは既判力により遮断される 遮断否定説 - 少数説 ( 中野説 ) 標準時後の取消権の行使は 既判力によって遮断されない 債務者側の執行妨害 争訟の蒸返しの策謀は 訴訟上の信義則により封ずれば足りる そのほかにもいくつかの新しい見解がある T. Kurita 25 T. Kurita 26 最判昭和 55 年 10 月 23 日 [ 場面 ] 売買契約による所有権の移転を請求原因とする買主からの所有権確認訴訟が係属した場合に [ 要件 ] 売主が右売買契約の詐欺による取消権を行使することができたのにこれを行使しないで事実審の口頭弁論が終結され 右売買契約による所有権の移転を認める請求認容の判決があり同判決が確定したときは [ 効果 ] もはやその後の訴訟において売主が右取消権を行使して右売買契約により移転した所有権の存否を争うことは許されない 判例 多数説 形成権の種類ごとに 標準時後の行使が既判力により遮断されるか否かを決定する 1. 遮断される形成権取消権 解除権 白地手形の補充権 ( 最判昭和 57 年 3 月 30 日 反対の見解も有力 ) 2. 遮断されない形成権相殺権 建物買取請求権 ( 最判平成 7 年 12 月 15 日 ) T. Kurita 27 T. Kurita 28 既判力の生ずる判断 既判力は 判決主文中の判断に限り生ずるのが原則である (114 条 1 項 ) 理由中の判断には生じないのが原則である前提問題は当事者間で審判の最終目標とされたものではないから この点の判断に既判力を認めることは 処分権主義に反する 理由中の判断に既判力を発生させたい当事者は 中間確認の訴え (145 条 ) を提起すべきである 例外相殺の判断 (114 条 2 項 ) 相殺の抗弁について判断がなされた場合に この判断に既判力を認めないと 訴求債権の存否についての紛争が反対債権の存否の紛争として蒸し返され 判決による紛争解決が実質的に意味を失う場合がある そこで 一挙にこの点を解決する趣旨で 反対債権の不存在について既判力が認められている T. Kurita 29 T. Kurita 30 5

図解 もし α 債権の存在が認められるのであれば 自分の に対する β 債権と相殺する α 債権支払請求 裁判所が両債権の存在と相殺を認めて 請求を棄却 β 債権支払請求 最判平成 10 年 6 月 12 日 金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは 特段の事情がない限り 信義則に反して許されない 訴訟物を異にする場合であっても 後訴が実質的には 敗訴に終わった前訴の請求及び主張の蒸返しに当たる場合には 後訴の提起は信義則に反して許されない α 債権はもともとなかったから β 債権が相殺により消滅することはない T. Kurita 31 T. Kurita 32 折尾簡判平成 14 年 11 月 21 日 借主 不当利得返還請求 不当利得返還請求 損害賠償請求 敗 敗 高利貸金業者 2 つの訴訟において借主とその子が不当な証言 陳述をした 裁判所は 旧訴訟物理論を前提にして第 2 訴訟の判決の既判力は本訴 ( 第 3 訴訟 ) に及ばないとしつつ 貸金業者の本訴提起は信義則に反して許されないとして却下した T. Kurita 33 6